陸秋槎のレビュー一覧

  • 喪服の似合う少女

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    ネタバレ

     確かに、スタンダードなハードボイルドだな。
     その衣鉢の下で展開されるサスペンスは、そんなに複雑な読み物にはなってはいないが。

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    2025年09月23日
  • 文学少女対数学少女

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    タイトルに釣られ、評判が良さげだったので購入

    「元年春之祭」は積んだままだった
    陸秋槎、初体験
    著作のすべてが好みのタイトルだわ

    親切にも別紙で登場人物リストつき
    多量の中国名を連打されると困る自分にはありがたい限りだが、連作短編集だからさすがに不要

    内容は期待のやや下かな

    開幕でイチャコラしてたシーンが最も文学少女対数学少女だったような

    麻耶雄嵩を軽くディスってるのか?という箇所には驚いたが、読後になるほど納得

    最終章の終わり方、あとがきとW解説のミステリ論が良かった

    この著者の作風は百合なのか
    悪くないだろう()

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    2025年05月10日
  • 喪服の似合う少女

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    日本のミステリー作家にも敬意を払うあとがきにびっくりさせられた中国の作家によるハードボイルドミステリー。主人公は女探偵で、舞台は1930頃の架空の地域(省城と書かれる)。この女探偵は特に優れた能力もないし、財産もないのだけれど、知恵と肝の太さでどんどん真相に迫っていきます。基本的にはいなくなった女子学生を探すというお話です。謎解き的にもさほど入り組んでないのに解けていく楽しさは十分にあり、一昔前の中国の様子がわかるのと、中国人の名前の表記や本棚の本、詩の引用で昔の偉人による漢詩がでてきたりと周りの小道具がいちいち異文化で楽しめました。最初は薄い本だったので簡単に読めるかと思っていましたが、ふつ

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    2025年04月20日
  • 喪服の似合う少女

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     私立探偵小説。事件を追っていくにつれて、徐々に人間関係が顕になっていくのが良かったです。

     元年春之祭でも思ったけれど、作品の時代に合った雰囲気が文章から滲み出ている感じが凄いです。登場人物達がその時代に住んでいて、その時代の目線で話が進んでいく感じがしました。

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    2025年03月23日
  • 喪服の似合う少女

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    ハードボイルドというより中華ノワールといった趣の良い意味で雰囲気重視の作品。
    謎解きはそこまで複雑でもなく、だけど正解が明かされると胸がスッとなる内容。
    男性キャラは基本クズかバカで女性の方が強かに描かれているけれどラスボスの行動原理含めてそこがノイズになる感じもなく楽しめた。

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    2024年12月27日
  • 喪服の似合う少女

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    ネタバレ

    久しぶりの華文ミステリ。
    たまには読んでみるかぐらいの気持ちだったがなかなかに面白かった。

    路線的にはこってこてのハードボイルド。
    それもそのはず、逝去40周年を迎えるロス・マクドナルドに捧げる一編とあれば。
    その王道の中のそこここにまぶされる中華風味と、序盤で明らかになるものの、あれ、これってもしかして?と引き込むちょっとした設定の妙がにくい。

    とある都市省城の資産家の姪が親友を探して欲しいと私立探偵劉の事務所を訪れる。
    調査妨害もありつつ、巻き込まれ逮捕もありつつ、細い糸を辿るように行方を探っていく過程で見えてくる2人の少女の関係性。
    最終盤の揺り戻しの「なぜ?」に応えるビターな真意も

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    2024年12月07日
  • 雪が白いとき、かつそのときに限り

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    ネタバレ

    陸秋搓の本は何冊か読んでいて、どれも割りと好きだ。
    けれどこの本は作者が好きだからというよりも、タイトルの美しさで手に取った。
    『雪が白いとき、かつそのときに限り』

    実際に雪は事件にとって重要なアイテムではあったけれど、このタイトルの意味としては、思春期の儚さと、その瞬発力・集中力の強さを表したものなのではないか。

    足跡のない白い雪に残された死体。
    この密室と言っていい状況の作り方は、読んでもよくわからなかった。
    平凡な能力しか持たない自分への嫌悪とか焦りなども、そこまで追いつめられるものなのかとも思う。

    一生を平凡に過ごす人。
    人生の初期にピークを迎えてしまった人。
    そうだね。
    人生も

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    2024年11月28日
  • 喪服の似合う少女

