グレゴリー・ケズナジャットのレビュー一覧

  • 言葉のトランジット

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    いろいろな言語を操ることができる方には尊敬しかない。
    畏敬といっても良い。
    況して話すだけでなく、
    考えたことをまとめ、
    文章として出版するとなると、
    もう異次元で意味が分からない。

    言葉は(少しの物騒さを気にしなければ)
    ココロを切り分けるナイフのようなものだと思う。
    情報のやりとりだけなら他言語でもたぶん問題ない。
    だけれど、自分は、自分のココロを日本語以外の言語で
    分けられる気がしない。
    なんなら関東弁でも難しい。

    そんな他言語による心象風景の再構築のようなところも
    言語化されて覗くことができるエッセイ集です。

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    2025年11月07日
  • トラジェクトリー

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    表題作。面白いと思ったのは、悪役だったり鼻つまみ者的な扱いをされがちな中高年男性カワムラさんが、その内面に何かを秘めた人間としてミステリアスな性格付けをされ、主人公の英会話講師と対になる存在として描かれているところ。二人がレッスンでなぞるアポロ11号の挿話も、月という目標へ向け放たれた軌道上で営まれる宇宙飛行士たちの何気ない日常会話に、登場人物の諦めと希望がないまぜになった感情が重ねられる。
    故郷に根を張るでもグローバルに飛翔するでもなく、たまたま今ある場所に宙づりにされているような主人公の寂寥感が伝わってくる。


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    2025年10月15日
  • トラジェクトリー

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    日本で働いている白人男性の物語。表題作は英語学校のネイティブ講師、もう一編の『汽水』は日本の大学の職員が主人公です。両方とも大きな展開もなく、淡々とした内容です。

    どちらも外国人が日本で就職して働く違和感といったものを取り上げています。日本人から見ればマイノリティを取り扱っていると思うのですが、なんか違った感じかしました。うーん、上位者からみた孤独感といった感じでしょうか。

    ただの中年男性の悩みが書かれていようでもあり、なんか視点が違う、なんとも複雑な読書体験でした。

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    2025年10月14日
  • 鴨川ランナー

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    新感覚の小説だった。
    外部の人間が既存のコミュニティに馴染もうとする際の、「歓迎はしているけど、あくまで貴方は外の人間だよ」という圧をここまで正確に表現できるものかと驚いた。

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    2025年10月13日
  • 言葉のトランジット

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    言葉は普段使うことを深く意識し過ぎないけど、環境が変わったり、言語が変わる時初めて改めて意識する。ツールでもあるけど、それ以上に思考そのものでもある。
    言葉のことを考える時に使うのは結局言葉。言葉の場所も含めて言葉。

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    2025年10月02日
  • トラジェクトリー

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    トラジェクトリー(trajectory)は、一般的に「軌道」「進路」「方向性」を意味する言葉。

    作者自身を感じるられる、静かなモノローグが好きだ。まだ40才を越えたばかりの彼はどこを目指すのだろう。

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    2025年10月02日
  • トラジェクトリー

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    初めは『アメリカ出身作家が端正な日本語で描く、新たな「越境文学」』という話題性に惹かれて、半ば興味本位で手に取りました。

    読んでみて圧倒されたのは、やはり第二言語として身に付けたというのが信じられないほどの日本語表現の見事さでした。日本語ネイティブでもこれほどの文章を書ける人はそうそういません。

    日本人が英語を学ぶより、欧米の出身者がひらがな・カタカナ・漢字が入り混じる日本語を身につける方がよほど難しそうですが、世界規模の話者数で見れば「辺境の言語」ともいえそうな日本語を身につけるためにどれほどの時間と努力を注ぎ込んだのかと考えると、それだけでも尊敬に値します。

    物語ももちろん面白かった

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    2025年10月01日
  • 鴨川ランナー

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    知らない土地や言葉への憧憬というものは往々にして、手に取れる現実になればその神秘性を失う。失望もする。でも最初から神秘などなかったとしたら?四条大橋から見える鴨川の流れは昨日も明日も変わらずそこにあるとしたら?

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    2025年09月28日
  • トラジェクトリー

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    ネタバレ

    名古屋という土地、英会話教室、講師、という設定が私自身に馴染み深いもので、これまでのことを思い出しながら読んだ。

    ブランドンとアポロ計画の宇宙飛行士たちとの対比が興味深かった。
    確固たる目的地へと向かうために、住み慣れた場所(地球)から離れた人たち。
    それに対して、中間地点にいるような気がするが、最終地点がなく宙ぶらりんなブランドン。

