日本文藝家協会のレビュー一覧
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世相を反映した短編集。どれも楽しませてもらった。自分が一番好きなのは「僕たちは のら犬じゃない 番犬さ」。一言で理由を言えば、共感、心温まるから。読後お風呂に入る前に、小学生である主人公と鈴木くんの気持ちになって、この台詞を大きな声で叫んでる風に言ってしまったくらい。
解説で説明されている、著者の佐々木さんが描く「うまく折り合いをつけることが下手な」人間である(と自分で思っている)自分は、現実の大人世界で、彼らのように「もっと大きな声で」と執拗に言われてる気がしていて、共感したのかなぁ。
短編集を好きな理由の一つに、今まで著書を読んだ事のない魅力的な作家さんを、作品を通して紹介してもらえる事がある。本書を読み、もっと読んでみたい!と思う作家さんが増えて嬉しい。 -
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何を混ぜてもカレーはカレー味になるように、純文学・エンタメ入り乱れる短編集だったけど、なんとなく全体的にまとまりもあったような気がした。
すごいのはハズレ作品が全くないこと。本当に全部面白い。ハイクオリティ。カレー食べたい。
特に好きだったのは、最も設定がバグってる澤西祐典さん『貝殻人間』。貝殻人間は海から貝殻とともに上陸し、生きている人間と瓜二つで、本人の生活を乗っ取ってしまう。そんな事件にあった八人が夜の海辺に集まり、キャンプファイヤーをしながらそれぞれの境遇を語り合う話。
貝殻人間に生活を乗っ取られて怒ったり、絶望したり、中には自分の人生を乗っ取ってくれてありがとうと感謝してる人も。感情の書き分けが面白かった。個人的な話が、後半社会性を帯びていくところも最高だった。
萩原浩さん『ああ美しき忖度の村』も面白い。忖度祭開催の会議の一部始終。本当にこれくらい進まない会議ありそう。笑った。
武石勝義さん『煙景の彼方』も面白かった。タバコの煙で作った輪のなかに、映像が見える話。なんとその映像、幻ではなく……。 -
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「たとえば50年前の1973年がどんな年だったかを知りたければ(中略)その年に発表された小説を読むのがよかろう」
本書は2023年がどんな年だったかを知るための12人の作家による短編集。
マッチングアプリやフリマアプリ、仮想現実の世界にSNSの承認欲求などなど‥本書に登場したモチーフを思い出した順番に並べてみただけで、現実のできごとが次々に思い出される。最初に聞いた時は(そんな事があるんだ?そんな事ができるんだ!)と思っていた事が、数年で当たり前に受け入れられるようになるスピード感が頼もしくもあるが少し怖くもある。中でも印象的だったのは初めましての嶽本野ばらさんの「ブサとジェジェ」と、ヤな感じ極まる(褒めてます)の村田沙耶香さんの「おろか」の2篇。
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「文学2023 日本文藝家協会 編」を読んだ。
以下の12篇
らっきょうとクロッカス 桜木紫乃
キャンプ 井戸川射子
二千回飲みに行ったあとに 津村記久子
文士と夜警 筒井康隆
砂漠の検問所 池澤夏樹
パーミション 岡崎祥久
ママと戦う 西加奈子
私の労働 町屋良平
霊たち 三国美千子
スメラミシング 小川 哲
偶然の本質 辻原 登
家畜人ヤプ子 山田詠美
お名前を存じ上げていてかつ作品を読んだことがある方が六人。
お名前を存じげてはいるけれど作品を読んだことがない方がお一人。
お名前すら存じ上げていない方が五人。
(読書が好きだと言っておきながら半分近くの方を存じ上げないというのはどうなんだろうな)
津村記久子さんと小川哲さんはさすがだなぁ。
岡崎祥久さんは初めてですが、「パーミション」は『おお!』と唸りました。 -
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「今」の作家による、「今」を描いた珠玉の作品たち。
高瀬隼子「休学(国産のため)」
近い将来本当にありうるのではと思ってしまい、正直ぞっとした。この世界は、「人と人との魂のこすれ合い」というものが消滅してしまった、非常にむなしい世界ではないか。
江國香織「川のある街」
「休学(国産のため)」ある意味対照的で、ノスタルジーがくすぐられる場面がいくつも登場し、多くの人の心を優しく震わせる普遍的な世界が作り上げられていて「うまいなぁ」と脱帽した。
