末木文美士のレビュー一覧
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購入済み
仏教の基礎基本
今年の夏から仏教の勉強を始めたが、基礎基本が分からず途方に暮れていたところこの本のことを知り購入した。入門者には分かり易い内容で重宝している。
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日蓮の研究は、それぞれの宗門内部で活発におこなわれており、尊敬すべき仕事も多くありますが、それらはいまだ十分に宗門の外に対して開かれたものとなっていないように思われます。一方アカデミズムにおいては、戦前の日蓮主義が政治への積極的なコミットメントをおこなってきたことへの反省に立って、日蓮の国家へのかかわりについて慎重な立場をとりつづけてきました。
著者は、教学上の立場にとらわれることなく、日本思想史研究者の立場から『三大秘法抄』のような偽撰説のあるテクストについてもくわしく検討をおこない、同時に日蓮の思想と政治との緊張を孕んだ結びつきを解きほぐしています。
本書は入門書なので平易な言葉に書か -
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正月は神社に初詣に行き、結婚式はキリスト教の教会で挙げ、盆に先祖の霊を迎え、クリスマスを祝い、葬儀は仏式で行う…、そんな無節操さを、しばしば批判的な論調で語られることが多い日本人。
私自身、まったくの無宗教・無信心で、いわゆる信仰というものに対する嗜好は皆無だが、日本に生まれ暮らす日本人の一人として、そういったあまりにも混沌たる日本人と宗教との関わりについては、以前より強い関心を抱いている。
結果的に本書は、日本人の国民性および精神性と宗教との関連を包括的に分析し、一つの見方を提示する、という私が求めていたようなスキームで論じられたものではなかったが、そうした思索の前提となる予備知識を、古代よ -
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〈古層〉論を論を批判的に発展させる観点で、日本の宗教史を概観した本。仏教、神道、儒教、キリスト教などの宗教諸派が互いに影響しあい、そこに政治が絡む形で、各々発展して来たと言うストーリーになっている。
時代区分ごとにその時代の代表的な事例を紹介していて、記紀神話は仏教の影響の下に創作されているから、日本の〈古層〉じゃないと喝破するあたり小気味よい。個人的には、中世に創作された偽書に、積極的な意味を持たせている話が面白かった。
個別の話は他にも面白いことが書いてあるのだが、本書全体のパースペクティブが一番最後の章に記載されているため、読んでいる途中は、その話が全体の中でどんな位置づけなのか把握でき -
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ネタバレ[ 内容 ]
『記・紀』にみる神々の記述には仏教が影を落とし、中世には神仏習合から独特な神話が生まれる。
近世におけるキリスト教との出会い、国家と個の葛藤する近代を経て、現代新宗教の出現に至るまでを、精神の“古層”が形成され、「発見」されるダイナミックな過程としてとらえ、世俗倫理、権力との関係をも視野に入れた、大胆な通史の試み。
[ 目次 ]
1 仏教の浸透と神々―古代(神々の世界 神と仏 ほか)
2 神仏論の展開―中世(鎌倉仏教の世界 神仏と中世の精神 ほか)
3 世俗と宗教―近世(キリシタンと権力者崇拝 世俗の中の宗教 ほか)
4 近代化と宗教―近代(国家神道と諸宗教 宗教と社会 ほか) -
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末木文美士氏は、日本の仏教学者・思想史研究者であり、東大名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。1949年甲府市生まれ。東大文学部印度哲学仏教学科卒業後、同大学院博士課程を修了。仏教思想を中心に、日本思想史・宗教史を幅広く研究し、中世から近代に至る思想の展開を探究。特に近代日本における仏教の変容と思想的意義に注目し、多くの著作を発表。代表作に『日本仏教の思想』『近代日本の思想再考』などがある。比較思想学会会長も務めた。
本書は、日本思想は外来の思想をもとに、それを変容することで形成されてきたが故に、思想史の中核となるものがなく、全体的な流れを把握することが難しいとされている中で、「王権」と -
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専門的な部分はぜんぜんわからなかったが、なんとなく心に残った点が2点。
1つは輪廻転生で、仏教は死んで次良い状況になっても輪廻の輪から抜け出さないと終わりがない。一方でキリスト教とかだと天国に行ったらOKイェイイェイである、みたいな対比はかなり死ぬ直前の思想に影響受けそうだなと感じた。
正確にいえば極楽行ったあとも阿弥陀如来の元で修行しなければらないらしいが。
もう1つは日本の仏教が戒律に対して非常に緩いということ。
これは妻帯とか肉食とかもそうだけど「偉い坊さんが歳で体力なくなってきたので、弟子に魚を買って来させた。帰る途中で檀家に会って問い詰められ、魚を見られそうになったが、魚は(仏の -
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日本の宗教史をざっとさらった一冊。長すぎず短すぎず、古代から現代までにおける宗教の数々を拾ってかいつまんで説明しているので、概論を押さえるのには良書だと思う。
筆者は丸山眞男の「古層」という考え方を元に日本の宗教史を展開していっており、その古層は時代を上るとともに「発見」され、「創出」されていくことを説明している。これらは特に江戸時代や明治時代において顕著であり、日本の原始から存在する思想はなにか、日本的ルーツはどこにあるか、というのは昔からの大きなテーマだったことがよくわかる。
宗教とは関係なくなってしまうけれど、個人的には筆者が聖徳太子を『源氏物語』の光源氏と結び付けたところに面白味を感じ -
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「日本仏教入門」というタイトルの本ですが、その思想的・哲学的側面についての議論はあまり見られません。どちらかというと、思想史的な広い観点から、日本仏教にかんする現在の研究状況についてわかりやすく解説している本という印象です。
著者は、明治以来のいわゆる「プロテスタント仏教」的な理解と、それに対する批判として大きな影響力を現在にまでおよぼしている黒田俊雄の顕密体制論について触れた上で、日本仏教を東アジアの歴史のなかに置きなおしたり、日本仏教の社会的な側面をとりあげたりして、いっそう広い観点からその特色を考えなおそうとしています。
期待していた内容とは少し違いましたが、勉強になりました。