【感想・ネタバレ】遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト 溺れる熱帯魚のレビュー

あらすじ

奥嵯峨にある小さな寺の住職が、両手首を切り落とされるという異様な姿で殺害された。「香炉寺」と呼ばれるこの寺は、昨年幽霊が出るという心霊動画で一躍人気になった寺だ。臨場した解剖医の千夏とその助手の久住は、解剖を進めながら両手首切断の謎に挑む(「古刹の殺人」)。若い女性がアパートの一室で死亡した。死因は不明、キャバクラに勤めていた彼女の足首には、店のシンボルである熱帯魚のタトゥーが施されていた。勤務先からアパートへの帰り道の状況を確認した千夏は「二次溺水」を疑うが……(「溺れる熱帯魚」)。閑静な住宅街に建つ豪邸のリビングで発見された、腹部をめった刺しにされた女子高生の死体。凶器もなし、動機も見当たらない――。現場に向かった千夏は、真っ先にある場所に足を運び、警察を驚かせる(「爛れた罪」)など、圧倒的なリアリティで描く4話を収録。

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Posted by ブクログ

事件の真相を明らかにする為の検死ではあるけれど真相より被害者、そしてその背景に重きをおいてあるように感じた。解剖の描写は変わらず詳細。千夏の実家での事件が今後どのように関わってくるのか続きが楽しみ。

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2024年12月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今回は司法解剖で得られたことから事件の謎を解くことよりも、司法解剖そのものの描写や被害者たちの人間ドラマの方が印象に残った。
前回はトリッキーな内容の事件があっただけに、今回は事件としてはシンプルだったなあと。
最初の話は久住くんの成長が目立った話だったし、司法解剖としては無難な内容で、事件よりも最後のオチの方が印象的だったし。
人間ドラマが描かれたゆえに、後半二つの話は個人的に非常に重かった。
一つはえげつない話だったし、もう一つはとにかく残された人たちのことを思うと本当に胸が苦しい……
千夏さんの言葉と被害者が残してくれたものでまだ救いがあったのがよかった、本当によかった。

ただそんな千夏さんの「救い」はいつになるのか。
久住くんが彼女の表情を読めるようになってきたり、北條と千夏さんが食事に行ったりと、千夏さん自身が少し柔らかくなってきたなと感じたけれども、頑なに故郷に帰らないあの態度を見ると、まだ先は長そう。
いつかちゃんと決着すればいいなと祈るばかり。

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2024年12月16日

Posted by ブクログ

小松亜由美『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト 溺れる熱帯魚』角川文庫。

シリーズ第2弾。医学部法医学教室で現役の解剖技官を務める著者による法医学ミステリー。4つの短編とプロローグを収録。

前作では、まるでノンフィクションのようなドラマ無き法医学ミステリーという感じの不思議な作品であると思ったのだが、自分の理解が浅かったようだ。

いずれの短編も面白いテーマであるのにも関わらず、主人公の加賀谷千夏は何時も事件の傍らに佇むだけで、ミステリーの核心にまでは斬り込まず、結末は尻切れトンボのように感じたのだが、本作は事件の背景にある人間模様を描いていることにようやく気付いた。

と、同時に主人公である加賀谷千夏の秋田の実家で起きた殺人事件の真相に迫ろうとしているのだろう。


『古刹の亡霊』。京都を舞台にしたミステリーと言えば、2023年に逝去した鏑木蓮の作品を思い出す。本作のゆったりとしたテンポや雰囲気は鏑木蓮の作品にも似ている。意外なラストには驚かされたが、真実を解き明かすのは主人公ではない。京都の由緒ある寺で発見された両手首を切断された住職の遺体。法医解剖医の加賀谷千夏がその死の謎に迫る。

『溺れる熱帯魚』。現代の世相を反映したような哀しい物語。アパートの一室で変死体となって発見された与那嶺遥海。沖縄から憧れの京都で大学生となった遥海は京都での暮らしに馴染めずに寂しさを紛らわすためにホストクラブへと足を踏み入れる。遥海がホストに騙されて、借金を抱え、僅か2年でキャバクラに堕ちる。

『爛れた罪』。何とも遣る瀬ない事件。しかし、現実に起きていてもおかしくない事件である。自宅で下腹部をめった刺しの状態で遺体となって発見された高校1年生の柴垣乙華。驚いたことに乙華は殺害される直前に流産していた。

『その腕で、もう一度』。余りの感動の結末に感涙。このシリーズは事件の背景にある人間模様を描いているのだとやっと気付いた。与島実禾は中華の料理人である松久保浩介との結婚を間近に控えていた。ある日、浩介は先輩の店のオープンの手伝いに行くが、その店に怨みを持つ男が店内でガソリンを撒いて放火する事件に巻き込まれる。

『エピローグ』。『その腕で、もう一度』のその後と加賀谷千夏が抱える過去の闇に触れる。

本体価格740円
★★★★

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2024年11月29日

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