S・A・コスビーのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレいやー、面白かった。
もちろん昨年このミス1位をかっさらった『頬に哀しみを刻め』の皮肉とユーモアの効いた会話、何を差し置いてもの家族愛の物語も面白かったが、自分的にはこのザ・南部アメリカ物語がこれまでのコスビー作品の中で一番刺さった。
ヴァージニア州の田舎町チャロンの元FBI捜査官の黒人保安官タイタスが就任1周年を迎えたとある日、町内の高校で銃発砲事件が発生。
誰からも信頼を寄せられるスピアマン先生が撃たれ命を失う。
犯人はタイタスの親友の息子ラトレル。
ラトレルは駆けつけた警官達に降伏する素振りも見せず、むしろ迫ってきたことで射殺される。
残した言葉は「(スピアマン)先生の携帯を見てみろ」。
その後、その携帯、スピアマン宅で発見される怖気が走るほどの悪事の証拠。
そして発砲のタイミングが早すぎたのではないかという疑念。
被害者のスピアマンは聖人などとは程遠かったのではないか、ラトレルはむしろ犠牲者なのではないか。。。
何と言っても毅然として悪事と対峙するタイタスがカッコ良すぎる。
現実世界ではどうしたって甘えや自己欺瞞が発生してしまう「正義」をど正当に貫き通す姿。
黒人であることの逆風や世間からの視線も物ともせず、時に融通が利かないとすら思える窮屈な法律も遵守しつつ、ただただ自らのできる正しきことを推し進める。
こういう「強さ」を感じられる物語を読むと大いに勇気づけられるし、少しでも自分ができることをやろうという気にさせられる。
ただそんなタイタスの姿勢は過去に対する贖罪の意識から。
必要以上とも思える、全てを背負おうとする心情に痛々しさを感じることも少なくない。
自らを律する気持ちを支えきれず、立っていられなくなりそうなときに寄せられる父親、弟との家族愛修復の展開もまたうるっとくる。
またしてもエドガー賞候補となった本作、現地ニューヨーク・タイムズに絶賛のコメントを寄せたのはデニス・ルヘイン。
これ以上にない程の適評者。
あー、ルヘインも読みたくなってきたー。
このミス2025年度版7位。 -
Posted by ブクログ
アメリカ南部の田舎町チャロン郡で保安官を務める黒人タイタス・クラウンが主人公。ある日、町の高校で人望厚く評判の良い教師ジェフ・スピアマンが被害者となる銃乱射事件が起こる。犯人は高校の卒業生である黒人青年ラトレル。彼は現場に駆けつけたタイタスを長とする保安官チームによって射殺される。ラトレルは殺される直前、妙な言葉を口にする。「先生の携帯を見ろ」スピアマンの遺品の携帯電話のデータを探ると、町の子どもたちが被害に遭う凄惨な連続殺人事件が明らかに。加害者は3人。ラトレル、スピアマン、そして狼の面を被った謎の人物。タイタスは事件を追う……。
コスビーやっぱり面白い!最初から最後まで追い詰められるような焦燥感、緊迫感。ページを捲る手が止まらない。
人種差別根強いアメリカ南部で黒人が保安官を務めるという難しさ。小さな町に蔓延る差別、暴力。息苦しい。
今作は宗教もテーマに絡み、聖書からの引用がピンとこないところも多かったが、それを抜きにしても面白かった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレボーレガードは車の修理工場の経営者であり、凄腕の運転技術を持つドライバーでもある。
生活は厳しい。
同業者に客は奪われ、子どもたちはお金がかかる年頃だ。
このままでは取引先への支払いもできず、破産に追い込まれそうな状況で、一攫千金の仕事が舞い込む。
ストーリーはシンプル。
だが、読ませる。理由は登場人物たちが、欲望に満ちた、正直な人間の姿として描かれているからだろう。
ボーレガードは父親の残像に縛られ、社会的にも真っ当な能力があるにも関わらず、犯罪に手を染める。
なぜなら「金」が必要だからだ。
このままでは修理工場は倒産し、子どもたちに良い教育を受けさせてやれない。
では、どうして犯罪なのか?
