【感想・ネタバレ】戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまでのレビュー

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Posted by ブクログ 2023年10月08日

或る本を読んでいて、その中に別な本に関する言及が在ると、少し強い興味が湧く場合も在る。そしてその興味が湧いた本を紐解くと、それがまた非常に興味深いという場合が在る。こういうのを「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶのだと思う。本書はそういう「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をさせてくれた一冊...続きを読むだ。
本書は「在りそうで、存外に無い?」という感じの、重要と思われる主題を論じている。「読書の発見、歓びが拡がる」ということと無関係に、単独でも非常に価値が高いと思う。
本書を知ったのは『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』という本を読んでいた時だった。『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』の著者による対談が収録された本に、対談の相手の一人として本書『戦争はいかに終結したか―二度の大戦からベトナム、イラクまで』の著者が登場していた。
2022年2月以降のウクライナでの戦争は1年半以上も続き、「終わらない…」という様相を呈してしまっている。そういう中で「終結?」、「停める?」というようなことが上述の本の対談で論じられていた。
戦争の目的を追求して戦闘が繰り広げられる等の展開が在る。そういうことをすると「現在の犠牲」というようなモノが生じることから免れられない。「現在の犠牲」に「何処迄耐える?」ということになってしまう。どんなに犠牲を払っても「将来の危険」を排すべく戦争の目的を追求するという考え方と、「現在の犠牲」を回避すべく妥協的な和平の工作を試みるという考え方が事案の両極のように存在して、両者の間の色々な形での「終結」が図られたのが、これまでの戦争の歴史で、これからの戦争もそういうことになるのであろう。
ウクライナ、ロシアの戦争に関して言えば、上述書に在るのだが、両陣営は各々に「将来の危険」を排しようと「現在の犠牲」を払い続けていて、「一体、何処迄?」というようになって行くのだと思われるが、互いに排しようとしている「将来の危険」は「非常に高いハードル」になってしまっていて、収束に向けた協議が巧く進められない状態に陥って時日を経てしまっている訳だ。
本書に出くわした経過の事柄で少し文字数が嵩んでしまった。が、こういう他の本で呼んだ事柄を踏まえて本書を興味深く読んだのだ。
題名に「二度の大戦からベトナム、イラクまで」と在る。文字どおりにこれらの戦争に題材を求め、戦闘を停めて行く、終結を図るという過程に注目し、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考えた」というような経過に光を当てようとしているのが本書の内容だ。
本書では、第1次大戦、第2次大戦の欧州関係、第2次大戦の日本関係、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争からアフガニスタンやイラクに至る一連の戦争というような形で「各戦争の終結」が論じられている。
総じて思わざるを得ないのは「“始める”こと以上に“終える”ことが難しい」のが戦争というモノであるということだ。そして“終える”ことへのイメージが貧しいままに“始める”に至った戦争は、殊に敗れた側にとっては「ロクなモノではない…」というように終始してしまう。
甚大な犠牲が払われた種々の戦争に関して「その終結」という角度で観て、振り返るというのも有益だと思うのだが、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考える」というようなことは、応用範囲が広いというようにも思う。様々な好ましくない状況から抜け出して行こうとする場合の考え方として有用かもしれない。
「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をで、なかなかに有益な一冊に出会えて善かった。

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Posted by ブクログ 2022年12月16日

本書は戦争終結という日本ではほとんど研究されてこなかったテーマについて理論と歴史の両面から考えようとするユニークな研究書。切り口が興味深く、未知の研究分野だったこともあり、夢中で読みました。

著者の千々和泰明さんの専門は国際公共政策。本書で第43回石橋湛山賞受賞。
「戦争はいかに終結するのか?」と...続きを読むいう問いに対して、本書は「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という提示。そして2度の世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争を題材に、戦争終結を主導する優勢勢力(例えば第2次世界大戦では連合国)が「将来の危険」と「現在の犠牲」のどちらをより重視するかをめぐるトレードオフの中で、ジレンマを解く均衡点について詳細な分析が記述されています。

