末木文美士のレビュー一覧

  • 死者と霊性 近代を問い直す

    Posted by ブクログ

    対談をまとめた本です。
    近代は、人間の社会はますます発展して、みんなが豊かな暮らしになっていく、ということが信じられたが、今はそうではない、というようなことが語られています。
    対談のなかで語られている柳田国男、鈴木大拙、大川周明、折口信夫などや仏教、イスラムのことなどの知識がなくて、正直言ってよくわからなかったです。
    なんとなく感じたのは、死んだ人たちもこの世に存在している、まだ生まれていない人たちもこの世に存在している、そういう感覚が大切なんじゃないか、ということでした。

    0
    2025年12月06日
  • 道元 実践の哲学 身心論から読み解く『正法眼蔵』

    Posted by ブクログ

    正法眼蔵は難解で有名なのに、多くの人が挑戦をする本で、哲学的であるともされている。
    道元は、不立文字や無理会話と一線を画し、修行や悟りに対しての言語化に目を向けている。只管打坐が曹洞宗で最も大切にされているように日本史では習うけれど、少しでも正法眼蔵を読めば認識を大きく改めさせられる。道元の古則の捉え方は、ありきたりではなく、雄大で実践的である。

    この本は、正法眼蔵の身心学道の巻だけを丁寧に講義形式で読み込んで行きながらも、道元の思想の核心を覗かせてくれる素晴らしい本。
    あえて興味のある人以外に読んで欲しいと思った。

    0
    2025年09月24日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    (2024/11/05 10h)

    新書1 冊だけで古代から現代までにおける日本の宗教観を総覧している稀有な本。内容はまとまっていて、過去に学んだ日本史と結び付けつつ楽しく読んだ。

    少ない紙幅ながら、情報はいくつも散りばめられているために、ここからいくらでも掘り下げられる。深掘しては整理するため読み返すのに有用でありがたい本。

    『どちりいなきりしたん』において、キリストの教えを広めるために、既に日本に馴染んだ仏教の用語や「天狗」のような語を用いている点はおかしみがあった。

    神道の定着しない点については、葬式の定着度合いが分け目になったという指摘もある。いまでも葬式は仏教式が主流であり、納

    0
    2024年11月05日
  • 死者と霊性 近代を問い直す

    Posted by ブクログ

    この本はコロナ禍における今だからこそ非常に重要なものとなっています。 私たちは病や死をどう考えていけばいいのだろうか。目に見えない存在に対してどう向き合うべきなのか。科学や合理性を盲信するあまり大事なことを見失ってはいないだろうか。 そのようなことを考えさせられる1冊です。

    0
    2024年08月18日
  • 日本思想史

    Posted by ブクログ

    日本古代から現代に至る様々な思想を構造化して一つの枠組みとして捉えることを試みている。本書では、日本思想における大きな枠組みを王権に関する思想(政治思想)と神仏に関する思想(宗教思想)を設定し、両者の緊張関係の間に文学や芸能などの思想が位置づけ、これを大伝統としている。大伝統は主に中世に出来上がった枠組みであるが、古代はこの枠組みができるまでの黎明期、近世は世俗化やキリスト教、儒教などの要素が含まれつつもこの大伝統の枠組みで説明できるとする。
    明治以降は王権と神仏を中心とする枠組みから天皇を頂点とする一元的な枠組みに転換し、大伝統が崩壊する。著者はこれを中伝統と名づけている。第二次世界大戦での

    0
    2023年10月09日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    丸山真男が言う歴史を貫く唯一の古層などない。層の重なりがあり埋もれている古層を宗教史を通じ検討する。
    近代における過去の発見は近代に都合の良い古層を作り出す作業であった。古代最大の文献は記紀である。記紀神話は仏教と無関係ではなく影響がある。
    神仏習合は最も深い古層である。集合にはいくつかの形態があるが、何も仏教側が土着的信仰を吸収する形である。
    日本仏教思想の基礎は平安初期に最澄空海により確立された。9世紀後半から律令制が崩壊し荘園制へ移行した。宗教もまた国家的祭祀から私的祭祀へと性格を変えた。
    死に関する儀式は仏教、現世利益は仏教・神祇信仰・陰陽道があわせ用いられた。
    信仰を強めるため末法思

