陸秋槎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ1930年代の中国を舞台にした、女流探偵ハードボイルド。中華ナンチャラってバカにするなかれ、ここまでしっかりしたスタンダードなハードボイルドは、日本だけでなく世界中観てもそう多くはないはず。
話の筋は探偵もの定番の出生の秘密探しで、喫煙飲酒運転格闘友情と、ハードボイルドメニューを完全に(しかも相当高いレベルで)提供して、あっと驚く急展開のラストまで持っていく凄さ。しかも、活躍する女性登場人物たちのカッコ良さったらもう。
こんな作家がこんな小説を書く人もいる中国という国家の底知れなさ、政治と経済面だけ見ていると社会主義的面白みのない冷たい怖い国だと思うし、その一面も決して間違いではないはずなんだが(EX:ジャッキーチェンの体たらく)、それだけではない奥の深さと底知れなさ。
差別と偏見だけに浮かれてたら、もっともっとエラいところまで差をつけられるぞ、高市ジャパン -
Posted by ブクログ
ネタバレ陸秋槎を初読。勝手なイメージでラノベ寄りのミステリを書かれる方だと思っていたが、今作は歴史ハードボイルド作品。
女性の私立探偵、劉の元に、少女から同級生の行方を探してほしいと依頼がある。足取りを追う劉。一見、ただの家出に見えたが、事態は思いもよらない展開に。。。
時代は1930年代。あとがきによれば中国では、この時代にしか私立探偵は成り立たないとのこと。
テンプレートな事件、展開ではあるものの、最近は滅多に見なくなった私立探偵もののため、最後まで楽しめた。
作中の劉のかっこよさは折り紙つき。またラストも非常にやるせなく。でもそこが、なんとも言えない余韻を残す。良作。 -
Posted by ブクログ
★5 私立探偵が人探しの依頼を受け… 女性のプライドと力強さを描いた人間ドラマ #喪服の似合う少女
■あらすじ
1930年代の中国、女性私立探偵の劉雅弦に依頼がやってくる。依頼主は実業家の娘からで、友人の岑樹萱を探してほしいというものだ。劉雅弦は調査を始めるも、岑樹萱の父親は事業で失敗して夜逃げをしており、彼女も行方しれずだった。足取りを追い続ける探偵劉雅弦であったが、背後に隠された事実が見え隠れするようになり…
■きっと読みたくなるレビュー
★5 これまた渋みのあるいい小説!
一人称視点で描かれる私立探偵小説。人探しから始まる物語で、着実にストーリーが展開されていきます。全編通して探偵その人の背景や人間性がじっくりと感じられて、体の中に彼女の魂が入り込んでくるようです。
手がかりである人脈とひとつずつ相対していくのですが、それぞれの人生が伺える会話が豊潤で生き生きとしてる。序盤は人となりが分からないのですが、読みすすめるほど人間身が感じられ、自分自身も探偵になってしまったような錯覚をうけるのです。
そして中盤からは想定していなかったほどストーリーが大きく動き始める。アクションあり、誘拐劇ありと小説がパワーアップ。事件の背後にある人間関係も更新がされ、それぞれの歴史に重みが増してくるんすよ。物語の後半に差し掛かり、事件解決の流れになるのですが… 実はここからが本作の真骨頂なんです。
本作で推したいのは、主要人物がほとんどが女性であるところ。主役の探偵、令嬢、探している少女、実業家の愛人、友人の記者など、例外なく全員が魅力的、パワフルに描かれています。その背景に権力者や男どもの都合があるのですが… もうね、ひとりひとりを抱きしめたくなってしまう。でもおそらくは、そんな慰めや施しは不要と突っぱねられてしまうのでしょう。決して派手でなくとも、魂がある人はカッコイイですね。
また社会性も厳しく描かれています。これほどまでに貧富による身分の差があるのか、街での薬物乱用や犯罪の状況など、中国での現実を目の当たりにできるのです。
喪服の似合う少女は、望むものを手に入れられたのか。彼女はどんな犠牲を払い、その結果幸せになったのか。英文タイトルの意味を噛み締めながら、私は明るい未来を祈らずにはいられませんでした。
■ぜっさん推しポイント
大学生の頃、どんな仕事がやりたいのか分からなかったなぁ。そして大人になって色んな職に就いても、自分がやりたかった仕事なのか疑問をもち続けてました。それでもひとつひとつの仕事をこなしていくうちに、やっとやりたいことが明確になってきましたね。
いつの時代も男も女も、人それぞれの様々な仕事や立場がある。本作に出てくる女性たちは、力強い意識とプライドが感じられて痺れましたね。励ましと元気をいただきました。 -
Posted by ブクログ
