古市雅子のレビュー一覧
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我らが大劉、再びのバカSF炸裂。(←褒め言葉)
「流浪地球」と同時刊行された、劉慈欣のバカSF短編集です。(←褒め言葉)
劉慈欣のSFの特徴は、長編でも短編でも、笑える話でもしんみりする話でも、どこかに必ず「バカ」の要素が潜んでいることだと、鴨は思います。
この場合の「バカ」とは、頭が悪いという意味ではなくて、えっ、そんな発想、常人にはとても出せないけど!?という畏敬の念を込めた「バカ」です。代表作「三体」なんて、これ以上なくスケールの大きなバカSFだし。
本作「老神介護」も、人類を作った神様が宇宙船に乗って介護を要求しにきたり、中国から南極まで通じる巨大な穴をマントルもコアもぶち抜いて作っ -
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「三体」、「円」(短編集)ともにとても面白かったので、新年最初に手に取った本
面白かった!
この本でも、ミクロ視点とマクロ視点の切り替えが毎回実に鮮やか
ホラーが苦手なので、タイトルからしておどろおどろしい「呪い5.0」は読み始めるのに心構えが必要だったんだけど、ホラーどころかコメディ…?で面白かった!…と書きたいけど書けないような…
突然の九州シリーズ創始者のひとりがモデルになってる登場人物とか、やっぱり面白いといえば面白いかな
(九州シリーズは、ドラマ「九州縹緲録」と「斛珠夫人」視聴済)
1番好きなのはこれ!って即答できないくらいどれも面白かったけど、あえて選ぶなら中国太陽…いやミクロ紀元 -
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ネタバレ我らが大劉こと劉慈欣、バカSF炸裂。
いやもう、読みながら「バリントン・J・ベイリーみたいだな・・・」と、我ながらちょっと極端だなぁと思える感想を抱きながら読んだんですけど、あとがきで大森望氏が正にその通りのことを書いていて、決して極端な感想ではなかったのだな、と安堵しましたヽ( ´ー`)ノ
とにかく針の振り切れまくった作品ばかりで、その振り切れ具合に大笑いさせられつつも、根底に重厚なハードSFの骨格があり、そのどこかに豊かな詩情とペーソスを感じるのが、さすがの大劉節です。
・・・とまとめたいのに、それを妨げる「呪い5.0」の破壊力といったら(笑)作中に「SF作家の劉慈欣」が登場してSF超大 -
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目次
・老神介護
・扶養人類
・白亜紀往事
・彼女の眼を連れて
・地球大砲
劉慈欣の書くSFのテーマって、どことなく懐かしさを感じるのはなぜだろう。
『老神介護』は、最初こそ神様のみすぼらしさと情けなさに、にやにやしながら読んでいたのだけど、最後まで読むと『三体』と地続きのテーマであることが分かった。
続編と言える『扶養人類』に至っては、まんま『黒暗森林』なのである。
ところで、以前から私は、中国における神様の存在について知りたいと思っていた。
日本だと、日本古来の神様のほかに外国からやってきた神様も、えらい人間または恐ろしいことをしそうな人間も亡くなると神様になる。
たまには生き神様ま -
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ネタバレ目次
・流浪地球
・ミクロ紀元
・呑食者
・呪い5・0
・中国太陽
・山
『三体』シリーズで壮大な世界を見せてくれた劉慈欣の短編集。
『三体』のなかでも、歴史小説風、ゲームの世界風、恋愛小説風等、様々なテイストがありましたが、短篇集はそれをもっと純度を高くしたような感じでした。
『流浪地球』は、ぜひ萩尾望都のマンガでも読みたい。繊細な心理描写と、茫漠たる世界。
断片的だけど萩尾望都の絵が脳内に浮かんでくるの。
『ミクロ紀元』は、フレドリック・ブラウンをマンガ化した波津彰子かなあ、坂田靖子かなあ。
現実を淡々と受け入れるか、飄々と受け入れるかで、読者の受け取り方も変わってきそう。
『呑食 -
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恐竜と蟻のSF。恐竜好きなので表紙に惹かれた。『三体』は勇気がいるので、その前にこの本が読みたかった。
白亜紀末期、恐竜と蟻が互いに協力し、高度な文明を発達させていたとしたら…。
ティラノサウルスの歯に詰まった肉をたまたま蟻たちが掃除したことからはじまる。
こういうとんでもない発想大好きだー。
竜蟻サミットの様子を想像すると可愛い。
次第に両者に亀裂が生じていく。
読み進めていくうちに、「あれ?これってもしかして⁉」となる。
エピローグも良かった。
これからは蟻を見る目が変わるかも笑
やっぱりSF好きだー。
次は『三体』にもチャレンジしたい!
Audibleにて。 -
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ネタバレ・あらすじ
三体作者による短編SF集。
5つの短編が入っていたけどどれも面白かったし、要素要素に三体と通ずるものがあった。
特に好きだったのが扶養人類と彼女の眼を連れて、の二篇。
老神介護→地球文明を作った20億柱の神が宇宙船に乗って地球にやってきた。目的は地球人とともに地球で老後を過ごすこと。全世界で神を扶養するための法律が制定され各家庭で1柱の神と同居することになるが、両者の関係は徐々に悪化していく。
扶養人類→老神介護の続編。神がいなくなって三年。神が作った地球型文明の兄、第一地球の人類が地球へ移住にやってきた。
そんな中滑空という殺し屋は社会的資産液化委員会という世界の大富豪で構成 -
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★3.7
遥か白亜紀に、未来の孤独が滲んでいた。
恐竜とアリによる、文明発展の寓話的パロディ。
未来でも過去でもない、「今」の私たちがどう映るのか。
本書は、発明や哲学を司る”恐竜”と技術と組織を担う”アリ”が、小さな協力を経て巨大な文明共存を描く。そしてやがて「宗教」や「政治的・資源的対立」に突入し、文明は戦争へと向かっていく。
まさに人類史の縮図とも言える構図で、「蒸気・情報・核」といった技術史にも言及しつつ、最後は核のような大量破壊兵器まで登場する。
終盤は“Dr. Strangelove”を思わせる冷戦風の仕掛けをユーモアと風刺の色彩で魅せる。
蒸気→情報→核というように、古 -
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劉慈欣が紡ぐ物語には、想像を超えるスケールと、壮大な設定を物語の終わりまで力強く貫き通す筆力があり、その圧倒的な構想力にはただ驚嘆するばかりだ。
中国SFがこれほどまでにスケールの大きな作品を生み出す背景については、単に中国人が壮大な妄想を好むからという説明だけでは不十分だという興味深い指摘がある。政府や国家体制への直接的な批判が許されにくい中国の環境下では、現実世界の崩壊やそれに対応できない政治の姿をリアルに描くことは難しい。結果として、作家たちは現実から一歩引いた視点を取り、自然と物語の舞台を地球規模、さらには宇宙規模へと広げるようになるという。この見方には深く頷かされるものがあった。