グレゴリー・ケズナジャットのレビュー一覧

  • 鴨川ランナー

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    日本にいるいわゆる外国人(白人)に、知らず知らずの内に求めてしまうステレオタイプなイメージや行動。それに縛られてしまう外国人。
    英語が母国語の人の、第一外国語の選び方が羨ましかった。日本では、否応無しに英語を学ばなければいけない。必要なことだが、全員が学びたいと思って授業を受けている訳では無い中、モチベーションを保って勉強を進めるのは大変だなと思った。

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    2022年11月30日
  • 鴨川ランナー

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    多分に実体験をベースに構築された物語であろうことは、容易に推察できる。
    外国人が母語ではない日本語でしたためた小説、ということで、それを念頭に置いて意地悪な読み方をすればツッコミどころは皆無ではないが、そういった環境がまったく気にならずに内容に没入できるほど、文章力のレヴェルは高く、まず素直に敬服する。
    そして中身それ自体が、日本で暮らす日本人である我々読者に投げ掛けてくるボールもまた、ずっしりと重く、キレ味鋭い。
    日本に滞在するアメリカ人は、例えば欧米における一部のアジア人や黒人のように、可視化しやすい典型的な差別の対象となることはあまりないだろうが、当人にとっては、違和感や疎外感を抱くこと

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    2022年07月29日
  • 鴨川ランナー

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    ネタバレ

    日本にいてガイジンの役割を期待されるもどかしさを感じられて興味深く読めました。外国人から見た日本文化というのはコミックエッセイでノリのいいテンポで読むことが多かったので、こういう文学として読むのは初めて。「きみ」という主語が、その触れそうで触れられないもどかしさをさらに増大させて良かったです。
    京大生の主人公が意中の女子を追いかけて街中を徘徊するような物語、ってアレですね、夜は短いやつですね。読まれたんですねーと嬉しくなりました。

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    2022年05月27日
  • 鴨川ランナー

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    文章が綺麗!
    翻訳の本とは思えないくらい。
    日本にやって来た外国の人々も、どこかもどかしいジレンマを感じながらも過ごしているんだな。と思える一冊。
    言葉の魅力とは?母国語の大切さとは?
    を、教えてくれるわけではないが、
    異国に行って初めてわかるような感覚がスッと胸に入ってくるような一冊でした。

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    2022年05月21日
  • トラジェクトリー

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    表題の芥川賞候補作と、「汽水」という短編の、二編。

    どちらも根底としてあるのは、自らの「居場所」への問いかけのような気がするが、「トラジェクトリー」は淡々と進み、淡々と終わる。
    アポロ11号を鍵に、定年した日本人とアメリカ人英会話講師が交錯……というよりすれ違った感じで。
    古き良きアメリカのイメージと、混沌としたここ10年ほどのアメリカが交錯するとも読めそうだが、どうも私の読解力の無さのせいか、あっさりと終わりすぎて。

    「汽水」の方が、個人的には好みだ。
    たくさんの現代の小ハーンの1人として、何をどう感じるのかが明確に感じられた。

    イランにルーツを持つアメリカ人作家が、日本語で書いたとい

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    2025年12月06日
  • トラジェクトリー

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    終始落ち着いたトーンで物語が進行する。アメリカ出身の作者が自ら日本語で綴っているということもあり、不思議と頭に浮かぶ情景は邦画のそれだった。これは完全に日本の作品だ。ブランドンとカワムラ、凸凹コンビというにも味気ない2人。ある種、偏屈な2人同士。トラジェクトリー。軌道。アポロ11号。日本とアメリカ。日本人とアメリカ人。否、この場合はアメリカと日本、アメリカ人と日本人といった方が適切か。カワムラにとってブランドンは、かつて憧れたアメリカという国の出身者であり、その当事者であり、街の灯に邪魔をされて見えない望遠鏡だったのだろうか。

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    2025年12月01日
  • トラジェクトリー

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    外から見た日本人の姿や、
    外国籍で日本で働いている人達の目線からみた日本をのぞいているようで新鮮な気持ちで読み進めた。
    でも日本での生活にどこか暗澹とした雰囲気が漂うのは日本が閉鎖的なんだろうかと思いを巡らせたりした

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    2025年11月01日
  • 鴨川ランナー

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    京都で生まれ、アメリカで語学留学&仕事を経験し、今東京で生活をしながらこの本を手に取り、自分がずっと感じていたことが全て書かれていて涙が出そうになった。違ったことはアメリカでは進んで日本語を話してくる人間はほぼいなかったということ。
    著者が経験し感じたように、どこまで上達してもネイティブにはなれない。外国人であるという役割を受け入れ、今日も踊るしかない。御伽話とは遠く離れた場所にあって、近づきすぎると知らぬ間に霧となって消えていくものなんだなと。

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    2025年10月19日
  • 言葉のトランジット

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    タイトルに惹かれて著者プロフィールを覗いてみたら、この方小説家だったのね。それも母語(英語)ではなく日本語で書かれていて、デビュー作は京都文学賞を受賞されているという…!
    帰化こそされてはいないけど、長年日本に在住され、(講義ができるほどの)日本語を駆使されている外国人と接触する機会がないから、新鮮かつ貴重な読書体験となった。

    ジャンルはエッセイ集。
    各エピソードの題材は様々だが、基本的には初来日前後の出来事が克明に綴られていた。
    タイトルにも見られる通り、言語(主に日本語や英語)に関わるエピソードも多い。ただこの方の書き方は、私にはちょっぴり理屈っぽくて、そんな気楽には読めなかったな…

