フランシス・ハーディングのレビュー一覧
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舞台は19世紀の英国。翼のある人類の化石を見つけた博物学者で牧師のサンダリーだが化石は捏造だとの噂が流れ、一家はヴェイン島へ移住する。しかし噂は島にまで届き、ある夜サンダリーは不審死を遂げる。その死は自殺と疑われ牧師でもあったサンダリーの埋葬許可も下りない。一家は島民たちから村八分され居場所を失う。そんな中、殺人を疑った娘のフェイスは父の死の真相を調べ始める。遺された父の日記から、嘘を養分に育ち真実を見せる実をつける「嘘の木」のことを知る…。
前半は退屈だ。サンダリー家の環境や登場人物の人となりの説明なのだろうが、淡々と話は進む。特に事件は動かないし、不思議なことも起こらない。しかし後半から話が動き出す!
実在した嘘の木が見せるヴィジョンとは何なのか。この木は何ものなのか。島民の中に殺人犯人がいるのか。それとも自殺なのか事故なのか。
娘のフェイスの視点で話は進むのだが、まだまだ女性が古い観念に縛られていた時代に、フェイスは強い意志と行動力で真実を突き止めていく。いや、時代に反発するのはフェイスだけではない。登場するそれぞれの女性たちが抗い、逞しく自分らしさを追い求めている。フェイスのラストの活躍はアクションたっぷりの活劇だ。
帯に宮部みゆきの推薦の弁で「終盤の母娘の会話に涙した」というのは、全てが終わった後、それまでお互いを理解できなかった母と娘が心を開いて話すシーン。父親と息子が理解し合う話はよくあるが、母娘はそうそうない。同様にフェイスは他の登場人物とも腹を割った話をしてその壁をなくす。気持ちの良い爽やかなところだ。
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ラディスという国を舞台にした異世界ファンタジー。"原野"に住むクモに似た"小さい仲間"は人間に"呪いの力"を授けることができる。呪われた人間は別のものに変えられてしまう。15歳の少女ネトルは継母の呪いを受け、サギに変えられていた過去をもつ。ネトルの呪いを解いた15歳の少年ケレンは"ほどき屋"だ。二人は行動を共にするうちに呪い人を集めた"救済団"という組織の仕組んだ陰謀の渦中に巻き込まれていく…。
二人は呪いに潜む謎を探るうちに、呪いを生むような社会の仕組みに違和感をおぼえ、呪い人にならざるを得なかった人々の弱さと事情に目を向けるようになっていきます。常に自己を肯定し、呪い人を追い詰める事だけを考えて行動していたケレン。自身が呪われていた過去をもち、呪われた人を救済することに注力していたネトル。二人ともそれまで気付けなかった事に目を向けるようになる。そんな所に、少年と少女の成長物語が隠されています。
本書の発表は2022年。「影を呑んだ少女」の次の作品にあたります。作品としては「ガラスの顔」以来のハイ•ファンタジー。この作者独自の世界観に彩られた異世界の描写は唯一無二で、入り込むのにちょっと時間がかかるのが玉に瑕。ですが、緻密に構築されたストーリーに破綻はなく、きちんと収拾がつくのは見事です。
なお、2023年に新作が発表されているそうなので、期待して待ちます。 -
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『嘘の木』に続く著者第八作。
今作の舞台は1642年、清教徒革命下のイギリス。特殊な能力をもつ少女•メイクピースは暴動で母を亡くし、亡き父の一族のもとに引き取られる。王党派の父の一族は、代々あらわれる特殊な能力をもつ者をつかって邪な目的を果たしていた。その能力とは"霊に取り憑かれる力"。しかしメイクピースにはひた隠しにしている事実があって…。
幽霊が出てくるゴシック•ファンタジー。多様な仕掛けのある歴史ファンタジーでもあり、十五歳の少女が苦難を乗り越えていく成長の物語でもあります。
イギリスで賞を取った『嘘の木』も面白いけど、その一作前の『カッコーの歌』も、本作も面白い。全てに共通しているのは少女の成長。ときに慎重に、ときに大胆に、難局を乗り越えていく姿が生き生きと描かれています。
なお、清教徒革命期の話ですが主人公は市井の人なので、読むための歴史的知識はなくても大丈夫、読めます。"国王と議会が対立して内乱になり、最終的には国王が処刑された"くらい知っていてもいいかな。
ちなみに王の名はチャールズ1世。(今の国王は3世です。別王朝の人だから間違えないようにしないとね!)
