片岡夏実のレビュー一覧
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「土の文明史」「土と内臓」を読んですっかりデイビッド・モンゴメリーのファンになってしまったので、邦訳の中では一番新しい「土と脂」を読んでみた。
原著のタイトルは「あなたの食べ物は何を食べて育ったのか」であり、植物は土、動物は植物や飼料を、そして人間は動物・植物を食べるという食の連鎖に注目することがが公衆衛生において強い意義を持っていることを本書は提示している。
「野菜は健康にいい」「脂の多い食べ物は健康に悪い」と考えていたり、栄養学の勉強をかじって、「ピーマンにはこれぐらいの栄養が含まれている!」という理解の仕方をしている人は、本書でその見識を改めることになるだろう。
どんな肉も魚も野菜も、そ -
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土壌環境と腸内環境を結びつける微生物の働きに関して、著者の実体験と学術研究を交えながら迫っていく著作。
農学と戦争の切っても切れない関係の中で推進された化学肥料+農薬を重視した農業が土壌の微生物叢を破壊してきた。
他方、抗生物質を多用する医学界もまた、腸内の微生物叢を破壊するような医療を当たり前のものとしてきた。
それらの結果として、農産物は十分な栄養価を失い、大腸は免疫機能を失いつつある。
大腸の表と裏を逆にしたら植物の根と同様の機能を持っているようにみえ、両者はともにそれ単体では得られない機能を微生物との共生によって得ているというのは世界観の変わる指摘だった。
人間そのものの消化機能は多く -
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アン・ビクレーとデイビッドモントゴメリーの共著「土と内蔵―微生物がつくる世界」だ。初めて正式なタイトルで書いた。いつもは土と内蔵と呼んでいたが、正しくは微生物がつくる世界も含まれる。この二ヶ月の間、この本にすべてを費やしてきた。来る日も来る日も読書に励み、文脈と悪戦苦闘し、その末にようやくこうして読破したのだ。まあ、本当に読書に励んでいたらとっくに読み終えていそうだが。それではこんなことを延々書いていても仕方がないので、いよいよ感想文に入っていく。ちなみに今年の夏休みの宿題にも読書感想文が出ているので、今年はこれで書こうと思っている。まず、本書は微生物と人類の密接な関係と歴史を大まかに振り返る
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肥沃な土壌は有限な資源であり、人類の持続可能性のためには土壌を意識する必要があるというのが本書の趣旨。
持続可能性の概念が広まった現代においては、「それぐらい知ってるよ」と感じる人が多いかもしれないが、さて、どれぐらい知っているのだろうか?
本書を読んでいて第一に驚いたのは、「土壌とはこれほど失われやすいものなのか」ということだ。農地を耕すことは良いことだと想像していたが、耕すことが土壌の侵食を数十倍に早め、農地の寿命を短くすることがあるということも、都会暮らしの私には知らないことだった。
本書では取り上げられていないが、以前、オーストラリアに行った際にアボリジニは6万年にわたり、持続的な土 -
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私の内臓は土壌であり、栄養素を吸収する腸は植物の根である。土壌環境は微生物のバランスで決まり、ミネラルを必要とする。人間は細菌と共に生きるのであり、植物も細菌と共に生きている。マイクロバイオーム。何だかストンと納得するような言説であり、健康を改めて意識し、その知識をそれこそ根っこから吸い上げられるような、面白い本だ。
ミネラル欠乏について。銅はヘモグロビンが正しく機能するためと、正常な骨形成のために欠かせない。マグネシウムは少なくとも300の酵素反応に必須の元素で、不足すると注意欠如多動性障害、双極性障害、うつ病、統合失調症の原因に。鉄不足は貧血と学習や仕事の能力低下を。亜鉛は少なくとも20 -
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原題は「Dirt:The Erosion of civilization」=「泥:文明の浸食」。その名の通り、文明がいかに表土を侵食し、貴重な資源を食いつぶしてきたかという歴史である。人類が農耕を始め、鋤を使って土を耕起するようになってから表土の流出が始まった。それは、ローマ帝国やマヤ文明を滅ぼし、今もアフリカの飢餓を招き、アメリカや中国を衰退させようとしている。それに拍車をかけたのが、石油から生み出した肥料を土に施して収量を増やす「緑の革命」だった。しかし、遺伝子操作と農業化学による収穫増は、もはや限界に来ている。有限の資源である土を、いかに保全し持続させてゆくか。そこに人類の未来がかかって
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この本のことは、数年前から知っていた。
分厚さと値段の高さから敬遠してたが、
今、感染症が広がっている、
このタイミングで読んで良かったと
思える一冊。
家庭菜園的な畑をやっていて、
自然栽培風にやりたくて苦戦していた理由と
土の中の微生物と野菜の共生、人間と常在菌や
腸内微生物の関係が同じような働き方を
している不思議感。
個人的に畑での野菜のお世話で
元気になれるのは、自然の癒やし効果かと
思っていた。
でも、微生物も関係していたのだとわかった。
畑の土の中の微生物は、私にとっても常在菌として
良い方向に働いているのかもしれない。
慣行農法で育った野菜と、
有機的な資材を投入して、 -
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ネタバレ世界は、なんとフラクタルにできているんだ!
分厚いけれど飽きさせない導入部、そして研究者の歴史も読み応えあって「へぇー」の連発。
植物の根≒人間の腸
であり、
土壌環境≒腸内環境
なので、肥満もアレルギーも癌もうつ病も、栄養満点の有機的な土壌で作られた野菜を食べれば、ほぼOKということらしい。
植物が健康的に育つには、土が大事。
お茶の出涸らしや動物の糞といった自然のものを土に混ぜば、微生物が勝手に育ててくれる模様。
農薬を使うと植物の根が張りにくく、土の栄養価も激減する。
微生物は、土にも内臓にもいて、よき働きをしてぅれるので、味方にした方がいい。 -
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すごい!おもしろい。
はじめの岩だらけの庭の土づくりのところからどんどん引き込まれた。
人間の消化管と植物の根の働きが似ているって、ひゃー。
自然界の様々な微生物のはたらきの話はちょっとややこしいけど、歴史的に微生物を人間が見つけてどうやって理解してきたかという話は興味深いし、共著者がガンになってしまってから食事を見直す話もなるほど、であった。食生活を変えることは腸内環境を整えること、豊かな土壌を作ることと同じなのだ!
人間も自然の一部だということをあらためて実感した。このコロナの時代に、またちょっと違った目でウイルスとか微生物を捉える視点を得た感じ。 -
Posted by ブクログ
土を肥沃にしているのは微生物、我々の内臓である大腸を効果的に動かしているのも微生物、こんなところに共通点があるとは気付かなかった。そして植物や動物という目に見えるところに重要なものがあるのではなく、RNAや微生物という目に見えないところに重要なものがあるという考え方は”星の王子さま”からも教わった。非常に知的好奇心のそそられる宝物のような1冊に巡り合えた気がした。我々の食べているものも精白した糖類は健康のためにも控えよとのこと、細菌は有益、16SrRNAはリボソームを作るのに必要、全ての植物にはマイクロバイオーム、根、葉、芽、果実、種子を覆う微生物の集合体である、SCFA(酢酸、酪酸、プロピオ