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    1930年代の中国、私立探偵を営む女性のもとにひとりの女子学生が依頼を持ち込んできたことから、彼女は奇妙な因縁まつわる事件に巻き込まれていく。
    端正で無駄のない筆致で綴られる、きわめて冷静なハードボイルドの筆致が、まだ年若い作者によるものだと思うとかなり驚く。並々ならぬ博識も、ほかの著作で片鱗を味わったものの本当に凄い。そして堅苦しさを懸念する縁遠い時代設定も「物事がどう進み、誰がなにを企てたか」をスマートに描いているので、意外なほどすんなりと物語を追える。ほんと巧い作家だと感心します。

    登場人物たちが良い意味で皆「冷静な大人」ばかりなので、それなりのドロドロとした因縁話ではあるものの、激情

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    2024年11月01日
  • 喪服の似合う少女

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    1934年、中華民国。女性私立探偵・劉雅弦は、葛令儀という女学生から行方不明の友人・岑樹萱を探し出してほしいという依頼を受ける。樹萱の父親が借金を抱えたまま消えたことを突き止めた雅弦は、調査中に謎の男に襲われてしまう。刺客を仕向けたのは、令儀の伯父で地元の大物である葛天錫だった。天錫はなぜ雅弦を妨害するのか。そして、令儀による依頼の真の目的とは。友情、恋慕、哀憫。錯綜する人間関係の中で、雅弦は耐え難い悲劇を目の当たりにする。ロス・マクドナルドに捧げる、華文ハードボイルドの傑作。

    しばらくロス・マクドナルドは読んでいないが、影響を受けていることはよく分かった。漢詩の意味が何となくしか理解できな

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    2024年10月23日
  • 喪服の似合う少女

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    出てくる女性たちが皆んないい!主役の3人ー私立探偵、富豪の令嬢、その友人で失踪した少女ーは勿論のこと、富豪の愛人や新聞記者など脇を固める女性も気に入った。劉雅弦探偵は奥が深そうで、、また会いたい。

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    2024年10月08日
  • 喪服の似合う少女

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    女性探偵・劉のもとへ葛令儀という女学生から行方不明になった友人・岑樹萱を探してほしいと依頼を受ける。
    安くはない費用を女学生が払えるのかと言えば、彼女は地元の大物、葛天錫の姪であった。
    岑の行方を調べるうちに謎の男に襲われ、妨害された理由を知ったときに複雑な事情を知ることになる。
    岑が誘拐されたこととその後の錯綜する人間関係。
    単なる友情では済まされなくなったとき、何が残ったのか。

    最後まで言葉少なく感情のない岑樹萱(令淑)が、復讐をやり遂げたとき…
    劉との会話に寂しさを感じた。

    1930年代の中国と女性探偵の活躍という不思議な感覚ながらもこの事件の真相を思うままに楽しめた。




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    2024年09月30日
  • ガーンズバック変換

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    表題作「ガーンズバック変換」は香川県の「ネット・スマホ依存症対策条例」がモチーフ。現実よりは一歩踏みこんだ世界を描いているのだけど、現実と地続きのディストピアで、いかにも実現しちゃいそうでぞくぞくする。主人公が、液晶画面を遮断するメガネに形だけ似せた伊達メガネを作るのは、あくまでも自分のサバイバルを旨とした小さな抵抗。けっして地下組織に加わったり、表立って反対運動をしたりという大きなた抵抗ではない。でも、もしかしたらそういう心持ちのほうが長続きするかもしれないし、それが広がっていけば大きな抵抗網になるのかもしれない……ってそれがこの短編の眼目ではたぶんなくて、最後は百合的な友情に着地するんだけ

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    2024年02月20日
  • ガーンズバック変換

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    香川県ネット・ゲーム依存症対策条例をテーマに書かれた表題作『ガーンズバック変換』が前から気になっていて読んだ。SF作品集とされているが、SFしていたのは『開かれた世界から有限宇宙へ』『ガーンズバック変換』『色のない緑』くらいかなあと思う。

    1番面白かったのは『色のない緑』。「色のない緑は猛烈に眠る」という文章がどうやったら成立するかを物語を通して伝える作品。
    「色のない〜」はチョムスキーの例示した意味は成立しないが文法的にはあっている文。

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    2024年02月08日
  • 雪が白いとき、かつそのときに限り

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    発売当時に買って寝かせておいた本!笑
    期待しすぎてたかもしれない。ミステリーとしても微妙だし、学園ものとしてもちょっと盛り上がりが足りない気がする。
    続編もあるみたいだからそっちを読んだら楽しめるかも?

