片岡夏実のレビュー一覧
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ネタバレ世界は、なんとフラクタルにできているんだ!
分厚いけれど飽きさせない導入部、そして研究者の歴史も読み応えあって「へぇー」の連発。
植物の根≒人間の腸
であり、
土壌環境≒腸内環境
なので、肥満もアレルギーも癌もうつ病も、栄養満点の有機的な土壌で作られた野菜を食べれば、ほぼOKということらしい。
植物が健康的に育つには、土が大事。
お茶の出涸らしや動物の糞といった自然のものを土に混ぜば、微生物が勝手に育ててくれる模様。
農薬を使うと植物の根が張りにくく、土の栄養価も激減する。
微生物は、土にも内臓にもいて、よき働きをしてぅれるので、味方にした方がいい。 -
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すごい!おもしろい。
はじめの岩だらけの庭の土づくりのところからどんどん引き込まれた。
人間の消化管と植物の根の働きが似ているって、ひゃー。
自然界の様々な微生物のはたらきの話はちょっとややこしいけど、歴史的に微生物を人間が見つけてどうやって理解してきたかという話は興味深いし、共著者がガンになってしまってから食事を見直す話もなるほど、であった。食生活を変えることは腸内環境を整えること、豊かな土壌を作ることと同じなのだ!
人間も自然の一部だということをあらためて実感した。このコロナの時代に、またちょっと違った目でウイルスとか微生物を捉える視点を得た感じ。 -
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土を肥沃にしているのは微生物、我々の内臓である大腸を効果的に動かしているのも微生物、こんなところに共通点があるとは気付かなかった。そして植物や動物という目に見えるところに重要なものがあるのではなく、RNAや微生物という目に見えないところに重要なものがあるという考え方は”星の王子さま”からも教わった。非常に知的好奇心のそそられる宝物のような1冊に巡り合えた気がした。我々の食べているものも精白した糖類は健康のためにも控えよとのこと、細菌は有益、16SrRNAはリボソームを作るのに必要、全ての植物にはマイクロバイオーム、根、葉、芽、果実、種子を覆う微生物の集合体である、SCFA(酢酸、酪酸、プロピオン酸)には薬効ある、微生物の凄さを再度感じてみたいと思った。
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根圏と大腸という、これまで省みられることの少なかった「世界の隠れた半分」における、驚くほど精巧なフィードバックループ。本書は両者における微生物たちの役割に光を当てるとともに、利便性と快適性を重視するあまりこの豊潤な小宇宙を軽視してきた現代人の生活に警鐘を鳴らす。地質学者と環境計画学者の夫婦の共著だが、それぞれのアネクドーツが生化学という専門外領域への関心を呼び覚まし、本書の執筆に繋がったというのが面白い。
本書は微生物の発見の歴史や、進化の過程における「シンビオジェネシス(共生)」の解説を経たのち、人間の農作物への関与の歴史の詳述に入る。モンゴメリーは、植物の生長に必要な窒素・カリウム・リンの供給を重視する「最小律」に過度に傾斜してきた19世紀以降の欧米農学を批判し、自身の庭づくりの体験から、サー・アルバート・ハワードが提唱した、化学成分に加え細菌類と植物の相互作用である「肥沃度」を重視すべきと説く。
ここで紹介されるのが農作物と土中微生物の共生により形作られる「根圏」。微生物は作物の根が化学成分を吸収しやすくするタンパク質やホルモン等を提供し、見返りに農作物は炭素やフィトケミカルを分泌し有益な微生物を呼び寄せる。殺虫剤の多用はこのような共生関係を破壊し、結果的に植物の抵抗力を損なっていると警告する。
ここまでが本書のいわばA面。盤面をひっくり返してB面に針を落とすと、共著者のもう片方であるA・ビクレー自身のガン罹患体験が語られる。慢性的な炎症がDNAコピーミスを惹起し、ガンの遠因となることを確認した後、GALT(消化管を取り巻く免疫組織)における腸内細菌・セグメント細菌が、免疫抑制/促進のバランスをとる役割を果たしていることが紹介される。もちろんここでの記述は「根圏」におけるのと同様、人体とこれらの非病原性細菌を含むマイクロバイオームの共生(commensalism)にフォーカスが当てられたものとのなっている。