「紛争原因の根本的解決」の極での終結を見たのは、第2次世界大戦(欧州)、アフガニスタン戦争、イラク戦争であり、「妥協的和平」の極での終結は、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。前者はそれぞれナチス、アルカイダ、フセイン政権の壊滅が目標でした。一方、後者の朝鮮戦争とベトナム戦争は米ソ衝突という「現在の犠牲」を回避したため、また湾岸戦争は「将来の危機」を過小評価したため妥協的和平で終結し、結局、イラク戦争に繋がってしまいました。
本書を読んで思うのは、戦争を終結させることの難しさ。例えば、「根本的解決」と「妥協的和平」のあいだで終結した太平洋戦争の場合、アメリカにとっての日本軍国主義の「将来の危険」と、自分たちの「現在の犠牲」とが拮抗し「ジレンマ」が発生しポツダム宣言は曖昧な内容に。劣勢勢力である日本側は、その曖昧さから、さらなる妥協を引き出す余地があると言う誤った希望を見出し、その結果、2度の原爆、ソ連参戦からシベリア抑留という悲劇を招いてしまいました
(太平洋戦争は日本側の軍国主義の壊滅という『根本的解決』の極に近い終結を見ましたが、天皇制は継続しているので極ではありません)。

著者は「戦争終結には、常にこれが正解というものはない」とする一方で、「『現在の犠牲』をためらうあまり『将来の危険』を過小評価して、安易な妥協を行い、その結果、短期間で平和が崩れたり、逆に『将来の危険』を過大評価して、不必要な『現在の犠牲』を生んだりするような戦争終結は失敗であると言える」と断言します。そして、中国の台頭、北朝鮮のミサイル実験が続く中で、有事に日米間で齟齬が生じないよう、平素から出口戦略に関するすり合わせや知的訓練の必要性を訴えます。
本書が出版されたのは2021年7月でウクライナ侵攻以前です。現段階ではどちら真の優勢勢力か判然としませんが、壊滅的な終結にならないよう祈るばかりです。

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Posted by ブクログ 2024年01月30日

フレームとして歴史的な叙述を取っており、筆者が冒頭に提示する分析軸を忘れると、歴史をただ振り返っているような感覚にもなります。
とはいえ、様々な戦争の歴史から学べることは多く、改めて納得するようなかたちで戦争を終わらせることがいかに難しいか、再認識出来ました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2024年01月28日

帯に小泉悠さんが載っていたのでウクライナ戦争の行く末も念頭に購入。
購入動機の不純性はさておき、面白い内容でした。

本書では戦争の終わり方を「権力政治的アプローチ」と「合理的選択論的アプローチ」の2つの視点から解釈し、これまで発生した戦争にこれらを当てはめて説明します。

「権力政治的アプローチ」...続きを読むは軍事力を中心としたパワーバランスを重視する視点、「合理的選択論的アプローチ」は交戦勢力間の合理的な費用対効果の算定を重視する視点ですね。要は戦争は軍事的に強い側が一方的に弱い側をボコって終わるだけではなく、損害に見合ったリターンを得られるのか?の観点も終わり方を左右する、という考え方でしょうか。
そのため(特に後者の視点により)、主に軍事的に強い側においては ”二度と起ち上がれないよう徹底的に相手を叩きのめすのか、それともある程度妥協して和平を結ぶのか” のジレンマが生じます(これを本書では「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」と呼びます)。
そして第一次大戦からイラク戦争までの主要な戦争を題材に、このジレンマのはざまに揺れる交戦各国の状況(心境)と戦争終結に至る過程が説明されます。

しかし実際の戦争の構図はそう単純ではありません。本書は基本的に上記の整理構造をとりますが、様々なファクターが複雑に絡み合うそれぞれの戦いの歴史は読みごたえがあります。
個人的にはベトナム戦争の章が複雑かつ緊迫感があり、面白く読みました(アメリカを中心とする西側は圧倒的な軍事力を有していたものの、北ベトナムの背後にいるソ連や中国との全面対決というリスクと、反戦運動に揺れる国内政治という不安定要素にさいなまれます。共産側も北ベトナムの無謀ともいえる強硬姿勢に対し、西側との全面対決を望まないソ連や中国の微妙な姿勢が一線を画します。そしてこれら各国の繊細な心境と打算にお構いなく戦況は動きます・・・)。

