滝川さりのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ傑作。
物語として面白い。それでいて、しっかり怖い、良いホラーだった。
序・終章と四篇の短編で構成されている。
短編がそれぞれ、ベクトルの違う後味の悪さを持っており、昨今流行りの「読んだら死ぬ系」ホラーにありがちな、先の展開が読めて、読書体験としての質が落ちてしまうというデメリットが全く無かった。
また、それぞれの短編に分かりやすく「衝撃の一文」が用意されているのも、エンタメ中毒者にはたまらない。
・序章・第一章
今作のチュートリアル的な位置付けをされている。
序章の「こういう作品ですよ〜」というジャブからの、第一章終盤の主人公が絶望するシーンは、見事に顎を打ち抜かれた。
・第二章
ここから作者のエンジンが全開になった気がする。
所謂「叙述トリック」を駆使しており、そういうタイプの本と思っていないまま読んだため、全貌が分かった瞬間は鳥肌もの。
・第三章
後味の悪さはダントツ。
子どもが主人公だからこその話だが、それ故にこの結末は惨い。
「これが俺の戦法だ。ゴーストデッキと同じだ。」
この一文には、脳内キツネがつい、
「上手いこと言わんでええねん」と言ってしまった。
・第四章
胸糞系の王道である、「妻子が被害者」というのを上手く活用していた。
短篇としては最後のため、話全体の異変にも気付きやすい。
・最終章
こういうタイプの小説でありがちな終わり方、「当の作者はもう…」という最後。 -
Posted by ブクログ
夏なので、がっつりホラーを読んでみた。
どストレートに怖かった!!
「ゆうずど」という角川ホラー文庫発の作品に纏わる話。
しかしそんな本は角川から出版された事実がないという…
その本を一文字でも読むと、ゆうずどに呪われた末、亡くなってしまうという恐ろしい設定。
呪われたものには、体中が神で覆われていて、異常に足が細い「ゆうずど」が見え始め、次第に耳元で死に方を囁かれてるシーンは絶望感に押しつぶされそうでした。
呪われた登場人物達は呪いに対し色々と策を講じるのですが、結局呪いから逃れることはできず…
どの話もバッドエンドが過ぎます笑笑
ゆうずどに挟まれた黒い栞がどんどん進んでいく恐怖は、そのまま自分の死期が目に見える形となっていて、こんな呪いにかかったら正気ではいられないなと思いました。
よく聞く設定であるのにも関わらず、飽きは来ずしっかりしっかり怖かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレジワジワ迫る恐怖と、霊との壮絶なバトルがいい塩梅だ。主人公は、新築の家を買ったばかりの尼子拓真。入居してしばらく経つと、甘い匂いや女の笑い声、派手な着物姿などの霊現象に悩まされようになる。しかし見たり聞いたりするのは拓真と4歳の息子だけ。妻と高校生の娘には不審がられてしまう。接待で訪れたガールズバーの店員のミヤ(実は男)、ミヤの恋人で霊能者の波瀬アキラに助けられ、拓真は「おどろし」と呼ばれる霊に立ち向かう。
まず、冒頭で大ピンチに陥っているクズ男が、まさか主人公なのか?というミスリードもあって、もしやバッドエンドなのでは??と警戒しながら読み進んだ。普通に善良な人だよな〜と思いつつ、冒頭の男は、拓真の上司であり、パパ活を始めた娘の祐希を騙して襲おうとした変態だとわかり、一安心。でも、その祐希も呪われるはめになり、妻の茉佑も巻き込まれて大怪我を負ってしまう。この辺は、家の中で逃げ場を塞がれて追い詰められていく様子が怖かった。2人は死んでしまうのではと思ったぐらいで、間一髪、拓真とミヤとアキラに助けられるが、結果的に茉佑以外全員、ミヤの故郷にあるおどろしの棲む森に連れ込まれ、最後のバトルになだれ込んでいく。
ジャンルはまごう事なきホラーだけど。おどろしを生み出した、江戸時代の遊郭での悲劇、父と娘のすれ違い、高校生のスクールカースト、パパ活、児童虐待、と、いろいろとてんこ盛り。それでも、それぞれの話がストーリーに密接に関わって来るので、読みづらくはない。
ラスト、アキラが呼んだ山の神に斃されたおどろしに、ほんの少しの救いがあったのは良かった。
幼少時に、姉たちに無理やり禁足地の森に連れて行かれ、おどろしの呪いを広める役割を負ってしまったミヤは、悪夢を乗り越えて、アキラと歩もうと前を向く。パパ活相手に襲われて傷ついた祐希も、徐々に回復して彼氏ができる。
主人公の拓真はごく普通の、年頃の娘に嫌われて悩む善良なお父さんだったのに、すっごい頑張ったな〜と思う。
メインの登場人物が、誰も不幸にならない、むしろ良い方向に変化している。ホラーとしては甘いのかもしれないけど、散々怖がらせておいて爽やかに終わる、私はこういうの好き。