増山実のレビュー一覧
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ネタバレなんだか不思議で、けれどとっても温かな気持ちになれる7話の連作短編集。
長年に渡り地域の人たちに愛され続けた『喫茶マチカネ』が閉店することに。そして同じく地域の人たちが長年利用してきた『待兼山駅』の駅名も改称されることに。閉店と改称を惜しみつつも、待兼山駅のある街の思い出を共有しようと、街で経験した不思議な話を語り合う会が発足した。
初めは語り合うような話が出てくるのか、と心配したけれど出るわ出るわ。しかもじんわり泣ける。
「こういう偶然は、きっといつでも、いろんなところで、いろんな人に、普通に起こっているんだ、と思うから。ただ、みんな、気づかないだけ」
もしかして本当にそうなのかも、と思 -
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落語家の師匠が突然失踪する話。落語を生で聴いてみたい、まだ出来ていないまま。いくつも心に残る言葉があった。
一人でできる、思いっきりアホがやれる。それが噺家。
描写が迫る、感動的な場面、『宿替え』。
この世界も、捨てたもんやない。ワットアワンダフルワールド。byルイ・アームストロング。
オリオン座を知らない甘夏。人間にとって、無知は罪やで、の言葉。
本来は見えへんもんを、見えるようにする。それが文化とか芸能である。
見えへんもんを見えるようにする。それが、落語家の仕事やで。
人を笑う噺が落語。だがそれは否定ではなく、『存在』の肯定。
『代書』、朝鮮人が出てくる噺。
みんな、何かを -
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ネタバレ西表島のジャングルの中にある映画館。
なぜそんなところに映画館があったのか。
尼崎にある映画館『波の上のキネマ』。
今は亡き祖父が開いたこの映画館を俊介は畳もうかと考えていた。時代の波に飲まれ経営難に悩まされていたのだ。しかし、店を畳む前に、どうしてこの映画館が出来たのかを調べようと思い立つ。
視点は、祖父・俊英に移る。
俊英は、尼崎で生活を営んでいたが、両親が亡くなり、『運命』の下、西表島の炭鉱で働くことになる。その移動途中に立ち寄った遊郭で出会った一人の幼き少女・チルーが、俊英の記憶に強烈に刻まれることとなる。
炭鉱での生活は厳しく耐え難いものであった。しかし、ハーモニカを吹く坑夫 -
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ダメでした。
能登に起源をおく主人公・恵介の星場一族のファミリーヒストリーです。
実は私も数年前に我が家のファミリーヒストリーを調べました。文化・文政時代から瀬戸内海で小さな廻船業を営む一族で、斜陽となった明治期には祖父を除く5人の兄弟がアメリカ・ブラジルに移民。現地での厳しい開墾、差別、そして太平洋戦争、様々な辛酸を嘗めた事が判りました。幸いなことに、父の代には一旦完全に関係が切れていたその子孫を見つけ出す事も出来、様々な情報交換が出来ました。
この物語は国内だけですが、ある意味似たような話です。でもなんかピンとこない。読んでいて、何故かふた昔くらい前のテレビドラマを見ている感じがします。