グレゴリー・ケズナジャットのレビュー一覧

  • 開墾地

    Posted by ブクログ

    情景が目に浮かんでくるような描写でとても読みやすかった。
    葛の蔓が繁茂しているのをぼんやりと眺めながらその中から聞こえてくる虫の声を耳を澄ます。
    やがて、多くは語らないけど優しさのある父の声が聞こえてくる。

    ラッセルが2歳の時に母が今の父と結婚したが、7歳で母は出ていく。
    父だけは、それまでと何も変わらず彼と暮らす。
    アメリカ生まれのラッセルとは英語で喋るが、父の言語はペルシャ語だ。
    父が、故郷の家族と話すときは英語を使わない。
    そのことに寂しさを感じるのか、自分だけ家族ではないと思ってしまうのか…。

    国が違えば、ことばも違うという当たり前のことだが、日本から離れたこともなく、身近に日本語

    0
    2023年05月07日
  • 開墾地

    Posted by ブクログ

    短いのに濃厚な90ページだった。故郷、自分のルーツ、居場所。どこにいても落ち着かないフワフワした不安定な気持ちがよく分かる。葛の蔓がどんどん伸びて飲み込んでしまう。故郷って何だろうと思う。

    0
    2023年03月18日
  • 開墾地

    Posted by ブクログ

    芥川賞候補作。

    まず、日本語が母語ではないのに、文学的な文章を書けることがすごいと思う。日本語が母国語の私でもこんな文章書けないと思う。
    「囂(かまびす)しい」とか初めて聞いた。
    読み心地もすごく良かった。

    母語(主人公にとっては英語)を聞いている時、行間が聞き取れてしまうがゆえに不愉快さを感じることがあるというのを、この本を読んで改めて気付いた。

    外資系の会社で働いていた時に、私が英語の行間まで理解できないおかげで、傷ついたりイライラすることなく、コミュニケーションを取れていたことを思い出した。アメリカ人の同僚が、クライアントからの英語のメールにイライラしていて、私がそれを読んでみても

    0
    2023年02月09日
  • 鴨川ランナー

    Posted by ブクログ

    日本にいるいわゆる外国人(白人)に、知らず知らずの内に求めてしまうステレオタイプなイメージや行動。それに縛られてしまう外国人。
    英語が母国語の人の、第一外国語の選び方が羨ましかった。日本では、否応無しに英語を学ばなければいけない。必要なことだが、全員が学びたいと思って授業を受けている訳では無い中、モチベーションを保って勉強を進めるのは大変だなと思った。

    0
    2022年11月30日
  • 鴨川ランナー

    Posted by ブクログ

    多分に実体験をベースに構築された物語であろうことは、容易に推察できる。
    外国人が母語ではない日本語でしたためた小説、ということで、それを念頭に置いて意地悪な読み方をすればツッコミどころは皆無ではないが、そういった環境がまったく気にならずに内容に没入できるほど、文章力のレヴェルは高く、まず素直に敬服する。
    そして中身それ自体が、日本で暮らす日本人である我々読者に投げ掛けてくるボールもまた、ずっしりと重く、キレ味鋭い。
    日本に滞在するアメリカ人は、例えば欧米における一部のアジア人や黒人のように、可視化しやすい典型的な差別の対象となることはあまりないだろうが、当人にとっては、違和感や疎外感を抱くこと

    0
    2022年07月29日
  • 鴨川ランナー

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本にいてガイジンの役割を期待されるもどかしさを感じられて興味深く読めました。外国人から見た日本文化というのはコミックエッセイでノリのいいテンポで読むことが多かったので、こういう文学として読むのは初めて。「きみ」という主語が、その触れそうで触れられないもどかしさをさらに増大させて良かったです。
    京大生の主人公が意中の女子を追いかけて街中を徘徊するような物語、ってアレですね、夜は短いやつですね。読まれたんですねーと嬉しくなりました。

    0
    2022年05月27日
  • 鴨川ランナー

    Posted by ブクログ

    文章が綺麗!
    翻訳の本とは思えないくらい。
    日本にやって来た外国の人々も、どこかもどかしいジレンマを感じながらも過ごしているんだな。と思える一冊。
    言葉の魅力とは?母国語の大切さとは?
    を、教えてくれるわけではないが、
    異国に行って初めてわかるような感覚がスッと胸に入ってくるような一冊でした。

