蝉谷めぐ実のレビュー一覧
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江戸の歌舞伎創成期。人気歌舞伎者の舞台裏から始まる物語は、人に潜む妬みや恨みによって殺害事件へと発展し、下手人を暴いていく筋へと展開する。だが最後には、人気役者が名を残す芝居をもって物語は締めくくられる。
人気の陰に潜む人間関係を巧みに描きながら、歌舞伎役者は最後まで「歌舞伎魂」を守り抜こうと舞台に立つ。己の過ちによって死に至ってもなお、芝居を貫くその生き様は圧巻である。
上方言葉や江戸訛りを交え、当時の華やかな雰囲気を余すところなく描いた作品であるが、やや読みづらさを覚える部分もある。しかし、職人気質を貫き、誇りを持って日々精進する江戸の職人の姿勢には強く心を打たれる。現代の転職時代とは、ま -
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江戸森田座気鋭の役者・今村扇五郎にお熱のお春が、女房の座を狙って近づいたのは……。芸を追求してやまない扇五郎に魅せられた面々の、狂ってゆく人生の歯車。ある日、若手役者の他殺体があがり、ついには扇五郎本人も――「芸のため」ならどこまでの所業が許されるのか。芝居の虚実を濃密に描き切ったエンタメ時代小説。
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時代小説に慣れてないので分からない単語
が多くて調べながらなかなか進まなかったけど
扇五郎と犬に翻弄される人たちが
面白かったり心配になったり
当時の -
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気の狂った贔屓に足を切られ舞台に立てなくなった元人気女形魚之助が、ひょんなことから知り合いになった鳥屋の藤九郎と共に、芝居小屋に現れた鬼探しをすることに。
その鬼は本読みの最中に演者の誰かを喰らい、その演者になり替わっているという。
誰よりも人気が出たい。
誰よりも上手くなりたい。
芸のためなら人を陥れることも、殺めることもいとわない。
そんな鬼よりも恐ろしい心玉を持った役者たち。
本当に鬼がいたんだろうか?
そんな疑念が浮かびつつ読み進む。
やっぱり鬼はいたんだな。
でも、その鬼は悲しい。
鬼よりも人間のほうが恐ろしいのかもしれない。 -
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ネタバレ魚之助・藤九郎コンビシリーズ第二作。
続編が出たのは嬉しいが、今作は少し切なく苦かった。
前作同様、芝居に現れる妖し探しが本筋だが、役者の業、恋に溺れる者の業が描かれる。
魚之助は最初こそ前作同様の高飛車人間だが、途中から変化が出てくる。
中村座のライバル市村座で立女形を務める円蝶の痛烈な皮肉、藤九郎との交流のなかで変わっていく自分、老いていくことへの不安…様々な葛藤が魚之助を襲う。
一方の藤九郎はより魚之助を知ろう、寄り添おうと芝居の世界に浸かり魚之助の友人・花魁の蜥蜴に会いに吉原にも向かう。
化け者になる恐ろしさ、化け者でなくなる怖さ、化け者に取り込まれる恐ろしさ、化け者にすらなろう