青木健のレビュー一覧
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旧約・新約ゆたつの聖書の世界観に対する古代オリエントの人々の反応、対応について。
旧約をも否定したマンダ教、イエスに焦点を絞り自身もそれに次ぐ使徒としえ「真のキリスト教」を名乗ったマニ教、「聖書ストーリー」に対する「東方の壁」となったゾロアスター教の教義の変遷、キリスト教に飲み込まれたアルメニアのミトラ信仰、預言者の補佐役(イマーム)だけが「聖書ストーリー」の秘儀を開示することができるとするイスラム教シーア派のイスマイール派の展開(十二イマーム派と分裂後の地下活動、ファーティマ朝の樹立、ギリシャの理性的哲学の導入)など。
マニアックな内容がたまらない。 -
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餃子の次はラーメン!別腹だから問題なし!笑
めちゃくちゃ今更だけど、ラーメンが世界的に大ブレークするとは思いもしなかった。
人気の影に国民食の枠には収まらない何かが潜んでいるのか?ひょっとすると自分は自分が思っている以上にラーメンに対して無教養なのでは?本書を前にした時そんな疑惑が持ち上がってきた。
口絵の[ラーメンの基本ジャンル20]では早速聞き慣れない種類のものがあって勉強不足(⁉︎)を痛感。
その中で気になったのもあって、例えば冷やしラーメン。冷やし中華と対をなし、脂を除き植物性油を加えるなど夏でも食べやすいように工夫されている。これはありそうでなかったってやつでは?…と思いきや昭和27年に爆誕していた!冷やし中華のスープなしで麺を食べるスタイルが苦手だったから、これは是非とも味わってみたい!
出遅れたが著者曰く、本書は「ラーメンが好きで、今より深く知りたいけれど、(中略)もっと気軽な入門書が欲しい」人向きだという。お店に関しても有名店がちょびっと確認できる程度で、基本的にオススメの紹介はしていない。
「本当に感性の豊かな人は、ラーメンに精通などしていなくても、その魅力や本質を鮮やかに捉えて、自分の言葉で語ってくれる」
それが教養というものだと著者は語る。要はどのお店でも楽しめたらそれで良い!
知識と教養を一緒くたにしていた事、本書のコンセプトを履き違えていた事をここで反省。
それでもすすり方(「つるつる」はOKだが「ずるずる」はNG、「くちゃくちゃ」は尚更ご法度)といったある程度のマナーや豆知識は外せないようで、本書をルールブックと捉える人も出てくるかもしれない。だけど自分は食べるだけで終わらないラーメン(店)との関係性を教えてもらっている気がした。
「食べる者は最後の料理人」…著者のこの一言が未だにこだましている。自分から美味しい食べ方を模索していくのも楽しみの一つか。
国民食の枠に収まらない秘密も本書170ページにて明かされているが、ここでは一旦伏せておく。"Under the Rose"ならぬ"Under the Soup" ってことで。(何じゃそりゃ)
本業がイラストレーターなだけあってラーメンそのものや素材一つひとつの描写がとにかく細かい。ラーメンを愛するばかりか心から大事にされている証だ。
そのせいか、いつ読んでもお腹が減るし喉の乾きもスープで満たしたくなるけど、個人的お勧めの時間はまだ薄ら寒い朝方。心がジュワーっと温かくなります^ ^ -
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軽妙な筆致で、マニ教文献の再現過程、マーニーの生涯とその思想、マーニー後の歴史等がつづられる。特にマーニーの生涯と思想の件(くだり)は、筆者の目線によるツッコミが随所にちりばめられ、読みながらフイてしまうこともしばしば。たしかに時代も文化背景も違う現代のわれわれからは、古い宗教的要素は珍妙に見えることもあるものだが。
だが、マニ教の神話などは現代人の目から見ても興味深く、壮大なファンタジー物語のようだ。というよりたぶん、現代人の思い描くファンタジー物語にも、その根底に古い時代からの宗教的イメージと同じものが流れているのであろう。
若きマーニーの孤独と苦悩から発せられるメッセージは、世界から疎外されたように感じている現代のわれわれに差し込む、一条の光のようである。 -
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ネタバレ古代オリエントは、多神教の世界である。
その中で、ほぼ唯一、一神教なのが、ユダヤ教。
(イクナートンの宗教改革は突然変異として除外)
なぜ、ユダヤ教が一神教なのか。
説明しようとすれば、それなりに説得力があるものもひねり出せるのであろうが、相手は宗教である。
