鈴木宏昭のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
認知バイアスについての本はたびたび読んできたので、「これこれ、知ってる!」とか思いながら読んでました。そしたは最終章が「認知バイアスというバイアス」という内容で、この筆者の凄さが際立ちました。そうです、結局のところ、ヒトの知性というものは、環境などにあわせてなんとなく進化してきたものだったのです。バイアスを知って他の人より優位になったなんて愚の骨頂です。人も能力も結局は組み合わせ次第。とりあえずやってみて、失敗したらまた考える、くらいでちょうどいいのでしょう。AIなんかも、言語の延長線上にあるただのツールです。どう使うのか、が問われているのですね。
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Posted by ブクログ
学習における創発過程を研究する認知科学の専門家が、一般向けに「学ぶこと」について書いた本。
本書では、今まで通念とされていた誤った学習観を見直し、知性を「能力」「スキル」というメタファーで捉えることの危険性を説く。
「能力」というものは安定性を持っており、基本的にはいつでも同じように働くというイメージが強いが、人間に関して言えばそうしたことは期待できない。
むしろそれは文脈に応じて働いたり働かなかったりする「文脈依存性」によるものだという。
親や先生、マネージャーなど教育に携わる者にも読んでほしいが、自己研鑽に励む独学者にとっても役立つ本だと思う。
新書であるが、咀嚼するのに少し時間がかかるなかなかに読み応えのある本だった。
ーーーーー一一一以下、抜書きーーーーー一一一
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創発という用語は専門的には、少なくとも「還元不能性」、「意図の不在」という2つの意味が含まれる。還元不能性というのは、創発されたものは、それを作り出すための要素の性質からは説明できない、つまり還元ができないという意味である。
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創発にだいじな条件は、そこに多くの要素が存在していること、そして要素どうしの相互作用によって揺らぎが生じること、またその相互作用の仕方は環境からの影響を受けることである。
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認知的変化を含めた人の知性を文脈、つまりそれが発現する環境から切り離して論じることは適当ではない、ということである。さまざまなリソースが特定の文脈との出会いによって現れたり、隠れたりする、つまり揺らいでいるのが人間の知性なのである。
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伝えられた事柄、本で読んだ事柄がどのような範囲をカバーするのか、それは他の知識とどう関係するのか、そしてどこで使われるのか、そうしたことを考える作業を行わない限り、その事柄は単に記憶としてしか存在せず、知識とはならないのだ。こういう考え方を構成主義(constructivism)と言う。相手からの情報、その記憶が知識となるためには、それらの素材を用いて知識として構成していかなければならないのだ。構成するのはもちろんあなただ。あなたのこれまでの経験は人と異なるだろうし、これから出会いそうな場面も異なるだろうから、構成される知識は人によって少しずつ異なってくる。より多くの関連した知識と結びつきを作ったり、その知識がカバーする事柄をたくさん経験した人が構成する知識は、単にクイズのように覚えた人のそれとはまったく異なったものとなる。難しい言葉で言えば、知識というものは「属人的」なものなのだ。
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日本の学校で学ぶ英語は身体化されていないのだ。英語の時間に文字として触れるだけであり、それを使って生活することがない。そこでは「apple リンゴ」という記号同士のつながりができるだけだ。一方、英語圏で育つ日本の子供たちは幼稚園、学校に放り込まれ、起きている時間の1/3から1/4くらいをそこで英語を使って過ごす。彼らの英語は自分の経験を構成するさまざまな感覚と結びつき、身体化されている。これが子供たちのすばやい英語習得を支えている。
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これらを利用したものにイメージ・トレーニングと呼ばれるものがある。この効果を調べたある研究はとても興味深い結果を報告している。取り上げた課題はダーツである。あるグループは毎日30分間、 50回投げることを8週間続けた(週5日)。別のグループは実際の練習とイメージ・トレーニングを交互に行うことを5週間行った(1日は実際に投げ、次の日はイメージ・トレーニング)。だからこのグループは最初のグループの半分しか練習しないことになる。どう考えても最初のグループの方の成績が良くなると考えたくなるが、実はイメージ・トレーニンググループの方が2倍以上も得点が向上するのである。ただしイメージトレーニングは、一定の経験を積んだ人にしか有効ではない。初心者はその運動をする時にどんな筋を使えばよいかがわからないからだ。