金原ひとみ「ハジケテマザレ」。
新型コロナウイルスという現象を文学化することはまだまだ時間がかかるかもしれないが、それでも金原ひとみ「ハジケテマザレ」は、コロナと若者をさわやかに描いている。 -
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少し尖った作品が多めだったかと。
文芸雑誌に載っただけの作品が多いので、初読みばかりでした。好みは「放送部には滅ぼせない」かな。「凪の~」は田舎の描写が刺さる。北も南も田舎はまだまだ閉塞感溢れてます。大人っぽい話も多く、中学校以上かな。
「土」篠田節子
年に二百万を越える固定資産税を払わないといけないような500坪の土地に固執し、農地を耕す緒方。訪問看護ステーションで働く真奈美はガンに侵されゆく緒方の様子を見ながら、こうなってしまった過去を知っていく。
「万年主任☆マドギュワ!」佐川恭一
本を読むことだけが趣味のいけてない宍戸(42)は公務員だがたらい回しのように部署を変わってすごす、一種の窓際。そんな宍戸は本から出てきたへんな妖精に変身を促され、黒塗り団なる敵と戦うことになる。
「カタリナの美しき車輪」斜線堂有紀
聖カタリナ愛心学園の卒業生である私は、カタリナの教師の発言が炎上したのをきっかけに、悪意を向ける先の架空SNSを複数作り出す。狂喜に満ちた話。
「僕たちは のら犬じゃない 番犬さ」佐々木愛
小六の時、互いに学校での生きづらさを感じていた鈴木くんと私は学芸会でチョイ役を得るのだが、たった一つのセリフにつまづく。
「放送部には滅ぼせない」坪田侑也
学校でほとんど役割のない放送部は、体育祭のアナウンスはやっていて、リクエスト曲を受け付ける箱がある。部室のまえには人はほとんど通らず、ほとんどのリクエストは昇降口側のほうにはいるのだが、ある日体育祭を呪うような手紙が入っていた。
「鳶の娘」宮下奈都
王の娘という不思議な架空設定あり、王は何者なのか?なぜ娘探しがあるのか?などわからないなか、娘だと思われた高校生がいじめられ、色々思う。
「花泥棒」坂崎かおる
ダリアさんという名前でよばれている人が頼んだグラスの修理について、承けた側からの応答。
「凪のからだで生きていく」窪美澄
月経前症候群に悩まされ、生理の時もつらい大学生が故郷の閉塞敵な生活とその体調の辛さを重ねてつらつら考える。とても素敵なメンバーや大家さんのいるアパートに住んでいて、想像して楽しかった。このアパートの人は、みんなよく泣くんだよ。
「輪廻の果てまで愛してる」米澤穂信
嘘つきで人のもの盗んで、バイク乗りうまくて、逃げていた女性が凄くいいやつに知り合い、愛して、訳あって来世で同じ階層に生まれ変わろうと思ったら、ここから徳を積まなくては。 -
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表題作である米澤穂信著の『輪廻の果てまで愛してる』を読みたくて。
ネタバレになってしまうけど、マニ車って信者じゃなくても効果あるのかな?独特の世界観でそう来たか!となった。解説者の真似になってしまうが、短篇、かくあるべし。
他の作品もそれぞれ個性が際立っていて、テーマもジャンルもバラバラで温度差のギャップが凄まじく、読むのに時間がかかった。初めて読む作家が多く、初心者向けにも良かったと思う。
特に、
『僕たちは のら犬じゃない 番犬さ』佐々木愛
『放送部には滅ぼせない』坪田侑也
『凪のからだで生きていく』窪美澄
が良かった。
窪美澄が田舎特有の女性の生きにくさを描いた作品だったので東京都出身なことがちょっとショックだったが笑
坪田侑也は初めて読んだが、短篇として良くできた青春ミステリだったので他の作品も読んでみたいと思った。 -
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カレーが直接出てくるお話は「夏のカレー」一編だけ。でも、この短編集に収録されているどの作品もスパイスがピリリと効いていおり、その意味ではこのアンソロジーの題名としては相応しいと言える。
表題作の「夏のカレー」は主人公が自分の世代と同時代を生きているので、感情的には没入できて、物語に入り込めた。ただ、あまりに偶然に出会いすぎるのが興を削いだ。
「ああ美しき忖度の村」はこのアンソロジーの中で一番コミカルで、この感じすごく分かると思わず忍び笑いをしてしまった。
山田詠美、武石勝義の作品はどちらも少し湿り気を帯びていて人生の厳しさや虚しさを感じさせるものとなっている。
お初の作家さんも何人かいたが、どの作品も面白く水準以上のアンソロジーであると感じた。