信じるか否かは、理性で説明しようとする一線を越えている。
だから、ユダヤ教がなぜ一神教なのかは、ここでは問わない。
しかし、そのユダヤ教を母体として、キリスト教、イスラームなどが次々に誕生した。
そしてそれらの枝葉は大きく成長し、今や多神教の世界を駆逐して、三大宗教のふたつにまでなっている。
なぜ、このような事態になったのか。
『古代オリエントの宗教』は、パレスティナ発「聖書ストーリー」が、メソポタミア、地中海世界、そしてイラン高原へと拡大していく様子を、聖書が誕生した頃の「神話並立時代」、聖書ストーリーが爆発的な力を得て他の神々を駆逐する「聖書ストーリー発展期」、最後にイスラームによる「聖書ストーリーの完成と安定」と、大きく段階を3つにわけて概観する。
また、そもそも「聖書ストーリー」そのものの発展についても、主に東方教会においては、「グノーシス的理解からの聖書再検討」、「土着宗教の聖書ストーリーへの取り込み」、そして「聖書ストーリーの続編の可能性」、といった問いかけが成された、という。
このような問の中で、東方教会世界では、聖書の「アナザーストーリー」「サブストーリー」が次々に生まれた、という。
グノーシス的な聖書再検討、といっても、よほどグノーシスと聖書についての知識がなければ、ピンとこない。
もちろん私もその一人である。
著者によれば、この動きは、グノーシス主義が乱立した2~3世紀と、グノーシスによく似た思想を持つシーア派が出現した8~10世紀に顕著だという。
そもそもグノーシスとは、特別な叡智を指す。
これを会得した人間にしか理解できない秘密がある、とする考えだ。
この系統で聖書を再検討したグループとして、マンダ教、マルキオーン主義、原始キリスト教教会、マーニー(マニ)教、最後にイスラームがある、という。
筆者はこれを「聖書のアナザーストーリー」とよぶ。
要は『旧約聖書』+『新約聖書』をよしとするか、何かを付け加えるか、といった、聖書の構成を再検討する上での立場の違い、と考えて良いようだ。
これに対し、聖書ストーリーが土着宗教を飲み込んでいく中で、当然、土着宗教の神々を、聖書の中でどのように正当化するのか、という宗教習合問題が生まれる。
筆者はこれを「聖書のサブストーリー」とよぶ。
ここでは、ゾロアスター教、ミトラ教などが挙げられている。
そして、本書はそれぞれの様子を、最新の研究成果を盛り込みながら概説する。
本書で取り上げられる宗教は、いわば「負け組」であり、日本人にとってほとんどなじみのないものばかりだ。
前提となる知識が不足しているため、丁寧な解説を心がけて著述されているものの、ややハードルが高い印象だ。
たとえば、ゾロアスター教といえば、善悪二元論や終末論で有名で、ユダヤ教にも大きな影響を与えたらしい、などといわれる。
一方で『アヴェスター』はアケメネス朝からはるか時代が下った7世紀に成立した、という。
善悪二元論や終末論のような、単純であるが故に高度な神学理論が、経典なしに生まれ得るのか?という疑問をもっていた。
その答えとして、本書は「ゾロアスター教はアケメネス朝期にはズルヴァーン主義なる「時間信仰」と、イスラームという「聖書ストーリー」の攻勢にさらされるなかで整備された「善悪二元論」という、同じ宗教と言うにはあまりにかけ離れた内容を持つ」と解説する。
また、マニ教というのも、今ひとつつかみ所がなかったが、本書は「マーニー・ハイイェーは「真のキリスト教」を掲げて、もっともラディカルに聖書のアナザーストーリーを展開し、地中海世界の「原始キリスト教教会」と真っ向衝突した」とあり、なるほど、異端として厳しく弾圧された理由が分かった気がした。
他にも謎の多いミトラ教の遺跡の貴重な写真などもあり、ハードルが高い異国の魔神たちについて知る、入門書的な本といえる。
謎が多いこれらの宗教について、手軽に概観することができる本は少ないので、このくらいの内容がちょうどいいかもしれない。
もっとも、冒頭の問に対する答えは、本書にはない。
本書は「聖書ストーリー」に飲み込まれる側の物語なのだから、主題から外れるのだろう。 -
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旧約聖書と新約聖書をセットとして聖書ストーリー(後にクルアーンも加わる)と名付け、この聖書ストーリーの伝搬が古代オリエントの宗教にどのようなインパクトを与えたかを描いている。オリエント諸民族の土着の神々と聖書ストーリーの影響下に生まれた異端の神が消えていき、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教に収斂されていく様子はダイナミックで興味深い。ゾロアスター教の二元論も聖書ストーリーの影響によるとの説には驚いた。聖書ストーリーという概念が、古代オリエントの宗教を理解するには最適であると納得できた。特に、オリエントを席巻したイスラム教を聖書ストーリーの完結として描いているのは説得力が有る。
