【感想・ネタバレ】ラピスラズリのレビュー

あらすじ

冬のあいだ眠り続ける宿命を持つ“冬眠者”たち。ある冬の日、一人眠りから覚めてしまった少女が出会ったのは、「定め」を忘れたゴーストで──『閑日』/秋、冬眠者の冬の館の棟開きの日。人形を届けにきた荷運びと使用人、冬眠者、ゴーストが絡み合い、引き起こされた騒動の顛末──『竃の秋』/イメージが紡ぐ、冬眠者と人形と、春の目覚めの物語。不世出の幻想小説家が、20年の沈黙を破り発表した連作長篇小説。

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Posted by ブクログ

綺麗な作品だとは思うのですが、内容が難解。
登場人物が次々に変わるので、読んでいるうちに「今誰の話をやってるの?」となりました。
冬眠者、使用人、人形、ゴースト、春の目覚め。
寒々しいイメージが重なりあい、絡み合い、幻想的な美しさを醸し出しています。

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2024年07月05日

Posted by ブクログ

Boschの絵画のような人の群れにズームインしり俯瞰したり。非常にビジュアルを喚起させる作品だった。時間軸もも同時に存在していて、文字から喚起される場面があふれかえりそうになりながらも収束するさまは、風で舞い上がる枯葉の只中にいる様だった。

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2023年12月23日

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最初に3枚の銅版画の話が出てきますが、読んで行くとその絵を連想させる部分が他の各章で出てきます。あれはこういう意味やったのか、と腑に落ちる。何回読んでも飽きない作品。

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2023年10月16日

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幻想小説の大家、山尾悠子の連作長編。
山奥の館に住む冬眠者と使用人の破滅と再生を描く。
時系列や空間が絶えず移り変わり、「意識の流れ」のような物語の流動性を感じさせる美しい文章。
この作品を簡潔明瞭に批評できる語彙と論理的思考を身につけたい。

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2022年05月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

断片的な語りが、まるで悪い夢でも見ているかのようなループに迷い込ませる。
‪その全貌が見える頃には虜になっていた。‬
‪閉ざされた冬から喜びの春への移り変わりが美しく、繰り返す四季のように何度も読み返したい一冊。‬

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2019年08月21日

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稀少石のきらめきを思わせる硬質な文章。薔薇窓のように装飾的な舞台装置。山尾悠子の小説を読むのは、ゴシック様式の大聖堂の内部を探索するのに似ている。緻密で入り組んだ構造は、一度で全体像を把握するのを困難にしている。暗がりには冷気が漂い、陰気な亡霊の棲まう気配まで感じるようだ。それだけに、天窓から太陽の光が降りそそぐ時、来訪者は天上の光を仰ぎ見るような感覚にうち震えることになる。

『ラピスラズリ』は、冬になると眠りにつく習性を持つ〈冬眠者〉をめぐる5つの物語である。物語の舞台は、深夜の画廊、中世西欧のシャトー、未来の日本の片田舎、13世紀のイタリアなど、場所も時代もまちまちだ。それぞれの話は微妙につながっているが、説明が極端に少なく、しかも不意に途切れてしまったりするので、読者は想像力をフルに働かせて行間を補わなければならない。そういう作業が苦にならない人しか読破できないが、一度読破したら麻薬のように中毒になる、そういうタイプの作品だ。

*「銅版」/深夜の画廊を訪れた〈私〉は3枚の銅版画に見入っている。絵のタイトルは〈人形狂いの奥方への使い〉〈冬寝室〉〈使用人の反乱〉という。店主の説明を聞きながら、〈私〉は幼いころ母と訪れた画廊で見た別の銅版画のことを思い出す。そのタイトルは〈痘瘡神〉〈冬の花火〉〈幼いラウダーテと姉〉というのだった。

*「閑日」/――これがおまえたちが知ろうとしない〈冬〉なんだよ。大晦日の雪の日、主人の〈冬眠者〉一族が眠るシャトーに向って少年は叫んだ。一方、冬眠の途中で目覚めた少女ラウダーテは夜を彷徨う一人の亡霊と出会う。

