ヴィクトル・ユゴーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
初めて本作品を読むのに恐らく丁度良い量かと思います。
パンを一斤盗んだら…から始まり、司教に出会ったジャン・ヴァルジャンは善も手探りながら心得るようになり、しかし過去の悪を知る彼は悩み、葛藤する。
善と悪は紙一重であり、心得さえあれば…しかし難しい美徳の道へと一歩一歩進むことが出来る。
その道は、悪を知る者、だいたい小さな悪というものを人間は持っているけれど、美徳にまっしぐらとは到底困難と思える。
悪に落ちることは正反対に簡単だけれど、周りにとっても自身にとっても善人であることにの困難さ、司教の優しくも強い信念から始まる上巻は、どんどん読めてしまいました。 -
Posted by ブクログ
下巻は、1832年6月5日に起きたパリ蜂起の模様が中心である。1830年の七月革命でブルボン王朝が倒れた後に、日和見主義のブルジョワジーの推薦によって新たに誕生したフィリップ王政に対する、人民の不満が、深刻な経済状況に加え、コレラの蔓延などで沸騰点に達し、若者たちを中心にパリ市街にバリケードを築き、政府軍と戦った。
血で血を争い、どさくさに紛れて一般市民が死んでしまう。また、正義のための争いの前では殺人が正当化されてしまう、そういう戦闘は肯定したくないが、この蜂起のリーダーであったアンジョルラスの演説には感動して鳥肌がたった。
「自分自身の主権を、われわれは“自由”と呼んでいる。そういった主権がいくつも集まれば、“国家”が生まれる。そして、この複数の主権の集まりの中では、権利が失われることはない。社会の権利のために、一人一人の主権が多少制限されるだけだ。その制限量はみな同じだ。一人一人が他人のためにこうむる制限が同じことを“平等”と呼ぶ。共同の権利とは、個人個人を守るための全員による保護のことだ。一人一人に対する、この全体による保護を“友愛”と呼ぶ。そして、これらの主権の交差する場所こそが“社会”なのだ。(中略)みんな、平等とは誰もが同じ高さにとどまっていることではない。たけの高い草と、小さい柏の木がならんだり、互いに相手を妬み、抑えつけ合う社会のことではない。社会の面では、全員が同じように能力を高める機会を持っていることであり、政治の面では、誰もの一票が同じ重さを持っていることであり、宗教の面では、どの信仰も同じように扱われることなのだ。平等のもとで、無償による義務教育というものが誕生した。全員に義務付けられている小学校。全員にひらかれた中学校。これが基本だ。同じ教育環境によって平等な社会が誕生する。そう、教育が大切なのだ!そこに光明が、救いの光がある!・・・・・みんな、19世紀は偉大だが、20世紀はもっと幸せになれるだろう。そのころには、もう古い歴史を引きずるようなものは残っていない。現在のような支配、侵略、略奪、武力行使による国家間の対立。国王の婚姻がきっかけの文明の変化・・・(中略)みんな、私がこうして語っている現在は、暗くやるせない時代だ。でも、これは将来を形づくるための生みの苦しみなのだ。革命は通行税のようなもので、未来のために高い代償を払う必要がある。・・・バリケードは、敷石や角材や鉄くずでできているのではない。ここは思想と苦悩の二つが積まれ、山となって誕生した。無慈悲と理想がぶつかる場所だ。・・・・同胞よ、ここで亡くなったとしても、未来の輝きに包まれて死ぬのだ。・・・」
