蝉谷めぐ実のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ小説の醍醐味の1つは、全く自分と違う人生を想像させて、それを垣間見させてくれる事だと思う。塙保己一という人が盲人で、「群書類従」という書物を編纂した、という知識しか無かったが、目が見えないということも自分の側に引き寄せて体感させてくれるような小説だった。
江戸の当道座や、その役割や雰囲気なども、想像が着くような丁寧な描き方だった。
見える者と見えない者、身投げや不義密通、家族の絆すらも、正しい見方などありはしない(どのようにも受け取れる)という「見え方」「感じ方」の差を、伏線のように織り込んでいく構成も見事だった。必ず何かが対になっているように思える。ドキドキしながら、何回もどんでん返しを喰 -
Posted by ブクログ
ハンディキャップを乗り越えて偉業を成した人の話、なんて生易しい物語じゃなかった。
いい話かと思えば、そのB面からの視点で裏切られる。見えているものばかりが真実ではない。しかしその真実が必ずしも不快ではなかったりもする。虚の中にも真実が見えたり。勘違いでもいいからそのままにしておいた方が良いものもある。その人に関わる噂・伝説も然り。真実よりも人がそれをどう見たいかで広まっていく。今のネット社会にも通じる虚/実、噂・伝聞。
おたせの「言葉を必要としない繋がり」「目に見えぬものこそ、言葉にできぬものこそ素晴らしい」という台詞、何もかもに名前を付けなくてもいい。上手く言葉にできない関係もある。
心 -
Posted by ブクログ
晴眼者と盲の環境の違いと当時の時代背景と文化の理解と、いろいろと解釈が難しく読むのに時間がかかった。目次表記もひらがなと思いきや、当て字で二通り。なんだか腑に落ちない表現は一人称だけで捉えられていたせいだったと、最終章で見せられたものに驚いた。構成が凄い。
人間は自然と自分が上に立ちたがる。他人にどう見えているのかはそれぞれの性格や環境、価値観によって異なり、他人の解釈はわからない。
見るという情報の広さゆえ、捉えきれない見落とし。見えているはずなのに見えていないものもある。
一読ではたぶん理解しきれていないので、落ち着いて再読したいと思う。 -
Posted by ブクログ
江戸時代の全盲の国学者・塙保己一の生涯を描いた時代小説です。幼少期に病気で失明しますが、誰かに音読してもらった書物の内容を一字一句覚えるという優れた記憶力の持ち主で、好きな学問を志し全盲ゆえの周囲の嘲りにあいながらも苦難の末に、『群書類従』(ぐんしょるいじゅう)という日本の古い書物や記録を集めた国内最大級の文献集を編纂した人物です。
ただこの小説は、その偉業を称えるということがテーマではありません。
全盲の保己一は、「肉眼を持ち合わさずとも、心眼を以てすれば悟りの心を開くことができる」という信念のもと、何とか目が見える人たちと好きな学問で肩を並べたい、同じ土俵に立ちたいと努力を重ねます。し -
Posted by ブクログ
もうこれ優勝。
最高に素晴らしい作品です。
さすが、山本周五郎賞。直木賞も確実と思っていたけど、、、
埼玉県の偉人である塙保己一のお話。
偉人の話と言っても伝記のようなものでは全くなく、彼の人となり、心の内を感じられる作品。
盲の彼には何が見えていたのか、本当に見えていなかったのか。
晴眼者には彼がどのように見えたのか。
晴眼者は彼の見えないものが見えているのか。
SNSなどの言葉や映像・画像で容易に見えた気持ち、わかった感覚に陥ってしまっている現代社会だからこそ、この作品の美しさが輝くと感じている。
ぜひ多くの方に読んで欲しい大好きな作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ時代小説と言われあまり読んだことの無いジャンルだなぁと思いつつ読んでみたけれど、読みやすかったです!
