あらすじ
〈原野(ワイルズ)〉と呼ばれる沼の森を抱える国ラディスでは、〈小さな仲間〉という生き物がもたらす呪いが人々に大きな影響を与えていた。15歳の少年ケレンは、呪いの糸をほどいて取り除くほどき屋だ。ケレンの相棒は同じく15歳のネトル。彼女はまま母に呪いをかけられ鳥にかえられていたが、ケレンに助けられて以来彼を手伝っている。二人は呪いに悩む人々の依頼を解決し、さまざまな謎を解き明かしながら、原野に分け入り旅をするが……。英国SF協会賞YA部門受賞。『嘘の木』の著者が唯一無二の世界を描く傑作ファンタジイ。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
フランシス・ハーディングの過去作品だと主人公が女の子だったがここに来て初めての男の子!そしてその相棒はフランシス・ハーディングお得意のダウナーめ女の子でハーディング作品が好きな人にはとにかく刺さるファンタジーだった。ガラスの顔がいけた人はおそらくこれもいけるが、ガラスの顔がキツかった人はおそらくこれもキツいと思う。
Posted by ブクログ
「誰にでも錨がある。」
人はみなそれぞれに「闇」を抱えて生きている
人はみなそれぞれに「怒り」を滾らせ生きている
人はみなそれぞれに「恨み」を隠して生きている
「恨み」が隠しきれないほどに大きくなったとき〈小さな仲間たち〉は善意から「呪いの卵」という贈り物をくれる
「闇」に包まれ
「怒り」に我を失い
「恨み」があふれて
「呪い」をかけてしまいそうなとき
自分には錨があることを思い出せたら
踏みとどまることができるはず
「誰にでも錨がある。」
あなたの錨は誰ですか?
Posted by ブクログ
★5 呪いに影響された世界を救うため旅にでた少年達… 闘いの果てに得た善悪の答えは #呪いを解く者
■あらすじ
湿地と森で構成される原野が広がるラディスが舞台、この世界ではクモに似た小さな仲間によって、人に呪いをかける力を得ることができる。少年ケレンは呪いを解くことができる特技を持っており、かつて鳥にかえられてしまっていた少女ネトルと旅を続けていた。
呪い人が許せない二人は、呪いに犯された世界を救うために冒険を続ける。果たして呪いはなくなり、人々は幸せになれるのだろうか…
■きっと読みたくなるレビュー
こりゃまた、すごい物語だわ…
今までに想像したこともなかった世界につれてってくれる。いつも幻想的な世界に誘ってくれるハーディング先生ですが、今回はより一層ダークファンタジー味が強く、もはや別の次元に連れってってくれる傑作。
理論的な見方しかできない人では正直ついていけません。夢の世界に飛び込む勇気や、経験したことのない世界をビジョン化する想像力が必要になります。なので子どもの頃に戻って、純粋に物語を楽しむのがおすすめ。そうすると、ずっーーと文字をおい続けたくなってくる。そしてそのまま寝ちゃうのが幸せを感じる読み方ですね。
本作、呪い人VS呪いを解く人の構図で物語が進められる。様々な登場人物たちが呪いに振り回されながら生活をしており、さらにその呪いの原因となる小さな仲間や、統制を目論む政務庁や救済団という組織も絡んでくる。
そんな複雑難解な世界を、まだ幼い少年少女であるケレンとネトルが、善という信念をもって旅を続けていく。途中で出会う呪われた人々の叫びに対して、彼らはひとつひとつ向き合っていくんですよ…すごくない?もう泣いちゃうんです。またネトルの兄、ヤニックが大好き。カモメの彼は可愛いし、いつも二人を助けてくれる。妹想いの愛情深さが染みますね。
そして物語の後半あたりからは冒険もクライマックス、闘いの果てに待ち受ける善悪の答えとはなんなのか。この長い物語を読んだ人であれば、シンプルながらも深い意味が胸を貫くと思います。
■ぜっさん推しポイント
我々の世界でも憎む人、憎しみから生まれる武器、そして被害にあう人たちも存在する。一見、憎み攻撃する側が悪いようにも思えるが、果たしてそれが正解といえるのか…何を大事にするかの価値観によって善悪というのは変化する。みんなが幸せになるって、難しいですね…
ハーディングの作品では、いつも社会を闇を暴いたり救ったりしてくれる主人公は幼い少女や少年たち。彼らの成長は見ていて胸が熱くなるんですが、現実の子どもたちには無邪気でいられる世界であってほしいですね。
Posted by ブクログ
人を呪う
それほどまでの恨み辛み、そして悲しみ
呪縛を解き放つための赦しもまた、人の心で
幾重にも積み重なった重いテーマを、小さき二人に背負わせる