作家を目指している少女と天才数学少女が推理小説を通じて関係を深めていくお話です。作中作が何個か登場し、文学少女はミステリ的な観点から、数学少女は数学らしく型に当てはめて推理をしていく様子はこれまで推理小説を読んでいく上で気にしたことがなかった視点を与えてくれました。犯人当てゲームという非日常と主人公たちの世界という日常の切り替えといった点も驚くほど上手くてお気に入りの一冊になりました。
この作家さんの作品は初めて読んだのですが、3作目だそうで、本作の主人公が以前にも登場しているのでそちらも読もうと思っています。ただ、ここから読んでも特に問題は無かったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ前漢時代という背景と生国や立場が違いが活かされた結末だと思いました。
また、「アニメ的なキャラクター表現」と後書きに書かれている通り、於陵葵、観露申、小休における人間関係や、観若英と観江離、そして亡き観芰衣との描写、度々論を交わす於陵葵と観若英等の表現が百合を感じさせられました。
於陵葵がもう少し心情を露わに出来ていたら、観露申との仲も拗れず、小休もあんな行動に出なかったのではないかと考えずにはいられません。しかしながら、於陵葵の不器用ながらも小休の事を思う優しさに気付いていたが故に、小休もまた、於陵葵の事を思い行動に移したのだとも思え、とてもやるせない気持ちになりました。
小休は最後に於陵葵へと傷を作り、それが於陵葵の幸せを願っての事だと分かっているからこそ、於陵葵も無碍に出来ずに一生捉われてしまうのだと思います。そして、だからこそ、小休を喪ってしまった事に耐えられるのか不安に感じました。
最後、於陵葵と観露申が共に旅立つ事となり、優しい観露申ならば於陵葵の辛い気持ちを少しは慰めてくれるのかなと期待しています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後まで読んで、5年前の唐梨の事件を追い、馮露葵と姚漱寒が憶測混じりで幾つかの推理を出していたのは、呉莞の事件を追う上での読者へのヒントであったのだと思いました。
今回、馮露葵も姚漱寒も数多の推理を披露しましたが、そのどれもがあり得そうなものであり、そしてそれを犯人が認めなければ確たる証拠は無いというもので、5年前の唐梨の事件の犯人が誰でもあり得そうだと思いました。それは、呉莞の事件の動機が感傷的なものだった事から、動機があてにならないという事からもそう思わせられました。
馮露葵の持つ才能への羨みや普通である事の不安は、先の見えない学生だからこその思いだと思います。頑張って普通になった顧千千と、才能を羨む馮露葵、正反対ながらお似合いの2人でありながら、哀しい結末になってしまったのは残念でなりませんでした。出来る事ならもう少し、2人の絡みを見たかったです。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ推理小説を数学を用いて読み解いたり、数学を推理小説に置き換えて説明したりしていて、一見関係無さそうな数学と推理小説の類似性を感じられて面白かったです。
私は推理小説を全然読んでいないので〈後期クイーン的問題〉やヴァン・ダイン等は分からないのですが、今作を通じて推理小説の自由さや難解さを垣間見た気がします。
特に4話の犯人当てで、解答が複数存在すると宣言し、参加した人達が皆、違う答えに行き着いた処が推理小説の可能性を感じました。
また、1話で陸秋槎と韓釆蘆が無矛盾性と完全性を話していながら、4話では解答が唯一では無いとする事でフェア・プレイを保っていたのも印象的です。無矛盾性と完全性が無くても成り立つのは、推理小説だからであり、現実の事件では無いからこそ可能な手法だと感じました。
陸秋槎と韓釆蘆が推理小説と数学の話をしながら段々と仲良くなっていくのを見るのが楽しく、ずっと見ていたいと思ってしまいました。大学進学を期にこの2人や陳姝琳の関係がどう変わっていってしまうのか、少し不安に感じつつも変わらず仲良くしてほしいと思っています。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ漢詩、漢籍の教養を試されるという意味では衒学的だ。このポイントで熱狂するひとは少なからずいるだろう。
だが私が最も評価するのは、
「その時代ならではの人間心理に基づいて展開された本格ミステリ」
という点である。文句なしに星5をつけたい。
本格ミステリと言って、アガサ・クリスティの作品を挙げれば、たいていの人の異議は無いだろう。
では彼女が描き愛したビクトリア朝の世界において、本当にものを考え、煩悶し、結果として殺人という罪にすら手を染めるのは、誰か?