    どこに行っても同じで、「自分」からは逃げきることはできない。
    そんな終わりのない閉塞感をひしひしと感じた。

    作中では、英会話教室の生徒・カワムラさんの提出物と思われる日記が挟まれる。
    その日記は教室でのカワムラさんの態度とはかなりギャップがあり、彼の中の柔

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    2025年09月17日
  • 鴨川ランナー

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    「開墾地」のグレゴリー・ケズナジャットが、小説家としてデビューした京都文学賞受賞作。
    英語指導助手として来日した彼が、日本の文化や日本語とどう関わってきたのか、内面の深い部分を感じさせてくれる作品だった。
    「言葉」を大切にする繊細さは日本人も学ばなければと思う。

       阪神が優勝をプレゼントしてくれた誕生日に

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    2025年09月07日
  • 開墾地

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    サウスカロライナ出身のアメリカ人。英語指導助手として日本に来て、大学の准教授にまでなった。日本語で小説を書く。
    本作は芥川賞候補作、のちに2度目の芥川賞候補になっている。
    自身を題材にした作品だが、帰国してイラン出身の義父と過ごす時間の静謐なこと。自分とは何かと考える主人公に惹きつけられる。
    ネットで見た彼の顔の表情にも納得した。

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    2025年08月22日
  • 鴨川ランナー

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    日本に住む、比較的身近だけれど、今まで気づくことのなかった、自分(「きみ」「ボク」「I」)を示された気分。文章はとても読みやすい。表題作もいいが、もう一つの「異言」の方が、主題の凝縮ぶりや話の構成の巧みさにおいて、よくできているように思う。

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    2025年05月06日
  • 鴨川ランナー

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    高校から日本語学習を始めたアメリカ人が巧みに日本語を操り素晴らしい小説を書いたという素朴な驚き。所々の単語の選択に独特のセンスを感じる。そして来日して働く外国人の心の葛藤を知り、これまで自分が外国人に対してとっていた言動を振り返ると心が痛い。はっとする角度から描かれていて得るものがとても大きかった。

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    2023年11月05日
  • 鴨川ランナー

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    開墾地で一目惚れしたグレゴリー・ケズナジャットさんの処女作。「鴨川ランナー」は僕のクソ田舎の地元にもいたALTの先生が感じたであろういろんな気持ちを代弁してて、身悶えしながら読みました 笑
    そして「異言」では結婚式で毎回感じる「いや、この方このためにいらっしゃるの?」というなんちゃって?神父さんのあの違和感を思い出す。慣れなのか、諦めなのか、前進なのか、、、きっと僕も将来こんなふうに感じるのだろうか。外国人の著者が日本語で書く「言葉」に対する物語、本当に大好きです。そして、、、これでいいのか日本?

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    2023年10月31日
  • 鴨川ランナー

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    めっちゃ好きな作品。
    とても乾いているのに、どこか突き放されている。浮遊して、接地していない感じがたまらない。

    文化や言語、この日本について考えてしまった。

    2編目の「異言」はさらにきつい話だった。
    日本人の英語に対する浅ましさが全開で。

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    2023年08月26日
  • 開墾地

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    ネタバレ

    アメリカの葛のはびこるイメージがみっしりとしていてしんどかった。中近東の遠さが何となく想像がつかなくて。

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    2023年03月28日
  • 開墾地

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    今日読めて良かった。今読めて良かった。
    一生忘れない本にる気がする。
    生家を離れた経験がある人はぜひ読んでほしい。新天地で感じる違和感、久々の帰省で感じる違和感、全部がここに入ってる。自分の今の状況にもマッチして、なんで言葉にこんなにパワーと魅力があるのかがよりわかる。

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    2023年02月28日
  • 鴨川ランナー

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    面白かった。
    「鴨川ランナー」と「異音」の2短編構成。

    私は京都に大学の時と社会人になってからも少し住んでいたので、街並みの情景が良くイメージできてストーリーに入りやすかった。著者の文章も歯切れが良く、テンポよく読み進めることが出来る点も◎

    外国語を習得していく中で、言葉や表現の意味は分かってもどこか上辺をなぞっただけの会話になってしまう所、違和感は自分も英語でコミュニケーションを取る時に感じる。

    でも、会話の深みって言語スキルも関係するがその当事者たちの信頼感?というか関係の深さが大きいのでは無いかと思いつつも、続く「異音」で、小百合とのやり取りからガイジンとして見られているという壁も

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    2023年01月02日
  • 鴨川ランナー

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    ネタバレ

    『異国で外国語を習う人、教える人のためのバイブル』

    日本語を練習したいのに、英語で話しかけられる。
    自分では決して使うことのない英語の言い回しを教えさせられる。
    そんな外国語学習者、教育者の葛藤を、アメリカ出身の作者が、日本語で鮮やかに描ききった作品。

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    2022年12月06日
  • 鴨川ランナー

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    鴨川ランナー読んだ! 福井の地名がこんなに出てくる小説は画期的やなぁ。福井出身としてうれしい。国語教科書に載せるには向かなそうだけども複数の言語を生きるむずかしさみたいな感情を想像できた。ALTの視点は考えたことなかった。とりあえず面白かった。

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    2022年04月06日