戦争が終わるに際して必ず上記の構造が当てはまるかどうかは断言できないと思いますが、戦争終結のロジックを構造的にわかりやすく整理している点が興味深いのと、実際の戦争に当てはめた説明は納得感があり面白いです。
またそれぞれの戦争の、終結に至る経緯や内幕がある程度詳細に記載されており、歴史を学ぶという点でも参考になる1冊だと思います。

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Posted by ブクログ 2023年04月29日

戦争を始めるのは人類。終わらせるのも人類。どうしてもバイアスが人の判断を曇らせてしまうが、「現在の犠牲」と「将来の危険」の軸で評価するアプローチはとてもよかった。ドイツを巡る2度の世界大戦の終結の部分はサイエンスでもあり、アートでもあると感じた。

テクノロジーの進化でドローンやAI兵器は普及し、戦...続きを読む術は変わる。この本でもあるようなテロリスト対アメリカのような戦いも起きており、国家の意味も相対化されてきている。しかし、戦争をめぐる不易流行はある。

様々な思考実験をするためにもとてもよい内容だった。ビジネスの撤退戦の考え方にも通用するだろう。

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Posted by ブクログ 2023年04月22日

戦争の終結のさせ方について論じた本。

ロシアによるウクライナ侵攻が始まった時にニュースにコメンテーターとして呼ばれていた著者の発言が興味深かったため読んだ。

著者はハナコの秋山に似てる。

戦争の終結とは『将来の危険の排除(自国の脅威を取り除く)』と『現在の犠牲の回避(戦うことで生じる、命やお金...続きを読むなどの損失)』の均衡点を探る事である。

脅威を根絶やそうと戦い続けると自国が消耗するし、自国の消耗を嫌がり妥協的に停戦を行うと、脅威は以前存在し続ける。


過去の第一次世界大戦、第二次世界大戦、太平洋戦争、朝鮮戦争、ベトナム戦争、中東の戦争(湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争)を題材にどこに均衡点を置いたのかを振り返る。


傾向としては、太平洋戦争までは脅威の排除を重んじ、それ以降は現在の犠牲の回避を重んじる流れ。

ここからは自分の考えで、上記の傾向は核兵器の開発によって戦争を続けても敵国が核を用いた場合、受け入れきれやい犠牲がでるため、脅威の排除に振り切れないからであり。メディアやネットの発達により現在の犠牲が市民の目によく触れるようになり犠牲を回避する世論が起こりやすくなってるからじゃないかとも思う。

ウクライナ侵攻はウクライナ側は犠牲を甘受してでもロシアへの抵抗(脅威の排除)を決めており、ロシアもウクライナのNATO加入を脅威と捉えて根絶しようとしている。お互いに犠牲の回避よりも脅威の排除を優先しているため戦いは長引く。ってことなのか、、、

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Posted by ブクログ 2023年04月12日

戦争の終わらせ方として、これまで自分の頭にあったのは①敗者・弱者が自ら白旗を挙げる②勝者・強者が軍事力を背景に相手に降伏を強要し、相手が受け入れる③第三国による仲介・調停
この3つぐらいで、条約や協定も勝者の論理に裏付けられているものという認識でした。この本を読んで、戦争の終結は「紛争原因の根本的解...続きを読む決」を目指すのか「妥協的和平」を目指すのかによってそのプロセスにおける戦略も変化し、いかにタイミングが大事かということを思い知らされた。優勢勢力側の「将来の危機」と「現在の犠牲」を天秤にかけることはもとより、第三国の思惑や周辺国・関係国のパワーバランスを推測することも戦争終結への大切な視点である。近現代の過去100年の主な戦争を事例として、緻密な分析・検証に基づいた本書は現代の混沌とした世界情勢がどこへ向かうのか、そのヒントになるかもしれない。

