小松亜由美のレビュー一覧
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小松亜由美『イシュタムの手 法医学教授・上杉永久子』小学館文庫。
秋田県大仙市出身の現役解剖技官が描く、秋田県を舞台にした5話から成る連作短編形式の法医学ミステリー。
秋田の自然豊かな風土や文化を背景にリアリティあふれる司法解剖の現場、人間の生み出す業やドラマを描いた佳作である。第一話と第二話を読む限りでは、司法解剖の現場を描いたノンフィクションのような味気無さを感じたのだが、第三話から最終話まで、一気に面白くなっていく。
家族は皆、優秀な医師という東京の家に生まれながら、三流医大の秋田医科大学に進学し、ある出来事を切っ掛けに卒業後に博士課程に進み、現在は法医学教室に所属する南雲瞬平の視 -
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ひょんなことから手にした本書、小松亜由美さん初読です。秋田県大仙市出身で現役法医解剖技官の著者が描く、秋田を舞台とした医療系ミステリーです。法医学(解剖)のリアルを秋田の風景・食・方言が支える、強い秋田県愛を感じました。
南雲瞬平(医科大の院生)視点の連作5話。指導教官の上杉永久子と連携し、事件現場で不明の真実を解剖ご遺体から知る展開です。瞬平の立場は解剖技官で、あくまで法医解剖医(上杉)の執刀補助です。
まだ自分に自信のない瞬平と、彼をいじり圧が強い上杉の絡みが面白く、上杉を頼る県警の捜査一課検視官や瞬平の後輩女子が脇を固めています。
「イシュタム」は、マヤ神話の自殺を司る女神で -
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ネタバレ今回は司法解剖で得られたことから事件の謎を解くことよりも、司法解剖そのものの描写や被害者たちの人間ドラマの方が印象に残った。
前回はトリッキーな内容の事件があっただけに、今回は事件としてはシンプルだったなあと。
最初の話は久住くんの成長が目立った話だったし、司法解剖としては無難な内容で、事件よりも最後のオチの方が印象的だったし。
人間ドラマが描かれたゆえに、後半二つの話は個人的に非常に重かった。
一つはえげつない話だったし、もう一つはとにかく残された人たちのことを思うと本当に胸が苦しい……
千夏さんの言葉と被害者が残してくれたものでまだ救いがあったのがよかった、本当によかった。
ただそんな千 -
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小松亜由美『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト 溺れる熱帯魚』角川文庫。
シリーズ第2弾。医学部法医学教室で現役の解剖技官を務める著者による法医学ミステリー。4つの短編とプロローグを収録。
前作では、まるでノンフィクションのようなドラマ無き法医学ミステリーという感じの不思議な作品であると思ったのだが、自分の理解が浅かったようだ。
いずれの短編も面白いテーマであるのにも関わらず、主人公の加賀谷千夏は何時も事件の傍らに佇むだけで、ミステリーの核心にまでは斬り込まず、結末は尻切れトンボのように感じたのだが、本作は事件の背景にある人間模様を描いていることにようやく気付いた。
と、同時に主人公で -
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ネタバレ現役の解剖技官の方だけあって、解剖シーンのリアリティは圧巻。
特に最後の凍ったご遺体のシャーベット状の描写がいい意味でえぐい。
あれは本物を知らないと描けないと思う。
新人の久住君の成長ぶりが作中で見えたのもよかった。
最後の話ではインフルエンザで肝心の解剖シーンで不在だったけれども。
不可思議なご遺体を解剖することによって真相を探っていくミステリ。
各話で中心人物が違うのが目線が変わって面白かった。
但し凄腕の千夏さんからの視点だけは徹底的に排除されているように感じた。
辛い過去持ちの彼女の内心はまだ見えてこない。
今後分かってくる展開もあるのだろうか。
変わったご遺体を扱うだけあって、 -
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ネタバレ「宮部みゆきが「本よみうり堂」でおすすめした本 2015-2019」に出ていたので。
作者は大学の法医学教室に勤務する解剖技官とのこと。
つまりは主人公の梨木楓と同じ。
どおりで、解剖に使う道具や筋肉の名前、
現場から解剖までの手順といったことが細かく書かれている。
そう意味では本物だし、とても興味深く読んだ。
ただどうも人物描写にのれない。
上司の准教授は腕は確かで切れ者、ワークホリック、洋服には無頓着、
車ではすぐ寝る、警察に探偵代わりにされるのは嫌がるくせに、
それでいて部下には手柄自慢。
その高校の同級生、検視官は同じく優秀だが、スーツや時計にはこだわりがあり、
女性には優しく、ミ -
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失恋後25作目
永久子先生…すごい言葉吐きます。しかもサラッと。ガサツなフリして温かい言葉を。
「自分の常識は他人の非常識。みんなが自分と同じと思っちゃいかん。世の中には色んな人がいて、自分の考えが及ばないことが多々ある」
私が1人になってから、こんなに時間が経ったのに、こんなに色んなジャンルの本を読んでるのに、なかなか気持ちが切り替えられないのは…最近そんな渦の中(自分の及ばないところへ)投げ込まれたのかもしれないな、と思いながら読破。
秋田弁が魅力的。胸の内に抱えた問題を気にしながら生きて頑張っている登場人物と一緒に物語が進む。面白かった。 -
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法医学教室で検死にまつわるミステリ。作者さんがガチの解剖技官さんということでそのあたりのリアリティは(この手のが苦手は人はきついんじゃないかなと思うくらい)がっちり。まあ解剖技官や検死官みたいな立場の人が捜査に・・ってのはさすがにないんじゃないかと思いますが。
なかなかに面白かったです。ミステリ自体はなんというかそこまででもなかったんですが、特殊な業界のいわゆる「お仕事小説」という意味でとても興味深かったです。キャラクターもいかにもな感じでシリーズ化とかするのだろうか?楽しみにしています。
ただまあ、実写であれアニメであれ映像化はまずもって無理そうな作品ですね。