田村美佐子のレビュー一覧
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ミステリ。修道女フィデルマ。
シリーズ長編の9作目。
5作目、7作目、9作目と、飛び飛びで読んでしまっているな…。
今作はエイダルフが殺人罪で捉えられているという設定により、かなりスリリング。
おおまかなプロットは予想通りとはいえ、ハラハラしながら一気に読んだ。
ミステリとしては、関係者から証言を集め、証拠となる物品を探し、得られた事実を照らし合わせて、法の下に真実を探求する流れが特徴。
重厚な本格ミステリ特有の論理的推理を、より分かりやすく表現しているように思える。
盲目の男ダルバッハが非常に良いキャラ。
著者の『蜘蛛の巣』でも障害を持ったキャラクターが強い個性を放っていた記憶がある。
そ -
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ネタバレ修道女フィデルマ・シリーズ。
「まぐさ桶の犬」で葉村晶がこのシリーズの新作を読んでいて、
新作がでたのに気が付いた。
そういえば長年の友、エイダルフが幼い修道女への暴行と殺人で死刑判決を受けた、
という話で終わっていたんだっけ。
この時代のアイルランドでは、
殺人でも「血の代償」と呼ばれる賠償金を支払い、
公民権をはく奪され厚生施設で働かされることはあっても、
死刑になることはなかったので、
自分の気持ちに気が付いたフィデルマにとっては衝撃的だったろう。
当然フィデルマが駆けつけると、
エイダルフは(これまた当然だが)まだ処刑されていなかったが、
エイダルフを犯人だと証言した修道女は行方不 -
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7世紀のアイルランドという珍しい時代を描いた、修道女フィデルマのシリーズ。
8作目、後半。
これは中でも、船旅が舞台なのと、フィデルマの若い頃の恋人が出てくる、珍しい話です。
王の妹であり勝気で勉学好きな修道女フィデルマ、でもまだどう生きるかははっきり決めていなかった頃。
騎士と恋に落ちて結婚を考えましたが、手ひどくふられてしまった。こんな恋愛があったとは。
その相手が今は修道士になって同じ船に乗っていた。
当時のキリスト教は聖職者でも結婚できて、男女が一緒に暮らして夫婦で子育てをする修道院もあったのです。
この時代に、ローマでは高位の聖職者については独身が推奨されるようになっていくのです -
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上巻の冒頭部分に、七世紀のアイルランドの社会制度やキリスト教信仰についての解説が豊富にあり、いままで脚注や巻末の解説で紹介されていた内容を補うボリュームでとても良かった。
古代のアイルランドの著名な法律家として何人もの女性が活躍していたことも解説で初めて知り、興味深かった。参考文献として挙げられていたものも可能であれば読んでみたい。
もちろん小説の方も面白かった。
主人公のフィデルマは独り巡礼の船旅を始めようとしていた。
同乗者に知り合いもおらず、あらゆるしがらみから離れて静かに考えを整理するつもりだった彼女は予想外の事態に直面することになる。
重苦しい事件とは別に、実直な船長や船員たち(猫 -
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「祝祭日の死体」Corpse on a Holy Day
聖デクランの祝祭日。彼を祀る礼拝堂に詣でたフィデルマは、二百年間眠る聖人の亡骸の上に、刺殺されて間もない若い女性の遺体を発見する。その女性はフィデルマが訪問しようとしていた修道院の見習い修道女だった。
リアル現代と通じるような猛暑の中、聖地巡礼をするフィデルマ。「なんでこんな暑い中を…」と言いつつも、良い事なんだから!と自分に言い聞かせる優等生気質がほほえましい。それでも事件でごたんに元気になってしまうフィデルマ。
「狗(いぬ)のかへり来(きた)りて……」Like a Dog Returning...
聖パトリックの直筆を納めた絢爛豪 -
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2025年の30冊目は、ピーター・トレメインの「修道女フィデルマの慧眼」です。日本独自の短編集となります。前作「風に散る煙」が、かなり良かっただけに、この短編集も期待が持てる所です。
このシリーズの最大の魅力は、7世紀の古代アイルランドを舞台としているという唯一無二の世界感と主人公フィデルマのモアン王国国王の妹君にして、法廷弁護人という属性、聡明でいて、機知に富んだ性格という、これまた無二のキャラクターに有ります。
素晴らしかった前作と比べてしまうと、もの足りなさを感じもしますが、密室の死の謎を解く「尊者の死」や「撒かれた棘」がおすすめです。いつものように含蓄有る言葉も随所に盛り込まれています -
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ネタバレ(上巻より)
前作に続き、女性が殺人犯とはちょっと芸がない気もするが、
女性の地位が高かったから当然のことなのか?
