【感想・ネタバレ】中世武士団 偽りの血脈 名字と系図に秘められた企てのレビュー

あらすじ

◆彼らは“貴”たらんとして「源・平・藤原」姓を掠め取った!◆

平安の世が長く続くとともに疲弊してゆく地方社会、そこで生き抜くために多様な出自の者たちが結託し、
やがて「武士」という集団を形成した。
朝廷から然るべき位置づけを与えられないままの彼らは、やがて自らの正統性を巧みに「創出」し、中世という時代の支配者たるための競争に臨んでいった―

「佐藤」をはじめ現代まで生き残った名字が、中世武士団のアイデンティティ闘争の産物であったという「隠された真相」を徹底的に暴き出す、驚愕の研究成果!

【本書より】
新たな時代を切り拓いた有力武士は、実は貴人でも新興勢力でもなく、時代の終焉とともに主役級の役割を終えさせられた古代卑姓氏族が、全身全霊の努力で生き残りを図り、首尾よく生まれ変わった姿だった。

【主な内容】
プロローグ 改竄された“社会の設計図”
序章 武士の誕生と名乗り──アザナと名字
第一章 「佐藤」名字と佐伯氏──佐伯姓と波多野家
第二章 「首藤」名字と守部氏──美濃と源氏と王臣子孫
第三章 「伊藤」「斎藤」「兵藤」名字と伊香・在原・平氏
第四章 「○藤」名字の源流──官職由来と古代卑姓由来
第五章 「近藤」名字と院政──出自不明の院近臣たち
第六章 奥州藤原氏の創造──秀郷流・坂上氏・五百木部氏の融合
第七章 文筆官僚「斎藤」家の創造──大江氏・葉室家・清原氏との融合
第八章 大規模互助ネットワーク──斎藤・後藤・文徳源氏・宇都宮
第九章 後藤・近藤・武藤家が織り成す大友家の礎──利仁流・秀郷流の融合
第十章 中原親能の正体と大友家の創造──利仁流×秀郷流×中原氏×大江氏
第十一章 中原氏に還流する親能の御家人的性質──田村・水谷・摂津家の成立
エピローグ 最後の謎と次なる"神話"──素性不明の鎌倉幕府

参考文献

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Posted by ブクログ

ネタバレ

著者は「武士の起源を解きあかす」で、10世紀に王臣子孫が、郡司富豪層と古代武人排出士族に婿入りすることにより、武士団が形成され、武士の誕生と武士団の形成は同時に起こったとの説を展開した。今回は、武士の誕生は、婿入り以外に、王臣子孫の嫁を迎え、父系と母系とを逆にし、系図を偽造したり、外孫が養子に入ったりすること等で武士が誕生したケースもあったとの説を展開する。武士の系図などからみて、極めてリーズナブルな説と思われる。
・父系と母系の合成みょうじが作られ、その場合父系が上になる。官職由来と考えられてきたが、当該官職についいていない例が多い。佐伯+藤原=佐藤、守部+藤原=守藤→首藤、伊香+藤原=伊藤、在原+藤原=在藤→斎藤、平+藤原=平藤→兵藤、安倍、安曇+藤原=安藤、秦+藤原=秦藤→進藤(なお利仁母は秦氏)、越智(遠おち)+藤原=遠藤。なお官職由来の弁藤なども。
・院政期には、身分が低い有能な者や寵童を近臣の養猶子にする例が多く、とりわけ北面の武士は出自不明者ばかり。その際王家の平、源は憚られ、藤原氏に仮冒。
・大中臣→藤原→新藤は勝手に改姓。
・五百木部+藤原=五藤→権藤、後藤。奥州藤原氏は字を五板太夫、権太、権太郎、権太夫と称し、権はみょうじか?五百木部+坂上=五坂→権。なお蒲生氏も同じ。
・大友(相模の地名、波多野氏の分かれ)氏の祖、中原親能は、古庄近藤から中原家の養子(大江広元義兄弟)になり、大友氏に婿入り、古庄氏から養子能親を迎え大友氏として繁栄。鎌倉幕府御家人としての新しい形の武士団を形成。

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2025年09月23日

Posted by ブクログ

<目次>
プロローグ 改竄された“社会の設計図”
序章    武士の誕生と名乗り~アザナと名字
第1章   「佐藤」名字と佐伯氏~佐伯姓と波多野氏
第2章   「首藤」名字と守部氏~美濃と源氏と王臣子孫
第3章   「伊藤」「斎藤」「兵藤」名字と伊香・在原・平氏
第4章   「○藤」名字の源流~官職由来と古代卑姓由来
第5章   「近藤」名字と院政~出自不明な院近臣たち
第6章   奥州藤原氏の創造~秀郷流・坂上氏・五百木部氏の融合
第7章   文筆官僚「斎藤」家の創造~大江氏・葉室氏・清原氏との融合
第8章   大規模互助ネットワーク~斎藤・後藤・文徳源氏・宇都宮
第9章   後藤・近藤・武藤家が織り成す大友家の礎~利仁流・秀郷流の融合
第10章   中原親能の正体と大友家の創造~利仁流✕秀郷流✕中原氏✕大江氏
第11章   中原氏に還流する親能の御家人的性質~田村・水谷・摂津氏の成立
エピローグ  最後の謎となる次なる神話~素性不明の鎌倉幕府

<内容>
労作。系図とその周りから,武士の成立および中下級の貴族の生き残りを”想像”していくミステリーのような本。ミステリーにしても緻密である。が、専門家でない私から見ると「本当かな?」の例が多かった。系図の比較、崩し字の読み取りなど、いろいろな媒体を利用している。書いている著者も愉しんで書いているのが読み取れた。仮にそうだとして、次作で「北条氏」の分析を期待している。

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2025年07月19日

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