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Posted by ブクログ 2023年02月06日

太平洋戦争(大東亜戦争)については明確なゴールがなかったように思う。対米で言えば石油をはじめとした資源の確保だったのかもしれないが、それならあそこまで戦域を拡大する必要はない。日中戦争についてはもっとよくわからない。国家としての意思はなかったのでないだろうか。

スタートがグダグダだったため、ゴール...続きを読むも見えないまま戦争を走るしかなかったのではないかと思う。

では、ゴールの設定が明確であればいいのかというとそういう簡単な話でもない。明確であってもそこに至るまでのアプローチが難しい場合や、明確ではあるがゆえに他の選択肢を(過度に)除外してしまうこともある。

この本では、将来の危険と現在の犠牲を天秤にかけ、将来の危険(例えばヒトラー)が大きければ戦争は継続され、根本的な解決を目指すし、現在の犠牲が大きすぎれば妥協的な戦争終結を模索することとなる、という理論のもと具体的な事例をもとに戦争終結のプロセスを読み解いていく。

ただ、日中戦争では「現在の犠牲」が大きいばかりに撤兵がができないというジレンマがあった。いわゆる死者への負債というやつで、これは企画院の鈴木貞一も同じようなことを話していた。なので、上記理論も大きな枠組みとして把握する必要があるだろう。

本書で気になったのが、日本軍部の一撃和平論とソ連仲介への期待である。一撃和平とは、アメリカに一撃くらわせて和平交渉に持っていくというものだが、普通に考えて一撃くらわせたら相手は怒るだけだ。相手が戦争継続が不可能と判断するような一撃とは?そもそもそんな一撃を喰らわせることができたなら、それこそ戦争継続ではないだろうか。一撃くらわせて和平に持って行くなんてどうも希望的観測に過ぎる。

ましてや、ソ連の仲介なんてないだろう笑 ソ連が攻め込んでくることの方が確率的には高いというのはリアルタイムでも判断できそうな気がする。

本書は読む人を選ぶと思うが、タイトルが気になった人であれば楽しく読めると思います。

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Posted by ブクログ 2023年03月08日

20230203-0304 戦争はいかに収拾すべきなのかについて、二度の世界大戦と朝鮮戦争、湾岸戦争、湾岸戦争からアフガニスタン、イラク戦争に至るまで、どのように収束してきたのかを戦争当事者双方の考え方を分析している。これら一連の戦争にはすべてアメリカが関わっているのは興味深い。筆者は最後に我が国の...続きを読む安全保障政策のあり方に言及している。実はこの本の前に筆者の最新作「戦後日本の安全保障」を読んだが、本作を読むことで、より理解が深まったと思う。現在ロシアによるウクライナ侵攻は続いており、この戦争後をどのようにすべきかについて知りたいと思ったのがこの本を読んだ動機だった。

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Posted by ブクログ 2022年08月17日

結論から言うと「戦争遂行能力の高い側」が出口を考えないと戦争は終わらないということ。2022年8月現在のウクライナ侵攻では、やはり集結へのイニシアティブは、残念な事実として、ロシアにあるという現実。理念よりもリアリズムの大切さを学んだ。

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Posted by ブクログ 2022年08月08日

戦争はいかに終結するのかという問いに対し、紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマという視角が提示されている。すなわち、将来の危険と現在の犠牲とのトレードオフの中で、均衡的に戦争終結の形が決まるというものである。この観点から過去の6つの戦争を整理し、戦争終結の統一的な理解を試みている。問い立て自体...続きを読むが面白いし、緻密な事例の整理と分析により、パワーのみが戦争終結の形を決めるわけではないことなど、得られている示唆も興味深い。

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Posted by ブクログ 2022年07月26日

ロシアの一方的なウクライナへの侵略を機に読んでみた。紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマという視点は新鮮だった。ウクライナ紛争の例で言えば、どちらも将来の危険が大きすぎて停戦合意は容易でないことが予想できる。
ただ今一つ納得感がないのはどうしてだろう。何というか、こういった打算的な計算だけで戦...続きを読む争の成り行きが決まるとも思えない。戦争には大義が必要であり、もちろん当事国双方ともに彼らなりの大義があるのだが、国際社会からみてどちらに理があるのかで戦争の終わり方も変わってくるように思う。
このあたりを先行研究を含めてもう少し丁寧に解説してほしかった。

