鈴木宏昭のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
日々生活する中でバイアスというものは知っておかないといけないのでは、という気持ちが以前からあったため購入。
難しそうな内容をとても噛み砕いて書いてくれると感じた。ときどき筆者のおもしろ優しい性格や人間性が垣間見えたため読みやすかった。
正直、内容のすべてを理解できたというわけではないが、読みやすい文章と適度に織り交ぜられた例のおかげで、筆者が伝えてくれようとしたことは少し理解できた気がする。
個人的には、章でいうと概念のバイアス、共同のバイアスが興味深かった。
これまでバイアスというと「◯◯バイアス=こういう罠」というものかと思っていたけどそんな単純なものでもまく、色々なバイアスが絡み -
Posted by ブクログ
心の働きの偏り、歪みを意味する「認知バイアス」。
人の認知の仕組みや認知バイアスについて、様々な実験や日常の例をもとに解説した一冊。
様々な実験が紹介されていてその内容に難しさを感じたけれど、興味深いものが多かった。
特に印象的だったのは、人の行動はその人自身の意図のみではなく、意識できない情報や無意識の働きの影響も大きいという話。
自分で意識できないレベルでも、実は周囲から様々な情報を受け取っているということに人間の不思議さを感じるとともに、自分の意思だと思っていたことも実は無意識に選ばされていたのでは…?という怖さもふとよぎった。
また、言語化することの弊害や言語化の苦手分野について紹介 -
Posted by ブクログ
人間が学習して何かができるようになるとき、人の中で何が起こっているのかを、認知科学の知見からまとめた本。分かりやすくて、とても良かった。
何かができるようになるためには、知識を得るだけではなく、体が学習するという身体性が重要なのが興味深い。また、上達やひらめきが、無意識下の揺らぎに起因しているというのも納得。
これを前提に自身の学習戦略の参考にしたいところ。
以下、面白かった点のメモ。
●知識は構築される
知識は伝わらない。なぜなら、知識は人が自らの持つ認知リソース、環境の提供するリソースの中で創発するものだからだ。
知識は「モノ」のように捉えてはならず、絶えずその場で作り出されている「 -
Posted by ブクログ
認知バイアスについての本はたびたび読んできたので、「これこれ、知ってる!」とか思いながら読んでました。そしたは最終章が「認知バイアスというバイアス」という内容で、この筆者の凄さが際立ちました。そうです、結局のところ、ヒトの知性というものは、環境などにあわせてなんとなく進化してきたものだったのです。バイアスを知って他の人より優位になったなんて愚の骨頂です。人も能力も結局は組み合わせ次第。とりあえずやってみて、失敗したらまた考える、くらいでちょうどいいのでしょう。AIなんかも、言語の延長線上にあるただのツールです。どう使うのか、が問われているのですね。
-
Posted by ブクログ
学習における創発過程を研究する認知科学の専門家が、一般向けに「学ぶこと」について書いた本。
本書では、今まで通念とされていた誤った学習観を見直し、知性を「能力」「スキル」というメタファーで捉えることの危険性を説く。
「能力」というものは安定性を持っており、基本的にはいつでも同じように働くというイメージが強いが、人間に関して言えばそうしたことは期待できない。
むしろそれは文脈に応じて働いたり働かなかったりする「文脈依存性」によるものだという。
親や先生、マネージャーなど教育に携わる者にも読んでほしいが、自己研鑽に励む独学者にとっても役立つ本だと思う。
新書であるが、咀嚼するのに少し時間が -
Posted by ブクログ
ネタバレ認知科学の視点からの「学び」の実態を明らかにするという書。
『類似と思考』を書いた鈴木先生の著作。鈴木先生は、思考、学習における創発過程の研究を行っている認知科学の専門家。
いろいろ直観に反する話が載っている。
一般に教えているのは「情報」であり「知識」の素材にすぎない。
問題を解くには、認知的リソースと状況が提供するリソースを組み合わせて「知識」を構築する必要がある。
このあたりの主張は、自分の思い込みをはずしてくれる。
・知識はそのまま身につくことはない
・練習しても簡単には上達しない
・思考力は安定しないものである
・ひらめきは突然生まれない
したがって、教育や学習に関する素朴 -
Posted by ブクログ
学びの過程についてよく知ることができる。予備知識なしでも読める。練習、発達、ひらめき、スランプなど納得できる理論と研究結果が紹介されている。芸術の半分は鑑賞者にあることや、自分で考えたことしか定着しないことなど、普段の生活における肌感覚と照合しても違和感なく納得できる。現在学校教育でよく行われる「調べ学習」も、初めに学習者が問題を創発できていないとただの作業(しかも何をすればいいかわからない)になってしまう。多人数で一斉に行われる授業において、はたしてどれほどの子どもたちの「問題の創発」ができているかと考えると、課題が山積であることが分かる。それぞれの創発を支援するのであれば、取り組む項目に多