山尾悠子のレビュー一覧

  • 須永朝彦小説選

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    山尾氏の巻末解説によると、今や定番と言って良い、誘惑者としての美青年吸血鬼の原型を産み出したのは須永氏なのだそうだ。ただ、そうしたものとして読むには、ここに現れる者たちはすごみがありすぎるかも知れない。
    集められたものはほとんどが掌編。形式から言えばショートショートだが、そう捕えると異形で、形式のミソであるはずのオチがなかったり、プロットさえ曖昧だったり。散文詩と思えばいいのかも知れないが、それも違う気がする。

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    2022年02月12日
  • ラピスラズリ

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     2003年刊。
     初めて読む作家の、連作短編集だが、とても不思議な作家・不思議な作品だった。非常に寡作な作家であるらしく、知る人ぞ知る作家、といった存在なのであろうか。3つの賞を同時に受賞した『飛ぶ孔雀』なる2018年の作品があるようだ。本作自体、20年の沈黙を破って、と書いてあり、本当にもの凄く寡作だ。それにしても本書は評価が難しい。
     幻想小説ということで、ファンタジックな設定に基づいているのだが、一般的なファンタジー小説のような、当たり前のわかりやすさは全然無い。全改行を乱発しカギ括弧の会話でストーリーを進めていくこんにちのエンタメ小説の流儀とは真逆のやり方で、8割ほどは地の文だし、会

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    2022年01月13日
  • 飛ぶ孔雀

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    わからない…正直に言って…わからない…。
    一章ごと、あるいは一小節、時には一文ごとに様々なパラレルワールドが展開され、自分が今何処にいるのかが、わからなくなる…。
    読み終えた今も、作品のどこかに留まったままのような気がする…。

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    2021年12月11日
  • 飛ぶ孔雀

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    シブレ山の石切り場で事故があって、火は燃え難くなった。
    シブレ山の近くにあるシビレ山は、水銀を産し、大蛇が出て、雷が落ちやすいという。
    真夏なのに回遊式庭園で大茶会が催され、「火を運ぶ女」に選ばれた娘たちに孔雀は襲いかかる。
    ――「I 飛ぶ孔雀」

    秋になれば、勤め人のKが地下の公営浴場で路面電車の女運転士に出会う。若き劇団員のQは婚礼を挙げ、山頂の頭骨ラボへ赴任する。地下世界をうごめく大蛇、両側を自在に行き来する犬、男たちは無事に帰還できるのか?
    ――「II 不燃性について」

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    2021年09月08日
  • 山の人魚と虚ろの王

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    金砂銀砂を振り混ぜたような表紙、また箱の渋い絵、本としての佇まいが素晴らしい。
    内容は夢か現か幻か、虚の王の新婚旅行の3日間を、生死も不明時系列も混濁しながら駅舎のホテル、山の宮殿ホテル、山の屋敷と移りゆく。そこにあるのは、ただ滅びの残骸。愛も執着も感じられない。ただ風が吹いているような荒涼としたかって美しかったものへの憧憬のみ。
    もう少し感情が表れる物語が良かった。

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    2021年07月10日
  • ラピスラズリ

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    銅版・画廊にあった3枚組の銅版画。閑日・冬の館の大台所の少年とゴースト。竃の秋・冬眠する主人たちと準備に忙しい使用人たち。トビアス・冬眠から目覚めたら。青金石・聖人フランチェスコ。

    シュールでもありリアルでもあり。最初の銅版画の情景とタイトルの短編、ひととおり読み終わってから見直すと、ああそうか、と思えます。

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    2021年05月22日
  • 山の人魚と虚ろの王

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    作者の思い浮かべる情景の一割も私には見えている気がしないけれども、なんとか見たいと思いながら最後まで読んでしまう不思議な作品。

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    2021年05月05日
  • 歪み真珠

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    夢を見ているような不思議なお話が15篇。

    「歪み真珠」とは、ポルトガル語由来で、バロックの語源なのだそうだ。
    ただ幻想的で美しいだけではなく、その中にダークさを感じられる。
    ギリシア神話とか絵画がモチーフになっているお話もあり、その独特の世界観がよかった。
    どのお話も、雰囲気たっぷりで、不思議な世界を楽しむことが出来た。

    ドロテアの首と銀の皿がよかった!

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    2020年10月04日
  • ラピスラズリ

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    冬に読みたい本でお勧めされて読んだ。
    短編集なのですぐ読み終わるだろうと言う考えは甘く、短編とは思えない重厚感。
    2週間位読んでたけど、感覚的には凄い長い期間読んでいた気がする。
    同じ文を2度読み直し、数ページ戻り、自分の中で物語を何度も噛み砕いて解釈するのにとても時間がかかる。
    でも、その分読むのは全身全霊をかけて読まないといけないけれども、噛めば噛むほど味が出る本だった。

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    2019年12月03日
  • 歪み真珠

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    バロック。

    バロックのイメージではどれもとっつけなかったが、どの短編もすっきり終わらない、ファンタジー特有ぽさも出しつつの気持ち悪さを残し、あとのことは読者次第になる。
    「奇妙な味」のような。

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    2019年09月25日
  • 歪み真珠

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    ネタバレ

    「歪み真珠」とは「バロック」の語源。
    ファンタジーとはちょっと違うけど、幻想的な短編集。
    んー、あまり好みではないかな。

    # ゴルゴンゾーラ大王と草の冠
    蛙の王と蛇の女王が出てくるファンタジー的な設定だが、蛙たちがカエルツボカビ症でばたばたと倒れていくというなんとも現代的で現実的なオチ。

    # 女神の通過
    エドワード・バーン=ジョーンズの「The Passing of Venus」という絵画に着想を得た作品で、宗教絵画にありがちな、これいったい背景はどうなってんのという非現実的な構図をそのまま真正直に受け取って、物語にしたもの。ジョークとしか思えない。

    # 娼婦たち、人魚でいっぱいの海

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    2019年06月15日
  • ラピスラズリ

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    夜の画廊から、人々が冬眠する館の中へ。
    作中のゴーストのごとく、読んでいる私の意識が彷徨った作品。

    冬の寂しさ、過酷さが妙に肌に残る小説だった。

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    2018年08月14日
  • ラピスラズリ

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    冬眠する人々の物語。ヨーロッパの古典文学のようで、設定や風景の描写はとても美しいのだか、内容が難解で頭の中で理解し、咀嚼していくのが難しかった。

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    2016年03月02日
  • ラピスラズリ

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    「冬」と「眠り」に引きずられるような幻想小説短編集。
    それぞれの話には関わりがあるようでないようで。
    片手間で読んでいたのであんまりよくわからなかった。
    けど、緻密な文章と薄暗い雰囲気ははよかった。

    今度ちゃんと読む。

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    2014年12月30日
  • ラピスラズリ

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    ネタバレ

    幻想文学というカテゴリ。画廊に飾られた絵画の話から、世界は一転し、冬眠する謎の一族の興亡へ。軽く重く、緩く早く、つかみどころがなくて随分読むのに苦労した。
    解説で千野帽子氏が絶賛しているのを読んで、こういう風に感動すればよいのか、と思うのも変な話だが。浅薄な読み手としては、冬のイメージではイタロ=カルヴィーノの「冬の夜ひとりの旅人が」、冬眠のイメージではムーミンの一族を参考に、こういうのを書く才能にドキドキした。

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    2014年01月23日