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「嘘の木」の著者によるダーク•冒険ファンタジー。発表は「嘘の木」(2015)の一作前で「ガラスの顔」(2012)の次の作品が本書。(2014)
舞台は第一次大戦後のイギリス。11歳の少女トリスが意識を取り戻す。池に落ちた。記憶が混濁している。父と母と妹のペン。ペンはトリスを嫌っている。耳元で声が囁く。「あと七日」だと。いったい何が起こっているのか分からない。母のもとには戦死した兄からの手紙が届き続けている。どういうことなのか…。
ティム•バートン(「ナイトメア•ビフォア•クリスマス」「シザー•ハンズ」などの作者)の描く世界と、通底するものを感じました。それは、両者とも"自分は何者なのか?"と悩む主人公の"自分探しの物語"だという点です。父•母•兄弟や姉妹の愛を求めて彷徨う主人公。しかし、そこには決して得られない断絶が横たわっています。
そして当然、登場人物たちの行動原理はエグい(笑)しかし、主人公トリスの、自我を取り戻す為に突き進む姿は爽快で読み応えがあります。トリスと行動を共にする二人の行動力もすごいし、アクションシーンも多いぶん、映画化したら面白そう。エンディングもけっこう衝撃的。「嘘の木」より、こっちの方が好きな人は多いんじゃないかな?
…ダーク•ファンタジーは耐えられない人もいるだろうと思うので⭐︎は四つ。耐えられる人にはお薦めです! -
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19世紀末のイギリス。「種の起源」が出版されて間もない時期。女性が個人としての存在を認められることはない時代。14歳のフェイスは、家族と共にヴェイン島に移住する。牧師であり、博物学者でもある父は、翼のある人類の化石を発見したことで捏造者の汚名を抱えていた。父に認められるような博物学者になりたいと密かに思っているフェイス。そんな父は、フェイスに手伝わせて島の洞窟に1本の木を隠し、翌朝死体で発見される。父の死は自殺ではないことを証明しようとするフェイス。謎を握るのが父と共に隠した木である事に気づくが…。
離島という閉じられた空間で起こった殺人事件の犯人探しミステリーであり、『嘘の木』という架空の植物を巡るファンタジーでもある。たいへん読みごたえのある作品です。
"私的な殺人捜査"が物語の主軸となるため、主人公はもちろん、登場人物の性格や行動原理は結構エグいです。19世紀末を題材にとった"女性の自我の覚醒と自立を促す物語"という捉え方もできるのかもしれません。
【余談】
それよりも気になったのは、この作家が、私が以前から考えていた『イギリス女性作家の系譜の一員なのではないか』という疑問です。ブロンテ姉妹からJkローリングに繋がる、強い自我を持った若くて強靭な女性を、現在の視点で描ける人のような気がします。他の作品も読んでみたいという気にさせてくれる作品でした。 -
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うん。予想外におもしろかった。
読み始めるまでは文学文学してるような難解な話なのかな~とか、思わせぶりな隠喩だらけの抹香臭いような話なのかな~とか、あんまり期待せずに読んだのがよかったのかな。
単純におもしろかった。
冒険ヒロイックミステリー。
封建的で男尊女卑な19世紀のイギリスが舞台で、「種の起源」が発表された九年後という設定もうまい。
化石の捏造を指摘された高名な博物学者である父親の死の真相を調べます。
主人公の14歳の少女フェイスが小気味いい。
知恵も度胸も行動力もある。
最初のうちは
【十四年間かけて植えつけられてきた恐怖が頭の中を駆け巡る。見知らぬ男。わたしはもうすぐ大人の女になろうとしている娘。保護者やお目付けなしで、見知らぬ男の近くにいてはならない。そんなことをしたら、恐ろしいことが数かぎりなく起きる谷に落ちるだけだ。】
な~んてことを言ってたのに後半では
【人は動物で、動物はただの歯だ。先にかみつき、食らいつけ。それが生き残る道なのだ。】
と勇ましくなっていく。
ジブリとかがアニメ化してくれないかなー。
似合うと思うんだが。
お仕着せのレディーの格好をさせられたフェイスが駆け回る姿を見てみたい。
そういえば久し振りの★4評価です。
去年の「百瀬、こっちを向いて。」以来。
一年二か月振りでした。
ちょっと点数甘いかなとも思いましたが、読み終わった後に拍手してしまいましたからね。
★4でいいです。
惜しむらくは「嘘の木」ですね。
これがなんだかわからない。
