千々和泰明のレビュー一覧
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二十世紀の戦争の戦争終結を「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」を両極に置き分析する。
根本的解決をしたからと言って戦後長く平和が保たれる訳ではない所が難しい。第一次世界大戦ではドイツへの過度とも言える懲罰がやがてナチスの台頭に繋がる。
一方、妥協的和平であったとしてもベトナム戦争の様に戦場となった国家が安定と成長を成し遂げる場合もある。アメリカが一方的に蹂躙し退却した余りに不条理な戦争ではあるが。
後は李承晩の頑迷さ。
出版後の事ではあるが、今のアフガニスタン情勢の変化について著書の考えを聞いて見たい。根本的解決をしたはずだがアメリカが撤退すると瞬く間にタリバンが政権を奪回した。国際政治の主導グループにイスラムがいない事によるゆがみなのか。
パルネット 本と珈琲 ベルマージュ堺店にて購入。 -
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"戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは極めて難しい" 古代ローマの歴史家サルスティウスの『ユグルタ戦争』である登場人物の言として記されているものだが、同じような言葉は最近良く用いられている。
本書は、戦争の終結に焦点を当てた研究で、著者の依拠する分析枠組みに基づき、具体の戦争について論じたものである。
その枠組みとは、『紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」というもので、優勢な側が「現在の犠牲の低減」と「将来の危険の除去」のいずれを重視するかによって、戦争終結の形態が変わってくるというものである。
そして、20世紀の戦争を題材として、終結に至る当事国の動き、相互反応等の史実を具体的に描いた上で、まとめ的な考察が示される。
選ばれた戦争は、次のとおり。
1 第一次世界大戦
2 第二次世界大戦の対イタリア、ドイツ
3 第二次世界大戦の対日本
4 朝鮮戦争
5 ベトナム戦争
6 湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争
これまでも、個々の史実としては知っていたことが多いのだが、各当事国の意思形成過程が具体的に記述され、また味方国同士の間での利害対立、相手国の意思表示を受けての誤解や楽観視など、生々しく記述がされている。
本書の分析では、戦争を終結させ得る優勢な側から捉えている訳だが、相手あってのことなので当然敗者の側にも焦点が当てられる。日本に係る戦争終結の章は、後付けかもしれないが、読んでいてやるせない気持ちで一杯になった。情勢に対する誤解、誤読、"損切り"する勇気のなさ。戦争は極限的な状況かもしれないが、国家として、果たして大丈夫と言えるだろうか。
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ネタバレ読んでいるうちは理解していてもまた読み終わったら忘れていってしまうのですが。
それでも中高生向けの内容とのことでした。
安全を保障する国際体制には、
最悪を防ぐ、という動機がまずあるということに強く気づかされました。
小国が被害を被ることは最悪ではなく、大国の論理であり、その歴史を知ることはとても大事だなーと思いました。
力関係の変化
①近世以前の帝国:力の強い国が他の地域を征服していく
②近代の主権国家システム:一部の国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められる
③現代の主権国家システム:世界のすべての国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められない
現在の国連による集団安全保障体制が第二次世界大戦後にでき、
今の国連の体制が機能不全というけれど、
最悪の事態、つまり核保有国間の戦争を回避することが第一目的であると知ると、その役割を今のところは果たしている、ということが分かった。5常任理事国の拒否権は批判されることが多いけれど、大国に対しては集団的な対応を取りえないという、「ブレーカー」のようなものだ、と論じられていた。
加えて核保有大国がお互いに核報復能力を持つことで、核の打ち合いになる可能性が下がるという点で両者の関係は安定するように見えるけれども、実は「限定的な紛争」が起きやすくなり不安定化する「安定・不安定のパラドックス」があり、これが現在の状況だという見方を知った。
つまり、ロシアは核を持たないウクライナを侵略していて、NATOはロシアがもし核を使用すると核により報復する可能性を示唆しているため、核戦争の抑止にはなっているが、それ以下のレベルでの侵略や攻撃は許容されている。
そして、戦争終結のジレンマについて、著者は、現在の犠牲を抑えることを主眼とする「妥協的平和」と将来のリスクをつぶす「紛争原因の根本的解決」という二つが天秤にかけられているというレンズを導入されていましたが、
これも、国際政治上の国の立場によって異なってきそうだなと思った。
とにかく最悪の事態を避ける、ということに焦点をあてているのが核抑止を含めた今の安全保障体制ということ。そしてそれは、非核保有国や市民の求める「平和」、つまり人道的観点で、人命の犠牲を避ける、という要求とずれが生じるのは明らか。
簡単に人間や社会を破壊できる技術があり、人口が増加し、だれもが世界各地に移動できる手段を得た今、それに対応するルールを作ってきたようだけれど、
戦後80年経ち、いろいろと世界の状況も変化している中で、大国間の戦争を避けるだけでは実際の平和とは言えないのではないか、という規範や実践も進められている道半ばの時期なのかなーと思った。
一方で、著者の指摘では、
