あらすじ
※本書は、角川書店単行本『甘夏とオリオン』を文庫化した作品となります。重複購入にご注意ください。
人はいつだって、誰かを待っているんやね。
大阪の下町、玉出の銭湯に居候する駆け出しの落語家・甘夏。彼女の師匠はある日、一切の連絡を絶って失踪した。師匠不在の中、一門を守り、師匠を待つことを決めた甘夏と二人の兄弟子。一門のゴシップを楽しむ野次馬、女性落語家への偏見――。苦境を打開するため、甘夏は自身が住んでいる銭湯で、深夜に「師匠、死んじゃったかもしれない寄席」を行うことを思いつく。寄席にはそれぞれに事情を抱える人々が集まってきて――。
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Posted by ブクログ
友に選書してもらった本。
噺家の舞台裏、女性の甘夏が男性の多い伝統芸能の世界に飛び込むことの難しさ、今まで触れて来なかった落語の世界のかけらを知ることが出来た。
何より噺ひとつひとつがとても奥深く、面白くて!
「知らんことは恥やと思う心を持て。世界は、そこから広がるんや。」
失踪してしまった師匠が甘夏にかけた言葉。
ちょうど似たような事を考えてモヤモヤしていたタイミングだったので心にストンと落ちてきた。
落語を観に行ってみたい。またわたしの中で今まで知らなかった世界が広がるかもしれない!
Posted by ブクログ
生で落語を聴いたのは両手両足の指の数よりも少ないかもしれへん。でもいま、この本を読んで後悔した。もっと落語を知っておくべきやったと。いやもっと知りたい。
「代書」も衝撃的だった。朝鮮人が登場する落語。ほとんどの落語家はその部分を割愛するらしいけど、これに登場する師匠はきちんと全部やる。
曰く「落語は人を笑う噺やけど、その人の存在を否定するのではなく肯定するのが落語や」やと。なんかしびれた!
Posted by ブクログ
落語家の師匠が突然失踪する話。落語を生で聴いてみたい、まだ出来ていないまま。いくつも心に残る言葉があった。
一人でできる、思いっきりアホがやれる。それが噺家。
描写が迫る、感動的な場面、『宿替え』。
この世界も、捨てたもんやない。ワットアワンダフルワールド。byルイ・アームストロング。
オリオン座を知らない甘夏。人間にとって、無知は罪やで、の言葉。
本来は見えへんもんを、見えるようにする。それが文化とか芸能である。
見えへんもんを見えるようにする。それが、落語家の仕事やで。
人を笑う噺が落語。だがそれは否定ではなく、『存在』の肯定。
『代書』、朝鮮人が出てくる噺。
みんな、何かを待っている、というミヤコさん。泣きそうや。深夜の銭湯での落語会。
待つって簡単じゃないし、受け身じゃない。勇気がないと、人は待てない。
見えないものを見えるようにする、そんな落語家が増えていく、のかな。
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(ネタバレあり)
落語家の師匠・桂夏之助がある日、いなくなった。
心置きなくバカを演じられる面白さに魅了されて、弟子入りした甘夏を軸に、同じ一門の小夏、若夏の3人の成長物語を描く。
師匠はラストまで戻らぬままのストーリー展開だったり、若夏の家族が水俣出身であることの葛藤が加わったりだが、落語の修行世界を明るく描いているので、読みやすかった。
落語好きにもオススメの1冊。
Posted by ブクログ
師匠!お金か女か人生か、何か知らないけど、何でもいいけど、何でもいいから、今からでもいいから、帰っておいでよ!アンタらしくないよ…。怒らないからさ。(いや、ちょっと怒るか…)何でもいいから!待ってるからさ!
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夜行バスでラジオが聴ける車両に乗った事がある。落語を聴いた。どなただったかは記憶にないがとにかく面白かった。夜中声が出ないよう必死だったのを覚えている。
答えは落語のなかにある。どこでもそうなのかもしれない。現場百回、みたいな。
Posted by ブクログ
大阪落語の世界に飛び込んだ甘夏は師匠に失踪されてしまい兄弟子と一緒に師匠を探しつつ落語に奮闘する。一生懸命な甘夏を応援してくれる人もいるが、女に落語は出来ないと誹謗する人もいる。途中までは話がもたつくが落語会を開いたあたりからの流れは大阪落語モリモリで楽しい。〝師匠、死んじゃったかもしれない寄席〟には笑った。残念ながら終盤になってまた話がグダグダになる。特に若夏の身の上話には興醒め。師匠の失踪行為の理由もきちんと説明されないし、取って付けたような結末も物足りなく思った。大阪落語に興味を持てただけに残念だった。
Posted by ブクログ
落語好きなので楽しめたし、新たな見方も出来て面白かったので、ほぼ一気読み。ただ凄い魅力的な師匠の行方が気になりながら、突然のエピローグが個人的には残念だった。水俣病の話はちょっと無理に詰め込んだ感がある。