ここから感染症の原因としての微生物に人間がいかに対処してきたが語られる。微生物を一掃することで感染症が撲滅できるというパスツールの信念、治療とは病原菌の特定であり、培養できない微生物は研究の埒外としたコッホのスタンスは、人類への重要な科学的貢献ではあったが、副作用として「理解するより撲滅せよ」という短絡を生み、その後の抗生物質の多用に繋がったことが指摘される。
そして、リポ多糖(内毒素)を産生する細菌を優遇し、炎症増、代謝低下を惹起する欧米的食生活へのカウンターとして、中国の細菌学者趙立平により提唱されたWTP(全粒・伝統的食材・プレバイオティクス)が紹介される。全粒穀物などの多糖類(食物繊維・セルロース等)はその消化しにくさのため小腸で吸収されるのではなく大腸発酵細菌により発酵され、SCFA(短鎖脂肪酸…酢酪酸・酢酸・プロピオン酸)という人体に有益な物質に変換されるというのだ。欧米系の、特に精白された穀物中心の食事が、早すぎる消化により糖分が急速に吸収されるため、余分な糖分が脂肪として蓄積され、内毒素の存在の下ではIL-6の放出により炎症を誘発してしまうのとは対照的だ。有益な生きた細菌をそのまま取り込む「プロバイオティクス」とともに、慢性的炎症を抑え免疫系を調整する細菌との共生を前提とした食生活への転換が提唱されている。
現在流通している食品の中には、本書で紹介されているアイデアが反映されたものがすでにある。それはもちろん一部の動きでしかなく、未だに農業の現場では消毒薬が爆撃のように使用されているし、畜産や医療においても抗生物質が使用されなくなることは当面ないだろう。しかし結局のところ、地表の上と下は、人体の表と裏をひっくり返したのと相似形なのだ。そう考えてみると、「世界の隠された半分」にいるのは微生物などではなく、通常彼らの宿主とされている我々人間の側なのではないかと思えてくる。人間は、豊潤な生物世界の片隅での部分最適にとらわれるあまり、ロングランでの有益性に対してブラインドでありすぎたということなのだろう。 -
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著者のモンゴメリー氏は地形学の専門家だが、人類学や社会学等幅広い視点から、土壌の大切さを訴えている。300ページを超える大著だが、著者の主張を一言で伝えると「土壌は有限の資源であり、消失速度が生成速度を上回れば、いずれ土壌は枯渇し、その文明は消え去る運命になる。」
農業というと他の産業よりも環境に優しいイメージがあったが、実は有史以来自然を最も破壊した産業はこの農業だった。機械や薬剤に頼った現代の農業だけでなく、天然素材だけで行われた古代の農業も含め、土壌に対する配慮を忘れ土壌を消耗すれば後に残るのは不毛の大地だけ。メソポタミア、エジプト、ギリシャ、ローマ…古代の文明が栄えたこれらのエリアが現在、一面の砂漠や荒涼とした大地になっているのは、無秩序な農業のせいだった。古代文明は土壌の消失により衰退したが、近代の欧州では失われた土壌を補うために植民地支配へとつながった。そして、現代は経済性を重視し、機械と薬剤で土壌の消失を加速させている。土壌はただの土でなく、再生困難な希少資源であり、食糧生産や人口を通じて、経済や社会に如何に大きな影響を与えている現実を直視しなけれなならない。
本書を通じて、著者は土壌枯渇の危険性に強い警鐘を鳴らす一方で、リスク回避のための処方箋も提案している。それは古くて新しい農法、有機農業である。有機農業では土壌を生物学、生態学的にとらえ、土壌の生産性を維持しながら作物を収穫する。正しく実践すれば、その生産性は現代の慣行農法を上回るポテンシャルがあるという。薬剤に頼らずに厩肥や被服植物を活用する有機農法は農家にとって負荷がかかるが、経済重視の米国でも有機農法が広がりつつあるという事実は、本書で述べられた数少ない安心材料である。
著者は時間、空間的に幅広い調査を行っているが、いずれも畑作の事例が中心で、アジアで盛んな米作に関する記述はない。日本で古来から続けられている米作は地形や気象の条件等の制約はあるが、持続的な食料生産に対する別解なのかもしれない。この点については著者の今後の調査活動に期待したい。
日本は地理的に高い土壌回復力に恵まれ、米作の文化が持続的な食糧生産を支えてきた。しかし、その恵まれた環境こそが、土壌資源が恒久であるかのような錯覚をもたらしているかもしれない。自分がそうであったように。足元の問題を再認識するためにも、是非、本書をお勧めする。 -