ほぼほぼ決まって支配階級の人間である。
執事や料理人、他の使用人階級は、現代人の我々が論理をもって考えるといかようにも怪しめるのに、犯人とはならないことが大半である。
挑発的な言い方をすれば、
「クリスティ的時代の価値観、人間観においては、使用人とは作中に人生の舞台を持たない生き物」
と定義づけることも可能であろう。
その一方、本作は前漢の時代。四書五経が当然の教養として引かれて論じられ、人々の精神的バックボーンのひとつは経。そしてもう一つは、信仰である。
この二つを損なっては、人は単にモノ言う獣も同然、形こそ人であれど、とみなされるような世界。
『この時代のひとに相応しい世界観、倫理観、そしてその年齢のひとに相応しい限界も備えた』
各キャラクターを造形し、物語を動かしていったら、チェスにおける詰みが現れてくるように、鮮やかに真相があらわれ得る。全ての論理を組み立てる素材は、まことに序盤のうちから読者に提供されており、また考えることが可能であった。
本格ミステリと言うにふさわしい、と評する理由はまさにこの点にある。
評者はエラリー・クイーンのよくやる『読者への挑戦』を、一考はしてみても、話の続きを読むこと優先で、決して正解したことがない。推理ファンとしてはまあ落第生なのだが、作者の手により明かされる真相を楽しむ、という点では、及第をもらえよう。
本作は、自身の生まれもった性別と才覚の齟齬に悩んだことのある女性には、心のささくれを撫でられる思いで読める。
実に味わい深い時代小説でもあるので、漢文は苦手と思っている人には、
「そこはすっとばして読んでも大丈夫」
とオススメしたい。
アニメ的な少女の描写について言及するレビューもある。「そういうのに慣れてる」ひとからすれば、特段の意を向けるレベルではない。
「こういう描写を多用する作者が見てたアニメ作品って……?」
そこは気になるといえば、なる。だが大陸におけるジャパニメーションの受容は、また別の文脈であろう。
『前漢時代の少女がどういう情動を覚え、どんな行動をとったと描写されるか』なんて、80-90年代のジャパニメーションのノリと同じくらい『現実感がない』。もう「そういうノリで生きてただろうキャラ」として納得するほうがいい。
『三国志演義』のたいへん豊かなバリエーション展開(注:表現を婉曲にしています)をもつ日本の漫画・アニメ・ゲーム文化を楽しめるひとが、アニメ的な少女の描写ごときで作品評価を左右するのも、理の通らない話ではないだろうか? -
Posted by ブクログ
北京生まれの作家、陸 秋槎(りく しゅうさ)の短篇集。一応ミステリ作家だがこれはSF短篇集
なお日本SF作家クラブの会員でもある
各短編◎◯□△☓の5段階評価で
1「サンクチュアリ」△
書籍が700部しか売れず、作家として次は無い主人公に大作家のシリーズ作のゴーストライターの依頼が舞い込む
このあらすじからは明後日の方向に向かう。まるで漁網を投げてからすくい、捕れたものを書いたような。あとがきにグレッグイーガンのような物を書きたかったがそうならなかった、とあり成る程そういう動機なのかと納得した。一応、脳科学SF…なのか?