これは1832年、今から約200年前のことであり、この後、世界は大きな戦争を2回もして、反省し、先進国は少しずつこの時のアンジョルラスの理想とした社会に近づいてきたわけであるが、この時革命を引っ張ってきた若者は、混乱したフランス社会でこんなに先見の明を持っていたのだと分かり感動した(大多数の人々は理論的にはよくわからず、革命にエネルギーを注いでいただけかもしれないが)。フランス国旗のトリコロール「自由・平等・博愛」の意味が分かった気がする。そして、さらにこの部分が私の胸を打つのは、これが後世の人々によって書かれた歴史書ではなく、その時、タイムリーに現場に居合わせたユゴーによって、ルポタージュのように書かれたということである。
ジャン・バルジャンが革命のバリケードの中からマリウスを救い出し、砲火を逃れるためにパリの真っ暗な地下道を命懸けで通って安全な地上に避難したシーンも圧巻だった。
パリに行ってみたくなった。このような歴史事件があったパリの街並みを見てみたくなった。
子供向けに「ジャン・バルジャン物語」などが刊行されていたから、この小説の主人公はジャン・バルジャンだと思っていた。しかし、「ああ無常」と言われるこの小説の主人公は、蜂起の中で「役に立ちたい」と張り切って、敵の散弾が飛び交う中、無邪気にも歌を歌いながら味方の為に弾薬を拾い集めて死んでいった、貧しい最下層のガウローシュ少年のような名もなき貧しい一般市民だったのだと分かった。
ジャン・バルジャンは若い日、パンを盗んだ罪で投獄され、その後脱獄を繰り返したことで、15年間も獄中生活を送ったが、その後ビジネスで成功し、市長にもなり、再度シャベールに捕まったが、再度脱獄して、追われる生活をしながらも、少女コゼットと幸せな9年間を過ごし、最終的に自分は身を引いてコゼットをマリウスという若者に渡してしまうが、革命で散った若者たちに比べると幸せな人生を送ったかもしれない。
ジャン・バルジャンは、貧困、差別、闘争などの矛盾に満ちた社会の中で、人間が無理やり作った規範と戦った強い、愛に満ちた大きな人だったと思う。
登場人物一人一人の人生がドラマチックで、パリ蜂起という山場もあるので、ミュージカルとしても成功したが、やはり原作(抄訳だが)を読んで、ユゴーの考え方が分かり、本当に良かった。 -
Posted by ブクログ
子供の頃に接した「ジャン・バルジャン物語」やミュージカル「レ・ミゼラブル」で分かったつもりになっていてはいけない。一度は原作を読んでみなければ…と思っていたが、文庫本4冊の完訳はやはり長すぎる。この「抄訳」で妥協したつもりだったが、これが面白い!!
ユゴーの原作はさぞかしお固くて、重々しい社会派小説だと思っていた。しかし、読んでみると、解説にもあるように、冒険やミステリーなど様々な娯楽小説の要素に溢れ、ドラマチックな世界に入りこんでいく。
だいたい、十五年間も服役していた男(ジャン・バルジャン)が、社会復帰してから、たった数年で市長になるなんて、いくらメディアで面が割れない19世紀でもあり得ない。そして、突然、ジャベール(ジャン・バルジャンをずっと追っていた警官)に見つかり、再び監獄に入り、半年ぐらいで脱獄してコゼットと何年も身を隠して暮していくなんて。それでも、そんな無茶な展開、実際フランス革命後の無茶苦茶荒れたフランス社会。極端に貧しい者達。王党派、共和派などの思想の対立。法の元の正義と神の御心にかなう正義の対比。ジャン・バルジャンの人生を物語るような風貌。怪力で犯罪者であるが底はかとない心の優しさ。彼らを見守る星の瞬き…。
