佐々木克のレビュー一覧
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幕末の複雑な政治情勢は1990年の大河ドラマ翔が如くなどでようやく概観をつかんだ気がしていたが、本書ではかなり違った印象を受けた。特に大政奉還から王政復古の大号令までの詳細な経緯、主要人物で倒幕を掲げる者はいなかった…ドラマでは悪役の久光公が有能でたびたび孝明天皇に相談されていた…など驚きかつ新鮮だった。単なる通史でなく、論点が整理されていて、日時が前後しながらの記述なので、多少神経を使うが、禁門の変など幕末の重要事件が克明に叙述されていて引き込まれる。あとがきで、著者は病と戦いながらの執筆であることを知らされる。気迫のある記述の理由が分かった気がした。日経新聞で高い評価を得ていたのも納得した
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おそらく近代日本で最も偉大な政治家。
どこまでも現実を直視し、現実の中から思考し、社会を漸進させていく本物の保守。
その粘り強さ、誠実さ、判断力に、驚きを通り越して畏怖する。
当然のように彼は、汚職や色欲などと程遠い人格者でもあったのだ。
彼にとってはおそらくイデオロギーなどは問題ではなかっただろう。
主義主張などは、意匠でしかない。
日本国という幼子の魂と肉体を、どう涵養するか。
それだけしか頭になかった。
このような歴史的大人物があの混乱期に生まれ出たことは、日本の幸運であった。
全政治家、必読の書。
以下印象に残った点。
・話を総合するに、西郷との友情はどうも本当のようだ。西郷の -
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とても勉強になりました。
佐々木さんとしての幕末史が書かれています。調査して、自分を通して文章にされているので、大事と思われるところの濃淡や主観的な表現があるのは当然ですが、それでも客観をベースに書かれていて、幕末・維新を知るための本としてはとても参考になる本だなと思いました。
キーワードは
・挙国一致
・攘夷(破約攘夷)
の2点。
挙国一致。ペリー来航当時の欧米列強の勢いを危惧し、このままでは日本は欧米列強に飲まれてしまう、という危惧から、天皇、公家、幕府、民、全ての心を一致して取り組み日本を守っていくということが重要である、という考え方。
攘夷(破約攘夷)。攘夷のイメージは外国人を -
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ネタバレ大久保利通がどのような人物だったかをインタビュー形式で当時を知る人々へ取材した内容をまとめた本。
大久保利通がなにをしたか、ではなく、どのような人物だったのかが、この本から想像出来、非常に面白い。
この本を読んでわかるのは、「非常に無口」「怖い(喋らない上、威風もあるので、たちが悪い)」「西郷隆盛との関係は凡人には想像できない程、強いもの」といった点だ。そんな中に家族とのふれあいなど、微笑ましいエピソードもある。勿論、亡くなった偉人、しかもその周辺の人々なので、そんな悪いことが書かれることはない。が、実は禿を気にしていたなどといった本人知ったら怒るんじゃないかしら、という細かい話まで満載。
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戦後70周年に当たり、ちょうどいいタイミングで、幕末の維新の背景と経緯、結果を再確認することができた。
欧米列強との軍事力の差による不戦と、屈辱的な通商条約締結が攘夷の背景にあった。攘夷とは排外主義という意味合いもあるが、本質的には自国の尊厳と権利を取り戻すことにあったのだろう。
薩長中心に政治体制の刷新を図り、大政奉還も含めて朝廷と武家との連立政権を目指すことになる。戊辰戦争は本来的なものではなく、必要最小限のけじめをつける闘いだったのだと思う。どうあっても新体制に反対する者はいるわけで、言論だけでは片付かないことが、最終的に取る手段が闘いということだろう。
明治政府では徐々に国家体制を整え -
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講談社学術文庫
佐々木克 監修 「 大久保利通 」
大久保利通と親交ある人々へのインタビューにより構成された本。故人を悪く言えない部分もあり、多面評価に至っていないように思う
人間性に関する証言が多く、政治的功績や国際感覚の鋭敏さに関するエピソードが少ないのは残念。証言やエピソードも細かい所で誤りが監修者により指摘され、史料として信用しづらい
大久保利通が征韓論に反対した理由は、朝鮮出兵意思が強い 西郷隆盛を死なせないためという証言が多い。
軍国主義に向かう西郷隆盛と それを抑えて 近代国家を進める大久保利通という構図になっているが、本当に 西郷隆盛に朝鮮出兵意思があったのだ