山尾悠子のレビュー一覧

  • 初夏ものがたり

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    幻と現実の境界線が曖昧な日常を、生者と死者を結ぶタキ氏を中心に、両者が織り交ぜられていく。浮遊感を感じる物語だったが、腑に落ちるシーンもあり、四遍を通して少しずつタキ氏の印象が変わっていくような不思議な感覚に包まれた。

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    2024年07月08日
  • 歪み真珠

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    『夢の棲む街』を読んで山尾悠子の虜になったので、この小説も手に取りました。いきなり長編を読むのは難しそうだったので、肩慣らしに短編集『歪み真珠』を。「アンヌンツィアツィオーネ」は冒頭の文章から惹き込まれたな。もちろん他のものもすごく好きだった。澁澤龍彦から受けたであろう強い影響を感じつつ、それでも山尾悠子独自の世界がたしかにあることを勝手に感じた、至福の1冊。装丁も世界観に合っていて素晴らしく素敵。

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    2024年03月04日
  • ラピスラズリ

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    千野帽子さんの解説を読むまで迷路に迷い込んだような気持ちでいた。中世の冬眠者が存在するディストピア小説だと感じていたが、自分の集中力が欠如して、誰の言葉なのか?どこにいるのか?場面が違うのか?と自問して迷子になることが頻繁に起こった。
    不思議な世界観。読者を迷路に導く構成。独特な言葉選び。闇へ、冬へ、死へと誘う小説から聖フランチェスコの再生へと。記憶に残る不思議な小説だった。

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    2024年03月01日
  • 山の人魚と虚ろの王

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    三日間の新婚旅行のお話。
    たったの三日間なのに色んなコトが起こる。起こるけど、解決してるようなしてないような。そんなコトは問題じゃないような。
    静かな幻想的な描写と、雑多な人々がガヤガヤしてる情景が凄く惹かれる。

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    2023年09月26日
  • 歪み真珠

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    薄さの割にすごく読み進めづらい。情報量が多すぎて脳内で情景を思い浮かべるのにとても時間がかかった。これが幻想小説か……。ゆっくり味わって読むべき本だと思う。
    最後の一編が微笑ましくて(?)好みだった。

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    2023年07月31日
  • 歪み真珠

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    山尾悠子三作品目。なんだかんだ癖になるところがある。
    こちら今まで読んだ作品の中でもさらに読みやすかった。各作品は絶対に全て理解できない(感覚的にも)という感覚がクセになってきそう笑
    また何か既存の作品を念頭に小説というアプローチを取ることが、僭越ながらそれなら自分にもできるかもしれないと思わせるので、少し親近感がわく。
    特に好きだったのは、「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」「向日性について」「アンヌンツィアツィオーネ」の三作品。

    「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」夢の棲む街を思い出しつつ、セイレーンの歌声を聞いたような感覚に
    「向日性について」純粋に発想にうなった
    「アンヌンツィアツィオーネ」

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    2023年07月08日
  • 山の人魚と虚ろの王

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    山尾作品2作目、こちらの方が断然好きでした笑
    ルドン「夢の中で 幻視」が装丁され、それを「モチーフに「絵の中に行けるとしたら、どんな道筋か」を考えた」とのこと。
    言われてみれば、確かにこの絵の雰囲気が文字として落とされていて、それが心地よいかは別としても、作品と相成っている。読んでいる最中の感覚はカヴァンの『氷』が近かった、単純に場面が切り替わり・登場人物がよくわからないからですけど笑

    ちょこちょこ変、それが怖さでもあり、可愛さでもあり、面白さでもある。そんな不思議な感覚を得ました。この文が、ということはないのですが、全体の雰囲気、読んだものにしか伝わらない雰囲気。
    パンを溜め込む性癖の妻、

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    2023年06月27日
  • ラピスラズリ

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    循環する物語。冬は生き物が静まる季節。しかし、やがて春が来る。夜になると、人は眠る。しかし、やがて朝を迎える。人も犬も、生きて死ぬ。しかし、やがて新たな生命が産まれる。死も夜も冬も永遠ではなく、いつか明けていく。眠りについた者たちの思いとともに、明日を生きよう。

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    2023年04月21日
  • 迷宮遊覧飛行

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    山尾悠子氏の本や作家との関わりあってきた人生を垣間見るような一冊。
    アーサーラッカムの載った表紙から装丁も素敵です。

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    2023年04月16日
  • 増補 夢の遠近法 ──初期作品選

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    精巧で美しい、言葉の曼荼羅のような、、
    酔える余裕がないときは紙の上を視線が滑るだけだった。

    精巧なとか書いたものの、よりハマったのは構造系よりも物語要素の強いほう:
    ジェットコースター展開からの穏やかで官能的なラストシーンが印象的なムーンゲイト、見知った果物ですら雰囲気と漢字によってやたら魅惑的にみえる支那風小夜曲集(の龍の帰還)、結末はよくわからなかったけれど、とにかく文章を追うのが楽しかったパラス・アテネなど。

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    2023年02月26日
  • ラピスラズリ

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    山尾悠子が2003年に発表した2作目の書き下ろし長編小説の文庫版。旅の途中、深夜に訪れた画廊で見かけた銅版画から始まる物語です。極限までそぎ落とした文章で、おいそれと簡単には物語に近づくことのできません。じっくりと考えながら咀嚼して味わうことを要求されます。日本にも、こんなに素晴らしい幻想文学が存在するのかと驚きました。

