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「誰かが私に言ったのだ/世界は言葉でできていると」――未完に終わった〈かれ〉の草稿の舞台となるのは、基底と頂上が存在しない円筒形の塔の内部である“腸詰宇宙”。偽の天体が運行する異様な世界の成立と崩壊を描く「遠近法」ほか、初期主要作品を著者自身が精選。「パラス・アテネ」「遠近法・補遺」を加え、創作の秘密がかいま見える「自作解説」を付した増補決定版。
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Posted by ブクログ
面白かったです。 幻想的で残酷な、崩壊していく美しい世界に浸りました。 「夢の棲む街」「遠近法」「透明族に関するエスキス」が特に好きでした。 夢の~は、人でないもののグロテスクな描写が素敵で、そしてカタストロフィーへ… 遠近法は、《腸詰宇宙》が圧倒的な存在感で構築されていました。絵画のようです。 透...続きを読む明族~は、透明な侏儒がぱん!と弾ける様が目に見えるようでした。透明でぎちぎちと犇めきあうのを、踏み潰すと可視性の内容物(酷い悪臭をもつ)が現れるのがグロテスク。 短編でも、残酷さがあって充足しました。 ほとんど、わたしが生まれる前に書かれてるんだな…。 この初期短編集のあと長い休筆期間に入られてたそうですが、最近は執筆されていて、山尾さんの新作が読めるのが嬉しいです。
大人向けファンタジーな本。 どのお話も独特な世界でグイグイ惹きつけられます。言葉の選び方もステキで、何度でも読み返したくなる。
これは言葉という幻知が練成した、徹底して精緻に描かれた細密画だ。選び抜かれた言葉の一片一片が絢爛でありながら宝石のような輝きを持ち、硬質な文体が万華鏡さながらにイメージを乱反射させる。普段、読書中に視覚的印象が浮かぶ事は少ないのだが、本書においては完全に例外。陽光と月光を浴びて表情を変える廃墟の様に...続きを読む、溢れ出るイメージが次々と微細かつ緻密な美しい絵画的情景を産み出してゆく。幻想文学とは印象派のような淡い文章ではなく、明晰な幾何学的文体によってこそ説得力を持ち得るのだと思い知らされる。傑作中の傑作短編集。
作品集成→厳選→それに足す、 という軌跡が愛されている証拠。 20101129mixiより 間違いなく私の読書歴の頂点に位置する作家になりそう。 『夢の棲む街』★ 『月蝕』★ 『ムーンゲイト』★ 『遠近法』★ 『童話・支那風小夜曲集』 『透明族に関するエスキス』 『私はその男にハン...続きを読むザ街で出会った』★ 『傳説』★ 『月齢』★ 『眠れる美女』★ 『天使論』★ 付録 『人形の棲処』★ 『領春館の話』★ 『チキン嬢の家』 『ラヴクラフトとその偽作集団』★ 記憶に強く残っている作品に星をつけようと思ったが、 そんな試みもくだらないくらいにそれぞれが強い印象を残す。 ここまで鮮烈で確固としたイメージを植えつけられるとは。 驚愕に近い。
山尾悠子初期作品集。とにかく幻想的な世界を精密に描写した文章が圧巻。 イメージがひたすら頭の中に膨らんで、その世界へ連れて行ってくれる。 特にデビュー作である“夢の棲む街”が凄い。豊富なイメージと圧倒的な世界観。 他の作品もぜひ読みたい!
