山尾悠子のレビュー一覧

  • ラピスラズリ

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    稀少石のきらめきを思わせる硬質な文章。薔薇窓のように装飾的な舞台装置。山尾悠子の小説を読むのは、ゴシック様式の大聖堂の内部を探索するのに似ている。緻密で入り組んだ構造は、一度で全体像を把握するのを困難にしている。暗がりには冷気が漂い、陰気な亡霊の棲まう気配まで感じるようだ。それだけに、天窓から太陽の光が降りそそぐ時、来訪者は天上の光を仰ぎ見るような感覚にうち震えることになる。

    『ラピスラズリ』は、冬になると眠りにつく習性を持つ〈冬眠者〉をめぐる5つの物語である。物語の舞台は、深夜の画廊、中世西欧のシャトー、未来の日本の片田舎、13世紀のイタリアなど、場所も時代もまちまちだ。それぞれの話は微妙

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    2022年09月06日
  • 増補 夢の遠近法 ──初期作品選

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    大人向けファンタジーな本。

    どのお話も独特な世界でグイグイ惹きつけられます。言葉の選び方もステキで、何度でも読み返したくなる。

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    2015年11月01日
  • 増補 夢の遠近法 ──初期作品選

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    これは言葉という幻知が練成した、徹底して精緻に描かれた細密画だ。選び抜かれた言葉の一片一片が絢爛でありながら宝石のような輝きを持ち、硬質な文体が万華鏡さながらにイメージを乱反射させる。普段、読書中に視覚的印象が浮かぶ事は少ないのだが、本書においては完全に例外。陽光と月光を浴びて表情を変える廃墟の様に、溢れ出るイメージが次々と微細かつ緻密な美しい絵画的情景を産み出してゆく。幻想文学とは印象派のような淡い文章ではなく、明晰な幾何学的文体によってこそ説得力を持ち得るのだと思い知らされる。傑作中の傑作短編集。

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    2015年07月26日
  • 増補 夢の遠近法 ──初期作品選

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    作品集成→厳選→それに足す、
    という軌跡が愛されている証拠。

    20101129mixiより
    間違いなく私の読書歴の頂点に位置する作家になりそう。

    『夢の棲む街』★
    『月蝕』★
    『ムーンゲイト』★
    『遠近法』★
    『童話・支那風小夜曲集』
    『透明族に関するエスキス』
    『私はその男にハンザ街で出会った』★
    『傳説』★
    『月齢』★
    『眠れる美女』★
    『天使論』★

    付録
    『人形の棲処』★
    『領春館の話』★
    『チキン嬢の家』
    『ラヴクラフトとその偽作集団』★

    記憶に強く残っている作品に星をつけようと思ったが、
    そんな試みもくだらないくらいにそれぞれが強い印象を残

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    2016年07月14日
  • ラピスラズリ

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    なんかすごいものを読んでしまった。

    連作短編のようなそうでないような。一貫しているのは「冬眠者」がキーになっているということ。
    だけど話がきちんとつながっているかというとそうでもない。だけどやっぱりつながっている、そんな不思議な一冊。
    なんというか、豪奢で、なのにどこか腐臭が漂っているような、読みながら胸の中がざわざわして落ち着かないような幻想小説。
    味わいはまったく違うのにブラッドベリを思い出したのは、ブラッドベリが私の幻想小説の原体験だからかな。
    私にとっての幻想小説ど真ん中なお話。

    それにしても、すごいものを読んでしまった。

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    2013年05月28日
  • ラピスラズリ

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    ネタバレ

    甘美でいてその自然さに思わずため息が出てしまうような文章。何度も読み返したくなる魔力が確かに存在する。
    最近の小説はストーリー性ばかりを重視させ、その作品が本である必要性を感じないものが多い。それはそれで良いのだが、こういった活字の素晴らしさで表現されている作品は非常に減ってきているように感じ、同時に少し寂しくもある。間違いなく私の人生の本ベストテンに入る。

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    2013年03月22日
  • ラピスラズリ

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    ネタバレ

    眠っている間、年をとらないという設定は、眠れる森の美女を彷彿とさせた。人間ではないみたい。
    「トビアス」で、主人公が生を繋げるために食べたのが苺ジャム、というのも気になった。
    何故、苺ジャム?
    そして、それぞれの物語に出てきた人形の意味とは?