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Posted by ブクログ 2022年06月19日

22/06/19
戦況がずっと流れているのも滅入るが、戦況の把握は必要だということが悲しくもよくわかる

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年05月06日

「戦争なんてしなければいいのに」と感情的に考えてしまうが、
現場では何を考えているのか知ることができる良書。

以下読書メモ。

戦争がいかに終結するのかは
「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視点から考えられる。
それは、優勢勢力側が「将来の危険」と「現在の犠牲」のどちらをより重視...続きを読むするかで決まる。

「紛争原因の根本的解決」の極に近いのが、
両世界大戦、アフガニスタン戦争、イラク戦争。
「将来の危険」の方が大きいと考えられたから。

「妥協的和平」の極に近いのが
朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。
「現在の犠牲」が多大となることを恐れたから。

劣勢勢力側は、自分達が守ろうとしている価値が犠牲に見合うものなのかの判断が必要。パワーバランスを変える可能性が乏しいなら、損切りを選択する勇気も必要。


日本の安保のことにも言及がなされている。
日米同盟側が優勢で「将来の危険」が極めて大きいなら相手政府の打倒が追求されるが、自衛隊の専守防衛の原則から外れないか。
「将来の危険」にとらわれ「現在の犠牲」が大きくなる子はないか。
日米で認識がズレたらどうなるのか。

日米側が劣勢なら、パワーバランスを変化させるのか、損切りによって収拾させるかの決断が必要になる。

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Posted by ブクログ 2022年01月08日

「将来の危険」と「現在の犠牲」を検討しつつ、戦争終結形態へと落着する。それが「根本的解決」になるのか「妥協的解決」になるのかは検討過程がどちらに寄ったものであったかで決まる。
2度の世界大戦、朝鮮・ベトナム・湾岸・アフガニスタン戦争から戦争の終結過程を分析する。鋭い分析に「なるほど」と思いつつ、国家...続きを読む間戦争はもう生じないであろう今後の紛争解決は、さらに難しくなっているよね。

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Posted by ブクログ 2021年10月09日

二十世紀の戦争の戦争終結を「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」を両極に置き分析する。

根本的解決をしたからと言って戦後長く平和が保たれる訳ではない所が難しい。第一次世界大戦ではドイツへの過度とも言える懲罰がやがてナチスの台頭に繋がる。

一方、妥協的和平であったとしてもベトナム戦争の様に戦場と...続きを読むなった国家が安定と成長を成し遂げる場合もある。アメリカが一方的に蹂躙し退却した余りに不条理な戦争ではあるが。

後は李承晩の頑迷さ。

出版後の事ではあるが、今のアフガニスタン情勢の変化について著書の考えを聞いて見たい。根本的解決をしたはずだがアメリカが撤退すると瞬く間にタリバンが政権を奪回した。国際政治の主導グループにイスラムがいない事によるゆがみなのか。

パルネット 本と珈琲 ベルマージュ堺店にて購入。

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Posted by ブクログ 2021年10月05日

・戦争終結の基本的理念は「出口戦略」。いかにして終わらせるか。  
・戦争当事者の抱える「将来の危険」と「現在の犠牲」のバランスをどうとるかとそのジレンマ。 
これらのことにより、優勢勢力も劣勢勢力も、得られるものや失われるものが異なってくる。

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Posted by ブクログ 2021年09月19日

優勢勢力側の「将来の危険」と「現在の犠牲」をめぐるシーソーゲームを通じ、戦争終結形態は「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」のジレンマのなかで決まるという切り口で、20世紀以降の第一次世界大戦からイラク戦争までの戦争終結過程を分析。
いかに戦争を防ぐかではなく、始まってしまった戦争をいかに収拾する...続きを読むかという本書の観点は新鮮であり、「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という観点にも説得力があった。取り上げられている各戦争がどうやって終結したかということについても、よくわかっていないことが多かったので、勉強になった。

