グレゴリー・ケズナジャットのレビュー一覧

  • 鴨川ランナー

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    「開墾地」のグレゴリー・ケズナジャットが、小説家としてデビューした京都文学賞受賞作。
    英語指導助手として来日した彼が、日本の文化や日本語とどう関わってきたのか、内面の深い部分を感じさせてくれる作品だった。
    「言葉」を大切にする繊細さは日本人も学ばなければと思う。

       阪神が優勝をプレゼントしてくれた誕生日に

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    2025年09月07日
  • 開墾地

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    サウスカロライナ出身のアメリカ人。英語指導助手として日本に来て、大学の准教授にまでなった。日本語で小説を書く。
    本作は芥川賞候補作、のちに2度目の芥川賞候補になっている。
    自身を題材にした作品だが、帰国してイラン出身の義父と過ごす時間の静謐なこと。自分とは何かと考える主人公に惹きつけられる。
    ネットで見た彼の顔の表情にも納得した。

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    2025年08月22日
  • 鴨川ランナー

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    日本に住む、比較的身近だけれど、今まで気づくことのなかった、自分(「きみ」「ボク」「I」)を示された気分。文章はとても読みやすい。表題作もいいが、もう一つの「異言」の方が、主題の凝縮ぶりや話の構成の巧みさにおいて、よくできているように思う。

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    2025年05月06日
  • 鴨川ランナー

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    高校から日本語学習を始めたアメリカ人が巧みに日本語を操り素晴らしい小説を書いたという素朴な驚き。所々の単語の選択に独特のセンスを感じる。そして来日して働く外国人の心の葛藤を知り、これまで自分が外国人に対してとっていた言動を振り返ると心が痛い。はっとする角度から描かれていて得るものがとても大きかった。

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    2023年11月05日
  • 鴨川ランナー

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    開墾地で一目惚れしたグレゴリー・ケズナジャットさんの処女作。「鴨川ランナー」は僕のクソ田舎の地元にもいたALTの先生が感じたであろういろんな気持ちを代弁してて、身悶えしながら読みました 笑
    そして「異言」では結婚式で毎回感じる「いや、この方このためにいらっしゃるの?」というなんちゃって?神父さんのあの違和感を思い出す。慣れなのか、諦めなのか、前進なのか、、、きっと僕も将来こんなふうに感じるのだろうか。外国人の著者が日本語で書く「言葉」に対する物語、本当に大好きです。そして、、、これでいいのか日本?

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    2023年10月31日
  • 鴨川ランナー

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    めっちゃ好きな作品。
    とても乾いているのに、どこか突き放されている。浮遊して、接地していない感じがたまらない。

    文化や言語、この日本について考えてしまった。

    2編目の「異言」はさらにきつい話だった。
    日本人の英語に対する浅ましさが全開で。

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    2023年08月26日
  • 開墾地

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    ネタバレ

    アメリカの葛のはびこるイメージがみっしりとしていてしんどかった。中近東の遠さが何となく想像がつかなくて。

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    2023年03月28日
  • 開墾地

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    今日読めて良かった。今読めて良かった。
    一生忘れない本にる気がする。
    生家を離れた経験がある人はぜひ読んでほしい。新天地で感じる違和感、久々の帰省で感じる違和感、全部がここに入ってる。自分の今の状況にもマッチして、なんで言葉にこんなにパワーと魅力があるのかがよりわかる。

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    2023年02月28日
  • 鴨川ランナー

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    面白かった。
    「鴨川ランナー」と「異音」の2短編構成。

    私は京都に大学の時と社会人になってからも少し住んでいたので、街並みの情景が良くイメージできてストーリーに入りやすかった。著者の文章も歯切れが良く、テンポよく読み進めることが出来る点も◎

    外国語を習得していく中で、言葉や表現の意味は分かってもどこか上辺をなぞっただけの会話になってしまう所、違和感は自分も英語でコミュニケーションを取る時に感じる。

    でも、会話の深みって言語スキルも関係するがその当事者たちの信頼感?というか関係の深さが大きいのでは無いかと思いつつも、続く「異音」で、小百合とのやり取りからガイジンとして見られているという壁もある事に改めて気付かされた。

