小松亜由美『遺体鑑定医 加賀谷千夏の解剖リスト』角川文庫。
医学部法医学教室で現役の解剖技官を務める著者による法医学ミステリー。4つの短編とプロローグを収録。
無味乾燥。まるでノンフィクションのようなドラマ無き法医学ミステリーという感じだ。いずれの短編も面白いテーマであるのにミステリーの要素が希薄で、主人公を中心としたストーリーに山谷が無いことが残念でならない。
『エクソシズム』。全くミステリーは感じられず、まるでノンフィクションのような短編である。主人公は遺体鑑定医としても普通の仕事をしただけに過ぎないように感じた。交通事故死を切っ掛けに娘に悪魔が取り付いたと悪魔祓いを主体とする怪しげな新興宗教に嵌まった母親による娘の傷害致死事件。遺体鑑定医の加賀谷千夏は娘の遺体を解剖し、真実を暴く。★★★
『梟首』。遺体となった暴力団関係者の背景には余り触れられず、死亡原因が明らかになり、めでたしという感じで、ドラマの無い無味乾燥の短編。河川敷で首の無い遺体が発見される。遺体には刺青があり、小指も欠損していることから、暴力団関係者と見られた。暴力団が見せしめのために殺害したのではと刑事は先入観を持ちながら、司法解剖に立ち会うが、加賀谷千夏が再び真実を暴く。★★
『紅い墓標』。加賀谷千夏が極めて司法解剖により掴んだ事実にのみ目を向け、刑事たちの先入観を一蹴する。それはそれで良いのだが、余りにもドラマが希薄だ。美術大の裏山から発見された切断された両足。足の爪にはペディキュアが施され、女性の足ではないかと思われた。また、バンパー痕があることから、交通事故の疑いもあった。司法解剖と刑事たちの捜査から浮き彫りになる事件の真相。★★★
『腐爛と凍結』。やはり加賀谷千夏は司法解剖にだけ徹するのみ。余り物言わぬ主人公にその人物像が見えて来ない。精肉店の夫婦が遺体となって発見される。夫の遺体は腐爛していたのに対し、妻の遺体は凍結していた。★★
『エピローグ』。冒頭の花火師夫婦殺害事件の新聞記事に触れたものの、余り進展は無い。殺害された花火師夫婦とは主人公の加賀谷千夏の両親だった。
本体価格720円
★★★