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事前にミスマッチを繰り返す子供と、ミスマッチをほぼしない子供を選び出し、彼らにこの課題の解決に必要な事項を教えた。教えている最中の成績については、ミスマッチをするグループもしないグループも差がなかった。しかし、その2週間後にテストを行うと2つのグループには大きな差が現れた。ミスマッチグループの子供はそうでない子供の5倍もの成績を収めたのである。つまり、揺らぎや変動性を伴う子供たちは、練習から得たものを持続的に用いることができる一方、揺らぎの少なかった子供たちは学習期間を過ぎると急速に教えられたことが実行できなくなってしまうのである。
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以上のことがひらめきの背景にあるとすれば、巷に溢れる創造力育成プログラムとか、そうしたことをまとめた書籍の持つ意義はとても限定的であることがわかると思う。つまり失敗を含めた経験抜きに、ある方法を使ってクリエイティブなんてことは起こらない。
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Posted by ブクログ
ネタバレ認知科学の視点からの「学び」の実態を明らかにするという書。
『類似と思考』を書いた鈴木先生の著作。鈴木先生は、思考、学習における創発過程の研究を行っている認知科学の専門家。
いろいろ直観に反する話が載っている。
一般に教えているのは「情報」であり「知識」の素材にすぎない。
問題を解くには、認知的リソースと状況が提供するリソースを組み合わせて「知識」を構築する必要がある。
このあたりの主張は、自分の思い込みをはずしてくれる。
・知識はそのまま身につくことはない
・練習しても簡単には上達しない
・思考力は安定しないものである
・ひらめきは突然生まれない
したがって、教育や学習に関する素朴理論の批判的検討が最大の価値。
その意味では、最後の章を読まないといけない。
素朴理論というのは、特に教育を受けなくても、教えられなくても知っているまとまった知識だ。
人類の文化的学習ともいえ、有用な点もあるが、多くは、特殊な状況で該当する話であリ、多くの誤りを含むので、弊害をもたらすことも多い。
教育や学習についても素朴理論は存在する。
「問題と正解」に関わる素朴理論
「基礎から応用」という素朴理論
「すべて頭の中で」という素朴理論
「教えればできる」という素朴理論
大前提として、練習を通した学習、発達、ひらめき等の認知的変化(これらは「認知的変化」なのである)は、いずれも、複数のリソースが存在し、それらが競合、協調を重ねながら揺らぎ、状況、環境と相互作用しながら、進んでいくものであることを理解しておく必要がある。
マイケル・ポランニーの『暗黙知の次元』を理解する上でも有用だった。 -
Posted by ブクログ
学びの過程についてよく知ることができる。予備知識なしでも読める。練習、発達、ひらめき、スランプなど納得できる理論と研究結果が紹介されている。芸術の半分は鑑賞者にあることや、自分で考えたことしか定着しないことなど、普段の生活における肌感覚と照合しても違和感なく納得できる。現在学校教育でよく行われる「調べ学習」も、初めに学習者が問題を創発できていないとただの作業(しかも何をすればいいかわからない)になってしまう。多人数で一斉に行われる授業において、はたしてどれほどの子どもたちの「問題の創発」ができているかと考えると、課題が山積であることが分かる。それぞれの創発を支援するのであれば、取り組む項目に多様性をもたせることが必要だが、そうすると同内容を全国民に教育するという学習指導要領と齟齬が出る。教育の平等を保ちながら、個々の創発を支援できる仕組みを検討すべきだろう。
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Posted by ブクログ
なぜ、そのような学校教育が行われてきたのか、というところまで踏み込まないと現場は改善されない。ここで書かれていることは、実は教師は経験的に知っている。それを変えられないところが本当の問題なのだ。
「能力は安定性を持っており、基本的にはいつでも同じように働くというイメージが強いと思うが、ここで見てきたように、人間に関して言えばそうしたことは期待できない。それはブンミャクに応じて働いたり、働かなかったりするものなのだ。これが私が人の知性を『能力』、『力』というメタファーで捉えることが危険だという理由の一つだ。」(p32)
「コトバは、全体性を持つような場面や対象、また直感的な理解を表現するには適していない。」(p60)
「発達は段階的に進むとされている。しかし、発達による変化にはうねりがあり、階段状に発達が進むわけではない。」(p109)
「・問題は出される。(既にある)・正解がある。・正解を知っている人がいる。(先生)というようなものを典型的な教育・学習場面だと考えるのではないだろうか。」(p176)