小さくて綺麗なので簡単に掴めそうなボールと思っていたが小さすぎて潰してしまったので感慨はない、そんな印象
2「物語の歌い手」◯
貴族の娘である主人公がお忍びで抜け出した酒場で物語を歌っていた吟遊詩人に魅せられる。彼女は歌うこと、そしてもう一度吟遊詩人に会いたいと侍女のステファネットと旅に出る
驚くほど台詞がない。地の文で9割構成されており題材も手伝いファンタジー昔話を読んでいる気分になる。何よりその台詞の数の少なさは恐らく最後の展開との対比に利用、効果を発揮しており明らかにワザと。巧みな一作と思う。ミンストレルサガがお好きな方はこれだけでも読んでみては如何だろうか?40ページの量と思えないほど1人の貴族の娘の旅を読める。これは普通にファンタジーでした。リュートという楽器の音色を知っておくと脳内で広がる光景は本当に美しい。が、台詞がとにかく少ないのでドラクエのような問いかけにも思える
3「三つの演奏会用練習曲」△
三つの掌編で構成された、詩とは、文学とは
前編の物語の歌い手と根底のテーマが似通っていて、そして物語ベースにしないで書いた版というか。続けて揚げ物出てこられても胃もたれますし、既視感ありますし
4「開かれた世界から有限宇宙へ」◯
スマホゲーム会社で働く主人公が会社の偉大なプロデューサー宮沼(爆笑)に新しいオープンワールドゲームの開発で手伝ってほしいことがあると呼ばれる。それはズバリ昼夜、影を完全にリアルタイムで表現することで没入感を高める天体をシステム化して欲しいというトンデモ依頼だった
宮沼。爆笑です。ゼルダの伝説のトップ2名の名前からだと思います多分。ついでに白崎社長(笑)も出て来る。業界お仕事小説、と見せかけて理系バリバリの宇宙話の味わいも。とっても楽しい。中国人作家が「中華系クソゲー」なんてワード使う所も茶目っ気たっぷり
5「インディアン・ロープ・トリックとヴァジュラナーガ」□
たった8枚の嘘八百論文。
これが許されるのがSFの良い所と思う
6「ハインリヒ・バナールの文学的肖像」□
架空の作家、ハインリヒバナールの伝記。
後半の加速っぷりは実に哀しい、世に何も残せなかったらあなたの伝記を作った所でこういうものだよ、と言われたような気もして。嫌われ松子の一生である
7「ガーンズバック変換」◯
ネットへの視覚的アクセスの規制条例が敷かれた香川県から女子高生がやってきた(帯より)
表題作。発想元が「香川県ネットゲーム依存症対策条例」、アニメ「電脳コイル」とのこと。女子高生が主役なので大変読みやすく、そして広範囲にSFオマージュが散りばめられていて楽しかった。SF入門的な作品ではあるけれどその分まさに電脳コイル的な範囲で収まっていて分かりやすく楽しい。にしても日本書くのうめえな
8「色のない緑」◎
ノーム・チョムスキーの有名な無意味文「Colorless green ideas sleep furiously.(緑色のない縁は激しく眠る)」をモチーフに百合感情物語が広がる
巻末に相応しいと思う。まさか色という単語から感情を呼び起こしSF的な叙情を広げるとは。本当に美しい。何か今後も似通ったテーマの際アンソロジーなどに編まれても何も不思議ではないほど抜けているので内容には触れないでおく。百合なのかどうなのかは分かれそうだけれど芯のある作品で文字から派生する受け手の余韻にも余白があると感じた。
全体的にライトなSFで肩に力入れず読める上、中国出身にも関わらず中国が舞台の作品は1つもあらず。また読んだ方は3つ目あたりで感じると思うがあらゆる方向の知識、国、描写が素直に描かれており器用な作家と受けると思う。あとがきにもある通りSF初心者とあるが、SF的なガジェットがあるだけで彼の視点は不思議なお話いかがです?といった印象。枠に囚われず描き続けて欲しいと感じた。良本でした -
Posted by ブクログ
ネタバレ数学と推理小説は似ているか、の証明。
推理小説を書く陸秋槎は、ルームメイトの陳姝琳に言われて天才数学少女の韓采蘆と知り合い、自作の犯人当てを読んでもらうことになる。数学の用語を散りばめて話す采蘆に戸惑っていた秋槎だが、次第にこの風変わりな少女の面倒を見るのは自分だと思い始める。
解説に書かれているが、後期クイーン問題に取り組んだ作品。それがどんな問題か知らなくても、要は手がかりが犯人の罠なのか信用してよいのかどうやって作中の探偵は判断するのか。作中に示されていない情報がある場合、それを使うのはアンフェアか。四つの短編では数学の証明と比較しながら推理について秋槎と采蘆が語り合う。推理小説を疑っていく推理小説というのが新鮮な感じで面白かった。
「フェルマー最後の事件」フェルマーの最終定理のあのメモを殺人事件に仕立てるまさかの展開。フェルマーってそんなに昔の人だったのか、というか数学ってそれでもいいのか、という驚き。
「グランディ級数」大学進学を目前にした秋槎。先輩に頼まれて書いた犯人当てを持っていく際に、久しぶりの采蘆との再会も計画。ところが会場の喫茶店で殺人事件が起きてしまう。遅れて合流した姝琳が言ったことは——。ここに来てとても百合。それにしても可能性が複数ある推理というのは他の作品でも見たことあるけど、まさかそうくるとはという幕引き。でも現実はそんなものかとも。