指先のかじかみ、節々の痛み、飢え
彼らの痛みは痛烈で今作はまた一段と凄まじい超弩級のダーク加減
最終的には解いた糸が繋がりを持ち始める
これまでにない没入感
なんという作品だ
Posted by ブクログ
ラディスという国を舞台にした異世界ファンタジー。"原野"に住むクモに似た"小さい仲間"は人間に"呪いの力"を授けることができる。呪われた人間は別のものに変えられてしまう。15歳の少女ネトルは継母の呪いを受け、サギに変えられていた過去をもつ。ネトルの呪いを解いた15歳の少年ケレンは"ほどき屋"だ。二人は行動を共にするうちに呪い人を集めた"救済団"という組織の仕組んだ陰謀の渦中に巻き込まれていく…。
二人は呪いに潜む謎を探るうちに、呪いを生むような社会の仕組みに違和感をおぼえ、呪い人にならざるを得なかった人々の弱さと事情に目を向けるようになっていきます。常に自己を肯定し、呪い人を追い詰める事だけを考えて行動していたケレン。自身が呪われていた過去をもち、呪われた人を救済することに注力していたネトル。二人ともそれまで気付けなかった事に目を向けるようになる。そんな所に、少年と少女の成長物語が隠されています。
本書の発表は2022年。「影を呑んだ少女」の次の作品にあたります。作品としては「ガラスの顔」以来のハイ•ファンタジー。この作者独自の世界観に彩られた異世界の描写は唯一無二で、入り込むのにちょっと時間がかかるのが玉に瑕。ですが、緻密に構築されたストーリーに破綻はなく、きちんと収拾がつくのは見事です。
なお、2023年に新作が発表されているそうなので、期待して待ちます。
Posted by ブクログ
異世界ファンタジー。初めて読む著者ですが、有名な方だったんですね。
呪いの糸をほぐして解く少年と、かつて呪いを受けて鳥に変えられた少女(少年に呪いを解いてもらって、今は人間)の冒険譚です。
壮大な話、かつ細部まで描写が細かく、読み終えるのにけっこうな体力がいりました。
もっとじっくり時間をかけて読めば良かったと後悔しています。この方の他の本も読んでみたいと思います。
Posted by ブクログ
4冊目。今迄で一番読みやすい。
奇才独特の世界観で、白昼夢へと引き込まれた。これぞファンタジー読書の醍醐味。
彼女でしか味わえないようなイマジネーションの面白さがあります。
今回のテーマ「負の感情」がおりなす世界の
妬み、憎しみ、怒り、憎しみ、恨み、嫉み、執着、不実、不信…
これらを超自然的な力で呪いとして形にする事を罪とする世界
少年少女たちは常にこれらに晒され苦しみながらも、闘っていきます。
闇を抱えながら生きていくという事、
許しや救いとはいったいなんだろうと読書に投げかけてくる。
目まぐるしい展開が次々とやってきてイメージするのが疲れましたけれど、満足です。
ラストいろいろ散らかったものが消化されるのですが、児童書っぽくなく、詩的に余韻を残して終わるところもいいですね。
湿地という場所柄も非常にマッチしていているけれども陰鬱すぎない、何故か美しさを伴う景色と世界を堪能してみてください。
Posted by ブクログ
読み慣れておらず、世界観が難しくなかなか入り込むことができなかったが、最後の盛り上がりは引き込まれてしまった。
呪いを受けたもの、呪いをかけるもの、どちらもゆっくりと解きほぐしていかなければいけない。急にはできない。寄り添うことが大事。
呪いの卵という表現だが、実際の自分の心でも起こりうることだなと、もやもやは溜めない方がいい。
Posted by ブクログ
現実世界にも作中の『書記長』がいて法律や契約を反故した者には死の裁きを…という事であれば、現在、市政に関わる多くの為政者は死を免れないであろう。 今まさにトピックされているキャッシュバック騒動に加担している輩は言わずもがな、選挙活動中『国民のために』とうそぶいた奴らもという事になれば、一体どれだけの政治家がサバイヴ出来るのか?
そして、
それはこの国に限らない。
今、世界中で勃発している戦争や紛争を先導、或いは加担している奴らの殆どは指導者では無く、権力者…いや、肥大した自己顕示欲を抱える狂人なのだ。
そんな輩によって、
今、世界は憎悪と怨嗟に満ちている。
世界中に『呪い』が蔓延って、作中の彼をもってしても最早容易にほどくことはままならないだろう。
いっそ虐げられた者達の呪いが束になって、奴ら全員カモメにでも変えてしまえば良い。
俯瞰から見下ろせば、キ○ガイどもにも新しい視野が生まれるかもしれない。
…そんなこたぁねぇか(笑)。