【感想・ネタバレ】憐れみをなす者 上のレビュー

あらすじ

フィデルマは、単身巡礼の船旅に出ていた。修道女としての人生に疑問を抱き、また、気の置けない友人であったはずのエイダルフに対する気持ちもわからなくなっていたのだ。だが船には、若き日にフィデルマを捨てた、かつての恋人キアンが乗っていた。波乱ぶくみの船出の翌朝、巡礼団の一員である修道女が、行方不明になる。時化のなか、海に落ちたかと思われたが、船室から血のついた衣が見つかった。殺されて海に捨てられたのだろうか? 七世紀アイルランドを舞台に、王の妹にして弁護士、美貌の修道女フィデルマが活躍するシリーズ第8作。

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Posted by ブクログ

上巻の冒頭部分に、七世紀のアイルランドの社会制度やキリスト教信仰についての解説が豊富にあり、いままで脚注や巻末の解説で紹介されていた内容を補うボリュームでとても良かった。
古代のアイルランドの著名な法律家として何人もの女性が活躍していたことも解説で初めて知り、興味深かった。参考文献として挙げられていたものも可能であれば読んでみたい。

もちろん小説の方も面白かった。
主人公のフィデルマは独り巡礼の船旅を始めようとしていた。
同乗者に知り合いもおらず、あらゆるしがらみから離れて静かに考えを整理するつもりだった彼女は予想外の事態に直面することになる。
重苦しい事件とは別に、実直な船長や船員たち(猫も含む)との交流や穏やかな日の風呂代わりの遊泳など、船旅の楽しさも生き生きと描かれている。

0
2021年03月25日

Posted by ブクログ

修道女フィデルマのシリーズ、8作目。
7世紀アイルランドの、尼僧にして弁護士であるフィデルマが探偵役の歴史ミステリです。

アイルランドは五王国の時代。
そのうちの一つの国の王の妹であるフィデルマは、美貌で活発、頭が切れて勇敢。高位の弁護士の資格を持っていて、「黄門さまの印籠」をいくつも持っているような女性です。
これは必ずしも絵空事ではなく、当時のアイルランドは法が整備されていて、女性が重要な役職に就くことも可能でした。
修道院は勉学の場でもあり、尼僧が弁護士になっても、おかしくない。
それでも、女性への軽視や偏見がないわけではなく、事件に遭遇したフィデルマは大抵、「若い女に何が出来るか」「尼さんは引っ込んでろ」みたいなことを荒くれ男どもに言われてます。
資格を堂々と告げると相手はびっくり(笑)
無法地帯では「ははーっ」とはなりませんが。そういう場合でも道を開いていきますよ~。

しかも、当時のキリスト教は聖職者でも結婚できたので、恋愛の要素も普通に入ってきます。
この作品では、フィデルマは自分の生き方を見直そうと巡礼の旅に出るために船に乗ったところ。
同じ方面へ行く修道女たちにも知っている人はおらず、しがらみを離れて静かに過ごすつもりだった。
ところが思いがけないことに、若い頃の恋人キアンが船に乗っていた。かって手ひどく自分をふった男で騎士だったのですが、今は離婚して修道士になっていたのだ。

同行する修道女の一人が行方不明になり、当初は海に落ちたと思われた。
後に発見されたが、それが殺されたばかりという様子だった。
どこかに隠れていたのか?

フィデルマがしだいに船員の信頼を得て、のびのびと船旅を楽しむ反面、キアンにはイライラさせられたり。
果たして、この旅の行方は?

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2023年08月19日

Posted by ブクログ

ネタバレ

修道女フィデルマ・シリーズの8作目(原作順で)。

巡礼の旅に出、船旅をするフィデルマ。
船に同乗していた巡礼団の修道女が海に落ちたと思われたが、
刺殺死体で発見される。
そして、船に乗り遅れたかと思われた修道女も、
実は殺されていたことがわかり…。

巡礼団の中に若い頃にフィデルマを手酷く捨てた恋人がいたとあっては、
事件どころではない。
フィデルマは、大人げない態度をとっていて相変わらず。
相手も成長していないようなので、お互い様だが。

それでも武人だったのに、片腕が使えなくなり、
妻にも見捨てられたとあっては、
もうちょっと気づかいしても良いのではと思っていたら、
王の命令とはいえ、戦いで女子供を殺したとあっては、
同情の余地がないぐらいひどい男だった。

それにしても、ここのところ、
短編集でフィデルマが成長を見せていた気もしていたに、
どうしたのかと思っていたら、
どうもこの作品は短編集より前に書かれたものらしい。
なるほど。

(下巻へ)

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2022年02月15日

Posted by ブクログ

ネタバレ

すっかり老成?達観した感じのキャラクターとばかり思っていたフィデルマにまさかの過去。いや、あの過去があるからこその現在があるのか。
昔の恋人キアンがともかくやなやつで、最初から最後までこいつに天罰下れとしか思わなかった話。
あと、珍しくも海洋冒険小説みたいな話に仕上がっている。更にキャラクターのひとりがとってもできたいい人で、これ、実はこいつが犯人でした、だったらやだなあと思いつつ読みました。

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2024年09月24日

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