細かい所まで描写が丁寧で、舞台を見ているようである。ドラマチックで、頭の中、「民衆の歌」「夢やぶれて」や「One more day」などミュージカル「レ・ミゼラブル」の曲流れまくり。昔観て感動したのだが、原作の世界観と合っている。ユゴー自身も演劇を通じて大衆に対する社会的使命を果たそうとしていたらしいので、あのミュージカルを見ていたら喜んでいたのでは?と思いたくなった。
ただ、ユゴーの原作は歴史背景や人物の背景を長く説明しすぎたり、物事の細かい説明が長すぎて本筋からそれることが多くて読みにくく、それで読者を遠ざけてきたらしい。そこで、1960年代にハーバード大学のペニシュー先生が、過剰な部分を削ぎ落とし、なおかつ辻褄の合うように調整し、元の半分弱のものに編集し直して抄訳版を英米で発表した。本書はその日本語訳である。こんな面白いのに敷居の高かった小説を皆が読みやすい所に下ろして下さった画期的な訳だと思う。
この小説は今の私たちから見れば「歴史小説」だが、ユゴーの時代にとっては「現代」の小説だった。古い小説ってそういう面でも面白い。
下巻に続く。
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ネタバレこちらの作品はヴィクトル・ユゴーの『レ・ミゼラブル』の原作の本質を残しつつ過剰な部分を取り除き英訳したものを日本語訳したものらしく最後まで読みやすい作品でした。
上巻と同様、登場人物それぞれに味があり読み進めるのがとても楽しい作品でしたが、下巻はフランス革命に巻き込まれる場面や最後の方のジャン・ヴァルジャンとコゼットの心が離れていく場面はドキドキと悲しみを感じました。
最後はマリウスに真実が伝わり良かったなと思いますし、ジャン・ヴァルジャンの物語全体での人柄の素晴らしさとコゼット、マリウスとの別れの場面とで自然と涙が出てしまいました。 -
Posted by ブクログ
下巻はコゼットとマリウスの濃い恋愛が底辺に据えられた展開。少々飾りすぎた語りであるもののジャン・バルジャンなりマリウス視線で没入して読む。革命ゲリラによる籠城の場面で無駄に人物が増え、間延びし停滞するが、それ以外は様々な要素が盛り込まれ、主要人物達がその人柄を活かした活躍をするので興味尽きず読めた。
特に最後のジャン・バルジャンが語らずに去る後の展開がもどかしい。
悪党テナルディエが最後までのさばらせるのは何か意図があったのだろうか。また、ジャヴェール警部の自死は意外だった。
全編を通して自分に正直に生きることの辛さと勇気、正しい人生観というものを考えさせられる。
あとがきによると、本書は原書を半分弱に縮めた英訳版をさらに日本語に訳したもので、読みやすさの根拠だと納得する。原書の訳本ならよほど苦痛を伴う読書となったろう、と安堵した。
洋書を食わず嫌いしている人にもオススメ出来る娯楽作と思う。 -
購入済み
レ・ミゼラブル
話の流れに不必要な詳細描写が割愛されていること、訳が現代に適した表現であること、それでもおそらく作者にとっての本質や品位などが落ちていないだけのレベルが保たれていて、現代人が読むにはとても適している訳だと思います。
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Posted by ブクログ
ネタバレぃやー、意外だったよね。
レ・ミゼラブル、実はミュージカルも観たことないんだ。
どないにしてロングセラーなのかと思ったら、意外と面白かった。
なぜか?
