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『記・紀』にみる神々の記述には仏教が影を落とし、中世には神仏習合から独特な神話が生まれる。近世におけるキリスト教との出会い、国家と個の葛藤する近代を経て、現代新宗教の出現に至るまでを、精神の〈古層〉が形成され、「発見」されるダイナミックな過程としてとらえ、世俗倫理、権力との関係をも視野に入れた、大胆な通史の試み。
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Posted by ブクログ
(2024/11/05 10h) 新書1 冊だけで古代から現代までにおける日本の宗教観を総覧している稀有な本。内容はまとまっていて、過去に学んだ日本史と結び付けつつ楽しく読んだ。 少ない紙幅ながら、情報はいくつも散りばめられているために、ここからいくらでも掘り下げられる。深掘しては整理するため読...続きを読むみ返すのに有用でありがたい本。 『どちりいなきりしたん』において、キリストの教えを広めるために、既に日本に馴染んだ仏教の用語や「天狗」のような語を用いている点はおかしみがあった。 神道の定着しない点については、葬式の定着度合いが分け目になったという指摘もある。いまでも葬式は仏教式が主流であり、納得できる。 国家神道として、各宗教観の揺らぎ・政教分離の如何について触れられており、避けられない靖国問題や創価の公明党についても言及。 現代においては新新宗教として、カルト宗教についてもサラリと記載がある。現代に生きる自分にはここをもっと知りたいと思うし、物足りないが、なにぶん1冊中の数ページなので仕方ない。ここから掘り下げて読んでいきたいと思う。
丸山真男が言う歴史を貫く唯一の古層などない。層の重なりがあり埋もれている古層を宗教史を通じ検討する。 近代における過去の発見は近代に都合の良い古層を作り出す作業であった。古代最大の文献は記紀である。記紀神話は仏教と無関係ではなく影響がある。 神仏習合は最も深い古層である。集合にはいくつかの形態がある...続きを読むが、何も仏教側が土着的信仰を吸収する形である。 日本仏教思想の基礎は平安初期に最澄空海により確立された。9世紀後半から律令制が崩壊し荘園制へ移行した。宗教もまた国家的祭祀から私的祭祀へと性格を変えた。 死に関する儀式は仏教、現世利益は仏教・神祇信仰・陰陽道があわせ用いられた。 信仰を強めるため末法思想が広められた。鎌倉仏教は日本仏教の最盛期と見られている。煩雑な儀礼的要素を排し平等な救済を説いた。ありのままの現状を肯定する本覚思想が現れ、最も日本化した仏教思想と言われる。 本地垂迹とは遠くの仏より近い神の方が貴いとする説であり、山王信仰がある。 中世は偽書も多いが、合理主義の奥の古層レベルにおいて偽書も生きることがある。 近世では朱子学が正統とされたが、仏教神道思想が衰えたわけではなく、百家争鳴の状況だった。
日本宗教の歴史のイメージをとりあえずふんわりと抑えるという意味において、本書の持っている力というのは絶大だと思う。 無論、新書という形態をとっている以上、細かいところまでは言及されてはいないし別の見方もあるのだろう。 けれど、日本における「宗教」概念がどのように形成されてきたのか、そしてどのよう...続きを読むな実態があったのかを振り返るためには、本書のような存在が欠かせない。 宗教学をやっている人にかぎらず、日本の思想に興味がある人は読んでみても決して損はしない一冊。
ふーむ面白かった。 しかしあれですね。宗教ってわけわかんないですね。(いっちゃった!) ただ、現世利益を求めるようになったっつーのは、少なくとも余裕がでてきたからなのかしらと思いました。 その欲求っていうのもまた、いいんだか悪いんだが…うそ寒い現代を作ったなあとおもいます。 実感があるからなのか、...続きを読むいわゆる新興宗教というやつには抵抗があるのは事実です。現代というやつは、何て言うか信仰心を小ばかにしてる感じもあるし、そのせいなのかも。 とりあえず本はおもしろかった。荒かったけど、面白かった。
日本宗教史を「古来不変の日本精神」の探求ではなく、歴史の過程で重積・沈澱してきた「古層」の形成過程として分析する試み。本書の特色は、「日本人は無宗教か?」という問いに対し、歴史という巨大な地層(古層)から答えを出す点にある。 本書は、有史以来不変の発想様式(古層)は存在せず、古層自体が歴史的に形成...続きを読む・沈澱されたものであると主張する。記紀神話等の文献資料は7世紀末以降のものであり、それ以前の姿をそのまま反映しているとは限らないため、特に7世紀末から8世紀初頭(天武・持統朝)を、文献的な「古層」が形成された最大の画期と位置づける。 記紀神話については、アマテラスを頂点とする神話体系は、天武・持統朝の権力闘争と皇位継承をスムーズにする機能を持たされた創作であると論じる。アマテラス(祖母)からニニギ(孫)への継承図式が、持統(祖母)から文武(孫)への継承実態と平行関係にあるため、天皇支配の正統性を神話的に確証する「国家神話」として、当時の皇位継承問題を反映しつつ、改変・創作されたものと整理する。 神仏習合については、日本の神々は仏教によって滅ぼされたのではなく、仏教の影響下で神像が作られ、固定した神社が建立されるなど、仏との対比で個性を明確化したと指摘。歴史的に解明できる限り、日本の神々はその出発点から仏との交渉の中に自己形成をしてきた。 初期神仏習合の思想として「神身離脱」が重要。これは、日本の神も六道を輪廻する苦しい存在であり、仏法に帰依して救われるべきだとする考え方で、8世紀前半に苦しむ神を救うために神社の傍らに建てられた寺(越前比古神宮寺など)が神宮寺として神仏習合の具体的な端緒となった。 