「国際化が進んだから英語、国際理解、人工知能の時代だからプログラミング教育、18歳で選挙に参加できるようになったので主権者(シチズンシップ)教育、心が荒んでいるから道徳(政治家に言われたから)等々。これらの変化があると、『では学校で教えよう』、『学校での授業時間数を増やそう』ということになる。つまり何かが必要になると、それを教育するということになる。これらは『教えればできる』という信念に支えられている。」(p184)
「教育とは知っていることを整理して伝えることではないのだ。」(p211)
能力の発現は文脈に依存する(テスト評価の限界)、細分化しても包括的に理解することはできない(スモールステップ指導の限界) -
Posted by ブクログ
ネタバレ表象と計算という伝統的な認知のフレームワークを見直し、「生物学的シフト」つまり知性を生物学的な特質をもつものとみなす考え方にもとづき、多様なリソースの中で絶えずゆらぎながら生成と変化を繰り返すという、知性の姿にせまる本。
認知科学は学際的である。心理学、哲学、言語学、教育学、人類学、生理学、神経科学、動物行動学、生態学、人工知能研究、ユーザインタフェース研究などが集まってできあがってきた。その共通の基盤が「情報」という考え方である。
大きな潮流としては「生物学的シフト」つまり知性を生物学的な特質をもつものとみなす考え方を基盤にしている。つまり、生成的であるという知性の特徴と変化、成長、発達できるという特質が背景にある。
情報という概念=表象と計算
情報の取得と保持=記憶。記銘、保持、想起。記憶を中心に知性はたえず生成される。人工的な記憶装置とは全く異なるイメージ。
記憶や知識ははかない。状況な中で絶えず揺れ動き、変容、組み換えを繰り返しながら動的に生成される。
情報の利用=思考。人間の思考は、さまざまなタイプがあるが、合理性、論理性とはかけ離れたものである。
表象=representation。
知覚表象
記憶表象=概念、エピソード、手続き的知識
有用な知識:一般性、応答性、関係性(特に階層性)
知識をうまく利用、表現するための試み
・構造をもった知識=スキーマ、フレーム、スクリプト
・プロダクションシステム=手続き表現のための基本的枠組み(アーキテクチャー)プロダクションルール(if-then形式で表現)
・ニューラルネットワーク=ニューロンとグリア細胞による並列分散処理(PDP)、コネクションニズム
錯視:表象を支持する現象
・ミューラー=リア―の錯視:長さの異なる代理物。育った環境によって世界が変わってみえる
・カニッツァの三角形:三角形という見えないものが見える
・ネッカーの立方体:アイデンティティが不成立
文の理解は単語と文法だけでは説明できない。状況=外延的次元の理解の必要性
記憶
・記憶はつながりである
想起、検索方法
感覚記憶:アイコニックメモリ、エコイックメモリ
短期記憶:
ビット:二進数一桁、つまりゼロと1だけで表せる情報=場合の数が2の場合。。例:男女の区別
一般に情報量は、2を底とする場合の数Nの対数。log2Nで表現できる
・自由再生
・手がかり再生
・再認
チャンキング
長期記憶
・エピソード記憶:時間順
・概念:意味的な関係による組織化。例:入れるものと入れられるもの
・手続き的知識:行為、運動。例:文法も
短期記憶から長期記憶に移行させるには
・リハーサル:復唱
・精緻化:推論を行うことで、与えられた情報に何らかの別の情報を付け加えること。カテゴリー情報、物語法、場所記憶法
符号化特定性原理
チェンジ・ブラインドネス
構造写像理論:対象と属性と値
表象は断片化されており、外の世界と相互作用をする
思考
・推論:演繹、帰納、仮説推論、類推。与えられた情報から別の情報を生み出す
・問題解決:現状と望んでいる状態の不一致の解消。初期状態、目標状態、オペレータ、オペレータ適用制約。ハノイの塔
・意思決定
ヒューリステッィクスの活用:山登り法
問題表象
効用、期待効用、再認ヒューリスティックス、
直近ヒューリスティックス、最良選択ヒューリスティックス、
利用可能性ヒューリスティックス、代表性ヒューリスティックス(カテゴリー判断、プロトタイプ、社会的ステレオタイプ、サンプリング)
確証バイアス
批判的思考:
主張の明確性、根拠の有無、根拠の種類、根拠と前提の関係、根拠の得られ方、代替仮説の検討、
トゥールミンの議論の図式。主張、根拠、保証(主張と根拠の関係性)、保証の妥当性、反論、再反論・限定
実用的推論スキーマ:許可のスキーマ、社会契約制における利得ー対価のスキーマ
人間の推論は文脈に依存する
洞察=ひらめき
よい試行の発生頻度は、問題解決を続けるうちに徐々に増加していく
知覚的シンボルシステム:身体化しているので、
記号接地問題が起きない
世界への表象の投射
・世界が覚えている
・世界が問題を変える
インタープレイによる認知の拡張。外化
拡張された心概念 -
Posted by ブクログ
人間の「物事に対する認知」におけるプロセスや、それによって生まれる「思考のクセ」を様々な学問から科学的に証明している本。
【学び】
・物事に対する認知
-表情フィードバック
└ある感情状態になると表情や身振りに出ると言われるが、これは逆だという主張
◎セルフマネジメントには理想的な感情により生まれるアウトプットを意識することが大事なのでは?
