小松亜由美のレビュー一覧
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小松亜由美さん2冊目。『イシュタムの手 法医学教授・上杉永久子』よりも本作の方が早い刊行だったんですね。こちらも法医学・遺体鑑定に係る医療ミステリーで、法医学(解剖)のリアルを描く原点なのかと感じました。
主人公は法医学解剖医・加賀谷千夏。寡黙だけれども腕はピカイチ。彼女の握るメスが、死者にまつわる謎を解き明かしていく展開です。解剖場面の描写がリアルで濃く、事件や死者の背景が薄い印象もありました。
エピローグあってプロローグなし? 代わって冒頭に秋田の地方紙の事件記事が…。この意味するところは最終話まで不明(ほぼ見当が付いてましたが)。
4篇それぞれで視点人物が変わり、優秀だけれど -
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久坂部羊、小松亜由美、中山祐次郎、七尾与史、南杏子『謎解き診察室、本日も異状あり』幻冬舎文庫。
5人の医師作家による医療ミステリー短編アンソロジー。
中山祐次郎と南杏子は初読みの作家。七尾与史が医師作家だとは知らなかった。
七尾与史の『患者は二度死ぬ』がピカイチで、後は並以下の出来だった。
久坂部羊『悪いのはわたしか』。そういうオチであったかと納得するも、真実は一体何処にあるのかと頭の中が混乱した。新聞で人生相談の連載を持つジャズピアニストにして精神科医である女性医師の元に怪文書が届く。怪文書が届いてから女性医師は次第に精神的に弱っていくのだが……
小松亜由美『半夏生のトルソー』。瓢 -
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法医解剖。異常死と判定された死体を司法に基づき解剖する検屍行為のことだ。
死亡推定時刻や致命傷、使用された凶器などのほかにも、法医解剖によってわかることは意外なほど多い。
遺体を詳細に調べ、犯人の計算外の隙を見出し事件解決に導く解剖医と技官の活躍を描く、法医解剖連作ミステリー。
◇
暗く重い空気の中、ホルマリンの臭いと飛び交う数匹の小バエに不快さを感じつつ、私は解剖の準備に取り掛かった。
ここは仙台市にある杜之宮大学医学部の法医解剖室だ。間もなく宮城県警から遺体が到着する。それまでに解剖の準備を済ませなくてはいけない。
解剖台の脇に、メスや剪刀、ピンセット、 -
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著者は、臨床検査技師免許を持ち、法医学教室で解剖技官を務めるという、ちょっと変わった経歴。
それが遺憾なく発揮されている本連作。
主人公は秋田医科大学の法医学教授である上杉永久子(とわこ)。語り手は上杉教授の教室に所属する博士課程院生の南雲瞬平。
タイトルの「イシュタム」の由来はなかなか出てこないが、中盤以降で南雲が説明している。マヤ神話に出てくる、「自殺を司り、死者を楽園に導く女神」のことだという。
収録作は5話。
いずれも検死のため、永久子の元に運ばれた遺体の解剖から、事件の背後にある意外な事実が現れる形式。
火災後に発見された老夫婦と思われる二体。
食中毒で倒れた家族。
乳児の不審死。 -
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ネタバレ今宮准教授が主人公の物語を読んでいるというよりは、被害者は何が原因でどうやって死に至ったのかを科学的根拠をもとに、作者さんが説明してくれているのを黙々と聞いている、といった気分になった。
解剖に関する知識や情報、病理学的な所見に関する解説は、さすがに凄いな、へーそうなんだと感心しきりだったけど、授業や講義を聞いている感覚に近くて、キャラに感情移入するとか、今宮准教授カッコいい!とか、物語の流れ没入してハラハラするといったことにはならなかった。
物語の大きな謎の一つでもある、被害者が犯人を含む関係者を集めた理由が何だったのかの答えが、死期が近いからお礼を言いたかったんだとなっていたけど、彼ら -
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小松亜由美『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト』角川文庫。
医学部法医学教室で現役の解剖技官を務める著者による法医学ミステリー。4つの短編とプロローグを収録。
無味乾燥。まるでノンフィクションのようなドラマ無き法医学ミステリーという感じだ。いずれの短編も面白いテーマであるのにミステリーの要素が希薄で、主人公を中心としたストーリーに山谷が無いことが残念でならない。
『エクソシズム』。全くミステリーは感じられず、まるでノンフィクションのような短編である。主人公は遺体鑑定医としても普通の仕事をしただけに過ぎないように感じた。交通事故死を切っ掛けに娘に悪魔が取り付いたと悪魔祓いを主体とする怪しげ