天智期関連では、壬申の乱で大海人皇子(天武)が伊勢の豪族を味方につけたことで、伊勢神宮のアマテラスが皇祖神として特別の地位を得たと指摘。天智期までは伊勢と朝廷の関係は密接ではなかったが、天智の子・大友皇子を破った天武朝において、伊勢の神が皇室の守護神として再定義された。 また、天智・天武朝にかけて中央集権化が進む中で、理想的な政治・仏教の指導者としての「厩戸皇子(聖徳太子)」像が『日本書紀』段階で造形されたと論じる。これは聖徳太子虚構説(大山誠一説など)を前提にした記述で、像の"政治利用"がテーマになる。 僧の役割としては、遣唐使から帰国後、大安寺を移築し、『日本書紀』の編纂にも仏教の知識をもって関与したとされる僧道慈の例が挙げられる。僧が"経"だけでなく"記録"を扱い、典籍・文書・年号・儀礼次第など、国家が必要とした知(暦・儀礼・正史の形式)を提供した点が重要。 中世以降は、この神仏習合が「本地垂迹説」として理論化され、近世の儒教・国学による「古層の発見(=新たな創作)」を経て、近代の「国家神道」へと再編されていくプロセスを、政治と宗教の緊張関係から描き出している。 注意点として、聖徳太子の事績の多くが『日本書紀』による創作であるとする説(大山誠一説など)を前提に記述されている点、古代に「神道」という体系があったわけではなく、中世以降に自覚的に形成されたとする「黒田俊雄説」に近い立場をとる点がある。著者は文献史学・思想史の立場から「言説(書かれたこと)」を中心に分析しているため、発掘調査などの考古学的知見よりも、記紀や仏典の引用・加工のプロセスに重点が置かれている。 岩波新書で専門用語の解説が丁寧、通史としての見取り図が非常に明快な初学者向け。飛鳥時代の王宮で、誰がどのような意図で「アマテラス」という最高神を仕立て上げ、外来の「仏」とどう折り合いをつけたのか。古代の「死生観(ケガレ)」や「神がかり」の生々しい感触から、近代の「国家神道」に至るまでの日本の宗教的深層が一気に俯瞰できる。単なる知識ではなく、日本人の「思考の癖」がどこで生まれたかを知るための必読書。
匿名
欧州や中東では宗教的にはキリスト教やイスラームが絶対的な地位を占めていたが、日本ではどうなんだろうと思って読んでみた。神道・仏教・儒教のシンクレティズムだったというのは当然知っていたが、あまりにも漠然としていたのでその実態を知ることができたという点では良い読書だった。儒教の影響が強くなるのは江戸時代...続きを読むからで(それも知識層や官学としてのものだが)それ以前は神仏習合の形態が日本の宗教社会のありようだったようだ。個人的には道元や親鸞など鎌倉仏教に興味と思い入れがあるが、それらを読んでいては分からない、日本の土着の神祇信仰と絡み合ったという意味での日本仏教の形を知ることができた。 また特に明治以降は日本国家の古典として半ば神聖視され仏教や儒教以前の日本のあり方を知る書として読まれている日本書紀や古事記も実際には仏教の影響を受けていることが説明されている。その点で本居宣長は紀記に日本の古層を求めていたが、実際には既にそれは人為的な古層であったという。
日本の宗教史が詳しくかかれており、どのような形をえて、現在の日本のかたちなったのかが良くわかる本です。浅く広く宗教史を書いている感じで勉強になりました。
最初と最後が面白かった。丸山眞男の提唱した古層論にたいして、どのように捉えるべきなのか。古層とは、一環的なものじゃなくて、それ自体が歴史的に形成されてきたもの。 イザナミイザナギの時代の話から創価学会まで分かりやすく説明されてる。 鎌倉仏教とかキリシタンの話は眠かったけど、大学受験の内容を復習出来...続きを読むてなかなか面白かった。
表層に現れず私たちに蓄積されているもの。これらを「古層」というキーワードに当てはめ、日本宗教史を解説。筆者の立場は、日本古来の「古層」は存在ぜず(解明されておらず)、歴史的に作られたものだとする。確かに、古事記や日本書紀が書かれたのは天武朝以降のことであり、それ以前の文字史料はないのだから、その通り...続きを読むだろう。 続いて中世以降の仏教と神道における複雑な関係性、近世以降におけるキリスト教の伝来の影響や仏、神、儒の関係など解説。近世後期には、国学において復古神道の流れから仏教以前の日本の「古層」を探る運動が大きく展開した。近代になり明治政府は国家神道の体制を整えるに至るが、江戸後期から展開したこの流れは仏教以前から存在した日本本来の「古層」ではなく、つくられた「古層」であることを指摘する。戦後は国家神道が解体されたが、それ以降大量に現れた新興宗教乱立の動きを筆者は「宗教のラッシュアワー」と呼んでいる。 上記のように日本宗教史のエッセンスを、「古層」というキーワードをとおして概観できる。日本人古来の「古層」はこの先解明されないのだろうか、と思う一方、この多様な変遷そのものが私たちの「古層」と呼べるものなのだろうか、と考える。安易な右派的言辞にも注意を要することに気付かされる。
神道だけでなくその他の日本で信仰されたり影響を与えた宗教の歴史をざっとさらっており、しかし新書の丁度読みやすい分量であった。末尾の現代宗教の言及から、日本人が宗教に耽溺していることを危険とし、少なくとも良くは思わないという風潮から現代日本人は曖昧な信仰心を抱き、それが俗に言う日本人の無宗教的思想の根...続きを読む幹にあるのではないかと考えた。今回の読書で自身の日本史基礎的知識の欠乏が顕著となったため、次は日本史の基礎的知識を仕入れたい。
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