    0
    2022年05月21日
  • 鴨川ランナー

    Posted by ブクログ

    噂通り、面白かった。
    言ってみれば、『不思議の国のアリス』っぷりであり、『千と千尋』っぷりの面白さなのかもしれない。どうです日本て変な国でしょう、ってことじゃなくて、異文化に入っていく時の、入りたさ入れなさ、みたいなものが、あわあわ・いじいじ・じわじわと漂っているのが面白かった。

    0
    2022年02月24日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    アメリカニズムの強い男に憧れながらも
    それを真似ようとしたとき
    戦後民主主義が足を引っ張ってくる
    強い男は戦争を思い出させて
    怖いんだそうだ
    そんなわけで恥を知ってるほうの男たちは
    黙って女の尻にしかれるか
    さもなくば孤独に生きるしかなかったのである
    昭和の良い子たちは
    そういった抑圧のなかで
    ドメスティックな人間関係の頂点に立つことを
    夢見続けてきたんだが
    長い年月を経て屈折したその夢を
    老人から一方的にぶつけられたとき
    若者は困惑しつつもやりすごすしかないだろう
    そういう立場に置かれた英会話講師が
    「トラジェクトリー」の主人公だ
    テネシーから日本の名古屋にやってきたことで
    アメリカの閉塞し

    0
    2026年01月31日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    水の中を漂うような妙な浮遊感を感じたまま読み終えた。
    グローバルとか大仰な言葉が(少なくとも日本では)定着している今。
    日本に来た外国人ってそんな大層な思いは持っていないのかも。

    何となく日本に来た。
    何となく腰が重くて日本からでない。

    0
    2026年01月05日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    第173回芥川賞は該当作なし、と決まったが、候補作は4篇あり、本作はそのうちの1篇である。
    主人公はアメリカの大学を卒業後、確たる目的意識もなく、日本の英会話学校で働く道を選択し、名古屋という東京と京都の中間点に移ってくる。英語を習うはっきりした動機が希薄に思える生徒を相手に教え始めるが、用意した教え方には素直に従わず、自分の好みの主張が強い退職後の大人を相手に変わったレッスンが続けられていく。彼はある日を境に突然来なくなる。理由もわからず、片や同僚も辞めていく意思を飲み会で聞いたり、ふわっとした浮遊感漂う流れの中で・・著者が何を言いたいか、もやっとした内容であった。

    0
    2025年12月28日
  • 言葉のトランジット

    Posted by ブクログ

    大学の先生として日本で暮らす著者が
    日々思うこととか
    アメリカの子供時代のこと
    日本に留学してきた学生時代のこと
    いろいろ綴ったもの。

    言語に関する話もたくさんあるけど
    その合間に書かれている
    「昔住んでいた家に間違えて戻ろうとした」
    「東京の夜の明るさに慣れている友人は
    京都の夜でさえ暗いと感じるようだ」
    なんていう部分が興味深かったかな。

    0
    2025年12月09日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    表題の芥川賞候補作と、「汽水」という短編の、二編。

    どちらも根底としてあるのは、自らの「居場所」への問いかけのような気がするが、「トラジェクトリー」は淡々と進み、淡々と終わる。
    アポロ11号を鍵に、定年した日本人とアメリカ人英会話講師が交錯……というよりすれ違った感じで。
    古き良きアメリカのイメージと、混沌としたここ10年ほどのアメリカが交錯するとも読めそうだが、どうも私の読解力の無さのせいか、あっさりと終わりすぎて。

    「汽水」の方が、個人的には好みだ。
    たくさんの現代の小ハーンの1人として、何をどう感じるのかが明確に感じられた。

    イランにルーツを持つアメリカ人作家が、日本語で書いたとい

    0
    2025年12月06日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    終始落ち着いたトーンで物語が進行する。アメリカ出身の作者が自ら日本語で綴っているということもあり、不思議と頭に浮かぶ情景は邦画のそれだった。これは完全に日本の作品だ。ブランドンとカワムラ、凸凹コンビというにも味気ない2人。ある種、偏屈な2人同士。トラジェクトリー。軌道。アポロ11号。日本とアメリカ。日本人とアメリカ人。否、この場合はアメリカと日本、アメリカ人と日本人といった方が適切か。カワムラにとってブランドンは、かつて憧れたアメリカという国の出身者であり、その当事者であり、街の灯に邪魔をされて見えない望遠鏡だったのだろうか。

