蝉谷めぐ実のレビュー一覧
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幕末の江戸、歌舞伎役者の中に鬼が紛れ込んだ。鬼探しを依頼されたのは、元女形の魚之助と鳥屋の藤九郎。魚之助は壊疽が原因で舞台を務められない。こういう話を読んだと思って調べたら実在の人物がモデル。(後書きにも書かれている。私が前に読んだのは「狂乱廿四孝」。他にも彼を描いた本はたくさんあるらしい。)
役者の妬み嫉み、良い役が欲しい。全ては芸のため。一方で家柄だけと言われたくない。華やかな舞台の裏の嫌な部分が描かれる。演目が「曽根崎心中」で、少し前に見た「国宝」の映画にも出てきたので、場面が目に浮かぶ。
探偵役が、仕方なく舞台から距離を置いている魚之助と、ほとんど歌舞伎のことを知らない藤九郎という組み -
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1年半ほど前に著者のデビュー作『化け者心中』を読んだ時は、新人とは思えない密度の文章に率直に凄いと感じたものの、盛りだくさんのテーマと練られすぎた構成がちょっと物語を窮屈にした印象があったのと、自分自身の好みの問題もあって、個人的にはそこまで高い評価にはしていなかった。
本作は前作に引き続き歌舞伎を扱っているが、主人公が歌舞伎役者だった前作とは異なって、歌舞伎のことを何も知らない女形役者の妻を主人公に据えており、歌舞伎に関しては客観的な視点で語られている。その世界に疎い自分のような読者にとってはニュートラルな書きっぷりがありがたかった。
本作は役作りのために日常から女として過ごす夫と、その -
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面白かった。その一言に尽きる。1作目が手元になく二作目からとなったたため、最初は話の流れやキャラクターが掴めなかった。また歌舞伎について全く知識がなかったため、最初は途中でやめてしまうだろと思っていたが関係性や世界観が掴めてくると話の面白さに目が離せなかった。
キャラクターも私の好みを捉えており、主役同士の関係性や掛け合いが大変心地よい。
作者さんは夢枕獏作 陰陽師 を読んでいるようで、こちらの作品が好きな方には大変ハマるであろう。
世界観については、江戸時代が、舞台でありさらに歌舞伎の世界で行われるミステリー件人情ものである。江戸の雰囲気も身近に感じられ、人情もののしんみりした感じが好き -
購入済み
藤九郎と魚之助のコンビが帰ってきました。
今回の事件は何かの見立てと思しき変死体が舞台に現れるというもので、化け物心中のときよりも親しくなった二人が事件を解決します。
親しくなるにつれて心情の変化に戸惑う二人の姿と、好きなもののために命をぞんざいに扱う人々が印象的でした。
魚之助が舞台に戻り藤九郎と離れる未来を想像すると嬉しさ半分、少し寂しくなります。 -
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ネタバレ『化け者心中』の続編。
江戸時代。鳥屋の藤九郎と、元女形花形役者の魚之助が、演目「仮名手本忠臣蔵」を上演中の中村屋で起きた鬼が下手人の殺人を解決するお話。
好きだわ、この世界観が。
藤九郎と魚之助の距離が縮まった。
で、その距離感と関係性に二人が悩むという、素晴らしい展開。
寝言が男か女か、という件は 非常によかったです。
元遊女の人虎、という正体はなんとなくわかった。
殺されちゃった新吾くんとか、男の姿の魚之助の救出劇とか、随所に見所があり、話もテンポよく進んで面白かったー。
好きなシリーズだ。
前回の『化け物心中』を読み直したくなった。 -
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タイトルの手本は、仮名手本忠臣蔵から来ているらしい。なるほど前作は「化け者心中」で曽根崎心中が演じられていた。今回は忠臣蔵に加えてライバルの芝居小屋で演じられている助六廓櫻賑(くるわのはなみどき)も題材になっている。知らなくても、芝居噺に疎い藤九郎に誰かが教えてくれる場面が用意されているから大丈夫。タイトルと言えば化け物ではなく化け者になっているのは、舞台の上で化ける役者の意味もあったのだと、今更ながら気づいた次第。
前作からの興味で言えば、魚之助がどうなっているかと楽しみだったけど、立場としては元女形から変わらず。どちらかと言えば藤九郎の方が、芝居の世界を知ろうとして変わった様子。二人の気持 -
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本作は、野村胡堂文学賞、吉川英治文学新人賞を受賞している。受賞からわかるとおり、時代小説となっている。
時代は江戸で、町人文化が栄えている頃だ。主人公の志乃は下級武士の娘で、売り出し中の歌舞伎役者の喜多村燕弥の妻となる。この燕弥は女形で、平素から女装して「おんな」になりきっている。だから「おんなの女房」である。
しかも、お金をはたいてまで武家の娘を妻にしたのには訳があった。この燕弥は役者バカである。その容姿も踊りも芝居のうまさも、中の上くらいであろうか。そして、芝居の役にのめり込むというか憑依する役者である。セリフのないただ尻もちをつく役のため、通りに糸を張って通行人が転ぶのを観察す -
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おかざき真里の表紙に惹かれて購入。
相手のことも芝居のこともよく知らないまま女形の役者に嫁いだ武家の娘・志乃。
武家の娘として躾けられ育てられた志乃は親の言いつけを守り、夫に従い、夫のために行動しようとする。夫・燕弥の食事が終わるまで側で控えて一緒には食べようとしないし、夫の不可思議な行動について疑問を持っても夫にそれを聞いたりしない。志乃の夫というのは女形で家でも女の格好で過ごしており夫婦生活はもちろんない。「私はなんのためにこの家にいるのだろうか。自分の価値は一体どこにある」と志乃は不安に思う。しかし夫には聞かない。ただ黙って夫のためを思って行動し、失敗して怒られたりする。行動の部分だけ