    冬になったらもう一度読み直したい。

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    2014年01月12日
  • 初夏ものがたり

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    酒井駒子さんの挿絵に惹かれて手に取りました。

    あの世の人と、この世の人が出会う物語。
    『ツナグ』を連想しました。

    出会いの場面をセッティングするタキ氏が行なっているビジネスとはどんなものなのかにも興味が湧きました。

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    2025年08月19日
  • 初夏ものがたり

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    1980年刊行の『オットーと魔術師』収録作品を、酒井駒子の挿絵を加え2024年に発行。初夏の雰囲気たっぷりに一晩の不思議な体験をする4話構成のファンタジー作品。酒井駒子の絵もどこか涼やかで、これは夏の今読むべき!と(まんまと)思わされた。

    初めての山尾悠子作品だったが、あまりに読みやすいので驚いた。それもそのはず、巻末の解説によると作者が若い時の作品であり、女の子向けの雑誌に掲載され、しかも一晩三十枚のペースで書いたという。難しいところも無いので、スッと世界に入っていけて最後までしっかりと面白いので、ファンタジー好きな人にはお勧めします。新しくはない作品だが、空気感は今でも楽しめると思う

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    2025年07月31日
  • 迷宮遊覧飛行

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    これはよかった。何度か挫折してきた山尾悠子さんの読書遍歴を辿れる一冊。何がよかったかというと、天上人が降りてきた感があるところ。

    私はイマジネーション力が無い読者なので、言葉だけで仮想世界をつくりだす山尾さんの世界には何度か挫折していて、頭の中はどうなっているのかと思う作家さんの一人。
    そういう方がこちらに語りかけるようにこれまでの読者歴を綴ってくれるので、少し身近に感じられる存在になった。

    『第四回ジュンク堂文芸担当者が選ぶこの作家を応援しますフェアへのご挨拶』がいい。
    冒頭での自己紹介で、知る人ぞ知るマイナー作家、ジャンルが曖昧、寡作、極端に読み手を選ぶ、と自虐されていて、私なんかから

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    2025年07月27日
  • 初夏ものがたり

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    まず本の見た目が素敵。手に取りたくなる。
    情景が浮かぶ。6月に読むのにぴったり。
    ページをめくりながり、挿絵に驚く。良すぎる。
    美しい映画になりそう。

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    2025年06月24日
  • 増補 夢の遠近法 ──初期作品選

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    山尾悠子初期作品集。とにかく幻想的な世界を精密に描写した文章が圧巻。

    イメージがひたすら頭の中に膨らんで、その世界へ連れて行ってくれる。

    特にデビュー作である“夢の棲む街”が凄い。豊富なイメージと圧倒的な世界観。

    他の作品もぜひ読みたい!

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    2025年04月14日
  • 初夏ものがたり

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    初夏の頃死者が一日よみがえるビジネスですとタキ氏淡々//タキ氏は七歳の少女、オリーブ・トーマスを一日だけ誘拐した。/自分とワン・ペアである、事故で死んだ双子の兄を取り戻すため、権力も財力もあり十八歳のナオミはタキ氏を脅迫する。《あたしの意志は、あらゆる障害を認めません。》p.65/一族の通夜でミノ夫人は子供の頃に出会ったタキ氏を再び見かける。《全世界はね、親しい人たちばかりで輪になっているようなものなんだわ》p.151/逃げ出したクライアントにタキ氏たちが右往左往。過重労働、けっこう苦労してます。

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    2025年01月07日
  • ラピスラズリ

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    冬眠する貴族たちと、館の使用人たちの物語。
    眠りのための棟を取り巻く「死」の要素がゴシック的で恐ろしくも美しい。
    冬眠者たちは「春」の概念そのものを表す寓話的な存在なのかなぁと、最後の章のきらきらとした終わり方を見て思った。

