山尾悠子のレビュー一覧
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稀少石のきらめきを思わせる硬質な文章。薔薇窓のように装飾的な舞台装置。山尾悠子の小説を読むのは、ゴシック様式の大聖堂の内部を探索するのに似ている。緻密で入り組んだ構造は、一度で全体像を把握するのを困難にしている。暗がりには冷気が漂い、陰気な亡霊の棲まう気配まで感じるようだ。それだけに、天窓から太陽の光が降りそそぐ時、来訪者は天上の光を仰ぎ見るような感覚にうち震えることになる。
『ラピスラズリ』は、冬になると眠りにつく習性を持つ〈冬眠者〉をめぐる5つの物語である。物語の舞台は、深夜の画廊、中世西欧のシャトー、未来の日本の片田舎、13世紀のイタリアなど、場所も時代もまちまちだ。それぞれの話は微妙 -
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作品集成→厳選→それに足す、
という軌跡が愛されている証拠。
20101129mixiより
間違いなく私の読書歴の頂点に位置する作家になりそう。
『夢の棲む街』★
『月蝕』★
『ムーンゲイト』★
『遠近法』★
『童話・支那風小夜曲集』
『透明族に関するエスキス』
『私はその男にハンザ街で出会った』★
『傳説』★
『月齢』★
『眠れる美女』★
『天使論』★
付録
『人形の棲処』★
『領春館の話』★
『チキン嬢の家』
『ラヴクラフトとその偽作集団』★
記憶に強く残っている作品に星をつけようと思ったが、
そんな試みもくだらないくらいにそれぞれが強い印象を残 -
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1980年刊行の『オットーと魔術師』収録作品を、酒井駒子の挿絵を加え2024年に発行。初夏の雰囲気たっぷりに一晩の不思議な体験をする4話構成のファンタジー作品。酒井駒子の絵もどこか涼やかで、これは夏の今読むべき!と(まんまと)思わされた。
初めての山尾悠子作品だったが、あまりに読みやすいので驚いた。それもそのはず、巻末の解説によると作者が若い時の作品であり、女の子向けの雑誌に掲載され、しかも一晩三十枚のペースで書いたという。難しいところも無いので、スッと世界に入っていけて最後までしっかりと面白いので、ファンタジー好きな人にはお勧めします。新しくはない作品だが、空気感は今でも楽しめると思う -
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これはよかった。何度か挫折してきた山尾悠子さんの読書遍歴を辿れる一冊。何がよかったかというと、天上人が降りてきた感があるところ。
私はイマジネーション力が無い読者なので、言葉だけで仮想世界をつくりだす山尾さんの世界には何度か挫折していて、頭の中はどうなっているのかと思う作家さんの一人。
そういう方がこちらに語りかけるようにこれまでの読者歴を綴ってくれるので、少し身近に感じられる存在になった。
『第四回ジュンク堂文芸担当者が選ぶこの作家を応援しますフェアへのご挨拶』がいい。
冒頭での自己紹介で、知る人ぞ知るマイナー作家、ジャンルが曖昧、寡作、極端に読み手を選ぶ、と自虐されていて、私なんかから -
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皺ひとつないダークスーツに身を包んだ正体不明の日本人ビジネスマン、タキ氏。故人を生の世界へ連れ戻す、時間制限付きの"ビジネス"を描いたジェントルゴースト・ストーリー。著者初期作の復刊。
死神は生者を死の世界へと連れ去るけれど、タキ氏がおこなう「ギブのビジネス」はその逆だと言えばまあまあ合っていると思う。だが、話の主体になるのは6歳から50代までの女性たちであり、タキ氏はあくまで彼女らをエスコートする狂言回し。元はコバルト文庫のために書き下ろした少女小説だ。
4つの連作のうち、「通夜の客」は東雅夫・編のアンソロジー『少女怪談』で既読だが、お屋敷、美濃夫人、双子たちと、和洋 -
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ネタバレ旧仮名遣いがとても素敵な余韻を残す。
暗く美しく残酷な喜びに満ちた存在が書かれていて、うっとりと妖しい雰囲気に浸りながら読んだ。
永遠を生きるヴァンパイアが見目麗しく、同じくそんな青年を探し当てては仲間にしていく様子などは、いつまでも読んでいたくなる。
そのほか、人の形をしていながら人ではない、と仄めかされるさまざまな美青年たちの、隠された野蛮な暴力性にハラハラした。
印象に残っているのは『天使II』の不気味な天使。わたしの場合、天使といえば愛らしく無垢な赤ん坊の見た目を思い浮かべるが、ここに出てくる天使は大人の姿をしているため、なおさら神々しく思える。そんなこの世のものとは思えない美しい存在