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    2024年01月14日
  • ガーンズバック変換

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    ネタバレ

    短篇集。8篇収録。
    理論とかすっとばしてただひたすらに読んでいく(難しくて理解できないところもあるので…)こういう作品が作られていることが嬉しい。

    物語の歌い手
    上質な童話というか、こういった中世の世界観大好き。

    三つの演奏会用練習曲
    こちらはインド。不思議な読み心地。


    開かれた世界から有限宇宙へ
    ゲーム世界の理論の作り込みってこんなに大変なんですね(汗

    インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ
    読み終えて、ごめんなさい分かりません(笑)と思ったら
    『異常論文』掲載の作品なんですね。私にはハードル高すぎました。

    ガーンズバック変換
    香川県にだけ存在するガーンズバック変換。面

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    2023年11月12日
  • 文学少女対数学少女

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    自作の推理小説を用いた犯人当てゲームを、ガチの数学理論を用いて答えを導き出す、唯一無二のミステリ作品。面白いのが、各短編いずれも「自作小説を読む→数学で紐解く→実際に事件が起こる→現実はそんなに簡単ではない」という流れになっていることで、モヤモヤが残る作品もあったのですが、トータルで見ると新鮮な驚きが多く、とても楽しく読むことができました。数学の専門知識がないので数学パートはさっぱり理解できないのですが、実際の事件を交えて実例が明示されるので、理解の助けになっていることも良かったですね。

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    2023年10月30日
  • ガーンズバック変換

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    SF短編小説集、というよりは、著者の膨大な知識や興味から編纂された空想小説集といった趣きで、その知識量にまず驚かされました。

    少女と吟遊詩人の巡り合いの旅路を描くファンタジックな「物語の歌い手」に、まさに頷かされてしまいそうになる『異常論文』たる「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」から、結論の鮮やかさがミステリの謎解きめいた脳科学SF「サンクチュアリ」、スマホゲームの開発をめぐり小気味いい会話で空想世界の構築を楽しむ「開かれた世界(オープンワールド)から有限宇宙へ」など、かなり高度でディープな仮想世界がぎっしりとどの短編にも形作られていて、凄い密度だなと思いました。

    その中

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    2023年05月20日
  • 文学少女対数学少女

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     犯人当て小説を書いている主人公の陸秋槎が自身の小説がフェアかどうかを数学の天才である韓采蘆に確認してもらいにいき、仲良くなる物語。
     作中作とそれに対しての批評が数学を交えて語られ、現実でも事件が起こったりする。本格ミステリや百合の話を期待すると、現実の事件の解決方法や仲の進展具合のなさや描写の少なさに少し拍子抜けをくらうが、一人のミステリファンとしてはとても興味深い作品だった。数学が推理に説得力を与えていたり、ミステリが数学の複雑さを分かりやすく解説していたりと相互のバランスがちょうど良かった。
     個人的には「フェルマー最後の事件」が好みだった。ただあまりジャンルに区分される物語ではないた

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    2023年05月06日
  • 元年春之祭

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    「忠義・忠愛とは」
    ー中国の楚王は基礎を武力ではなく巫術を称え祭儀を重んじた。その命を授かる観一家に殺害異変が起きる。さらにもう一方の家族へ殺害が広がる。そこには巫女に関わる親族間での厳しい規則と躾が人を変え殺害を巻き起こすミステリー、と思いきや、犯人はさらに別人。謎を解こうとする豪族の娘葵は頭脳明晰で豊富な知識を持つ、だが人の心を読む、情に薄く人への愛情が欠ける性格がキーとなる。葵の目的は「邪教の普及」、それと「巫女の禁忌」にまつわる侍女の行動。
    中国の古典、社形祭祈儀式、名称など難しい単語が多く出るが、歴史を語る論語、礼記、詩経、漢書など、兵を持って楚国を破った伍子胥、楚国の復興に心を砕い

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    2022年10月23日
  • 文学少女対数学少女

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    初読み作家さん。数学とミステリの融合という点から井上真偽の「恋と禁忌の述語論理」を想起したが、本作のあとがきでもそれに触れられていて滾った。読み始めてから今作は麻耶雄嵩オマージュに溢れているという話を聞き、それで更に血圧を上げながら読み進めることとなったわけだが、内容は確かに麻耶先生オマージュらしくミステリとしては変化球といったところで、そのクセの強さを百合要素がマイルドに包んでいる。しかしその変化球からもミステリに対する真摯な愛が感じられる一冊だった。

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    2022年01月19日