    0
    2022年06月08日
  • 死者と霊性 近代を問い直す

    Posted by ブクログ

    座談会形式。それぞれの分野の一級の知性が闊達に、問題意識を提示していく。その中で、わたしの固定概念が崩れていく。読み終えて、生と死を合わせて、この世界に対して畏敬の念さえ抱いた。

    若松さんの言葉にはハッとする。
    「東日本大震災で宗教は言葉を失ってしまった」
    「神智学協会の方向は、謎が明らかになっていく方向。エックハルトは、人間にとって謎が深まっていく方向。原理主義は謎がなくなる状態。」

    0
    2021年11月10日
  • 日本仏教入門

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    仏教より前に神道はない、言われてみればそうなんだが。そこにあったものが何であれ、かなり神道とは違う崇敬崇拝だったんだろう。善光寺の話を読みなおしてみたい。
    いつの世にも日本ガラパゴス起きるんだなあ。
    単純化してAかBかというのは、朝鮮半島の専売特許でもなさそうだ。

    0
    2018年07月16日
  • 増補 日蓮入門 ──現世を撃つ思想

    Posted by ブクログ

    興味深い指摘が多く、個人的には得るところ大であった。
    ただし、仏教用語の前提知識、とりわけ、天台教学の知識がないと完全な理解は難しいだろう。
    慎重でありながらも、偽作の疑いのある遺文に意義を見出して行くあたりが醍醐味か。

    ・消息による布教
    ・女性信者への機微
    ・文字本尊は親鸞も用いていた

    0
    2013年12月04日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    日本宗教の歴史のイメージをとりあえずふんわりと抑えるという意味において、本書の持っている力というのは絶大だと思う。

    無論、新書という形態をとっている以上、細かいところまでは言及されてはいないし別の見方もあるのだろう。

    けれど、日本における「宗教」概念がどのように形成されてきたのか、そしてどのような実態があったのかを振り返るためには、本書のような存在が欠かせない。

    宗教学をやっている人にかぎらず、日本の思想に興味がある人は読んでみても決して損はしない一冊。

    0
    2012年09月03日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    ふーむ面白かった。
    しかしあれですね。宗教ってわけわかんないですね。(いっちゃった!)
    ただ、現世利益を求めるようになったっつーのは、少なくとも余裕がでてきたからなのかしらと思いました。
    その欲求っていうのもまた、いいんだか悪いんだが…うそ寒い現代を作ったなあとおもいます。

    実感があるからなのか、いわゆる新興宗教というやつには抵抗があるのは事実です。現代というやつは、何て言うか信仰心を小ばかにしてる感じもあるし、そのせいなのかも。

    とりあえず本はおもしろかった。荒かったけど、面白かった。

    0
    2009年10月04日
  • 日本思想史

    Posted by ブクログ

    本書の序文では、著者が個々の思想を思想史の文脈から切り離して論ずることを付け焼き刃であると喝破し、思想史の全体的な理解の重要性を訴えかけており、その信念に非常に共感した。社会に変動が起こる度、偉大な思想家を持ち出した通俗本が流行する傾向に辟易していた私にとって、著者のメッセージは力強く感じられた。

    日本思想は外来の思想の変容によって成り立ってきたという前提の元、思想の萌芽を王権と神権の関係の中に見出し、軽快に論じていく面が本書の斬新な点である。文学・芸能・宗教史が個々に並列している認識を改め、思想史の一つの流れにあることを知ることができた。

    日本思想史の小辞典としても活用出来そうである。

    0
    2025年05月12日
  • 日本宗教史

    匿名

    購入済み

    欧州や中東では宗教的にはキリスト教やイスラームが絶対的な地位を占めていたが、日本ではどうなんだろうと思って読んでみた。神道・仏教・儒教のシンクレティズムだったというのは当然知っていたが、あまりにも漠然としていたのでその実態を知ることができたという点では良い読書だった。儒教の影響が強くなるのは江戸時代からで(それも知識層や官学としてのものだが)それ以前は神仏習合の形態が日本の宗教社会のありようだったようだ。個人的には道元や親鸞など鎌倉仏教に興味と思い入れがあるが、それらを読んでいては分からない、日本の土着の神祇信仰と絡み合ったという意味での日本仏教の形を知ることができた。
    また特に明治以降は日本