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    2025年09月27日
  • 言葉のトランジット

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    英語と日本語、2言語を操る頭の中が覗けて興味深く、なるほどと納得できる点もうれしい。
    英語も話せる日本人も同じ感覚なのかな、逆パターンもしりたくなる。

    年代は違うのに、同じ世代?って思うほどに親近感が随所に。

    わかりやすい文化論、言語学?などの要素も含まれていて、ジャンルでいうとエッセイ、でも+αな感じです。

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    2025年09月26日
  • トラジェクトリー

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    母語が日本語でない作者が書いて芥川賞候補というのに興味を覚えて読んだ。
    英会話学校のネイティブ講師ってたしかにこんな感じ。日本の若者がもはや英語を勉強することにさしてモチベーションないのもこんな感じかもしれない。都市郊外のショッピングセンターがじわじわ寂れていくかんじとか、ひとり暮らしの中高年男性のたたずまいが身近で。
    他所から来てまた帰っていく者、滞在して別の土地に通過していく者、突然プツリと行方不明になってしまう者、全く別のルートをたどる同級生、みんなそれぞれ理由があったりなんとなくだったり軌跡を描いている途中。
    2篇ともグローバルという言葉が背景に出てくるけど、いまやすっかりイメージが変

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    2025年09月14日
  • トラジェクトリー

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    ネタバレ

    日本で働いている米国人、米国で働いている日本人、世界中を転々としながら働いている人・・・。主人公のブランドンは特に日本に魅力を持って来日したわけではない。知らない心の底では日本の何かに魅せられたのかもしれにが、本人でさえそんなことは分からない。ブランドンが移動した軌跡は地理的には長い。でも、心の軌跡はどうだろうか。あまり移動していないような感じである。というのが表題作の感想。もう1つの「汽水」も似たような感じの作品だ。インターナショナルといったって米国とその他の関係でしかない。日本を忘れること、米国に染まることがグローバル化ではないと思っているので、そこに違和を感じた。

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    2025年09月10日
  • 鴨川ランナー

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    「きみ」という二人称で書かれた文体は、日本語の一人称に当てはめられない主人公を表しているとも思ったし、主人公が受けているような、他者からの「この人はこう(留学生)(観光客)(日本語がわからない人)だろう」という決めつけの視線を読者が主人公に向けているようにも思った。

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    2025年08月31日
  • トラジェクトリー

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    新作、待っていました。
    そして、再び芥川賞候補で。

    今作のタイトルは英語。
    やはり、テーマは日本と海外に住むという視点。
    著者だからの独特の感性が、日本語で気負いなく綴られている。

    2編目「汽水」、小泉八雲が登場するとは・・・
    蒸し暑いこの夏に読むにはピッタリ。

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    2025年08月18日
  • トラジェクトリー

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    文學界2025年6月号のものを読んだ。アメリカ人英語講師の日本でのモラトリアムとその視点を通した平坦な(退屈な)日本の日々。作品内では日記を含めたカワムラさん的なものが日本の象徴なんだろう。

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    2025年07月18日
  • トラジェクトリー

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    芥川賞候補作
    読みながら、不思議と諸行無常が浮かぶ
    読みやすいし共感もできる
    主人公が、自分の祖先が相当変わり者で人間嫌いと考察するところは笑った
    たしかにその通り
    自分の居場所を異国の地でなんとなく探している、母国に帰るのもしっくりこないみたいなモラトリアムをけっこう湿っぽく描いてる

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    2025年07月06日
  • 鴨川ランナー

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    外国の人から見た日本、特に閉鎖的な京都(南丹市、京都市内)の人間関係がつぶさに書かれててとても興味深い。外国から来て日本に馴染もうとする方と、周りと外見が違う人への畏怖と、乏しい語学力のため意思疎通を放棄してしまう日本人のどちらの気持ちもわかる。そして筆者の公正な書き方でその日本人に対してもそこまで嫌悪感を感じない。

    とにかく筆者の日本語、古典文学への造詣が深く凄みを感じる。最初は「きみは〜」から始まる文体がラスト近くになると極端に少なくなるので、あえてこの文章表現を選び日本語の上達していく様子を暗に伝えているのがわかる。
    短編ニ編のうち、後編異口でも日本語と外国語の表現に極限まで悩まされた

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    2025年03月14日
  • 鴨川ランナー

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    著者の、ガイジンとしての疎外感や葛藤が織り込まれた小説。翻訳ではなく日本語で綴られているというのが新鮮。

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    2024年12月01日
  • 鴨川ランナー

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    二人称で描かれた硬質な文体に、筆者と思しき主人公が異郷の地に溶け合うことなくいつまでもストレンジャーであることの苛立ちがうかがい知れる。特に京都はわれわれ日本人でさえ他府県人であれば「よそ者」視されている感は否めない。この作品の視座にこれといった目新しさはなく、辛口なようだが外国人が日本語で書いた作品ということが新鮮なだけのように思える。

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    2024年09月17日
  • 鴨川ランナー

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    言語は本来コミュニケーションのためにあるけれど、この物語のなかで言語は上滑りして、お互いの仲立ちとはなってくれない。主人公のやるせなさが伝染して、ちょっとしょんぼりしてしまった。ていねいで静かな文章。
    非母語で書くとき、思考に変化はもたらされるのだろうか。

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    2023年11月05日