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ゾロアスター教などの著作もある著者が、イラン系アーリア人を中心に解説をしている本である。
アーリア人というと、ヨーロッパのドイツが戦時中に、アーリア人という言葉を使ったことで有名であるが、本来は、インド・イラン系のアーリア人が正当な使い方であり、20c初頭の言語分類の間違いからアーリア人が適切に使われていない。
イラン系アーリア人として遊牧民型、定住地型に分けて、それぞれを解説しているが多くの民族が出てきていて、途中で混乱することがあり、そのあと本書で確認した。また、巻末の方には簡単ではあるが、インド系アーリア人と、ヨーロッパ系アーリア人が載っている。
とにかく、アーリア人(インド系がメインで)を知りたい人には、格好の入門書だと思う。 -
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「古代オリエントの宗教」とはあるが、時代的には、2~3世紀から、旧約聖書・新約聖書の世界が、それまでにあった土着のオリエントの宗教世界に広がっていく10世紀程度のまでの様子を概説している本である。
なかなか難解な専門用語が多く、1つ1つの定義等がわからないことから概観を知ることしかできなかった。そもそも新書1冊の分量で、マンダ教、マーニー教、ゾロアスター教、ミトラ教、イスラーム教のエッセンスを概観するのも詰め込んである感はあるが、序章での全体像を押さえるとそれぞれの宗教の立場が分かり、全体像をつかみやすい。
個人的に理解できたことは、「旧約聖書・新約聖書」のセットが、西にローマ帝国、東にペルシア帝国という地理的な関係で、ところによっては聖書の解釈が変化したり、聖書の話を取捨選択、追加するなかで、いろいろな解釈に応じた宗教が生まれることがあり、その代表的な5宗教をもとに、その関係を歴史的・地理的な面を含めて説明した本であるといったところか。
オリエントの歴史、キリスト教、ゾロアスター教等の周辺知識があれば、歴史の流れや関係性が分かって、面白いと思う。 -
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西アジアにおいてユダヤ教・キリスト教がイスラム教へと変遷する過程を「聖書ストーリー」を軸に解説している。本書で扱われているのはマンダ教、マーニー教、ゾロアスター教、ミトラ信仰、イスマイール派。それぞれ「聖書ストーリー」を取り込もうとしたり、逆に取り込まれてしまったり、あるいは完全に拒絶したりと反応は様々である。それ故に「聖書ストーリー」のもたらしたインパクトの大きさが伝わってきた。これら古代オリエントの土着信仰に「聖書ストーリー」与えた影響、あるいは「聖書ストーリー」が何を吸収したのかを読み解こうとしているのだが資料が圧倒的に少ないため推測が多くなっているのはしかたのないところか。推測については筆者として特定の説を推している場合もあるが、別の説も紹介しているためバランスはとれている。
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アウグスティヌスの「告白」を読んで以来、マニ教については気になっていたが、無精して辞典を引いた程度にしか調べなかった。
今回、入門書として本書を購入し、一読。マニ教の教義をはじめ、開祖マーニー・ハイイェーの生涯、マニ教教会の歴史と各地への伝播の様子を知ることができた。
マニ教が、この世界を「光と闇の闘争の歴史」として描いたのは知っていたが、その神話の内容がこれほど面白いとは思わなかった。
「闇の勢力」が〝光の要素〟を取り込み、その回収を図った「光の勢力」その闇を封じ込めるため、この宇宙を創造。光の勢力が差し向けた神々たちが、封じ込められた闇に迫り、はき出されたのが、いま存在する人間を含めた生物たちだという。したがって肉体という闇の要素が滅ぶことで、光の要素が回収されるという、ペシミスティックな筋書きが内蔵されている。
教祖マーニーはこういった神話を独力で完成し、人々に説いただけでなく、自ら数々の聖典を執筆。最終的な預言者を意味する〝預言者の封印〟を自称した。弟子たちはそれら聖典を書写し、世界各地の文化や地域性にあわせ内容を改変し、教えを広めていった。キリスト教圏では当然ながら異端扱いされ、イスラーム教とも相容れず、迫害の憂き目にあう。ウイグル国では国教とされるも、遠く中国で細々と命脈を保った信者も16世紀には完全にいなくなり、滅亡する。