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    2024年11月13日
  • 初夏ものがたり

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    皺ひとつないダークスーツに身を包んだ正体不明の日本人ビジネスマン、タキ氏。故人を生の世界へ連れ戻す、時間制限付きの"ビジネス"を描いたジェントルゴースト・ストーリー。著者初期作の復刊。


    死神は生者を死の世界へと連れ去るけれど、タキ氏がおこなう「ギブのビジネス」はその逆だと言えばまあまあ合っていると思う。だが、話の主体になるのは6歳から50代までの女性たちであり、タキ氏はあくまで彼女らをエスコートする狂言回し。元はコバルト文庫のために書き下ろした少女小説だ。
    4つの連作のうち、「通夜の客」は東雅夫・編のアンソロジー『少女怪談』で既読だが、お屋敷、美濃夫人、双子たちと、和洋

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    2024年10月02日
  • 須永朝彦小説選

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    ネタバレ

    旧仮名遣いがとても素敵な余韻を残す。
    暗く美しく残酷な喜びに満ちた存在が書かれていて、うっとりと妖しい雰囲気に浸りながら読んだ。
    永遠を生きるヴァンパイアが見目麗しく、同じくそんな青年を探し当てては仲間にしていく様子などは、いつまでも読んでいたくなる。
    そのほか、人の形をしていながら人ではない、と仄めかされるさまざまな美青年たちの、隠された野蛮な暴力性にハラハラした。
    印象に残っているのは『天使II』の不気味な天使。わたしの場合、天使といえば愛らしく無垢な赤ん坊の見た目を思い浮かべるが、ここに出てくる天使は大人の姿をしているため、なおさら神々しく思える。そんなこの世のものとは思えない美しい存在

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    2024年09月17日
  • 初夏ものがたり

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     連作集。あの世とこの世を繋ぐ謎のビジネスが存在する世界で、この世に時間限定で戻ってくることができるサービスを担当しているタキ氏がどのお話にも登場する。もう一度会いたい人がいたり、しなければいけないことがあったり、それぞれの理由でこの世に戻ってはきたものの、思うようにはいかず、空回りしているうちに制限時間がきてしまう。生きていたあいだにうまくいかなかった人との関係が、生き返ったからといって好転するわけがないのだ。この世に戻ってきた理由がピュアな第三話が一番好き。

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    2024年08月18日
  • 初夏ものがたり

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    酒井駒子さんの挿絵に惹かれて読み始めたが、
    この世とあの夜の仲介人、タキ氏と、各章に登場する少女たちとの物語が、ファンタジーでありながら現実と地続きである物語のように感じられ、一気に読んでしまった。
    物語のミステリアスさ、幻想的な内容に、酒井さんの挿絵がピッタリハマり、絵画的な美しさを醸し出している。
    4話の中では、「オリーブ・トーマス」が、特に印象深かった。
    著者の他の作品も読んでみたい。

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    2024年08月05日
  • 初夏ものがたり

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    酒井駒子さんの絵が大好きなので、表紙に惹かれて手に取った

    作中ずっと夏の空気があって今の時期に出会えて良かったな〜!

    山尾悠子さん、知らなかったけどとても好きだったので他の作品も読んでみたい

    辻村深月さんの『ツナグ』を思い出した

    タキさんは、現実にいるなら岡田将生さんのイメージだ(「虎に翼」の航一さんの印象に影響されている自覚はある)

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    2024年07月30日
  • 初夏ものがたり

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    ネタバレ

    連作短編4篇
    あの世とこの世を結ぶビジネスに関わるタキ氏。死んだ人からの一度きりのオファーでこの世に戻って来ることができる。タイムリミットは夜中の12時。会いたい人に会ったり見たい風景を眺めたり、そんな不思議な淡いの時間を描いている。タキ氏がとてもクールで魅力的。

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    2024年07月27日