ロシアがウクライナを完全に制圧したら、あるいは中国が台湾を侵攻したら、
現代の対等な主権国家体制が変わることも考えられる、帝国の時代の復活もありうる、とも述べられている。
力による一方的な現状変更が常態化すると、国連体制による集団安全保障で止めることはほぼ不可能になり、勢力均衡で対応していくことが考えられる、とのこと。
相互確証破壊の能力を持つ国が3か国以上出てくると、バランスが崩れ、軍拡が起こる、という核の安全保障のジレンマもリアルな状況だなーと思った。
でも集団安全保障は勢力均衡と違って国家間の力のバランスに頼らず、グループ全体で侵略行為を止める、という仕組みにしたということだけれど、核保有国間では勢力均衡がいまだ働いているということなのかな。
イラク戦争時はアメリカは国連の安保理決議の枠外で反撃を開始したというようなことが書かれていたけれど、そういった傾向が益々強まっているということかな。そうしたら、周囲の中小国としてできることは、集団安全保障体制の決議案を経ていない動員には協力しない、賛同しない、ということなのかもしれないけれど、結局大国から距離が開くほどに、許容される限定的な戦争の犠牲になる、つまり見放されるジレンマがありそうなので現実的にはなかなか難しそう。
世界は核保有大国が支配しているんだなーと思った。 -
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日本が敗戦した1945年8月。広島、長崎と相次いで原子爆弾を投下され、更には不可侵条約を締結していたソ連が満洲に攻め入るなど、8月15日の終戦に向けて直走る日本の姿がそこにはあった。現代史では日本の敗戦理由について、ソ連の日本進出、赤化を恐れたアメリカによる原子爆弾の投下が、ソ連に対する威嚇行動であったとする旨の内容で教えられるそうだ。私の勉強した頃がどうだったか、という記憶はないが、ソ連がヨーロッパでの対ドイツ戦を終わらせて、東へ進出するとなると、強大な兵力により日本が脅かされる事は間違いない。それまで太平洋を中心に日本と激戦を繰り広げながら多大な人的被害を出したアメリカがソ連の参戦を許してしまうと、すでに弱りきっている日本はそれに対抗することもできない。そこまで日本を追い詰めたのは米軍の犠牲に成り立つのに、後から来たソ連が、掻っ攫っていく状況をアメリカは阻止する必要がある。このようなストーリーはアメリカが日本との戦いの最中も、将来のソ連=共産圏の進出防止に向けた闘い(所謂、冷戦時代)を見据えていた事は間違い無いだろう。だからアメリカは自国が世界に先駆けて開発した核兵器の威力を、共産圏であるソ連に見せつけ、威嚇する必要があった。これはその後の世界情勢の流れを見ても間違っていたとは言えない。
では、日本を屈服させた要因はなんだったのであろうか。そこに言及するのが本書の内容だ。文字通りタイトルは『誰が日本を降伏させたか』である。基本的には原子爆弾投下という手段が「何故」用いられたのかについて、その時代的背景や戦況を踏まえて分析した内容となっている。現在のアメリカの主流の考え方となっている、原爆を使わなければ更なるアメリカ国民の犠牲が増える、という戦争の人的コストを中心とした考え方。これは、アメリカで一般的に考えられている、原爆があったから戦争が早く終わった(=被害が少なく済んだ)という考えである。一方で日本の歴史学習で教えられる、ソ連の威嚇=外交的な側面としての考え方も存在する。更にポツダム宣言受諾を迫られ、天皇陛下を中心に受諾の是非を検討する最中、ソ連が条約を破り日本に攻め込む事態に。これによりソ連を仲介者として和平を検討する日本の頼みの綱は失われる。実際にはヤルタ会談でソ連の参戦はとっくに決まっていたから、ソ連からすれば、これから戦争をしようとする日本の意見を聞き入れるはずもない。こうした各国の思惑を見誤った日本の失敗とも言えるが、このソ連の侵攻は残された唯一の和平に向けた手段すらも無くなり、絶対絶望の危機へと日本を突き落とした。こうなると、日本の敗戦の決断が、原爆投下のタイミングにあったのか、ソ連の参戦にあったのかで、「誰が日本を降伏させたか」の議論につながるのである。歴史とはある特定のタイミングだけを見てもわからない。また歴史自体が既に過ぎ去った時間であり、そこに居た人々の心理や考え方を正確に掴むこともまた不可能だ。となればそれに続く流れを読み、推測の重ね合わせにより、より事実に近い論を展開していくことになる。戦争開始を1941年12月3日の真珠湾攻撃としてしまうと、アメリカとの戦争に入った事実だけを見てしまい、アメリカが果たさなければならない戦争目的、アメリカにとっての戦争終結のゴール感を見誤ってしまう。よって少なくとも日本が中国に進出した1931年まで広げて、その終わりを原爆投下よりも後の、ソ連の侵攻に広げてみる必要がある。
本書を読み日本敗戦の理由や、各国の思惑を一緒に学んでいく事は、これからの日本の在り方を模索する一つの手掛かりになりそうである。 -
Posted by ブクログ
戦争を終結に至らせる要因を、「紛争原因の根本的解決」「妥協的平和」とし、それを見積もるものを「将来の危険」「現在の危険」と分類する。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争をこの評価軸で分析し、総括する。
なるほどなあ、と思わせる。
現実に侵攻している、ロシアの侵略、イスラエルの進軍にも当てはまる気がする。
問題は、その「危険」「原因」の認識が現実に合ってるかどうかだという気がした。特に、「根本的解決」という言葉には欺瞞を感じる。そう思ってるだけで、勘違いの可能性が極めて高い。
特に、敵と味方を間違える天才、大米帝国においては。
あとなあ、先の大戦での大日本帝国の終戦への道筋が若干違和感あって。天皇がかなり積極的に動いてる。これまで読んで来た本では、そうではないと理解している。
まあ、「天皇制」と言ってるレベルで感じるところはある。