村上雅郁のレビュー一覧
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ネタバレ題名からは意外なほど、根が深い問題が書かれている。
理緒ちゃんのように、身体への暴力とは違うかたちで虐待されている場合のほか、実際に体罰を受けて命を落とした子供の報道も後を絶たない。
助けて、と声を上げられない子。
悪いのは自分だと思い込んでしまう子。
そしてその場にいるはずの、被害者でもあり加害者でもある別の大人の声が届けられる方法はないのだろうか。
朱理にとってのおばあちゃん、理緒にとっての朱理みたいな存在が、当たり前にあればいいのに。
VDやストーカーが、相手やその家族を殺してしまう事件を見るにつけ、人間の心の弱さや難しさを実感する。
暴力が虐待の連鎖であるなら、個人の問題ではなく、 -
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早川世詩男さんのかわいい表紙のイラスト、そして『りぼんちゃん』というかわいいタイトル。りぼんのかわいい女の子のお話と思っていたが裏切られた。良い意味で。少女たちの一人称がうち、というところにはひっかかりがあったが、(うちってそもそも関西の方言な気がするので)内容はすごく、社会派。背が低くて赤ちゃん扱いされる主人公の朱理と転校生理緒の友情の物語。朱理は物語を書いていて、自分を赤ずきんちゃん、理緒をりぼんちゃんとして登場させている。ある日、朱理が物語を書いていることを理緒に話したところ、理緒が「りぼんちゃんはオオカミと暮らしている」と言ったところで、りぼんちゃんこと理緒の抱える闇が少しずつ明らかに
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ネタバレ可愛らしい表紙からは想像がつかない、
「わざわい」という「自分ではどうしようもできない悪いもの」をオオカミになぞらえて語られる物語。
終盤の怒涛の展開には涙が止まりませんでした。
いや、、すごかった。
すごくて言葉にならん。
前半の赤ちゃん扱いされる主人公のくだりが、
いやというほど効いてくるんですよ、、後半。
いやほんと、ものすごいです。
大人の不在が気になるお話が多いなか、
最終的にはきちんとまわりの大人が機能します。
はあ、安心。ほっとした。
現実もこうでありますように、
公的機関で公的な支援がうけられますように、
まわりの大人が、困っている誰かをきちんと助けてあげられますように -
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第1回未来屋アオハル文学賞、大賞受賞おめでとうございます!
仕事柄、こういった賞の作品はちゃんと読まないとね。と、芥川賞直木賞がなかったおかげで謎の余裕が生まれている(積んでる本は多いくせにね!)。
本作はif(イフ)がキーワード。いくつもの意味が込められたタイトルになっていた。
主人公はカナタとココの二人で、それぞれが交互に語り手となる構成。最初の方からあれ?これは?と気になる矛盾が出てきて引き込まれる。
読書慣れしていない人でも、それぞれの語りが短くまとめられているので読みやすいと思う。何も考えずに読んでいると、中盤でびっくりするかも。そんな構成のうまさがあった。
読後感もすごくよくて -
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とある中学校の生徒たちの友情を描いた短編集。人間だから、喧嘩もするし、嫉妬もする。些細なことですれ違い、それが長い間解消されなくて、ぎこちないままになってしまう。そんな風にもつれた糸を、外から解きほぐしてくれる人がいたら…。
各話に共通して登場する黒野くんが、その役割を果たす。他人のいざこざに突然首を突っ込んでくるお節介かと思いきや、話を聞くだけ、ちょっと背中を押してみるだけ、というつかずはなれずの微妙な距離感を保つ黒野くん。
「安心していい。困ったことは起こらない。」
根拠がどこにあるのか分からないけど、そんな無責任な言葉でも、誰かの大きな支えになる。みんな、黒野くんの存在に助けられている。