    0
    2024年10月10日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    日本の宗教史が詳しくかかれており、どのような形をえて、現在の日本のかたちなったのかが良くわかる本です。浅く広く宗教史を書いている感じで勉強になりました。

    0
    2024年04月07日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    最初と最後が面白かった。丸山眞男の提唱した古層論にたいして、どのように捉えるべきなのか。古層とは、一環的なものじゃなくて、それ自体が歴史的に形成されてきたもの。

    イザナミイザナギの時代の話から創価学会まで分かりやすく説明されてる。
    鎌倉仏教とかキリシタンの話は眠かったけど、大学受験の内容を復習出来てなかなか面白かった。

    0
    2023年10月11日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    表層に現れず私たちに蓄積されているもの。これらを「古層」というキーワードに当てはめ、日本宗教史を解説。筆者の立場は、日本古来の「古層」は存在ぜず(解明されておらず)、歴史的に作られたものだとする。確かに、古事記や日本書紀が書かれたのは天武朝以降のことであり、それ以前の文字史料はないのだから、その通りだろう。
    続いて中世以降の仏教と神道における複雑な関係性、近世以降におけるキリスト教の伝来の影響や仏、神、儒の関係など解説。近世後期には、国学において復古神道の流れから仏教以前の日本の「古層」を探る運動が大きく展開した。近代になり明治政府は国家神道の体制を整えるに至るが、江戸後期から展開したこの流れ

    0
    2023年08月30日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    神道だけでなくその他の日本で信仰されたり影響を与えた宗教の歴史をざっとさらっており、しかし新書の丁度読みやすい分量であった。末尾の現代宗教の言及から、日本人が宗教に耽溺していることを危険とし、少なくとも良くは思わないという風潮から現代日本人は曖昧な信仰心を抱き、それが俗に言う日本人の無宗教的思想の根幹にあるのではないかと考えた。今回の読書で自身の日本史基礎的知識の欠乏が顕著となったため、次は日本史の基礎的知識を仕入れたい。

    0
    2023年06月19日
  • 死者と霊性の哲学 ポスト近代を生き抜く仏教と神智学の智慧

    Posted by ブクログ

    話題は多岐にわたるが、問題意識は一つ。
    ポスト近代において、確かな道筋を描けるか?である。
    そのために、神智学や神秘主義を参照しつつ、他者というものを掘り下げる。

    ポスト近代の問題点は、覇権主義だ。
    ルールさえ守れば、何をしても良いという発想だ。
    根底に相対主義がある。

    それでも、進む「べき」道はあるのか。

    物事の深淵をのぞき込む醍醐味はあった。
    各論の提言も面白い。
    しかし、いつもの骨太さが無かったように思う。

    0
    2022年02月21日
  • 日本思想史

    Posted by ブクログ

    日本思想史をコンパクトにまとめている良著。日本の三段階を、明治維新、敗戦で区切っているところがポイント。基本的にバランスよくまとめてあると思う。

    0
    2020年03月15日
  • 日本宗教史

    Posted by ブクログ

    古代から現代にいたるまでの日本における宗教の歴史をたどりつつ、著者自身の関心にもとづく考察をおこなっている本です。

    著者は、丸山眞男の「古層」の概念に触れて、「古層」は歴史を通して一貫したものとして存在しているのではなく、むしろ歴史のなかでつくられてきたものと考えるべきなのではないかと主張します。本書はこうした考えにもとづいて、日本の宗教のありかたが、歴史のなかでどのようにかたちづくられてきたのかを論じています。

    そのさい著者は、仏教、キリスト教、神道がたがいにどのような影響をあたえあってきたのかということに、とくに注意をはらっています。中世における神仏習合の実態や、近代以降の神道とナショ

    0
    2020年01月31日