精巧で美しい、言葉の曼荼羅のような、、 酔える余裕がないときは紙の上を視線が滑るだけだった。 精巧なとか書いたものの、よりハマったのは構造系よりも物語要素の強いほう: ジェットコースター展開からの穏やかで官能的なラストシーンが印象的なムーンゲイト、見知った果物ですら雰囲気と漢字によってやたら魅惑的...続きを読むにみえる支那風小夜曲集(の龍の帰還)、結末はよくわからなかったけれど、とにかく文章を追うのが楽しかったパラス・アテネなど。
文章が素敵、綺麗。 各話ストーリーも不思議な魅力でいっぱいです。 この方の著作は初めてでしたが、一気に魅了されました。
初読、自分の中に生まれたのは、強固できらびやかな世界への感嘆でした。 内面語彙が少なく、世界の叙述だけを塗り重ねるので、読者は人物の心情を考える隙もなく、世界の情報だけをひたすらに受け取ることになる。言い切りの形を連ねて世界を形作る書き方は「だから起きる」という因果を断ち切って「起きてしまう」とい...続きを読むう事実だけが残る。体感としてクリスタル等の鉱質のような、そして鉱質から乱反射される幾何学な模様のような文体だと受け取りました。尽くされた文体は贅肉を削ぎ、体幹を極限まで鍛えたような強靭さがある。 ━━━ 街の外に何があるのか、街の人々は誰も知らない。浅い漏斗型の街は、四方を荒野に取り囲まれている。……街の噂によれば、泡立つ紺青の大洋の中心に円形の平坦な大陸があり、その中央に臍のように陥没したところがこの街なのだという(「夢の棲む街」) ━━━ 直立した宇宙の最上部と最下部に水平に嵌めこまれた、二枚のむかいあわせの鏡。と同時にその二枚の鏡は、背中あわせにぴったり貼り付けられている(「遠近法」) にもかかわらず、流れ込む言葉によって脳内に積みあげられる世界は、怪しく艶やかで、生めかしい。しかもその妖麗さは情緒的表現からくるのではない。精巧緻密な文における構築から、世界は細やかな部分まで作りこまれてゆく。部分が部分へ接続し、まるでひとつの円環のように脈打ちはじめる。 天使、人魚、天体、侏儒など幻想的なモチーフが、しかし夢見心地なわけではなく身体的で確かな温度で描かれる。ある種、生めかしいを超えて醜怪でもある。モチーフは生き物のように手ざわりを持ち、匂いと湿度を帯びます。崇高なものが醜怪なものへと変幻するのです。 装飾に継ぐ装飾によって様々な形質が脳内に流れ込む。後書に山尾悠子自身が書いている「想像力の器械体操」という言葉が山尾悠子を掴むのに似つかわしいイメージだなと思いました。 そして局所に差し込まれる神話性。伝説や超人的な存在による世界の崩壊。「夢の棲む街」「ムーンゲイト」「遠近法」「パラス・アテネ」いずれにしても世界を積みあげた先にカタストロフィが待っている。積みあげたものが壮大になればなるほど、瓦解する時の密度は肥大する。 「パラス・アテネ」 月と狼神と繭が赤くなる、この世に現われる破壊神の伝説がある。横顔だけを人に見せて通り過ぎた創世の神々とは異なり、その神は真正面から人の世を見すえる。天から降るのではなく、地上に人として生まれ、やがて赤い繭の中から四つ脚の姿となって出現する…… このような伝説がこの土地にある。狼領商隊の生き残りとして土地神となった豺王は、まるで伝説の中心に引き寄せられるように機織りの天才・二位と出会う。その出会いを起点に、これまで語られてきた伝説が、真に出来事として動きはじめる。 特筆するは終盤。 ━━━ 糸の端が、咽喉の矢傷から迸る血潮に浸って、真紅の色を吸いあげつつあった。勢い激しく噴きだし始めた白い糸のその勢いよりも、血潮を吸いあげた糸が染まっていく勢いのほうが、なお盛んと見えた(「パラス・アテネ」) 意図的に作り上げられたカオスの中で、従一位と二位を包む赤い繭と、血潮を吸い上げ赤に染まっていく豺王の繭が美しい。繭の変態で物語は終わりますから、この後が気になります。 しかも伝説では、破壊神は赤い繭から四つ脚で産まれるとされていました。けれど破壊王は皇帝の息子だったようで、ならば赤い繭から生まれようとしているものは何なのか。破壊神か、救世主か、はたまたどちらともないのか。刺客が見届けると言ったその先には、何があるのか。 赤い繭に眼を灼かれるかのような気分でした。
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