*「竈の秋」/シャトーでは冬の棟開きが目前に控えていたが、今年は例年になく不穏な気配があった。何百体ものビスクドール、痘瘡の予兆、シャトー差し押さえのための使者。そんな中、成長したラウダーテは別の亡霊と出会う。ラウダーテの弟トビアは病弱な体に倦み疲れ、輪廻転生を夢見ながら眠りにつく。

*「トビアス」/文明が衰退して数世紀たった日本で、冬眠者の少女は自分の来し方を回想する。いなくなった母、春を待たずに死んでしまった犬のことなど…。

*「青金石」/1224年、アッシジ近郊。死期の近づいた聖フランチェスコのもとに一人の青年が訪れる。冬になると眠ってしまう体質のせいで結婚できず、家族を持つことを望めない青年は、懺悔の後で不思議な体験談を語る。瑠璃色の光に包まれて、春の天使が降臨してきた奇蹟のことを。

「閑日」と「竈の秋」の2篇が物語としてまとまっており、分量からいってもこの2つが本書の中核であることは疑いない。しかし最後の「青金石」を読んで私ははっとした。筋らしい筋はなく、純粋なイメージと言葉だけで紡がれた物語。眠りの底から這い出る際の不快感と、その苦痛を打ち消して余りある目覚めの朝の素晴らしさ。〈冬眠者〉の長い物語が必要だった理由に、ここにきて初めて思い到る。冬眠だけではなく、そのあとに続く〈春の目覚め〉までが主題だったのだ、と。『ラピスラズリ』は、限りなく死に近い仮死のあとに訪れる復活の恩寵を描いた作品ではないだろうか。

そしてそれは、20年の休眠期間を経て執筆活動を再開した、作者自身の心境にも重なるところがあるのかもしれない。

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2022年09月06日

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なんかすごいものを読んでしまった。

連作短編のようなそうでないような。一貫しているのは「冬眠者」がキーになっているということ。
だけど話がきちんとつながっているかというとそうでもない。だけどやっぱりつながっている、そんな不思議な一冊。
なんというか、豪奢で、なのにどこか腐臭が漂っているような、読みながら胸の中がざわざわして落ち着かないような幻想小説。
味わいはまったく違うのにブラッドベリを思い出したのは、ブラッドベリが私の幻想小説の原体験だからかな。
私にとっての幻想小説ど真ん中なお話。

それにしても、すごいものを読んでしまった。

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2013年05月28日

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ネタバレ

甘美でいてその自然さに思わずため息が出てしまうような文章。何度も読み返したくなる魔力が確かに存在する。
最近の小説はストーリー性ばかりを重視させ、その作品が本である必要性を感じないものが多い。それはそれで良いのだが、こういった活字の素晴らしさで表現されている作品は非常に減ってきているように感じ、同時に少し寂しくもある。間違いなく私の人生の本ベストテンに入る。

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2013年03月22日

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ネタバレ

眠っている間、年をとらないという設定は、眠れる森の美女を彷彿とさせた。人間ではないみたい。
「トビアス」で、主人公が生を繋げるために食べたのが苺ジャム、というのも気になった。
何故、苺ジャム?
そして、それぞれの物語に出てきた人形の意味とは?

冬になったらもう一度読み直したい。

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2014年01月12日

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冬眠する貴族たちと、館の使用人たちの物語。
眠りのための棟を取り巻く「死」の要素がゴシック的で恐ろしくも美しい。
冬眠者たちは「春」の概念そのものを表す寓話的な存在なのかなぁと、最後の章のきらきらとした終わり方を見て思った。

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2024年11月13日

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千野帽子さんの解説を読むまで迷路に迷い込んだような気持ちでいた。中世の冬眠者が存在するディストピア小説だと感じていたが、自分の集中力が欠如して、誰の言葉なのか?どこにいるのか?場面が違うのか?と自問して迷子になることが頻繁に起こった。
不思議な世界観。読者を迷路に導く構成。独特な言葉選び。闇へ、冬へ、死へと誘う小説から聖フランチェスコの再生へと。記憶に残る不思議な小説だった。

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2024年03月01日

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循環する物語。冬は生き物が静まる季節。しかし、やがて春が来る。夜になると、人は眠る。しかし、やがて朝を迎える。人も犬も、生きて死ぬ。しかし、やがて新たな生命が産まれる。死も夜も冬も永遠ではなく、いつか明けていく。眠りについた者たちの思いとともに、明日を生きよう。

