千々和泰明のレビュー一覧
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戦争の終わらせ方として、これまで自分の頭にあったのは①敗者・弱者が自ら白旗を挙げる②勝者・強者が軍事力を背景に相手に降伏を強要し、相手が受け入れる③第三国による仲介・調停
この3つぐらいで、条約や協定も勝者の論理に裏付けられているものという認識でした。この本を読んで、戦争の終結は「紛争原因の根本的解決」を目指すのか「妥協的和平」を目指すのかによってそのプロセスにおける戦略も変化し、いかにタイミングが大事かということを思い知らされた。優勢勢力側の「将来の危機」と「現在の犠牲」を天秤にかけることはもとより、第三国の思惑や周辺国・関係国のパワーバランスを推測することも戦争終結への大切な視点である。近 -
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太平洋戦争(大東亜戦争)については明確なゴールがなかったように思う。対米で言えば石油をはじめとした資源の確保だったのかもしれないが、それならあそこまで戦域を拡大する必要はない。日中戦争についてはもっとよくわからない。国家としての意思はなかったのでないだろうか。
スタートがグダグダだったため、ゴールも見えないまま戦争を走るしかなかったのではないかと思う。
では、ゴールの設定が明確であればいいのかというとそういう簡単な話でもない。明確であってもそこに至るまでのアプローチが難しい場合や、明確ではあるがゆえに他の選択肢を(過度に)除外してしまうこともある。
この本では、将来の危険と現在の犠牲を天 -
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20230203-0304 戦争はいかに収拾すべきなのかについて、二度の世界大戦と朝鮮戦争、湾岸戦争、湾岸戦争からアフガニスタン、イラク戦争に至るまで、どのように収束してきたのかを戦争当事者双方の考え方を分析している。これら一連の戦争にはすべてアメリカが関わっているのは興味深い。筆者は最後に我が国の安全保障政策のあり方に言及している。実はこの本の前に筆者の最新作「戦後日本の安全保障」を読んだが、本作を読むことで、より理解が深まったと思う。現在ロシアによるウクライナ侵攻は続いており、この戦争後をどのようにすべきかについて知りたいと思ったのがこの本を読んだ動機だった。
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ロシアの一方的なウクライナへの侵略を機に読んでみた。紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマという視点は新鮮だった。ウクライナ紛争の例で言えば、どちらも将来の危険が大きすぎて停戦合意は容易でないことが予想できる。
ただ今一つ納得感がないのはどうしてだろう。何というか、こういった打算的な計算だけで戦争の成り行きが決まるとも思えない。戦争には大義が必要であり、もちろん当事国双方ともに彼らなりの大義があるのだが、国際社会からみてどちらに理があるのかで戦争の終わり方も変わってくるように思う。
このあたりを先行研究を含めてもう少し丁寧に解説してほしかった。 -
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ネタバレ「戦争なんてしなければいいのに」と感情的に考えてしまうが、
現場では何を考えているのか知ることができる良書。
以下読書メモ。
戦争がいかに終結するのかは
「紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」という視点から考えられる。
それは、優勢勢力側が「将来の危険」と「現在の犠牲」のどちらをより重視するかで決まる。
「紛争原因の根本的解決」の極に近いのが、
両世界大戦、アフガニスタン戦争、イラク戦争。
「将来の危険」の方が大きいと考えられたから。
「妥協的和平」の極に近いのが
朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争。
「現在の犠牲」が多大となることを恐れたから。
劣勢勢力側は、自分達が守ろうと -
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二十世紀の戦争の戦争終結を「紛争原因の根本的解決」と「妥協的和平」を両極に置き分析する。
根本的解決をしたからと言って戦後長く平和が保たれる訳ではない所が難しい。第一次世界大戦ではドイツへの過度とも言える懲罰がやがてナチスの台頭に繋がる。
一方、妥協的和平であったとしてもベトナム戦争の様に戦場となった国家が安定と成長を成し遂げる場合もある。アメリカが一方的に蹂躙し退却した余りに不条理な戦争ではあるが。
後は李承晩の頑迷さ。
出版後の事ではあるが、今のアフガニスタン情勢の変化について著書の考えを聞いて見たい。根本的解決をしたはずだがアメリカが撤退すると瞬く間にタリバンが政権を奪回した。国 -
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"戦争は始めるのは簡単だが、終わらせるのは極めて難しい" 古代ローマの歴史家サルスティウスの『ユグルタ戦争』である登場人物の言として記されているものだが、同じような言葉は最近良く用いられている。
本書は、戦争の終結に焦点を当てた研究で、著者の依拠する分析枠組みに基づき、具体の戦争について論じたものである。
その枠組みとは、『紛争原因の根本的解決と妥協的和平のジレンマ」というもので、優勢な側が「現在の犠牲の低減」と「将来の危険の除去」のいずれを重視するかによって、戦争終結の形態が変わってくるというものである。
そして、20世紀の戦争を題材として、終結に至る当事国の -
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ネタバレ読んでいるうちは理解していてもまた読み終わったら忘れていってしまうのですが。
それでも中高生向けの内容とのことでした。
安全を保障する国際体制には、
最悪を防ぐ、という動機がまずあるということに強く気づかされました。
小国が被害を被ることは最悪ではなく、大国の論理であり、その歴史を知ることはとても大事だなーと思いました。
力関係の変化
①近世以前の帝国:力の強い国が他の地域を征服していく
②近代の主権国家システム:一部の国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められる
③現代の主権国家システム:世界のすべての国同士で対等な関係に立ち、戦争は認められない
現在の国連による集団安全保障 -
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日本が敗戦した1945年8月。広島、長崎と相次いで原子爆弾を投下され、更には不可侵条約を締結していたソ連が満洲に攻め入るなど、8月15日の終戦に向けて直走る日本の姿がそこにはあった。現代史では日本の敗戦理由について、ソ連の日本進出、赤化を恐れたアメリカによる原子爆弾の投下が、ソ連に対する威嚇行動であったとする旨の内容で教えられるそうだ。私の勉強した頃がどうだったか、という記憶はないが、ソ連がヨーロッパでの対ドイツ戦を終わらせて、東へ進出するとなると、強大な兵力により日本が脅かされる事は間違いない。それまで太平洋を中心に日本と激戦を繰り広げながら多大な人的被害を出したアメリカがソ連の参戦を許して
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戦争を終結に至らせる要因を、「紛争原因の根本的解決」「妥協的平和」とし、それを見積もるものを「将来の危険」「現在の危険」と分類する。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争、アフガニスタン戦争をこの評価軸で分析し、総括する。
なるほどなあ、と思わせる。
現実に侵攻している、ロシアの侵略、イスラエルの進軍にも当てはまる気がする。
問題は、その「危険」「原因」の認識が現実に合ってるかどうかだという気がした。特に、「根本的解決」という言葉には欺瞞を感じる。そう思ってるだけで、勘違いの可能性が極めて高い。
特に、敵と味方を間違える天才、大米帝国においては。