    物語を行き来してしまうが、鴨川ランナーでポールが言った「物事は、本当はそうはっきりとしていないから」という一節は、言葉で表現したいけど、しきれないもどかしい気持ちを明らかにすればするほどドツボにハマってしまうのを救う言葉に思えた。

    自動翻訳が発達し言語の壁は以前よりも簡単に乗り越えらても、自分の頭で考えて、言葉で表現するからこそ感じるモノは尊いのだと思う。

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    2023年01月02日
  • 鴨川ランナー

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    ネタバレ

    『異国で外国語を習う人、教える人のためのバイブル』

    日本語を練習したいのに、英語で話しかけられる。
    自分では決して使うことのない英語の言い回しを教えさせられる。
    そんな外国語学習者、教育者の葛藤を、アメリカ出身の作者が、日本語で鮮やかに描ききった作品。

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    2022年12月06日
  • トラジェクトリー

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    ★異文化生活の悩みの先とは★ホームタウンを離れた外国人の浮遊感と足元の乏しさを静謐な文章で描く。アポロ11号の月面着陸に執着するカワムラさんの造形は面白い、だがストーリーにどうつながるのかがわからなかった。多文化で暮らす外国人の悩みのもうひとつ先を読みたい。併録の「汽水」は、日本に来た外国人が、仕事で地元近くのニューオーリンズを訪れるという場面のひねりが興味深い。

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    2026年09月13日
  • 鴨川ランナー

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    純文学とは少し違う印象で、文章が綺麗で丁寧に読みたくなる。
    『鴨川ランナー』と『異言』に共通した表現が出てくるが、その感覚はいまいち掴みきれず、でも理解したいなあと思いながら読んだ。

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    2026年07月30日
  • トラジェクトリー

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    トラベル、と生活
    同じ場所であっても似て非いるもの。
    非日常だから素晴らしく思えたりもする。

    自分のアイデンティティはどっちなのか。
    失われたかのように、変わっていく自分の価値観。

    私も国内の引越しや転職で価値観が変わってきたなあって思って
    でも別人に変わったわけじゃなくてどれもその時の本当の自分で。見失っているような気もするけど
    その軌跡が人生なんだとおもう。

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    2026年05月19日
  • 開墾地

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    ネタバレ

    アメリカ南部出身で日本に留学中の男が就職活動前に故郷に里帰りした時の話。
    実家は葛に覆われていてイラン人の父は庭と家の修理に汗を流していた。彼は母語(英語)のもつ土着性に辟易していてそこから逃れたく思っていた。父のペルシャ語に憧れを持つも父は英語を学んだことで自由を勝ち得たためペルシャ語の学習を勧めなかった。
    彼は当時勢いのあった日本の企業のために作られた日本語学校に通った。日本語を学ぶことで英語という檻から逃れたのだ。そして、久しぶりに帰省した故郷で母語の持つ逃れ得ないその性質をホームセンターに並ぶ客の会話から思い出した。父はホームセンターで買った着火剤と火で葛を燃やした。その煙が棚引いていくのを眺めた。

    日本からやってきてアメリカ南部に定着した葛が第二の主役になっている。葛は南部の言語にも生活にも完全に溶け込みきっている。しかしそれは南部アメリカにもとからあった植物ではなく日本から持ち込まれた外来種であったことに彼は日本にやってきて初めて気づいた。そのような外からやってきたものが馴染み生活に完全に定着することもあれば、ペルシャ語・日本語・英語の中で揺れ動く父や主人公ラッセルのようなものもある。

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    2026年04月07日
  • 開墾地

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    正直「鴨川ランナー」のほうが面白かったけど、、
    イラン出身のお父さんとのやり取りがメインに描かれる。父親の話すペルシャ語のこと。
    p72 いつでも英語の外へ出て、ペルシャ語へ自由に移動できる父親のことを羨ましく思うことがあった。
    p77 「ラッセルは英語が話せる。きみはまだ分かっていないだろうが、それは実はとても幸運なことだよ。外国語を勉強しなくてもどこにでも行ける。どこに行っても、言いたいことを言えない苦しさはない。だから、ペルシャ語なんか学ぶ必要はない。きみは自由だから」
    父親の言葉には切実なものがあったが、当時のラッセルは納得できなかった。自由と言われても、母語はむしろ檻のように感じられた。
    (略)
    母語から抜け出したい気持ちには変わりはなかった。父親が一人だけで入り込んでいたあの不思議な世界を、自分の目で見たかった。だがラッセルは二度と父親にその願いを伝えることはなかった。
    ***
    面白い感覚だなあ。母語から抜け出したい。外国語を操ることで違う世界に行きたい、自由になりたいという渇望。著者自身そういう気持ちから日本語を学んだのだろう。面白いなぁと思いつつ、英語学習歴10年のわたしも、確かにそういう面もあるかもなぁという気もする。それは目的ではなかったが、結果として、英語を使うと違う世界を見ることができ、自由を感じることができているから。