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2023年04月21日

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山尾悠子が2003年に発表した2作目の書き下ろし長編小説の文庫版。旅の途中、深夜に訪れた画廊で見かけた銅版画から始まる物語です。極限までそぎ落とした文章で、おいそれと簡単には物語に近づくことのできません。じっくりと考えながら咀嚼して味わうことを要求されます。日本にも、こんなに素晴らしい幻想文学が存在するのかと驚きました。

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2022年12月05日

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作者という幻視者にしか見えない幻想が、読者の想像力をもって読者だけの姿で浮かび上がるという読書の快感。現実を喪失させる嬉しさを存分に味わうことができる。
それこそ小説という媒体、映像のような実像ではない、文章が導く言語化できない幻想の世界がこの本にはある。
極端に言えばそれを味わうことができれば満足できて、考察とか解説とか、この本には必要ないとすら思っている。

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2020年06月21日

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幻想のような小説。
言葉の奔流にもがきながらもしがみついて辿り着いたラスト。冬眠者が長い冬を越え、鳥のさえずりを合図に目を覚ましたような、透き通った静寂、淡い光、吹き抜ける春の風を感覚した。

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2019年04月14日

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冬になると鍵をかけた部屋で人形と共に眠る貴族の「睡眠者」と、その屋敷に仕える者たちの物語。
冒頭の版画の世界へ飛び込んだようだった。
繊細で優美で不思議な言葉で敷き詰められていて、ちょっと毒と寂しさがある。
特に79、80ページの料理の描写が最高。

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2018年10月02日

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ネタバレ

不思議な世界観でファンタジー的というか、フィクションでしかありえない雰囲気がよかった。
後書きにもあった、まさに言葉で作られた世界という感じ。
いつもと違う読書体験ができてよかった。

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2017年02月15日

Posted by ブクログ

ああ・・・
なんて幻想的・・・
いや、幻惑的?
5篇の中短篇の物語からなるこのラピスラズリ・・・
読み終えた後も、何度かチョコチョコと読み返してみても、この本の全体像がボヤけてしか見えない・・・
物語のピースをこういうことだろうか?と組み立てていっても・・・
ハッキリした形にならない・・・
『正解』に近づこうとも近づけない・・・
ああ・・・
でもでも、それはそれで良い気がする・・・
そして、そのせいなのか?読み終えた後のこの余韻たるや・・・
こんな不思議な余韻はなかなか感じられない・・・
何だか美しいモノを見た(読んだ)ような・・・
ああ・・・
こ・と・ば・に・で・き・な・い!

眠い眠いとなりながら、列車の到着を待つ時間つぶしに深夜営業の画廊に入ると・・・
三枚組の小さな古い銅版画に目が留まった・・・
タイトルは左から順に、<人形狂いの奥方への使い>、<冬寝室>、<使用人の反乱>となっております・・・
そう言う画廊の店主とその三枚の銅版画について話していると・・・
それにしても眠い・・・
それに、何だか遠い昔にもこんな話をしたような・・・
右から順に、<痘瘡神>、<冬の花火>、<幼いラウダーテと姉>というのですよ・・・
と物語が始まる・・・
この導入の、最初の1篇に続く2篇3篇の物語はどうやら、その銅版画の物語・・・
冬になると眠り続けて春を待つ、『冬眠者』の物語・・・
同じ登場人物と思われる人も現われたりするので、ああ、繋がっているんだな、となる・・・
銅版画が語っている物語と、銅版画には語られていない物語を楽しめる・・・
さて、次の篇は当然、この続きと思いきや・・・
いきなりぶっ飛ぶ・・・
いつの時代か・・・
おそらく未来の物語・・・
輝かしい未来ではなく・・・
薄暗く、廃れた未来・・・
日本のどこかの廃市での物語・・・
この篇で気づく・・・
ああ、この本は・・・
銅版画に描かれている物語の本ではなく・・・
この本を通して脈々と連なる『冬眠者』たちの物語なんだ、と・・・
最後の篇は・・・
一気に遡って1226年になり・・・
ほのかな温かさを感じさせて終わる・・・
いや、終わるのではなく、始まるのか・・・
いくつかの夢を見て、まどろみから目が覚めたような感じになる・・・

