フランシス・ハーディングのレビュー一覧
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ネタバレ強く成長する少年少女の冒険譚を書かせたら、右に出る作家はいないのではないか。フランシス・ハーディングの絵本。
死者を正しく導かないと、島中を闊歩することになる。そんな島で魂の渡守をしていた父が死に、後継と思っていた兄が捕まり、半ば無理矢理に渡守になる必要があったマイロ。娘の死を信じたくない領主に追われながらも、死者たちの魂を運ぶマイロの冒険。
首のない鳥、骨でできたアーチ、途中から螺旋階段しかないあの世とこの世を繋ぐかのような塔など、いつもの幻想的、ファンタジックな世界が、挿絵がつくことにより一層引き立てられ、絵本としては非常に満足。
ただやはり、ガッツリと長編で読みたかった。主人公のマイ -
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舞台は19世紀の英国。翼のある人類の化石を見つけた博物学者で牧師のサンダリーだが化石は捏造だとの噂が流れ、一家はヴェイン島へ移住する。しかし噂は島にまで届き、ある夜サンダリーは不審死を遂げる。その死は自殺と疑われ牧師でもあったサンダリーの埋葬許可も下りない。一家は島民たちから村八分され居場所を失う。そんな中、殺人を疑った娘のフェイスは父の死の真相を調べ始める。遺された父の日記から、嘘を養分に育ち真実を見せる実をつける「嘘の木」のことを知る…。
前半は退屈だ。サンダリー家の環境や登場人物の人となりの説明なのだろうが、淡々と話は進む。特に事件は動かないし、不思議なことも起こらない。しかし後半から -
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『嘘の木』に続く著者第八作。
今作の舞台は1642年、清教徒革命下のイギリス。特殊な能力をもつ少女•メイクピースは暴動で母を亡くし、亡き父の一族のもとに引き取られる。王党派の父の一族は、代々あらわれる特殊な能力をもつ者をつかって邪な目的を果たしていた。その能力とは"霊に取り憑かれる力"。しかしメイクピースにはひた隠しにしている事実があって…。
幽霊が出てくるゴシック•ファンタジー。多様な仕掛けのある歴史ファンタジーでもあり、十五歳の少女が苦難を乗り越えていく成長の物語でもあります。
イギリスで賞を取った『嘘の木』も面白いけど、その一作前の『カッコーの歌』も、本作も面白い。 -
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「嘘の木」の著者によるダーク•冒険ファンタジー。発表は「嘘の木」(2015)の一作前で「ガラスの顔」(2012)の次の作品が本書。(2014)
舞台は第一次大戦後のイギリス。11歳の少女トリスが意識を取り戻す。池に落ちた。記憶が混濁している。父と母と妹のペン。ペンはトリスを嫌っている。耳元で声が囁く。「あと七日」だと。いったい何が起こっているのか分からない。母のもとには戦死した兄からの手紙が届き続けている。どういうことなのか…。
ティム•バートン(「ナイトメア•ビフォア•クリスマス」「シザー•ハンズ」などの作者)の描く世界と、通底するものを感じました。それは、両者とも"自分は何者 -
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19世紀末のイギリス。「種の起源」が出版されて間もない時期。女性が個人としての存在を認められることはない時代。14歳のフェイスは、家族と共にヴェイン島に移住する。牧師であり、博物学者でもある父は、翼のある人類の化石を発見したことで捏造者の汚名を抱えていた。父に認められるような博物学者になりたいと密かに思っているフェイス。そんな父は、フェイスに手伝わせて島の洞窟に1本の木を隠し、翌朝死体で発見される。父の死は自殺ではないことを証明しようとするフェイス。謎を握るのが父と共に隠した木である事に気づくが…。
離島という閉じられた空間で起こった殺人事件の犯人探しミステリーであり、『嘘の木』という架空の -
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うん。予想外におもしろかった。
読み始めるまでは文学文学してるような難解な話なのかな~とか、思わせぶりな隠喩だらけの抹香臭いような話なのかな~とか、あんまり期待せずに読んだのがよかったのかな。
単純におもしろかった。
冒険ヒロイックミステリー。
封建的で男尊女卑な19世紀のイギリスが舞台で、「種の起源」が発表された九年後という設定もうまい。
化石の捏造を指摘された高名な博物学者である父親の死の真相を調べます。
主人公の14歳の少女フェイスが小気味いい。
知恵も度胸も行動力もある。
最初のうちは
【十四年間かけて植えつけられてきた恐怖が頭の中を駆け巡る。見知らぬ男。わたしはもうすぐ大人 -
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ネタバレ・あらすじ
