グレゴリー・ケズナジャットのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
グレッグさん(あえてそう書かせていただく)の小説トラジェクトリーを読んだ時に、「外国出身なのにこんなに日本語が堪能なんてすごい!」という(意図せず日本語を母国語とする者の上から目線な感じの)文脈で見ていた自分が恥ずかしくなるくらい、グレッグさんが日本の言葉や文化を何十年も熱心に研究してきたということがよく分かりました。少なくとも彼にとって日本語は「ビジネススキル」というようなレベルのものではなく、生きることそのものに直結しているように見えます。
以下の抜粋の部分を読むと、「外国出身の人にとって日本語がどのくらい難しいか?」などという個人の問題よりずっと高次の、「日本語を操る外国人」として見ら -
Posted by ブクログ
静かで、美しく、柔らかな光に灯されたような文章。
著者の作品には実は触れたことがなく、装丁の良さと言葉では表せない自分の直感で手に取った1冊だったが、とても大切な書となった。
帯分で強調されているような「英語と日本語を行き来する英語母語話者の作家」だから描くことのできる英語と日本語の差異、が綿密に記されている訳ではない、と私は感じた。ここにあるのは、言葉と世界に対して心を開き、言葉のもどかしさと世界の圧倒的存在の狭間で往生する著者の、繊細で知的な観察日記、のように思える。勿論、彼が英語と日本語の二言語と触れているからこそ見えやすくなる情景もあるのだが、日本語しか話すことのできない日本語母語 -
Posted by ブクログ
初めは『アメリカ出身作家が端正な日本語で描く、新たな「越境文学」』という話題性に惹かれて、半ば興味本位で手に取りました。
読んでみて圧倒されたのは、やはり第二言語として身に付けたというのが信じられないほどの日本語表現の見事さでした。日本語ネイティブでもこれほどの文章を書ける人はそうそういません。
日本人が英語を学ぶより、欧米の出身者がひらがな・カタカナ・漢字が入り混じる日本語を身につける方がよほど難しそうですが、世界規模の話者数で見れば「辺境の言語」ともいえそうな日本語を身につけるためにどれほどの時間と努力を注ぎ込んだのかと考えると、それだけでも尊敬に値します。
物語ももちろん面白かった -
Posted by ブクログ
ネタバレ名古屋という土地、英会話教室、講師、という設定が私自身に馴染み深いもので、これまでのことを思い出しながら読んだ。
ブランドンとアポロ計画の宇宙飛行士たちとの対比が興味深かった。
確固たる目的地へと向かうために、住み慣れた場所(地球)から離れた人たち。
それに対して、中間地点にいるような気がするが、最終地点がなく宙ぶらりんなブランドン。
どこに行っても同じで、「自分」からは逃げきることはできない。
そんな終わりのない閉塞感をひしひしと感じた。
作中では、英会話教室の生徒・カワムラさんの提出物と思われる日記が挟まれる。
その日記は教室でのカワムラさんの態度とはかなりギャップがあり、彼の中の柔