こんな貴重な読書体験を味わえるなんて・・・
この本はオススメ・・・
冬にこそ・・・

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2014年12月06日

Posted by ブクログ

格別敬遠していたわけではないが、
この年になってやっと山尾悠子を読む気になった。
が、遅すぎはしなかった――というより、
人それぞれ、物事には適切なタイミングがあって、
自分にもやっと、そのときが巡ってきたのだと思った。

冒頭の語り手が深夜営業の画廊で銅版画の連作を目にし、
イメージを膨らませていると、店主がそれらの絵解きをする。
後の物語で、
その銅版画のモチーフになったと思しい事件が叙述されるが、
それらの物語が連続・連結しているとは限らない。
ただ、某かの関連を持つことは窺えて、
連屏風を眺めるような印象を受ける。
もしくは物語同士が少し遠い血縁でもあるかのような。

広大な屋敷には、
冬眠する貴族と、彼らを世話する使用人たちの他に、
亡くなって幽霊となった
「ゴースト」と呼ばれる者が徘徊している。
建物内の人間に招かれなければ入室できないというゴーストは、
ひょっとして吸血鬼なのかと、チラと思ったが、
読み進めると、
長い眠りを貪って若さと美しさを維持する住人たちの方が
よほど吸血鬼じみていると思えてくる。
使用人たちが季節ごとのルーティン・ワークをこなして
屋敷の秩序を維持する様は、
まさに「種まきと刈り入れのメタファー」【※】であり
「新年を迎えるための通過(パッサージュ)」【※】
なのではあるまいか。

【※】高山宏『殺す・集める・読む』
  「テクストの勝利~吸血鬼ドラキュラの世紀末」より引用。

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2014年04月07日

Posted by ブクログ

途中までは確かに面白かった
竈門の秋の後半からなんだかよく分からなくなっちゃった
世界の崩壊を描くのはいつものことなんだけど、ゾンビみたいなのが出てくるからかな、崩壊が美しくない…
読み取りきれない私の読書レベルの足らなさなのかもしれない

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2025年08月21日

Posted by ブクログ

『歪み真珠』から読んでしまったのだけど、『ラピスラズリ』から読めばよかったかな…と思いつつ、でもそれほど違和感なく読めたから、これでよかったのだと思う。難解です。一度読んだくらいではちょっと分からない。特に3つ目の「竈の秋」は人物が多く出てくるし、視点がころころ変わるので日本古典文学のようだと思った。私は「閑日」が好きだった。時間を置いてからまた読みたい。ただ、冬眠者たちの物語を冬から春にかけて読めたことは、ベストだったかもしれない。

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2024年03月20日

Posted by ブクログ

美しい文章で綴られる幻想的なお話。冒頭の「銅版」の話がいい。深夜営業している画廊という時点で現実離れしている。冬寝室と名付けられた銅版の絵のルーツを推測していく件に魅せられる。
その後のエピソードはぼんやりと読んでしまったので、ぼんやりとした印象しかない。

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2023年08月20日

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ディストピアみのある幻想文学連作集。
日本が舞台らしき部分をもうちょっとくわしく!って感じに惹かれました。