これがボーレガードの性(さが)として描かれる。
ボーレガードだけでなく、ロニーや他の登場人物たちも「金」に人生を狂わされていく。
本当は貧乏から脱したかっただけなのに。
幸せを誰よりも欲するが、その手の入れ方を誤った男たちの寂しい物語でもある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ・あらすじ
アメリカヴァージニア州が舞台。
未だ人種差別が色濃く残る南部の田舎町チャロン郡で保安官をしている元FBI捜査官タイタス。
ある日高校で銃撃事件が起こる。
加害者の黒人男性はその場で射殺されるが、被害者の携帯電話にあったSDカードから加害者と被害者、そして狼のマスクを被った男たちが黒人の少年少女達を拷問殺害しているスナッフフィルムが発見される。
・感想
流石のコスビー、面白くってあっという間に読み終わってしまった。
1970〜80年代の話なのかと思いきや2000年代が舞台ということで少し驚いた。
南部の人種差別というのはここまで根深いものなんだと些細な描写で実感させられた。
私はアメリカ南部には行った事ないし小説やドラマでしか触れたことがないから勝手な憶測?だけど2000年代にはもうちょっとマシになっているかと思ってたわ。
法律に則り公平・公正であるために常に自分を厳しく律しているタイタスだけど、その信念のためにどの立場の人間からも煙たがられていたり…。
ずっと自分を律してきていたからこそ、最後チャロン郡を旅立つ時に【南部の反逆者 ジョー】という差別の象徴である銅像を引きずり倒して笑う描写にはとても爽快感があった。
タイタスには穏やかな余生(?)を送ってほしい…。
犯人予想に関しては邪道な方法(登場人物一覧の消去法。「こいつ登場人物欄にいる割に全く話に出てこないな?」とか思いながら)絞り込んで読んでたw
犯人の家に突入するシーンから最後の戦闘シーンまでは手に汗握る描写で痛々しくもハラハラしっぱなし…犯人発覚の段階で残りページがほぼ無かったからどう決着させるのかと思ってたけどサクサク進んだ。
南部の強烈で強固な信仰心は私みたいなふんわりテキトーな信仰心(無宗教とは思ってない)しか持ってない人間にはちょっと理解できないところもある。
だからタイタスの「犯人を神格化してはいけない」「悪魔も神もなくただの人間」だというリアリストな部分は読んでて共感した。
コスビー作品はまだ黒き荒野の果てが未読なのでこっちも早く読みたい。 -
Posted by ブクログ
S・A・コスビーが描く物語の主人公はやっぱりカッコいい
本作の主人公はヴァージニア州の群保安官タイタス
タイタスは就任一周年の記念日にショッキングな銃撃事件に巻き込まれる
そして、そこから凄惨な殺人事件が続いていく
連続殺人事件だけではなく、南部の人種差別問題も大きくのしかかってくる
奴隷制が廃止されているこの地でも今だに差別意識は残っており、白人至上主義も勢力を伸ばしている
タイタスは保安官であり黒人であるという二重の制約を受けながら難しい捜査に臨んでいく
そんなタイタスの一番の武器は信じる気持ち
「おれは怖くない。心配はしているけど、怖くはない。犯人を必ず捕まえることがわかっているから。おれは自分と同じくらい部下たちを信じている」
だけど、ほかの誰を信じるより、自分を信じて突き進むタイタスがカッコいい! -
Posted by ブクログ
一切容赦のないグロ描写、緊迫感のある展開、まるで海外ドラマを見ているかのような満足感‼︎
近年、日本でも田舎での閉塞感や近所問題について話題に上がることが多いが、本作の舞台であるヴァージア州チャロン郡はその比ではない。
黒人差別が根深く残る地域で黒人初の保安官として暮らす主人公タイタスは、様々な人々に囲まれながらも冷静沈着で良きリーダーとして働く一方で誰にも話していない秘密に対して罪悪感を抱えて生きており、今回の猟奇的な事件を追っていく中で少しずつ心が蝕まれていくことになる。
タイタスに救いはあるのか、次は誰が殺されてしまうのかとヒリつきながら読んでいたが、非常に満足のいく結末だった。 -
Posted by ブクログ
主人公は、犯罪に絡む逃走を請け負う元プロフェッショナル・ドライバーで、今は堅気の自動車修理工場の経営者だ。経営は苦しく、昔の仲間から持ち込まれた宝石店強盗の仕事に絡めとられていく。強盗に入った宝石店が組織暴力と関連があったことから、主人公は泥沼のような悪と暴力にはまっていく。
主人公の父親から続く暴力性が立ち切れず、彼の子供まで悪の素養に魅入られたように染まる。一見、暴力の世界から縁が切れたように見えたが、暴力の血は濃く、きっかけさえあれば見る間に増殖していく。
主人公の苦悩や暴力のリアリティが群を抜き、物語に引き込まれる。主人公が運転する車のように、スピード感をもったまま終盤を迎えるが、決してハッピーエンドではない。
人の中にある暴力性を考えさせられる秀作だと思う -
Posted by ブクログ
先日読んだ『頬に哀しみを刻め』があまりに良かったので、その興奮が冷めないうちに前作の『黒き荒野の果て』に手を出した。期待通り、とても良かった。
作品の根底に流れるものは『頬に哀しみを刻め』と変わらない。主人公バグことボーレガード・モンタージュは、『頬に〜』の主人公アイクと同じく過去に犯罪を犯した黒人男性で、裏社会の「走り屋」のようなことをしていた。現在は中古車修理工場を営み、問題を抱えつつも、家族を愛している。しかし、抱えていた問題が徐々に大きくなり、大金が必要となったボーレガードは、かつての裏社会の仕事に復帰する。仕事を持ちかけてきた相手が信用のおけない男だとわかっていても、選択の余地はなかったのだ。そして、事態は思わぬ展開を見せ、ボーレガードは窮地に立たされていく。
ボーレガードは、自分が決して正しい人間ではないことを認識している。怒りに我を忘れてしまうことに苦しみつつ、裏社会の水が自分には合っているという事実から目を背けようとしている。彼と友だちになりたいとは思わないが、彼の抱える苦しみは読む者に強く訴えてくるものがある。
本書の白眉は、何といっても走り屋であるボーレガードのカーチェイスのシーンだろう。私はこれまで、これほどまでに鮮烈かつスピード感のあるカーチェイスを本で読んだ経験がない。ぜひ本書を手にして、疾走感満載のシーンが脳内で再生されていく驚きを味わってもらいたい。