京極夏彦さんの「塗仏の宴」に出てきた不死の生命体「くんほう様」みたいに、なんらかの解釈を与えて欲しかったな。 -
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ネタバレ・あらすじ
嘘の木が面白かったので同作者の最新邦訳作を読んでみた。
ファンタジー、サスペンスちょいホラー風味の冒険小説。
1920年代の英国が舞台。主人公トリスが事故から目覚めると記憶の欠如、異常なまでの空腹、喋りだす人形…違和感と謎だらけ状況のなか自分の正体を探っていく。
・感想
カッコー、妖精でピンとくる人はいるかも・
前作よりファンタジー色強めだからか苦手な比喩表現が多くてちょい苦労したけど主人公の正体が判明してからは一気読みした。
前作ともに抑圧された環境にいた主人公が事件を通じて本当の自分を開放させるという展開と曖昧な境界、善悪二元論で収まらないキレイに分けられるものなんてないというテーマを感じ取れる。
「きっぱりと分ける」アイテムとしてハサミを使うアイデア面白かった。
最後は結構斬新で予想外な終わり方で面白かった。 -
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ネタバレ19世紀英国。女性の立場は低く、学問を志すことも自立した生き方も許されず、ただ貞淑で家庭にいることを強いられていた時代。まさに子供から女になろうとする14歳のフェイスが、知恵と勇気をふるい多くの束縛や困難を乗り越えて真実を追い求めるミステリー。
高名な学者であり畏れつつも敬愛していた父が殺され、その汚名をすすぎ犯人を見つけるために奮闘するのだが、高潔と信じていた父が実はそうではなかったという皮肉。
それに対し、美しく着飾り男に媚を売ってばかりの母を軽蔑していたのに、それが家庭を守るための母なりの闘いだったのだと知り、終盤で母娘がお互いを認め合うシーンが良かった。
自分の信念(faith)を持って闘う少女は、女が自由に生きられる新しい時代を切り拓いてゆくに違いない。 -
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ネタバレ・あらすじ
17世紀、議会vs王で内乱状態にあった(清教徒革命)イギリスが舞台のファンタジー小説。
小さな田舎町で母と暮らしていたメイクピース。幽霊に取り憑かれてしまうという特異体質をもつ彼女はその能力を使って動乱の時代を生き抜いていく。
・感想
作者の作品は三作目なんだけど、どれも少女を主人公に据えた成長譚。
今回も同様に泥臭く生き抜く少女が逞しく描写されてる。
いわゆるなろう系とは全く正反対の苦境・逆境を傷つきながらも乗り越えていく作風で読み終わった後のカタルシスが良い。
過去に縛られ過去に拘泥し過去に生きている人々、旧く強大な権力を持つものに抗って新しい時代を生きていく人々を時代設定と主人公の設定に落とし込んでた。 -
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4冊目。今迄で一番読みやすい。
奇才独特の世界観で、白昼夢へと引き込まれた。これぞファンタジー読書の醍醐味。
彼女でしか味わえないようなイマジネーションの面白さがあります。
今回のテーマ「負の感情」がおりなす世界の
妬み、憎しみ、怒り、憎しみ、恨み、嫉み、執着、不実、不信…
これらを超自然的な力で呪いとして形にする事を罪とする世界
少年少女たちは常にこれらに晒され苦しみながらも、闘っていきます。
闇を抱えながら生きていくという事、
許しや救いとはいったいなんだろうと読書に投げかけてくる。
目まぐるしい展開が次々とやってきてイメージするのが疲れましたけれど、満足です。
ラストいろいろ散らかったものが消化されるのですが、児童書っぽくなく、詩的に余韻を残して終わるところもいいですね。
湿地という場所柄も非常にマッチしていているけれども陰鬱すぎない、何故か美しさを伴う景色と世界を堪能してみてください。 -
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子供の頃の児童文学を思い出しながらも、大人になったからこそワクワクだけで終わらないファンタジー。
事故から目覚めると記憶が曖昧で、何故か妹にひどく嫌われている。事故前のこと、家族のこと、自分のこと、少しずつ思い出すものの、妹は自分を「少しずつ違う」という。
初めはどこかのミステリー小説で読んだことあるような設定で全体的に陰鬱だなぁという印象でしたが、起承転結の承から大きく物語が舵を切り、一気にファンタジー要素が広がるため全く未体験の感覚に。