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要約:土壌は食料生産の根幹であり、人類生存に欠かせないものだ。人口増加に伴い過度の耕作をし、土壌が流出・枯渇したために人口を支えられなくなり衰退した文明は枚挙にいとまがない。現代文明も同じ轍を踏みつつある。
メモ:
アダムとイブのアダム←adamaヘブライ語の土・大地
ホモサピエンスのホモ←homusラテン語生きた土壌
人口増・狩猟対象動物の現象を受けて農業を始めざるを得ずに人口増につながった、という説
氾濫原の生産力を人口が凌駕し→斜面耕作→土壌流出→生産量減少→文明崩壊、というパターン
大航海時代の背景には人口増があったというが、それと同時に欧州の土壌流出も激しかった
中国には40世代以上に渡り安定して収量を確保できている地域がある。そこでは豊作の時も作物を外部に売らず、自分たちで食べて糞尿を堆肥にしている。地域循環が実現されている。
グアノ、ナウル、ハーバー・ボッシュ法、BASFという懐かしい名前もちらほら。つながってくるなぁ。
飢餓の解決は生産量を増やすことではもたらされない
都市農業でカロリーベースで自給率どこまで上がるものなのだろうか -
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きわめて地味な存在ながら、まさに陸上生命の基盤である土が、歴史を通していかに収奪されてきたかが繰り返し説明されている。
人口も土の肥沃度とともに周期的に増減を繰り返してきた。初期のヨーロッパの集落では、人口が増加して土地の利用が拡大した後、土壌浸食によって人口が減少するパターンが青銅器文化が出現するまで続いた。農耕の開始時期や古代文明の繁栄の時期に土壌の喪失がピークを迎えると、その後人口は低迷。中世にはまた人口が増加して、現在は第3のサイクルにある。
ヨーロッパでは時代を追うごとに、中世の三圃式農業、根粒菌が共生するアルファルファとクローバの導入、17世紀初頭の穀草式農法によって収穫を高めてきた。土壌の肥沃度を維持、回復させるための試行錯誤がうかがえる。
今日の人類の繁栄を支えている工業的農業についても、その歴史を説明し、限界を論じている。1843年、イギリスで窒素とカリウムを添加した過リン酸肥料を製造が開始された。1913年には、ハーバーボッシュ法による工業用アンモニアの生産を開始。1929年には、天然ガスによるアンモニア生産が始まった。アメリカでは、1960年代末には農業機械と農薬を用いる企業経営の工場式農場が支配しはじめた。緑の革命により、1950年から1970年代前半の間に全世界の穀物生産量は2倍近くになった。しかし、人口が並行して増えたため、緑の革命が届かなかった中国を除けば、1970年から1990年にかけての飢餓人口は10%以上増えている。
農業は石油消費の30%を占めている。第二次世界大戦前、穀物を輸入しているのは西ヨーロッパだけだったが、現在は北米、オーストラリア、ニュージーランドといった一握りの国だけが大規模な穀物輸出国である。タバコは代表的な食用作物の10倍以上の窒素と30倍以上のリンを土壌から奪うとか、綿花は天然の草地よりも1万倍速く浸食するといった記述も胸が痛い。
全世界で1ヘクタールあたり年間平均10〜100トンが浸食されており、土壌生成速度の10〜100倍速い(ページによっていろいろな数字が記載されている)。アメリカでは、独立から2世紀の間に表土の3分の1が浸食された。土壌浸食と土地の劣化により、世界の利用可能な土地面積の1%にあたる毎年1200万ヘクタールの耕地が消えている。過去50年間に放棄された農地の面積は、現在の耕地面積に等しい。1980年代には、耕作地の総面積が歴史を通して初めて減少に転じた。
文明が存続する長さは800〜2000年(30〜70世代)で、30cm〜1mの土壌が完全に侵食されるのにかかる年数と一致する。文明盛衰の原因は気候変動ではなく、土壌であるとの主張は説得力がある。著者は、化学肥料に依存した農業から、土壌を地域に適応した生物システムとして扱う農業への転換が必要だと主張する。そして、政府の補助金や税制上の優遇措置によって、短期間しか農業で収益を得られない土地での伐採や耕作を批判している。国際社会による経済封鎖によって、やむを得ずながら生物学的な施肥と害虫駆除の手法を導入したキューバの例が興味深い。
内容は非常に満足だが、訳が読みにくいのが残念。何度読んでもさっぱりわからない箇所も何か所かあった。 -
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ネタバレミツバチの会議:
