村上雅郁のレビュー一覧
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とある中学校の生徒たちの友情を描いた短編集。人間だから、喧嘩もするし、嫉妬もする。些細なことですれ違い、それが長い間解消されなくて、ぎこちないままになってしまう。そんな風にもつれた糸を、外から解きほぐしてくれる人がいたら…。
各話に共通して登場する黒野くんが、その役割を果たす。他人のいざこざに突然首を突っ込んでくるお節介かと思いきや、話を聞くだけ、ちょっと背中を押してみるだけ、というつかずはなれずの微妙な距離感を保つ黒野くん。
「安心していい。困ったことは起こらない。」
根拠がどこにあるのか分からないけど、そんな無責任な言葉でも、誰かの大きな支えになる。みんな、黒野くんの存在に助けられている。 -
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知識は暗闇を照らす光
6年生の朱理の大切な友達は、転校してきた理緒だ。ある日、理緒が父親の心理的虐待に悩んでいることを知った朱理は、大人たちに助けを求めようとするが……。知ること、おこること、たたかうこと、そして言葉の大切さを描いたお話。
「どうせわかってもらえない、じゃダメなんだ。
わたしはわかってもらわなきゃいけない。」
子どもに読ませるには重たすぎるかもしれないと躊躇する気持ちが芽生え、容易に勧められないが、虐待などに直面している子やその友達のリアルはこの物語に描かれているとおりなのかもしれない。
子どもの言葉に心と耳を傾けようとしない大人に、なんとかして気持ちを伝えようとする -
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胸がぎゅうぎゅうと苦しくなって読んでいる間に何度も泣いたけど、朱理の掲げた祈りがきちんと周りの大人にも助けたかった『りぼんちゃん』本人にも届いてよかった。
どうせ誰にも分かってもらえない、誰にも助けてもらえないとすべてを投げ出したくなることは大人になった私にでも日々色んな場面で起こるし、
それを『自分はまだ子どもだから何もできない』『子どもたの話なんかだれも信じてくれない』と、行動するたびに打ちのめされてしまう朱理の悔しさや虚しさはどれほどのものだったか。それでも最後まで大切なひとと、大切なものを手放さなかった彼女の強さが燃える松明のように、灯台の明かりのように美しく頼もしい。 -
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新船中学校を舞台とした連作短編で、大袈裟な話はなく、だからこそ読む人が登場人物の誰かに共感できるような内容だと思います。
「自分もこんな事に傷ついた」
「自分もこんな事で傷つけたかも」
と懐かしんだり反省したりしながら読みました。
「タルトタタンの作り方」で
「ぼくらは自分のままでいたいだけ。そうあるように、ありたいだけ。
それを、関係のないだれかに、勝手なこと、言われたくなかった」
という言葉を、ヒリヒリするような中学時代を送っているみんなに送りたいです。
カシワイさんの繊細で軽やかな絵も作品に合っていて感情移入しやすかったです。
この作品が好きな人には村上さんの「キャンドル」もとても -
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ネタバレ二つの世界に生きる香奈多(かなた)と瑚子(ここ)。
香奈多が語るパートと、瑚子が語るパートが交互に出てきて物語が進んでいくが、どこかちぐはぐな印象を受ける。
展開するごとに、その謎が判明していくのだが、過去の話の伏線回収と、これからの二人の未来の話のどちらもが温かくてホッとした。
かなしいことがあっても、かなしいだけで終わらせない。そんな決意が二人の中に共通している。
それは香奈多のお母さんの言葉でもある。
「かなしいのは、いっしょにいられたことが幸せだったからなんだって。だからさだからさ、そのかなしいのは、パパが最後にくれたプレゼントなの。すっごく大切にしないといけないものなんだって。」