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    2022年12月05日
  • 歪み真珠

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    ひとびとをおののかせる、大理石の巨大な女王ないし女神。ひそかに異世界と通じている魔女たち。娼婦たちの島。夢から覚めても忘れがたいイメージの断片を集めたような短編集。

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    2022年08月24日
  • 須永朝彦小説選

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     本書巻末の「編者の言葉」を読んで、須永朝彦という人物を知ったのは、後半生のアンソロジストとしての仕事を通じてだったのだなあ、と分かった。

     作家としての作品は初めて読むものばかり。確かに読者を選ぶ作品が多いとは思うが、掌編と言っても良いような作は面白いし、読みやすい。
     もっとも、『小説全集』刊行時にパンフレットに寄せた文章にある「現実の自分には望み得ぬ境涯、言い換へれば自分が変り代りたき存在を選び取り、その肖像を描く事が即ち私の小説の方法となつた。」との一文にあるとおり、美しき吸血鬼や天使が度々取り上げられる。

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    2021年12月03日
  • 須永朝彦小説選

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    ・須永朝彦を知つたのはいつのことであつたか。私は歌人としての須永をほとんど知らない。歌人であつた、歌集を出してゐるといふことを後に知つた。私が須永を最初に知つたのはやはり「就眠儀式」であつたと思ふ。これは1974年に出てゐる。私が見つけたのはこれよりもかなり後のこと、めつたに行かない書店でたまたま見つけた。その頃には須永は短歌を捨ててゐた。山尾悠子編「須永朝彦小説選」(ちくま文庫)の「編者の言葉」によれば、「短歌となるとやはり直接教えを乞うた師からの影響が色濃いようだ。其れかあらぬ か、須永は作歌からは早々に離れてしまい、没後に歌集未収録作少々のみ残されていた由。」(303頁)とある。私は後に

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    2021年11月05日
  • 須永朝彦小説選

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    今年2021年5月に没した耽美幻想派の作家の作品から
    山尾悠子がセレクトした逸品集。
    収録作は、

     契
     ぬばたまの
     樅の木の下で
     R公の綴織画
     就眠儀式
     神聖羅馬帝国
     森の彼方の地
     天使Ⅰ
     天使Ⅱ
     天使Ⅲ
     木犀館殺人事件
     光と影
     エル・レリカリオ
     LES LILLAS――リラの憶ひ出
     月光浴
     銀毛狼皮
     悪霊の館
     掌編 滅紫篇
     聖家族Ⅰ
     聖家族Ⅱ
     聖家族Ⅲ
     聖家族Ⅳ
     蘭の祝福
     術競べ
     青い箱と銀色のお化け

    ――の、全25編。
    隙のない流麗な文体で、
    殊に掌編の上手さ(美味さ)が際立つ。

    個人的BEST3を挙げるとしたら、圧巻の巻頭、
    中秋の名

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    2021年10月01日
  • 飛ぶ孔雀

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    ネタバレ

    文体に慣れなくて読むのにものすごく時間がかかってしまった。
    ジャケ買いした今年の夏読書やったんやけど、夏終わってしもたやんけ。

    これは子育てしながらちみちみ読むもんじゃなかった。人物も時空も入り乱れてるので(章ごとにじゃないよ。一文ごとに入り乱れてるからね)腰据えて読まんとわけわからんなる…実際この話の半分も理解できとるとは言えない…でも世界観に圧倒されて思わず高評価…すごい…
    舞台はSFで、手法は幻想文学なんかな。夢の中みたいな世界だよ。

    最後みんな山に集結するとおもうやん。実際みんな山に来たやん。それでみんなの話が最後繋がるんやなあと思わせといて絶対に世界が交わらないという展開にすごい

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    2021年09月22日
  • 歪み真珠

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    ネタバレ

    山尾悠子さんの世界観が大好きです。
    理解出来てない部分が多いとは思うのですが、でもどのお話も定期的に読み返したくなる。
    この独特な世界観と文章。
    一度ハマると抜け出せない。

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    2021年05月09日
  • 飛ぶ孔雀

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    金井美恵子の解説が邪魔なこと以外、めっちゃおもろかった
    ファンタジーと現実の融合が、中井英夫をちょい感じた。

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    2021年01月26日
  • ラピスラズリ

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    作者という幻視者にしか見えない幻想が、読者の想像力をもって読者だけの姿で浮かび上がるという読書の快感。現実を喪失させる嬉しさを存分に味わうことができる。
    それこそ小説という媒体、映像のような実像ではない、文章が導く言語化できない幻想の世界がこの本にはある。
    極端に言えばそれを味わうことができれば満足できて、考察とか解説とか、この本には必要ないとすら思っている。

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    2020年06月21日
  • 歪み真珠

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    面白かったです。バロック。
    幻想的ですがシビアな世界で好きです。ふわふわでなはなく、ダーク。
    「娼婦たち、人魚でいっぱいの海」「火の発見」「紫禁城の後宮で、ひとりの女が」が好きでした。
    「火の発見」は《腸詰宇宙》のお話で嬉しかったです。
    「紫禁城の~」はラストシーンが美しくて力強くて好きです。これからは、纏足でなく自身の足で歩ける喜び…それが人間の足でなくとも。
    充たされた時間でした。

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    2020年05月06日