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Posted by ブクログ 2021年08月05日

 "戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは極めて難しい" 古代ローマの歴史家サルスティウスの『ユグルタ戦争』である登場人物の言として記されているものだが、同じような言葉は最近良く用いられている。


 本書は、戦争の終結に焦点を当てた研究で、著者の依拠する分析枠組みに基づき、具...続きを読む体の戦争について論じたものである。
 その枠組みとは、『紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」というもので、優勢な側が「現在の犠牲の低減」と「将来の危険の除去」のいずれを重視するかによって、戦争終結の形態が変わってくるというものである。
 そして、20世紀の戦争を題材として、終結に至る当事国の動き、相互反応等の史実を具体的に描いた上で、まとめ的な考察が示される。

 選ばれた戦争は、次のとおり。
1 第一次世界大戦 
2 第二次世界大戦の対イタリア、ドイツ
3 第二次世界大戦の対日本
4 朝鮮戦争
5 ベトナム戦争
6 湾岸戦争、アフガニスタン戦争、イラク戦争

 これまでも、個々の史実としては知っていたことが多いのだが、各当事国の意思形成過程が具体的に記述され、また味方国同士の間での利害対立、相手国の意思表示を受けての誤解や楽観視など、生々しく記述がされている。

 本書の分析では、戦争を終結させ得る優勢な側から捉えている訳だが、相手あってのことなので当然敗者の側にも焦点が当てられる。日本に係る戦争終結の章は、後付けかもしれないが、読んでいてやるせない気持ちで一杯になった。情勢に対する誤解、誤読、"損切り"する勇気のなさ。戦争は極限的な状況かもしれないが、国家として、果たして大丈夫と言えるだろうか。

 

 

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Posted by ブクログ 2024年02月10日

戦争を終結に至らせる要因を、「紛争原因の根本的解決」「妥協的平和」とし、それを見積もるものを「将来の危険」「現在の危険」と分類する。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争をこの評価軸で分析し、総括する。

なるほどなあ、と思わせる。
現実に...続きを読む侵攻している、ロシアの侵略、イスラエルの進軍にも当てはまる気がする。

問題は、その「危険」「原因」の認識が現実に合ってるかどうかだという気がした。特に、「根本的解決」という言葉には欺瞞を感じる。そう思ってるだけで、勘違いの可能性が極めて高い。
特に、敵と味方を間違える天才、大米帝国においては。

あとなあ、先の大戦での大日本帝国の終戦への道筋が若干違和感あって。天皇がかなり積極的に動いてる。これまで読んで来た本では、そうではないと理解している。
まあ、「天皇制」と言ってるレベルで感じるところはある。

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Posted by ブクログ 2023年12月13日

出口戦略を考える上で必要な大国間戦争の歴史を総復習できる本でもあった

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紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ
優勢勢力の将来の危険が大きく現在の犠牲が小さい場合は紛争原因の根本的解決の極みに傾き、将来の危険が小さく現在の犠牲が大きい場合は妥協的和平の極みに傾く

戦争終結は早期...続きを読むになされればいいというわけでもない
平和の回復にとって重要なのは、それがどのような条件によってもたらされた戦争終結かということである

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Posted by ブクログ 2023年12月03日

賢者は歴史に学ぶというが、本書を参考に現在勃発している戦争を終結させることができれば良いと強く思った

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Posted by ブクログ 2023年07月05日

防衛省防衛研究所主任研究官による、分析、劣勢の場合は、受け入れるしかないが、優勢の場合は、将来に渡る禍根を断つか、これ以上の消耗を避けて、妥協するか選択しなければならない。
唯一のベトナムでの敗戦では、相互撤退から、単独撤退に条件を緩和し、自分だけの単独講和に近いかたちをとらざるをえなかった。
あま...続きを読むり条件を緩和し過ぎるとまた同じ戦争をしなければならないし、厳しい過ぎるとしなくて良い消耗をしなければならない。

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Posted by ブクログ 2022年07月17日

終戦休戦停戦の事例がまとまっているのは良かった。将来の危険と現在の犠牲のトレードオフという切り口なのだが、そこへの肉付けがもっと先があるのかな

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