S・A・コスビーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレアイクとバディーリーの未熟な二人の父親たちの話
彼らがともに同じ後悔と哀しみを抱え、憎しみという名の復讐へ舵を切る
バイオレンス、セクシュアリティー、人種差別、家族愛、それらが紡ぐ一見複雑に見える事件が、実はシンプルな一本の糸で繋がっている
アイロニーとドライなセリフ、彼らにしか理解し合えないユーモア
その世界にしかない共通語
未だ、この世はそんなもので満ち溢れているのかも知れない 悪意、自己顕示欲、暴力、偏見…
そして物語がある着地点へと辿り着き、ふと、思う
「後悔」ってなんだろう?
アイクとバディーリーは完全に取り返しのつかないことを息子たちにしてしまっていた
それは彼らを理解しようとしなかったこと、そして「愛」を伝えなかったこと
息子たちの非業な死の後でいくら悔やんでも、彼らには遅すぎた
「後悔」とは、もはやどうにもならない、行き着く先を見出せない、自分の中でいつまでも鳴り響く「残響」のようなものなのかもしれない
その後、父親たちが果たした復讐には何の意味があったのか?
「カミソリみたいな涙」
もどかしく、言いようもない哀しさを孕んだ贖罪の物語 -
Posted by ブクログ
⭐️5.0
コスビーを初めて読んだのがこの作品で、大ファンに。
中年のダメパパ2人が、殺された息子たちのために立ち上がる復讐もの。
まず、パパたちがスネに傷ありまくり、偏見ありまくりという設定からして、これまでのハードボイルドものとは少々毛色が違う。とにかくヒーロー感もダンディ感も皆無。それなのに最後は、めちゃくちゃカッコいいパパたちに泣けてくる。
ストーリーはシンプルながら、人種差別やLGBTという今日的なテーマを下敷きにしつつ、アクションシーンは血で血を洗うようなえげつなさもあり、手に汗握るシーンが続き、読ませる筆致に唸らせられながら、一気読みしてしまった。
次の作品が楽しみな作家さんに出会えた幸せよ。 -
Posted by ブクログ
「なんだか最近心に元気ないな...。なんでだろう...。」と思いつつ、そういえば最近ブクロブを見てなかったなと思い開いたら、なんと年初から記録をつけてなかったことに気づいたズボラ読書家です。やっぱり本を読まないとダメですね、語彙力も感情も乏しくなりがちです。
まずは何か1冊読まねばと、久々の読書に手に取ったのはこちら「頬に哀しみを刻め」
舞台はThe現代のアメリカ!
ジャンルとしてはサスペンスでとある殺人事件を中心に話が進みます。その進んでいく過程で、現代アメリカが直面する、人種だったり属性だったりという問題がハイライトされていくような形です。
私は海外に長く住んでいたような経験は無いものの、アジア人があまりい国や地域に滞在したときの、現地の人たちが無意識のうちに持つ蔑むような視線は経験したことがあります。それを日常的に受けるということは想像するだけで恐ろしいし、そして更に恐ろしいのはその視線に慣れてしまうこと。
この作品特有かなと思ったのは、外形的に恵まれた人種や属性だったら問答無用で幸せなのか?という点にもきちんとスポットライトが当てられている所。
ジャンルとしてはサスペンスだと思われるのと、上述のような社会的問題もはらんでいるので全体的に暗いトーンで進んでいきますが、エンターテイメント性も要所要所で散りばめられていて、飽きずに読めるんじゃないかなと思います。
洋書独特のグロめな描写も無くはないので、苦手な方は注意かもです。
社会に対して大なり小なりネガティブな感情を持ってしまったときに、本の中だけでもスカッとしたい!と思った週末に集中して読む用におすすめです◎ -
Posted by ブクログ
ネタバレS.A.コスビー邦訳3作目。月並みな言い方やけど、裏切らない作家だなぁ。残酷描写の好みは分かれるが(俺は正直苦手)そこを差し引いてもすごいサスペンス警察小説。
良くも悪くも典型的なアメリカ南部の小さな町チャロンで、人望篤い白人教師が黒人の卒業生に殺害される事件が起こる。現場に居合わせた黒人保安官タイタスは事件の陰に大きな事件の糸を引く黒幕の存在をかぎつけ捜査を始める。
残酷描写もエゲつないが、根強く残る差別と旧態依然(伝統的ともいう)な信仰心が同居する人間の矛盾描写がまぁエゲツない。保安官タイタスの正義は分かりやすいが、差別主義者たちも自分たちの信じる正義をもって行動しているという皮肉。ストレートな勧善懲悪の物語に終息するはずが、自分の信じる正義は本当に正しいのか?という疑問を持った時、小説だけでなく自分自身に疑問を持ってしまう。深いし辛い。
主人公タイタスがジョー・ピケットと共同戦線を張るような物語を読んでみたいなぁとか思ってしまった。 -
Posted by ブクログ
これは面白かった。
