桃崎有一郎のレビュー一覧
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ネタバレ近年では最高の歴史本、ついに「武士」がいつ、どこで、どうして生まれたのかが判明したのです
武士は889年「物部氏永の乱」勃発を契機に、天皇が我が身の危険に対応する目的で、宇多天皇が890年に「滝口武士」として設置した「朝廷組織外で官職を持たない」弓馬の達者な「武士」と儒学の発想と元正天皇の詔の先例から名付けられた
奈良時代より弓馬の道(日々鍛錬を要する非生産部門)を義務付けられていたが、平安時代より富の集中と格差がもたらす「群盗」の存在が、武勇に堪能する人材を地方に、地方の調停者として「王臣子孫」という存在を核に化学反応により生まれた「武士」、平将門の乱により段違いの武勇を得た兵士は、藤原純友 -
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武士の起源は何だろう?そんな疑問に正面からぶつかっている意欲作です。僕が学生の頃「生産力の向上で富の余剰が蓄積されると、その奪い合いの争いが起こる。その中で地方の富裕な農民、中でも年貢の納入を請け負う名主が荘園の中で成長し、土地や財産を自衛するために一族で武装し、武士になった。彼らは律令国家の諸矛盾の中で草深い田舎に生まれ腐敗した中央の貴族政治を克服して中央社会を切り拓いた」こう習いました。しかし、ここに書いてあることのほぼ全てが嘘だと著者は述べています。その時点で本に引き込まれました。またある学者は「都の衛府から生まれた」と言いますがそれも違うと論じてます。では武士の起源はどこにあるのか。そ
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ネタバレ「武士の起源をときあかす」の桃崎有一郎氏の新著。内容が足利義満だけにかつての「室町の王権」から中公の「足利義満」を経てどういう話にアップデートされているか強い興味を持って読んだ。
いつもながら多量の史料収集と卓越した筆致、軽妙な?ツッコミでぐいぐい読ませてくるのには感心しかない。これまたいつもどおり、核心的な主張については必ずしもピースが揃っていない部分も感じられるが、それを差し引いても「義満以前」の尊氏・義詮から「義満以後」の義持・義教を含めて足利義満とはなんだったのかを描き出している。
紙の新書だと妙に分厚く仕上がっているが、これは論を進めるにあたっての前提、例えば「室町殿」「北山殿」 -
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ネタバレ著者は「武士の起源を解きあかす」で、10世紀に王臣子孫が、郡司富豪層と古代武人排出士族に婿入りすることにより、武士団が形成され、武士の誕生と武士団の形成は同時に起こったとの説を展開した。今回は、武士の誕生は、婿入り以外に、王臣子孫の嫁を迎え、父系と母系とを逆にし、系図を偽造したり、外孫が養子に入ったりすること等で武士が誕生したケースもあったとの説を展開する。武士の系図などからみて、極めてリーズナブルな説と思われる。
・父系と母系の合成みょうじが作られ、その場合父系が上になる。官職由来と考えられてきたが、当該官職についいていない例が多い。佐伯+藤原=佐藤、守部+藤原=守藤→首藤、伊香+藤原=伊藤 -
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<目次>
プロローグ 改竄された“社会の設計図”
序章 武士の誕生と名乗り~アザナと名字
第1章 「佐藤」名字と佐伯氏~佐伯姓と波多野氏
第2章 「首藤」名字と守部氏~美濃と源氏と王臣子孫
第3章 「伊藤」「斎藤」「兵藤」名字と伊香・在原・平氏
第4章 「○藤」名字の源流~官職由来と古代卑姓由来
第5章 「近藤」名字と院政~出自不明な院近臣たち
第6章 奥州藤原氏の創造~秀郷流・坂上氏・五百木部氏の融合
第7章 文筆官僚「斎藤」家の創造~大江氏・葉室氏・清原氏との融合
第8章 大規模互助ネットワーク~斎藤・後藤・文徳源氏・宇都宮
第9章 後藤・近藤・武 -
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ネタバレ過去の知識の前提と違う世界の平治の乱
(1)保元の乱に至る道もそうだが、すべて我が子に継がせたいという親の妄執が争いを招く①摂関家は忠通が頼長から基実へ②皇室は鳥羽が崇徳から近衛へ、後白河が二条から守覚法親王へ、後白河が二条から憲仁へ、二条が憲仁から六条へ
(2)二条天皇の「孝」を無視した短慮を糊塗する朝廷全体の動きにより平治の乱の日記が記録を消された
(3)真相は、①皇位を巡り二条天皇が三条殿=後白河上皇を襲った(保元の乱で後白河が崇徳上皇を制圧した様に)②院政の主軸信西の排除と政務停滞(信頼)③三条公孝案で執権を設ける(大炊御門経宗・葉室惟方)④争乱責任を信頼・義朝に押しを付ける⑤二条は守 -
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何故「源平」の二氏が武士の代表になったのか、を平将門の乱から平治の乱に至るまでの各家の盛衰を紹介して論じている。馴染みのない時代のことが詳しく書かれていて、とても面白かった。
満仲以降の歴代源氏の危うさと、そこまで振り切れない平氏(特に直方流)の強かさが印象に残る。
また、平治の乱で主従の縁が切れたはずの「源氏累代の家人」が敢えて頼朝を担いだ理由に興味が湧いた。
それにしても古代からの武人氏族の娘を血縁に取り込んだ皇族の末裔や藤原氏傍流の荒れ狂い具合がすごい(同時代の北欧を扱う漫画『ヴィンランド・サガ』に描かれる士族たちを連想させる)。平安時代だから、生まれた子供は荒くれ者が屯する母親の実 -
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ネタバレ「武士の起源を解きあかす」や「平安京はいらなかった」を読んでいなかったら本書にはついていけなかったぐらい独特の視点でご自身の説を言い切るので「小気味よい」けど「本当かなぁ」と一抹の不安を覚える(失礼)
平治の乱で崇徳上皇がクーデターを企んだのではなく、後白河上皇が軍勢を集めたが故の不安から対抗して軍勢を集め、当時近衛天皇呪詛を疑われていた最悪の頼長と合流したために日本最大の悪霊になってしまった
白河院の時代から強訴=嗷訴への対抗として武力を天皇(上皇)が指揮して比叡山等を相手に武力排除する習慣が政治に寄らない武士を使った政争という背景も理解した
「京都の誕生」とは律令を楯に見えと虚構で張りぼて -
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ネタバレ<目次>
序章 王朝絵巻世界の裏面史~隣り合わせの血と暴力
第1章 三つの謎~源平の突出、消えた名族、強い受領
第2章 源平はいかにして武士の代表格たり得たか
第3章 王臣家・群盗問題の解決と将門の乱
第4章 源氏の飛躍と秀郷流藤原氏の沈淪
第5章 藤原保昌を生んだ血統と政治的環境
第6章 <強い受領>の確立と摂関政治
第7章 源氏の凶暴化を促す藤原保昌一家
第8章 平氏を従える源氏~男系の棟梁と女系の家人
第9章 源氏の支配権の達成と秀郷流・利仁流藤原氏の編成
第10章 「源平」並立体制へ~源氏の内乱と平氏の台頭
第11章 平氏政権の達成と「源平」並立の空洞化
終章