    0
    2025年12月01日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    外から見た日本人の姿や、
    外国籍で日本で働いている人達の目線からみた日本をのぞいているようで新鮮な気持ちで読み進めた。
    でも日本での生活にどこか暗澹とした雰囲気が漂うのは日本が閉鎖的なんだろうかと思いを巡らせたりした

    0
    2025年11月01日
  • 鴨川ランナー

    Posted by ブクログ

    京都で生まれ、アメリカで語学留学&仕事を経験し、今東京で生活をしながらこの本を手に取り、自分がずっと感じていたことが全て書かれていて涙が出そうになった。違ったことはアメリカでは進んで日本語を話してくる人間はほぼいなかったということ。
    著者が経験し感じたように、どこまで上達してもネイティブにはなれない。外国人であるという役割を受け入れ、今日も踊るしかない。御伽話とは遠く離れた場所にあって、近づきすぎると知らぬ間に霧となって消えていくものなんだなと。

    0
    2025年10月19日
  • 言葉のトランジット

    Posted by ブクログ

    タイトルに惹かれて著者プロフィールを覗いてみたら、この方小説家だったのね。それも母語(英語)ではなく日本語で書かれていて、デビュー作は京都文学賞を受賞されているという…!
    帰化こそされてはいないけど、長年日本に在住され、(講義ができるほどの)日本語を駆使されている外国人と接触する機会がないから、新鮮かつ貴重な読書体験となった。

    ジャンルはエッセイ集。
    各エピソードの題材は様々だが、基本的には初来日前後の出来事が克明に綴られていた。
    タイトルにも見られる通り、言語(主に日本語や英語)に関わるエピソードも多い。ただこの方の書き方は、私にはちょっぴり理屈っぽくて、そんな気楽には読めなかったな…

    0
    2025年09月27日
  • 言葉のトランジット

    Posted by ブクログ

    英語と日本語、2言語を操る頭の中が覗けて興味深く、なるほどと納得できる点もうれしい。
    英語も話せる日本人も同じ感覚なのかな、逆パターンもしりたくなる。

    年代は違うのに、同じ世代?って思うほどに親近感が随所に。

    わかりやすい文化論、言語学?などの要素も含まれていて、ジャンルでいうとエッセイ、でも+αな感じです。

    0
    2025年09月26日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    母語が日本語でない作者が書いて芥川賞候補というのに興味を覚えて読んだ。
    英会話学校のネイティブ講師ってたしかにこんな感じ。日本の若者がもはや英語を勉強することにさしてモチベーションないのもこんな感じかもしれない。都市郊外のショッピングセンターがじわじわ寂れていくかんじとか、ひとり暮らしの中高年男性のたたずまいが身近で。
    他所から来てまた帰っていく者、滞在して別の土地に通過していく者、突然プツリと行方不明になってしまう者、全く別のルートをたどる同級生、みんなそれぞれ理由があったりなんとなくだったり軌跡を描いている途中。
    2篇ともグローバルという言葉が背景に出てくるけど、いまやすっかりイメージが変

    0
    2025年09月14日
  • トラジェクトリー

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    日本で働いている米国人、米国で働いている日本人、世界中を転々としながら働いている人・・・。主人公のブランドンは特に日本に魅力を持って来日したわけではない。知らない心の底では日本の何かに魅せられたのかもしれにが、本人でさえそんなことは分からない。ブランドンが移動した軌跡は地理的には長い。でも、心の軌跡はどうだろうか。あまり移動していないような感じである。というのが表題作の感想。もう1つの「汽水」も似たような感じの作品だ。インターナショナルといったって米国とその他の関係でしかない。日本を忘れること、米国に染まることがグローバル化ではないと思っているので、そこに違和を感じた。

    0
    2025年09月10日