S・A・コスビーはどの作品も面白く、作品を重ねる毎に描かれている物語的にも描いている社会背景的にも作品的にも深度が深まってる印象がある。
だが、個人的には一番好みのタイプなのが本作。
かつて裏稼業で生活していた男が、愛する者と出会い足を洗う。だが、表の世界での生活が苦しくなり、再び裏稼業に手を出す。簡単だと思っていた仕事が、実はギャングの金で……というどこかで観たことあるようなシンプルな物語ではある。
だが、これがS・A・コスビーが描くと見事なクライムノベルに仕上がっている。
これは映画化したら絶対最高だろう、というシーンがいくつもある。
クライマックス、ダスターという愛車の登場シーンからカーチェイスシーンまで絶対映画だったら見せ場になるシーンで、文章でありながらもそのイメージでかなり痺れた。
当然ながら映画化の話もきているらしい。
映画が今から待ち遠しい。 -
Posted by ブクログ
ネタバレS.A.コスビーの3作目。
今作は前2作のノワールから変わり、ゴリゴリの警察小説。
舞台はアメリカ南部の街。拳銃を所持した黒人の高校生を、保安官たちが射殺する。高校生は殺される直前、先生の携帯を見ろと言い残す。教室では教師が殺されていた。この街初の黒人の保安官タイタスは殺された教師の携帯を調べるが、中には目を背けたくなるような残虐な映像が残されており。。。
いくらなんでも前作「頬に哀しみを刻め」より面白いことはないだろうと読み始めたが、すみません、軽々と超えてきました。
正直物語のまとまり方は前作の方が上だけど、今作の警察小説としての手堅さ、完成度は圧倒されるほど良かった。
アメリカ南部の人種差別、独特の宗教感がこれでもかと言うほど描かれており、黒人保安官タイタスの非常に難しい立ち位置がわかりやすい。
若干、ラストが駆け足気味だったが、面白さは抜群だったため、今年を代表する翻訳小説になると思う。
というか、5月と6月は本作に加えウィタカーの新作、ボルトンの10年ぶりの新作、クレイヴンの新シリーズと、とんでもない豊作で嬉しい悲鳴。
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Posted by ブクログ
どうやらS.A.コスビーは傑作しか書かないらしい
すでにご存知のことかと思われるが、今年は2024年だ
つまりイエス・キリストが生まれてから2024年(あるいは2028年)たっているということだ
そろそろ神はこの世界に無関心だということに気付いてもいい頃合いではないだろうか
どんなに祈っても戦争は終わらないし、どんなに祈っても差別はなくならないし、どんなに祈っても大切な人は奪われていく
そしてどんなに祈っても天使たちは助けに現れてくれそうにない
それともまだそれも神の計画の一部だと信じろというのだろうか
S.A.コスビーが描いた主人公タイタスを突き動かすのは神の教えではなく、公平な世界を実現しようとする人たちの意思だ
窮地に陥った彼を救うのは天使の囁きではなく、彼を愛する人たちの想いだ
人の心に巣食う悪魔と対峙するのは神ではなく、人なのだ -
Posted by ブクログ
あなたにとって大切な守りたいものは何だ!
自動車修理工場を営むボーレガードにとってそれは家族、友、仕事、工場、父から引き継いだ愛車ダスターだ
彼は大切なものを守るために過去に足を洗った犯罪に再び手を染めてしまう
大切なものを守るための最後の犯罪になるはずだった…
しかし、そこで歯車が狂い出す!
彼の大切なもの…
守ることができたもの…
守ることができなかったもの…
本作の魅了のひとつは登場人物
特に主人公のボーレガードはカッコイイ!
彼を取り巻く妻のキアやいとこで友のケルヴィンも魅力的だ
もうひとはアメ車
ビュイック、カマロ、ノヴァ、キャデラック…
しびれるアメ車が次々に登場
そして、何と言ってもボーレガードの愛車ダスター
これらアメ車のカーアクションは必見だ!
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Posted by ブクログ
ネタバレ裏家業の運び屋から足を洗って、真面目に自動車整備工場を営んでいる主人公ボーレカード(バグ)。しかし、同じ町に大きな同業者の工場ができ、経営難に陥り、裏家業にもう一度足を突っ込まざるを得なくなる。
貧困と犯罪、家族のしがらみ。抜け出せない過去、黒人と白人それぞれの格差社会と交錯する差別…。前世紀から続くアメリカのやるせない社会問題を背景に、ぶっとびカーチェイスシーンを織り交ぜて描くアクションノアール小説。
スピード感といぶし銀的渋さの両立。古い器に新しい酒を入れる手法の模範例ともいえる傑作。
日本もここまで貧困化し、都市圏と圏外の生活や文化がかけなはれている現状、よそ事と笑えない小説だと思う。貧しさは心の余裕をなくし、犯罪や差別や社会不安を育み、結果的に社会だけでなく個人をむしばむんだと思う。