グレゴリー・ケズナジャットのレビュー一覧

  • 開墾地

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    イラン人の養父との血縁に因らない関係に、「そして、バトンは渡された」を思い出した。でもこの物語の中心にあるのは家族ではなく、言語。飛び交う言葉とその言葉が纏うものから意識せずとも意味を読み取ってしまう母語と、意識しなければ音の連なりでしかなくなる言語のことが、繰り返し語られる。主人公にとって、母語は愛しかったり、優しかったりはせず、かえって自身を閉じ込めるものに感じていて、その感じ方が新鮮だった。
    訥々としたふたりのやりとりが、ちょっとせつなくて、おだやかで、気持ちよかった。
    蔓延る葛の葉、越境者のメタファーなんだろうか。

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    2023年11月05日
  • 鴨川ランナー

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    あとから習得した言葉を使って、ここまで書けるんだ!という感心もさることながら、小説として完成されたストーリーがすんなり入ってくる。京都は学生時代に通った場所でもあり、少しだけ懐かしみを覚えながら読んだ。

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    2023年06月12日
  • 開墾地

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    英語圏で育って日本語の世界で生活する著者
    アメリカに帰り、父親との暮らしの中で
    父親と従兄弟が話すペルシャ語を不思議な感じで
    聞いた子どもの頃を思い出す
    英語が十分に話せなくて、いろんな対応をされる父親
    そして、言葉の間で生きる自分
    祖国と言語、微妙な、そして繊細な表現

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    2023年05月07日
  • 鴨川ランナー

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    「僕」ではなく「君」という表現。外国人からみた日本。そういう捉え方、感じ方もあるのかと、新鮮ではあった。

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    2023年05月02日
  • 開墾地

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    これは何とも、想像以上に繊細な話だと感じさせられて、共に日本生まれの日本人である、両親に育てられた私には、その気持ちを推し量ることが、きっと出来ないであろうと痛感させられ、今回、フィクションとはいえ、こうしたケースも世界にはあるのだろうと窺い知ることが出来て、良かったと思う。

    本書の主人公「ラッセル・シーラージ」は、アメリカ生まれのアメリカ育ちで、彼が二歳の時、母親が、ペルシャ語を話す現在の父親と結婚したものの、七歳の時に母親が出て行ってしまい、それ以来、育ての父親と二人で暮らしてきたが、その後、日本の大学へ留学し、それから十年経過した現在、就職活動すべき時期にも関わらず、彼は生まれ故郷に帰

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    2023年04月25日
  • 開墾地

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    言語、世間、社会、家族
    自分たちを取り巻いているものに対して、かんがえながら読みました。

    物語に出てくる事象や事柄がまさにそれを想像させるようなものだと感じます。

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    2023年03月30日
  • 開墾地

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    イラン人の父親を持つラッセル。米国で生まれ日本で勉強している。ラッセルは父親が生活する米国サウスカロライナに渡り、そこで自分のアイデンティティと向き合うことになる。サウスカロライナの実家の周りには葛が自生し、庭や家を包み込もうとする。日本の家屋にも葛の蔓が壁を伝うが、ラッセルの実家では毎年焼き払わないと家が葛に侵食されてしまう。キリギリスは英語でkatydidなのに、葛は英語でもkudzuで通じる。日米の両方で生きるラッセルは、物の違いと同一性を感じたのだろう。そして自分のルーツに思いをはせる。私はこの作品を正しく読み解けたか分からない。表面をなぞっただけかもしれない。何かしら感じるものはあっ

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    2023年02月27日
  • 開墾地

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    芥川賞候補とも、葛が怪物化しているとも知らず。心の落ち着きどころ探し小説?
    家が燃えちゃうんじゃと心配に。

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    2023年02月13日
  • 開墾地

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    書籍出版前なので、群像2022年11月号で読む。
    イランからアメリカに移住してきた男の息子は、いま日本に留学している。

    休みに父親が暮らす南部の町に帰省してきた息子が、南部の開墾地で暮らす父親との生活で交わす会話と、感じたことを通じて、複雑な環境を描いている。
    これは作者の個人的な記憶による私小説的作品のようだ。

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    2022年12月26日
  • 鴨川ランナー

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    京都が舞台の作品と云うことで読んでみた。なかなか面白い観点。ただ、私は二人称の文章は疑問だな。一人称の方がすっきりする。それはともかく、日本における白人の受ける対応はなるほどねえと思わせるものがある。ただ、異国に暮らすとそのような話はどこでもあるもんだわ。私も海外に住んでる間、ステレオタイプの対応をたびたび受けたことがある

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    2022年05月01日
  • 鴨川ランナー

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    表題作よりもう一つの「異言」の方が良かった。
    表題作はまだ練習中といった印象を受けた。

    しかし、日本語で話しかけている外国人に、そんなに英語で返事するのか、日本人は。というか、外国人(欧米人ね、はっきり言って)に積極的に近づく人はそうなんだろうね。なんだか気の毒になってしまった。

    表題作もそうだが、「異言」は特に日本に来て日本語や日本人や日本文化に触れたいと思っているのに、阻まれてしまう孤独ややるせなさが伝わったし、(牧師を演じる主人公も、それを求める日本人も)滑稽である。ラストシーンは複雑な心境が、おかしみになっていて、これは客観的に描けているからだと思う。
    鴻巣友季子さんが誉めていたの

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    2022年04月27日