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    p86 葛が日本語だと知った時の衝撃はいまだに覚えていた。
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    葛の木は英語でkudzuなのですって。日本語から来ているのだと。幼いころから家のにkudzuがあったが、日本に来て電車に乗っていてなじみのある蔓(葛)が目に入り、日本語では何というのだろうと調べたら子どものときに使っていた「kudzu」と、その語源である「葛」が隣に並んでいたという。

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    2026年03月25日
  • 言葉のトランジット

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    外国語を学んだり、海外に住んだ経験があれば経験したことのある気持ちを、穏やかに、俯瞰的な目線で語る文章が心地よかった。
    そばに置いておきたいと思った。

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    2026年03月07日
  • 言葉のトランジット

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    ひとつひとつ面白くうなづきながら読んだエッセイ。

    日本で本を出すということは、いつも「カタカナの著者名」で表記されるのだなあと、ちょっと考え込んでしまった。

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    2026年02月13日
  • トラジェクトリー

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    ネタバレ

    『トラジェクトリー』
    言語を通して見つめる自分、アイデンティティー。国を飛び越えて宇宙まで及べば、かくも自我とは曖昧なものだと思う。それで良いのだ。

    これまでの作品を越えて、主人公以外、たとえばカワムラさんの来し方も知りたい。
    ホワイトハウスの事件にはっとさせられる。


    『汽水』
    母国と母語、生地と方言、自己を巡る思いはどこまでも終わりがない。「小さなハーン」に凝縮されている。

    ニューオーリンズ
    ウィリアム・フォークナー
    ラフカディオ・ハーン

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    2025年12月05日
  • 言葉のトランジット

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    Audibleで『単語帳』を聴き、筆者に興味を持った。
    それからこの人のインタビュー動画なんかをみたりした。
    観察眼も面白いと思ったし、少し目を伏せながら、物静かに淡々と話すその佇まいもなんか好きだった。
    「俺」という一人称への想いとか、自分の贔屓にしていた観光地に欧米からの陽気な観光客を見た時の感情とか、頑張って英語で話しかけてくる係員に英語で答える気遣いとか、この人の視点から見る日常が面白かった。

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    2025年11月27日
  • 開墾地

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    ネタバレ

    『鴨川ランナー』よりもさらに複雑に、言語と自己の関わりについて常に考える、考えざるをえない状況を描く。

    イラン出身でペルシャ語を母語とし、米国に暮らす父。
    アメリカに生まれ英語を母語とし、父とも英語で会話をしてきた自分、は日本へ留学している。一時帰国中。

    父の人生にフォーカスしたくなる。
    自宅の庭に次々に繁茂する葛、日々それと格闘する父。本当は何と格闘しているのか。格闘してきたのか。
    「葛」が「kudzu」であったように、「異」であっても重なるところはある。母国を出て、母語でない言葉を使い、必死に人生を開墾してきた彼が、これから誰かとの重なりを感じられますように。


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    『鴨川ランナー』から続けて『開墾地』を読み、著者のことも考えるのだけれど。誰が書いたかということをわきに置いて、とても面白い物語だった。自身の経験から生み出されたものだろうということは意識しながら読んだが、日本語を母語としない人が日本語を使って書く、ということはまるで意識しなかった。それだけ日本語がうまいからだ、なんてことも考えなかった。

    1冊の本を読んで、ああ面白かったとページを閉じる。私にとっての面白い基準は一体なんなのだろう。ストーリー、文体、はありそうだ。では著者はどれほど影響しているか。
    読む前から絶対に面白いに違いないと思える著者がもちろん何人もいるが、それってバイアス込みで読んでいる?
    などなど、面白いと感じる源について、ぐるぐる。

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    2025年11月23日