日本文藝家協会のレビュー一覧
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何を混ぜてもカレーはカレー味になるように、純文学・エンタメ入り乱れる短編集だったけど、なんとなく全体的にまとまりもあったような気がした。
すごいのはハズレ作品が全くないこと。本当に全部面白い。ハイクオリティ。カレー食べたい。
特に好きだったのは、最も設定がバグってる澤西祐典さん『貝殻人間』。貝殻人間は海から貝殻とともに上陸し、生きている人間と瓜二つで、本人の生活を乗っ取ってしまう。そんな事件にあった八人が夜の海辺に集まり、キャンプファイヤーをしながらそれぞれの境遇を語り合う話。
貝殻人間に生活を乗っ取られて怒ったり、絶望したり、中には自分の人生を乗っ取ってくれてありがとうと感謝してる人も -
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「たとえば50年前の1973年がどんな年だったかを知りたければ(中略)その年に発表された小説を読むのがよかろう」
本書は2023年がどんな年だったかを知るための12人の作家による短編集。
マッチングアプリやフリマアプリ、仮想現実の世界にSNSの承認欲求などなど‥本書に登場したモチーフを思い出した順番に並べてみただけで、現実のできごとが次々に思い出される。最初に聞いた時は(そんな事があるんだ?そんな事ができるんだ!)と思っていた事が、数年で当たり前に受け入れられるようになるスピード感が頼もしくもあるが少し怖くもある。中でも印象的だったのは初めましての嶽本野ばらさんの「ブサとジェジェ」と、ヤな感 -
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「今」の作家による、「今」を描いた珠玉の作品たち。
高瀬隼子「休学(国産のため)」
近い将来本当にありうるのではと思ってしまい、正直ぞっとした。この世界は、「人と人との魂のこすれ合い」というものが消滅してしまった、非常にむなしい世界ではないか。
江國香織「川のある街」
「休学(国産のため)」ある意味対照的で、ノスタルジーがくすぐられる場面がいくつも登場し、多くの人の心を優しく震わせる普遍的な世界が作り上げられていて「うまいなぁ」と脱帽した。
金原ひとみ「ハジケテマザレ」。
新型コロナウイルスという現象を文学化することはまだまだ時間がかかるかもしれないが、それでも金原ひとみ「ハジケテマザレ」は、 -
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表題作である米澤穂信著の『輪廻の果てまで愛してる』を読みたくて。
ネタバレになってしまうけど、マニ車って信者じゃなくても効果あるのかな?独特の世界観でそう来たか!となった。解説者の真似になってしまうが、短篇、かくあるべし。
他の作品もそれぞれ個性が際立っていて、テーマもジャンルもバラバラで温度差のギャップが凄まじく、読むのに時間がかかった。初めて読む作家が多く、初心者向けにも良かったと思う。
特に、
『僕たちは のら犬じゃない 番犬さ』佐々木愛
『放送部には滅ぼせない』坪田侑也
『凪のからだで生きていく』窪美澄
が良かった。
窪美澄が田舎特有の女性の生きにくさを描いた作品だったので東京都出身 -
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カレーが直接出てくるお話は「夏のカレー」一編だけ。でも、この短編集に収録されているどの作品もスパイスがピリリと効いていおり、その意味ではこのアンソロジーの題名としては相応しいと言える。
表題作の「夏のカレー」は主人公が自分の世代と同時代を生きているので、感情的には没入できて、物語に入り込めた。ただ、あまりに偶然に出会いすぎるのが興を削いだ。
「ああ美しき忖度の村」はこのアンソロジーの中で一番コミカルで、この感じすごく分かると思わず忍び笑いをしてしまった。
山田詠美、武石勝義の作品はどちらも少し湿り気を帯びていて人生の厳しさや虚しさを感じさせるものとなっている。
お初の作家さんも何人かい -
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どれも秀逸!
まさにタイトルのカレー通り、上手いだけではないピリッとスパイスを利かせたようなお話ばかりだった!
浮気性男とその家族を下北沢のランチを通して
カラッとした描いた『下北沢の昼下り』
奇妙な夢にまつわる家族を描いた『夢見る家族』
AIが殺人犯を追求する、
『AI detective 探偵をインストールしました』
自分とそっくりの人間が海から打ち上げられる
『貝殻人間』
トー横女子とホストの悲しい終焉を描く
『ジョン&ジェーン』
猪田という同級生が亡くなったらしい…
一体誰??『猪田って誰?』
実はおばあちゃんは違う人だった!
母の思い出話から実祖母の姿が思い浮