例)疲れていてしんどい→笑顔でせっせとこなしていく
-記憶定着
└接触回数の多さと意図的な記憶想起の連続
◎意識の連続は無意識を生むが科学的に証明された
-記憶保持
└情報にどのような操作、処理を行ったか
…精緻化(せいちか)という
└他人が行う精緻化よりも自分が行う精緻化を行った暗記方法の方が成績が良くなる
…自己生成効果という
◎自ら暗記方法を生み出そう
└思い出すべき対象と思い出すときの手がかりが一致しているほど思い出しやすくなる原理
…符号化特定性原理
◎その時の情景、時間、感情を付随して記憶すると効果的
→鍵が定位置の置き場になかった時、昨日の出来事を振り返って記憶から辿る行為はまさにこれ
-記憶想起
└構成的記憶: どこかから得た情報から全くないことが作り出される、記憶が捏造される
◎デジャブ
・思考のクセ
-利用可能性ヒューリスティクス: 発生頻度の判断基準は思い出しやすさ
└思い出しやすい事象が、あたかも多く発生しているようにかんじられる現象
└繰り返し接触する→記憶に定着→想起が容易で高頻度→考えや価値観が形成される→確証バイアスに至る
◎マスメディアの特性上、めずらしい、変わったことに焦点を置き発信するため、誤った信念による確証バイアスを生み出しやすい
→現代に必要な思考: 批判的思考
-フレーミング効果
└同じ事象を別の表現を使うことにより選好基準が変わる現象
◎100人のうち10人が生きるボタンと90人が死ぬボタン、本質は変わらないのに前者を選びたがるクセ
-プロスペクト理論
└効用は確実性を重視した保守的な選択をとるが、ネガティブな状況下ではリスクを追求する
◎パチンコで負け続けていて注ぎ込む、勝っていればすぐ止めるのと同じ
-生死が関わる危機的状況下では逸脱者に対して不寛容になる
◎コロナでマスクしてない人に対して暴力的になるなどもまさにそう
-サブリミナル効果
└知覚できないほど繊細な刺激を与えることで無意識に選択、行動してしまう効果
-思考にゆらぎを与える重要性
└一貫した考え方で物事を処理するのではなく、様々な考え方を試行錯誤することで思考が発達する
◎謎解きは思考を発達させる
・拡張
-記憶を維持するための努力が不要になると、認知的なエネルギーの探索や推論など別の処理に向けることができる
◎議事録、タスク管理の重要性
-持っている道具によって脳の働きが拡張される
◎常に最新技術を身にまといたい
【NA】
・笑って、はたらこう。
・覚えてもらうためにたくさん会い、たくさん思い出してもらう機会を作る。→自分のクイズを出すなど?
・自分なりの暗記方法を見出そう。
・批判的思考を常に持とう。
・伝え方には気をつけよう。自身も表面的な文脈だけで判断せずその裏の意図まで読み取るクセをつける。
・謎解き1日に1回解こう。
・議事録、タスク管理はかかさずに。
・ウェアラブル端末への投資にはいとわない。