手に汗握るバトルというよりは、魔法の世界にワクワクするタイプのファンタジーです。
しかしながら、翻訳書ならではの詩的な例えがなんとも印象的。解説でも言っていましたが、世の中には絶対的な悪というより、悪だということに気づいていない悪があるのだと、そしてそちらの方がタチの悪いこともあるのだと思いました。 -
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19世紀、近代化が進みながらも女性への差別が根強く残る時代を舞台にしたマジックリアリズムミステリー。
嘘を養分に育ち、真実を宿した実をつけるという不思議な木をめぐり、凄惨な事件が幕を開ける。
本作の読みどころは、主人公フェイスの解放劇でしょうか。
自由意志を許されず、周囲から抑圧され続けてきた彼女が、、父の死の真相を追う過程で「嘘の木」の力を利用し、「父親が幽霊になって現れる」「採掘者たちは何かを隠している」といった虚偽を意図的に広めていく。
嘘のリアリティを高めるために策を弄し、オオカミ少年のように振る舞うことで自身を解き放ち、島全体を恐怖へと引きずり込んでいく。その展開が実に痛快でした。
また、何も考えていないように見えた周囲の女性たちが、実はそれぞれの方法で見えない戦いを繰り広げていたという描写も印象的です。
声を上げることすら許されない時代において、女性たちの静かな抵抗が浮かび上がり、物語に厚みを与えています。
父の無念を晴らそうとしたフェイスの行動が、結果的に父自身の虚飾や罪を暴き立てることになる。
父を守るための旅路が、父の呪縛から娘を解放する物語へと反転していく流れは秀逸でした。
ただ、手放しには薦めにくい点もあります。この終盤の面白さに辿り着くまでの前置きが長く、中盤までは展開が緩やかで中だるみを感じてしまいました。
終盤の鮮やかさが際立っているだけに、そこまでの助走の長さが惜しまれます。
クライマックスの読み応えは本物ですが、そこに至るまでの忍耐を求められる作品です。じっくり腰を据えて読める方にはおすすめできます。 -
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ネタバレ・あらすじ
地下都市カヴェルナでチーズ職人の弟子として暮らしていたネヴァフェル。
その地下都市の住民には表情がないため「面(おも)」と呼ばれる地位に即してラベリングされた表情を教わるが、ネヴァフェルは何故か教わらずとも様々な表情を持っていた。
何故ネヴァフェルには表情があるのか?
陰謀渦巻く地下都市の策略にネヴァフェルは引き摺り込まれていく。
・感想
星4よりの3かなーー。
がっつりファンタジーだけどハーディング作品は4作くらい読んでるので世界観にはすんなり馴染めた。
でもどうしても主人公の性格が好きになれなかった。
後半はマシになったけど、やるなと言われたことをやってしまう、何も考えずに物事を引っ掻き回すタイプの主人公はあまり好きじゃない…。
それも「無垢」だからということなんだろうけども。
無垢で無知な少女が世界の機構、仕組みを理解してその世界からの脱却を図るっていうのは定番の成長物語だけど、無知ゆえに引き起こすトラブルに結構イライラさせられるw
キャラクターだとクレプトマンサーが良かった!
最後まで読者にも真意、目的を悟らせないキャラで、そして目的が叶ってしまった後の最後の独白。
とても良かった。
星4よりに個人的評価を押し上げたのはやっぱり後半の展開かな。
エピローグも良かったし。
やっぱり物語の締めが上手な作品って最中が微妙でも最終的には「良い物語だった」と思える。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ"本は子供にだけでなく大人にだって魔法をかけてくれる"
深緑さんの解説にあった言葉の通り、すっかり魔法にかけられた。まだ気持ちが半分物語の中で置いてけぼりになっている!
少女の耳元で囁かれた「あと7日」という言葉、なぜか敵意剥き出しの妹、破かれた日記、恐ろしい程異常な食欲…
不穏な気配と謎をたっぷりはらんだまま進むお話に一体何が起こっているの…?と最初は困惑したけれど、中盤から物語の全容が見え、ドドドと一気に動き出すともう夢中になっていた。動き出す人形、蜘蛛の巣の涙、橋の裏に広がる異世界!久しぶりに触れるダークファンタジーの世界にどっぷり。
トリスやペン、ヴァイオレットに手を引かれて全力で街中を駆け抜けたような気持ち。
物語の締め括りもとっても好きだった。
本を閉じた後もぽやぽやとファンタジーの世界や住人達に想いを馳せる、子供の頃のあの感覚を今思い出してる。
はあ、面白かった!しばらく戻れそうにないや。