なぜ常に最良の意思決定ができるのか
一万匹ものミツバチが新たな女王蜂を擁して新しい巣を作るために旅立つ分蜂。
どうやって最も適切な新しい巣の場所を選ぶのか? どうやって旅立ちの時を決めるのか? 何故まっすぐに新しい巣の場所に飛ぶのか? 多くの疑問一つ一つを丁寧な実験と観察によって明らかにしてくれます。
直接民主主義への応用も含めて、どのように会議に於いて最良の選択を行うのか?に関しての考察もあります。
・意思決定集団は、利害が一致し、互いに敬意を抱く個人で構成すべし
・リーダーが集団の考えに及ぼす影響をできるだけ小さくすべし
・多様な解答を探るべし
・集団の知識を議論を通じてまとめるべし
・定足数反応を使って正確性、一貫性、スピードを確保すべし
示唆に富んだ一冊です。
竹蔵 -
Posted by ブクログ
ちょうど読み終えたところ、今日の「クローズアップ現代」が「腸内細菌の知られざる力」とあったので、先を越してご紹介(この本が紹介されるかはわかりませんが…)。
植物も動物も如何に微生物との共生が重要かということを教えてくれる書籍です。人間の身体には数キログラムのマイクロバイオーム(≒微生物)が棲んでおり、ヒトの皮膚1平方インチに約50万個もの微生物がいるとのことです(著者はこの面積に住む微生物の数は、「ワイオミング州の人口とほぼ同じ」と表現していますが、自分流には、故郷の「鳥取県の人口とほぼ同じ」と思いました)。
植物は根から微生物が喜ぶ物質を放出し、代わって微生物は必要な養分を根(植物)に供給するそうですが、腸も植物の根と同様の役割を果たしており、「免疫系の約80パーセントは腸、特に大腸に関係している」ということを実証しています。全粒穀物を推奨していますが、精白した穀物は、単純糖質となって身体への吸収が早いのに対して、全粒穀物の場合には糖成分をゆっくりと吸収するので腸(身体)に良いのだという部分はなかなか読ませる内容でした。
プレートの半分を野菜・果物、残り半分の多くを植物性タンパク質、残りを全粒穀物で構成する「ハイジの皿」という図柄も紹介されますが、やおら微生物にとって棲みやすい食事にしようと思わせてくれる1冊です。 -
Posted by ブクログ
冷蔵庫は現代社会に生きる者にとって必要だ。痛みやすい飲食物を保管したり、電子レンジでチンするだけで食べられる冷凍食品を冷凍したり、便利な電化製品だ。
しかし、そんな便利な生活を手にしたのは、冷蔵庫の発明、普及、冷凍食品の進化などの要因が積み重なった結果だ。
冷凍と人間の長い歴史に光を当てたのが今回の本だ。
冷蔵に関する記録が残っている一番古い時代はいつだろう。それはユーフラテス川西岸にあったシュメールの都市、テルカにあった。紀元前18世紀までさかのぼる。現在のシリアのイラク国境近くに位置する。
1933年の発掘調査で出土したマリ文書で分かった。「いかなる王もかつて建てられたことのない」テルカの氷室をマリの王ジムリ・リムが命じたことを伝えている。
そんな昔までさかのぼるとは思いもよらなかった。
家庭用冷蔵庫の発明は意外な人物で驚いた。フランスの修道士アベ・マルセル・オーディフレンだった。オーディフレンは、ワインを冷やす機械をいじっていた。1903年には、二酸化硫黄を使った実用模型を作っていたという記録があった。
しかし、電気冷蔵庫の権利を取得したのは、オーディフレンではなく、ゼネラル・エレクトリック社で、1911年に獲得した。
気になる値段だが、1000ドルだった。当時の自動車の価格の2倍だ。手に入れることのできるのは、一部の富裕層に限定された。
冷蔵のない人生なんて考えられない。自分の家には冷蔵庫を持たずに近くのコンビニを冷蔵庫代わりにしている人もいるようだが、冷凍技術の発達の恩恵を受けているからできることだ。真夏でも冷たいアイスクリームを美味しく味わえることを感謝しながら思う。 -
Posted by ブクログ
高温多湿の夏という季節をもつ日本において、腐敗・発酵・微生物の作用はけっこう身近なものだと思っていた。
北米在住の著者にとっては、そうではなかったらしい。自分をとりまく庭などの環境、そして病を患った自身の体の感覚を経験的に綴りつつ、科学的検証も同時に併記している。著者夫妻はもともと研究畑だが、微生物については対象外とのこと。複雑に絡み合う自然界、ヒトも含めてその繋がりは分野以外となると、科学的根拠に基づいて話すのは難しい。経験をもとに科学的リテラシーを持って推敲された文章と訳文は説得力がある。
人と微生物、人と自然の共生について、改めて問い直す文章は、コロナ真っ只中の現在に非常に響く内容だ。