面白かったな〜
今まさに叫ばれている「差別と区別のちがい」「平等とは」を痛いほど思い知らされた。
序盤のお母さんとの関係では私も子どもがいるので、自分の子どもに「絶対によくなるから」「治るから」と言って必死になりそうと苦しくなる。見えなくても貴方は貴方よ、と安心させてあげられるか…と思うと、保己一のお母さんの気持ち良くわかるし、でも保己一のお母さんは立派だと尊敬する気持ちもめちゃくちゃあります。お父さんのことは保己一からはあまり語られない。でもお父さんも、保己一を凄く支えた一人だった。お父さん -
Posted by ブクログ
もともとはダヴィンチ・プラチナ本から。その後、書評での賛辞も複数見たし、否が応でも期待が高まっていたもの。奇しくも直木賞発表のタイミングで読むことになり、『これはもう、本作が取っちゃうでしょ』と確信的に思ったけど、なんと、受賞ならずでした…。さておき、それで本作の素晴らしさが減じる訳もなく、前に読んだ著者の作品より格段にリーダビリティも高く、これからのご活躍にも期待が持てようというもの。見えない保己一と周りの温度差も、視点人物の変更で適宜描かれていくんだけど、その濃淡の書き分けがまた秀逸で、同情一辺倒に陥りがちなところを、そうしていないのもお見事。凄い作品だな。
-
Posted by ブクログ
ネタバレかなり面白かったです。二回読んで二度楽しめました。私のハイライトは、保己一が「たしかに美しいな」と静かに言ったところ。とせ子、金十郎、保己一はみんな同じものについて言っていない、三人はズレているはずなのに、うまいこと収斂して収まる。収めるためにそれぞれ変化していく過程があり、それが丁寧に書かれていて本当に面白かった。だからこそもう一度読み返しました。お丁と葉次郎と保己一のトリオもめちゃめちゃよかった。こちらも絶妙に三者すれ違うんだけど、かんざしが最高にかっこいい。最後まで「違うこと」を扱っているのだけど、こんなに巧みに美しく物語に落とし込む著者すごいです。
追記:
直木賞受賞ならずとのことで -
Posted by ブクログ
こういう時に書ける言葉を持っていない。
\わぁぁぁぁぁー!!/感震
と、Clickしたら音声でそのまま、
聴こえるならば少しは伝わるだろうか?
◇◇◇◇◇◇
【タイトル】見えるか保己一
【 著者 】蝉谷めぐ実
【 出版社 】角川書店
◇◇◇◇◇◇
読み終わって、精神消耗が激しかった。
どっと、疲れたというか、走りきった後のもう無理。って倒れ込む感覚と爽快感。
言葉を選ばず言うなら、
『すげぇーーーっ!!』
と、鳥肌たち、心臓というか胸のあたりというかが痺れる感じで満たされる。
◇◇◇◇◇◇
一人の人の人生を
同じ強度で歩んできた。
痛みも、
当人から見えぬ裏の歪 -
購入済み
保己一の盲人としての苦しみや学者としての矜持、保己一の家族や門弟らの崇拝や劣等感等、複雑な感情が描かれます。他人を信じられなくなり血の繋がった家族だけを信じる保己一の姿が痛々しく感じられました。目が見えていても見えていなくても他者を理解するのは難しく、結局見たいものを見たいようにしか見ないのかなと思いました。
-
Posted by ブクログ
幕末の江戸、歌舞伎役者の中に鬼が紛れ込んだ。鬼探しを依頼されたのは、元女形の魚之助と鳥屋の藤九郎。魚之助は壊疽が原因で舞台を務められない。こういう話を読んだと思って調べたら実在の人物がモデル。(後書きにも書かれている。私が前に読んだのは「狂乱廿四孝」。他にも彼を描いた本はたくさんあるらしい。)
役者の妬み嫉み、良い役が欲しい。全ては芸のため。一方で家柄だけと言われたくない。華やかな舞台の裏の嫌な部分が描かれる。演目が「曽根崎心中」で、少し前に見た「国宝」の映画にも出てきたので、場面が目に浮かぶ。
探偵役が、仕方なく舞台から距離を置いている魚之助と、ほとんど歌舞伎のことを知らない藤九郎という組み -
Posted by ブクログ
1年半ほど前に著者のデビュー作『化け者心中』を読んだ時は、新人とは思えない密度の文章に率直に凄いと感じたものの、盛りだくさんのテーマと練られすぎた構成がちょっと物語を窮屈にした印象があったのと、自分自身の好みの問題もあって、個人的にはそこまで高い評価にはしていなかった。
本作は前作に引き続き歌舞伎を扱っているが、主人公が歌舞伎役者だった前作とは異なって、歌舞伎のことを何も知らない女形役者の妻を主人公に据えており、歌舞伎に関しては客観的な視点で語られている。その世界に疎い自分のような読者にとってはニュートラルな書きっぷりがありがたかった。
本作は役作りのために日常から女として過ごす夫と、その