S・A・コスビーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ホンモノのノワールがやって来た。古いフレンチ・ノワールの世界が、現代に帰ってきた。そういう小説の時間をもたらしてくれる作品である。
70年代のアメリカン・ニューシネマのフィルムの傷を想定しながら読む。暗闇に潜んで見上げていた傷だらけのスクリーン。暗くくすんだカラー。映画館内に漂う煙草のにおい。小便臭いコンクリート打ちっぱなしの廊下の匂い。しかしスクリーンの向こうには、野望を持つ男と女のしゅっとした切れの良さがある。銃口と硝煙。カーブの向こうを見据えるドライバーの冷徹な眼差し。
それらは大抵。美しい犯罪ストーリーだった。生と死、疑わしい愛、安全さに欠ける大金、それらがやり取りされていた -
Posted by ブクログ
「憎しみだ。人は復讐を正義のように語るが、復讐はちょっといいスーツを着た憎しみさ」
黒人の父親、白人の父親、惨殺された息子たち――
血の弔いが幕を開ける。
後悔、悲嘆、憎悪、復讐・・・亡き息子たちへの懺悔と非情な暴力への怒りが壮絶に描かれ、読んでる内に感情移入してしまう恐ろしい作品でした
何より登場人物の圧倒的なキャラクター性が魅力的で、ハードボイルドなオヤジたちの最期を覚悟した復讐劇に痺れました
一つ一つのやり取りの情景が目の前に映し出されるように鮮明に浮かび、手に汗握る大立ち回り!何よりクライマックスは・・・!是非ご自分の目でお確かめ下さい!!
(そのまま脚本にもなりそうだし、映画化 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「頬に哀しみを刻め」と同じ作者だったので。
桜の樹の下には死体が埋まっていると言ったのは、誰だったか。
ミステリーファンならば、
死体が埋まっているのは土の酸性度で色が変わる紫陽花だろう。
実際にそういうミステリーがあるかどうかは別として。
それゆえ、息子が高校の教師を殺したと知った母親が、
息子は先生のことが好きでふたりで居残りをしていた、と語った時には、
ミステリーファンならそこに何が埋まっているのかに気が付いたはずだ。
意外だったのは、早々にその最優秀教師の裏の顔が掘り返されたこと。
奴隷制度の過去が色濃く残るアメリカ南部の町の高校で発砲事件が起き、
白人の教師が殺され、犯人の黒人 -
Posted by ブクログ
息子たちを殺された二人の父親が、復讐する物語。
その父親たちの経歴がひどい。
一人は貧乏白人で、アル中で、前科持ちで、刑務所帰り。
もう一人は黒人で、人殺しの前科があり、もちろん刑務所帰り。
さらに、殺された二人の息子たちはゲイで、生きている間の親子関係は最悪だった。
とにかく、二人が暴力的で殺しまくる。
警察もあまり出てこない。
少しご都合主義的な展開もあるが、
復讐を通して、
人種間のわだかまりが実は子どもの頃から
植え付けられた古びた価値観だったり、
命を張って助け合うことで、人間としての本質的な良さを知り、
友情を深めていく。
暴力に彩られた、大人のファンタジーでもある。 -
Posted by ブクログ
作品の舞台はアメリカ、バージニア州リッチモンド
黒人で過去に服役しがらも、地道に働き庭園管理会社を経営しているアイク
白人で妻に捨てられ、酒浸りになっているバディー・リー
彼らの息子同士(ゲイ)は互いに父親に祝福されることなく結婚していたが、ある日警察からこの息子たちが撃ち殺されたとの連絡を受ける
男の世界を生きてきたアイクとバディー・リーは息子を愛しながらも、息子たちの性について理解できず向き合うことを避けてきた…
それに対する後悔や贖罪が二人の男を掻き立て、息子たちを殺した犯人への復讐に向かっていく
とにかく元囚人のおっさんたちのこと…
いくら息子たちを殺されたからといって、やるこ -
購入済み
人間性や社会問題を深く掘り下げ
ただの復讐劇ではなく、人間性や社会問題を深く掘り下げた作品
息子を殺された二人の父親が復讐を誓う物語だが、その中で描かれる父親たちの感情、特に哀しみ、怒り、そして愛は非常に深い
語は非常にスリリングで、暴力描写もリアル。
コスビーのスタイルが如実に現れているが、それが単なる暴力描写ではなく、背景に深い人間ドラマを持っている -
Posted by ブクログ
定義というよりもイメージしているクライム・ノベルというのがあって。これが完全にイメージ通り、読みたい、完全にクライム・ノベルな一冊。
引退して自動車修理工場を営む元凄腕のゲッタウェイ・ドライバー、ライバル店の出現で生活がピンチに陥ったところに過去に仕事でトラブった相手からデカい“仕事”の誘いが。これが最後とその“仕事”を受けることにするが…
こんな話は何年か前の深夜にDVDで観たことがある、そんな気もしてくる“良くある話”だ。だけど、そんな“良くある話”とドラマ、そのなかに書き込まれるディティール、生活や文化や街並み、様々な引用や知識、哲 -
Posted by ブクログ
ネタバレいやー、面白かった。
もちろん昨年このミス1位をかっさらった『頬に哀しみを刻め』の皮肉とユーモアの効いた会話、何を差し置いてもの家族愛の物語も面白かったが、自分的にはこのザ・南部アメリカ物語がこれまでのコスビー作品の中で一番刺さった。
ヴァージニア州の田舎町チャロンの元FBI捜査官の黒人保安官タイタスが就任1周年を迎えたとある日、町内の高校で銃発砲事件が発生。
誰からも信頼を寄せられるスピアマン先生が撃たれ命を失う。
犯人はタイタスの親友の息子ラトレル。
ラトレルは駆けつけた警官達に降伏する素振りも見せず、むしろ迫ってきたことで射殺される。
残した言葉は「(スピアマン)先生の携帯を見てみろ」 -
Posted by ブクログ
アメリカ南部の田舎町チャロン郡で保安官を務める黒人タイタス・クラウンが主人公。ある日、町の高校で人望厚く評判の良い教師ジェフ・スピアマンが被害者となる銃乱射事件が起こる。犯人は高校の卒業生である黒人青年ラトレル。彼は現場に駆けつけたタイタスを長とする保安官チームによって射殺される。ラトレルは殺される直前、妙な言葉を口にする。「先生の携帯を見ろ」スピアマンの遺品の携帯電話のデータを探ると、町の子どもたちが被害に遭う凄惨な連続殺人事件が明らかに。加害者は3人。ラトレル、スピアマン、そして狼の面を被った謎の人物。タイタスは事件を追う……。
コスビーやっぱり面白い!最初から最後まで追い詰められるよう