*まず、思った以上にドラマ性がある。なんというか、盛り上がる場面が随所に出てくるね。
*そして、精神的であると同時に社会的。
主人公その他の内面を描くと同時に、(と言っても、「罪と罰」なみの深いというかダダ漏れのものではなく)社会に対する疑問も呈していて。善とは?法とは?宗教とは?みたいな問いかけもなくもない。
*実はフランス革命期の話だったのか!っていう時代背景すら知らなかったわけだが、そんな歴史性もあったりして。
なかなか興味深かったっす。
ちょっと、これをミュージカルの長さに短縮したらどうなるのか、観てみたくなったかも。 -
Posted by ブクログ
ネタバレこの角川文庫がだしている『レ・ミゼラブル』は、ハーバード大学の教授がユゴー作の原作にある過剰なほどの背景説明を省き、編集しなおしたものを和訳し出版したものである。なので原作ではまず間違いなく途中で挫折していただろうが、まったく苦に感じることなく楽しめて読めた。
個人からの視点で社会の無情さを痛感させられ、それがフランス革命の大きな時代の波へと展開していくさまはとにかく壮大で、スポットの当たることの少ない社会の溝や矛盾での無情さを浮き彫りにさせてくれている。200年も前の作品なのに現代のわたしたちでも考えさせられる内容だった。
また、終わり方が自分好みで、読み終わった後はしばらく何もせずに余韻に浸ってしまった。さすがは200年たった今でも名作といわれる作品。これは誰かにお勧めしたい本。
他のレビュアーも指摘していたが、かの有名な銀の燭台の話の原作がこれだったとは驚きだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「世間は震撼せども、十字架は微動だにせず」
レ・ミゼラブルを読みやすくした本。新潮文庫こそレ・ミゼラブルだという人もいるが、読みやすいこちらから手をつけるのがいいだろう。面白いと思って、さらに詳しく読みたい人はそちらを読めばいい。
ジャン・ヴァルジャンは悪人だった。生きるために心を汚した。しかし、寛容な司祭に出会い、彼は変わり始めた。これは、彼の救済の物語である。ところどころ利己的な部分が出てくるが、彼は人のために自己を犠牲にできる人物になっていく。たとえ、築き上げた地位を捨ててまでも。
”レ・ミゼラブル”、ああ無情。それでも信念を捨ててはいけない。 -
Posted by ブクログ
以前見たこの物語を原作とした映画が面白かったので読んでみました。最後の解説でようやく気付いたのですが、どうやらこれは縮訳版だったようですね。違和感なく読むことができ、充分満足してしまったので、完訳版は記憶が薄れてからまた読もうかと思っています。
こういった道徳劇、私は好きです。きっと、物語の展開は都合が良すぎ、また作者の思想部分もなんだか甘ったるすぎる、と思われる方もいるだろうと思いますが、このような『善』への信仰や称賛、憧れというものは、たとえ現実の世界に実際には通用しないとしても、己の内から現れるあらゆる悪徳から心を守るための良き盾となると思うからです。
もしかしたらこう考える人は少数派なのかもしれませんが、少なくとも私は、心が弱いためについ行ってしまう自分の自己中心的な行動に気付くと、「あのときジャン・ヴァルジャンはあんなに苦しみながらも、自分から名乗り出て罰を受けるという高潔な決断をし、その結果、苦労して手に入れた財産も名誉も安楽な生活も失った。そして私はそれに驚き、正しいことだと思った。それなのに、正しさに感動したはずの同じ心で、私はこんなことをしていて、本当に良いのか? 恥ずかしくはないのか?」というような風に反省し、自分の心の中に傲慢や卑怯や妬み等を呼び込まないように気を付けるための味方としています。「こんなとき、ジャン・ヴァルジャンならどうするだろう? アリョーシャなら? ネフリュードフならどうだろう?」という考え方は、過大な自己評価を抑え、自分の至らなさを自覚する良いきっかけになります。偽善的だと思われるかもしれませんが、個人的に、このような意味で道徳劇は有用だと思うのです。
特にこの物語は、善を目指しながらもひどく迷い苦しみ、二転三転する主人公の心理描写が真に迫っており、とても面白く読むことができました。こういった有名な作品は、やはり読む価値があるものですね。 -
Posted by ブクログ
文豪ヴィクトル・ユーゴーの長編小説から読みやすくまとめた本。100年戦争後の15世紀パリを描く。
バレエ作品にもなっている、
ジプシーの娘エスメラルダがヒロイン。
人の心は外見によらないことを示すカジモド、司祭なのに邪な心を持つフロロ、婚約者がいながらエスメラルダを誘惑する美男子のフュビュス、家族愛、欲望、権力の前で軽視される平民の命。
愛の対比で、フュビュスとフロロの欲望ばかりの愛とは異なり、カジモドの思いやりに溢れた愛、エスメラルダと母の家族愛は本当に純粋で、胸が締め付けられた。
世の中の不条理、平民に心を寄せるヴィクトルユゴーの特徴が、この物語にも表れている。