それと、フィデルマがうかつにも見せた証拠で、
知らなかったとはいえ実の息子を娘の殺人犯として、
死に追いやってしまったことに気が付いた男が自殺してしまったのは、酷い話だ。
そして、フィデルマとエイダルフは二人で旅を始めたのに、
今回の事件でギクシャクするし、
最後にはおみくじのように焼き菓子の中に隠されていた、
指輪と殻付きのヘーゼルナッツを
それぞれひいてしまったという嫌な終わり方だった。
結婚が近いと言う意味の指輪と、生涯独身の意味のヘーゼルナッツを。 -
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ネタバレ修道女フィデルマ・シリーズ。
せっかく二人で旅立だったというのに、
時化にあって頭を打ち船を下ろされてしまったエイダルフ。
フィデルマも一緒に降り立ったその土地はブリトン人の王国で、
ザクソン人であるエイダルフにとっては敵国。
すぐにでも、本来の目的地であるカンタベリーに向かいたいエイダルフだったが、
フィデルマの方は、
修道院の修道士が全ていなくなった謎を解くよう国王に頼まれて、
引き受けてしまう。
調べに向かったフィデルマたちは、
修道士失踪を目撃した若者が、裁判も受けずに私刑されそうなところを助ける。
若者は村の娘を襲って殺したと思われていたが、
フィデルマは疑問を感じる。
そして -
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イギリスの作家ピーター・トレメインの連作ミステリ短篇集『修道女フィデルマの采配 修道女フィデルマ短編集(原題:The Heir Apparent and The Other Stories From Whispers of the Dead)』を読みました。
ここのところ、イギリスの作家の作品が続いています。
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王女にして法廷弁護士、美貌の修道女が
旅先で出会った難事件を一刀両断!
世界中の読書家を虜にする推理の妙〈フィデルマ・ワールド〉
日本オリジナル短編集第5弾
法廷弁護士にして裁判官の資格を持つ美貌の修道女フィデルマが、アイルランドの各地 -
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ネタバレ(上巻から)
フィデルマに負けずに居丈高な女性修道院長は怪しいとは思っていたが、
いくら修道士や修道女の結婚が禁止されていないとはいえ、
二股でしかも不倫だっとは、衝撃的だった。
それと、エイダルフが逃げている途中で出会った目の見えない男が、
印象的だったが、あまり活躍しなくて残念だった。
謎解きとしては、
船で人身売買という程度しか予測できなかったが、
フィデルマは最初から犯人のことを怪しいと思っていたとか。
そんな風には全然見えなかったけど。
とはいえ、最も衝撃的だったのはラスト。
フィデルマの誘いを断ってサクソン諸王国へ戻るエイダルフに、
フィデルマがついていく決断をするとは。
二 -
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修道女フィデルマのシリーズ、8作目。
7世紀アイルランドの、尼僧にして弁護士であるフィデルマが探偵役の歴史ミステリです。
アイルランドは五王国の時代。
そのうちの一つの国の王の妹であるフィデルマは、美貌で活発、頭が切れて勇敢。高位の弁護士の資格を持っていて、「黄門さまの印籠」をいくつも持っているような女性です。
これは必ずしも絵空事ではなく、当時のアイルランドは法が整備されていて、女性が重要な役職に就くことも可能でした。
修道院は勉学の場でもあり、尼僧が弁護士になっても、おかしくない。
それでも、女性への軽視や偏見がないわけではなく、事件に遭遇したフィデルマは大抵、「若い女に何が出来るか」「 -
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こちらも大好きなシリーズの1つです。定期的に翻訳が続いているのを見ると、私同様に根強いファンが存在しているようです。舞台は、7世紀半ばのアイルランド。日本は、飛鳥時代、大化の改新の頃でしょうか。このシリーズの最大の魅力は、何と言っても、主人公フィデルマのキャラクターです。修道女にして、ドーリィー(法廷弁護士)の資格を持ち、モアン王国の国王コルグーの妹君でも有ります。美人で聡明で有り、ドーリィーの資格を活かして、数々の難事件を解決してしまう推察力を備えています。
ストーリーは、フィデルマの思い人で有るエイダルフが、隣国ラーハンで少女を強姦し、殺害した罪で死刑を言い渡されてしまいます。何かの間違い -
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ネタバレ修道女フィデルマ・シリーズの短編集第5弾。
密室トリックに穴があろうと、
殺害方法が偶然すぎても、
凶器がご都合主義でも文句は言わない、
というか気がつかないぽんこつミステリーファンだが、
これだけは言いたい。
尊者にお出しするにふさわしい大物の鮭、
それを盗んだ魚泥棒の犯人が猫?
殺された料理長が自ら釣り竿を釣り糸を持って川へ向かって釣り上げた、
とあったので、
新巻鮭サイズの鮭だとは思っていなかったが、
熊がくわえていそうな体長50センチぐらいの鮭だと
勝手に思っていた。
とくれば、まさかサザエさんよろしく猫がくわえていけるわけがなく、
(著者の思惑通り)鮭が殺人の動機かなにかとにら