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2022年08月05日

Posted by ブクログ

 2003年刊。
 初めて読む作家の、連作短編集だが、とても不思議な作家・不思議な作品だった。非常に寡作な作家であるらしく、知る人ぞ知る作家、といった存在なのであろうか。3つの賞を同時に受賞した『飛ぶ孔雀』なる2018年の作品があるようだ。本作自体、20年の沈黙を破って、と書いてあり、本当にもの凄く寡作だ。それにしても本書は評価が難しい。
 幻想小説ということで、ファンタジックな設定に基づいているのだが、一般的なファンタジー小説のような、当たり前のわかりやすさは全然無い。全改行を乱発しカギ括弧の会話でストーリーを進めていくこんにちのエンタメ小説の流儀とは真逆のやり方で、8割ほどは地の文だし、会話らしいと思ったカギ括弧の連続の部分もよく読めば一人の人物が延々と喋っているだけだったりする。
 地の文は驚くほど文学的である。影響を受けているかどうかは知らないが、何と、古井由吉氏の文体を想起させる箇所もあった。文学的に高度な表現で詩的イメージを喚起させてゆくスタイルで、恐らくその面がこの作者の真骨頂であり、作品の価値を高めていると思われる。が、一応ストーリーは進行していく。特に長い「竈の秋」ではどんどん物語が進むのだが、これが非常に読みにくく、次々に視点となる人物が移り変わってゆく書き方も、妙に混乱させられる。この長い一編では登場人物が次々にたくさん登場するのだが、人物の大体の年齢に関して記述が無いため、イメージが掴めない。
 ストーリーテリングに関して、この作家はちょっと能力が低いのか、いや、そもそも、そのストーリー自体も、あまり意味のあるものでもないかもしれない。要するにこの作品が目指しているのはドビュッシー風なイメージの連鎖なのだろう。その意味では、巧みな部分が見られるものの、それならこんなに長く書く必要は無いような気がする。
 およそエンタメ界隈の読者には全く受けなさそうな小説で、むしろ芸術として理解するべきものと思うが、それにしてはメルヘンチックな設定が邪魔をしてそっち系の読者の注意を惹かなそうだ。ジャンルの面でのこうした曖昧さは、まるで私のワガママな音楽創作のようで、どっちつかずの領域にくすぶって結局ごく一部の受け手にしか評価されない、孤独な創作として閉じこもってしまうのである。
 この作品の評価は、私には難しく、読み始めて間もなく「これは凄くいいかも」と思ったものの、「竈の秋」の長さや分かりづらいストーリーテリングなどに接して、やはりどうもつまらないような気もした。

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2022年01月13日

Posted by ブクログ

銅版・画廊にあった3枚組の銅版画。閑日・冬の館の大台所の少年とゴースト。竃の秋・冬眠する主人たちと準備に忙しい使用人たち。トビアス・冬眠から目覚めたら。青金石・聖人フランチェスコ。

シュールでもありリアルでもあり。最初の銅版画の情景とタイトルの短編、ひととおり読み終わってから見直すと、ああそうか、と思えます。

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2021年05月22日

Posted by ブクログ

冬に読みたい本でお勧めされて読んだ。
短編集なのですぐ読み終わるだろうと言う考えは甘く、短編とは思えない重厚感。
2週間位読んでたけど、感覚的には凄い長い期間読んでいた気がする。
同じ文を2度読み直し、数ページ戻り、自分の中で物語を何度も噛み砕いて解釈するのにとても時間がかかる。
でも、その分読むのは全身全霊をかけて読まないといけないけれども、噛めば噛むほど味が出る本だった。

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2019年12月03日

Posted by ブクログ

夜の画廊から、人々が冬眠する館の中へ。
作中のゴーストのごとく、読んでいる私の意識が彷徨った作品。

冬の寂しさ、過酷さが妙に肌に残る小説だった。

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2018年08月14日

Posted by ブクログ

冬眠する人々の物語。ヨーロッパの古典文学のようで、設定や風景の描写はとても美しいのだか、内容が難解で頭の中で理解し、咀嚼していくのが難しかった。

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2016年03月02日

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「冬」と「眠り」に引きずられるような幻想小説短編集。
それぞれの話には関わりがあるようでないようで。
片手間で読んでいたのであんまりよくわからなかった。
けど、緻密な文章と薄暗い雰囲気ははよかった。

今度ちゃんと読む。

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2014年12月30日

Posted by ブクログ

ネタバレ

幻想文学というカテゴリ。画廊に飾られた絵画の話から、世界は一転し、冬眠する謎の一族の興亡へ。軽く重く、緩く早く、つかみどころがなくて随分読むのに苦労した。
解説で千野帽子氏が絶賛しているのを読んで、こういう風に感動すればよいのか、と思うのも変な話だが。浅薄な読み手としては、冬のイメージではイタロ=カルヴィーノの「冬の夜ひとりの旅人が」、冬眠のイメージではムーミンの一族を参考に、こういうのを書く才能にドキドキした。

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2014年01月23日

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