小西マサテルのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
『名探偵のままでいて』、『名探偵じゃなくても』に続く、シリーズ最終作。
2026年夏、実写ドラマ化もされている。ドラマのクレジットで最終巻が出ているのを知り、読んでみた。
主人公・楓は小学校教師。
たった一人の肉親である祖父は、かつては小学校校長を務め、ミステリマニアで聡明な人物だった。だが現在はレビー小体型認知症を患い、パーキンソン症状が出たり、幻視を見たりする。進行性の疾患であり、楓は不安を抱えつつ、大好きな祖父を見守っている。
そんな祖父だが、楓が身の回りの謎の話を持ち込むと、ミステリ好きの血が騒ぎ、生き生きとする。煙草を1本くゆらせ、煙をスクリーンにして、謎の真相=「物語」を描き出してみせるのだ。それは病気になる以前の祖父の聡明さを彷彿させる光景だ。
とはいえ、楓も祖父の病気が進行性であること、いつまでも元気ではいてくれないであろうことを知っている。いつかはお別れを告げる日が来るのだ。
楓、楓の同僚の岩田先生、岩田の高校時代の後輩で売れない劇団の役者である四季の3人は、よいトリオで、時にはともに謎解きをし、時には祖父の元を訪ね、楽しい時を過ごしている。だが岩田も四季も内心、楓に心を寄せていて、いつかはこの均衡が崩れる時がくることを3人とも予感している。
楓はどちらを選ぶのか。
最終作である本作には、不穏な序章がある。「医師」を名乗る人物がカウンセリングをしている模様だが、そのやりとりは、どうも「患者」の心を却って波立たせているようである。
続く本編の第1章では、江戸川乱歩の明智小五郎シリーズに現われる小林少年に似た少年が現れる。彼は子どものころ体験した謎を話し、祖父がそれを解いてみせる。
第2章・第3章は不可解な殺人事件の話。祖父の推理もあって、真犯人は突き止められるのだが、どうやらさらに裏があるようで。
第4章では祖父の身に危険が及ぶ。果たしてその背景は。
本作でも古典ミステリがふんだんに登場し、オマージュが込められる。
いずれも著者の敬意が感じられ、それが読後感の良さにつながっている。
本作中の謎のプロットは、一通りつじつまは合うし、意表を突く形にはなっているが、斬新である・傑出しているとはいいにくい。無理があると感じる設定もある。また、祖父の推理中心に話が進み(それ自体は安楽椅子探偵ものなので当然なのだろうが)、手掛かりが本当にフェアに提示されているのか、疑問が残る。総じて、事件解決のカタルシスは大きくはない。
とはいえ、全体に品のよさを感じるのは、著者が数々の古典作品を本当に愛読してきたことが伝わるからではないかと思う。
本シリーズの特徴は、認知症の一種であるレビー小体型認知症患者が見る「幻視」を、推理の軸に据えた点。そこにどれだけリアリティが出せたかというと、やはり「お話」の域を出ていない印象である。著者の親族が実際に罹患しているそうで、レビー小体型認知症とはどんなものか、多少なりとも世に知らしめたのであれば、「よし」というところだろうか。
もう1つの持ち味としては、シリーズを通じた、孫娘と祖父の間の温かい愛情の描写。これも作品の品のよさにつながっているように思う。
最終巻は、タイトルからして、祖父の身が案じられるものなのだが、実際の結末はどうだろうか。
どこか優しい温かみのある幕引きとなったのは、本シリーズにはふさわしいものだったように思う。
*ドラマも割と楽しく見ているのですが、祖父が推理する際、煙草を吸うのではなく、お香を焚く設定になっていてちょっとびっくりしました。テレビドラマで煙草を扱うのはなかなかセンシティブなのですかね。病気の老人だしなぁ。
ドラマは次回(9/4)が最終回。シリーズの中のエピソードを組み合わせている回があったり、設定が若干変わっていたり、原作との相違はありつつ、概ね、原作の持ち味をうまくドラマ化している印象でした。