嘘の木が面白かったので同作者の最新邦訳作を読んでみた。
ファンタジー、サスペンスちょいホラー風味の冒険小説。
1920年代の英国が舞台。主人公トリスが事故から目覚めると記憶の欠如、異常なまでの空腹、喋りだす人形…違和感と謎だらけ状況のなか自分の正体を探っていく。
・感想
カッコー、妖精でピンとくる人はいるかも・
前作よりファンタジー色強めだからか苦手な比喩表現が多くてちょい苦労したけど主人公の正体が判明してからは一気読みした。
前作ともに抑圧された環境にいた主人公が事件を通じて本当の自分を開放させるという展開と曖昧な境界、善悪二元論で収まらないキレイに分けられるものなんてないと -
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ネタバレ19世紀英国。女性の立場は低く、学問を志すことも自立した生き方も許されず、ただ貞淑で家庭にいることを強いられていた時代。まさに子供から女になろうとする14歳のフェイスが、知恵と勇気をふるい多くの束縛や困難を乗り越えて真実を追い求めるミステリー。
高名な学者であり畏れつつも敬愛していた父が殺され、その汚名をすすぎ犯人を見つけるために奮闘するのだが、高潔と信じていた父が実はそうではなかったという皮肉。
それに対し、美しく着飾り男に媚を売ってばかりの母を軽蔑していたのに、それが家庭を守るための母なりの闘いだったのだと知り、終盤で母娘がお互いを認め合うシーンが良かった。
自分の信念(faith)を持っ -
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ネタバレ・あらすじ
17世紀、議会vs王で内乱状態にあった(清教徒革命)イギリスが舞台のファンタジー小説。
小さな田舎町で母と暮らしていたメイクピース。幽霊に取り憑かれてしまうという特異体質をもつ彼女はその能力を使って動乱の時代を生き抜いていく。
・感想
作者の作品は三作目なんだけど、どれも少女を主人公に据えた成長譚。
今回も同様に泥臭く生き抜く少女が逞しく描写されてる。
いわゆるなろう系とは全く正反対の苦境・逆境を傷つきながらも乗り越えていく作風で読み終わった後のカタルシスが良い。
過去に縛られ過去に拘泥し過去に生きている人々、旧く強大な権力を持つものに抗って新しい時代を生きていく人々を時代設 -
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4冊目。今迄で一番読みやすい。
奇才独特の世界観で、白昼夢へと引き込まれた。これぞファンタジー読書の醍醐味。
彼女でしか味わえないようなイマジネーションの面白さがあります。
今回のテーマ「負の感情」がおりなす世界の
妬み、憎しみ、怒り、憎しみ、恨み、嫉み、執着、不実、不信…
これらを超自然的な力で呪いとして形にする事を罪とする世界
少年少女たちは常にこれらに晒され苦しみながらも、闘っていきます。
闇を抱えながら生きていくという事、
許しや救いとはいったいなんだろうと読書に投げかけてくる。
目まぐるしい展開が次々とやってきてイメージするのが疲れましたけれど、満足です。
ラストいろい -
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子供の頃の児童文学を思い出しながらも、大人になったからこそワクワクだけで終わらないファンタジー。
事故から目覚めると記憶が曖昧で、何故か妹にひどく嫌われている。事故前のこと、家族のこと、自分のこと、少しずつ思い出すものの、妹は自分を「少しずつ違う」という。
初めはどこかのミステリー小説で読んだことあるような設定で全体的に陰鬱だなぁという印象でしたが、起承転結の承から大きく物語が舵を切り、一気にファンタジー要素が広がるため全く未体験の感覚に。
手に汗握るバトルというよりは、魔法の世界にワクワクするタイプのファンタジーです。
しかしながら、翻訳書ならではの詩的な例えがなんとも印象的。解説でも -
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ウソを食べて育つ『嘘の木』の果実を食べると… 暗く静かでキレイなファンタジーミステリー #嘘の木
■あらすじ
19世紀のイギリス、宗教の協議と進化論が折り合わない時代。
博物学者を主とする一家が、研究結果捏造の中傷を浴びてしまい、島に移住をしてきた。島の住民に疎まれながら、肩身の狭い生活を余儀なくされる。
娘であるフェイスは、ある日の夜中、博物学者の父に秘密の場所に引き連れられる。しかしよく朝起きると、父は不審死を遂げてしまうのだった。納得ができないフェイスは独自で調査を始めるのだが…
■きっと読みたくなるレビュー
これがファンタジー小説というやつか… 美しく幻想的な作品でした。
翻訳ミ -
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ネタバレ"本は子供にだけでなく大人にだって魔法をかけてくれる"
深緑さんの解説にあった言葉の通り、すっかり魔法にかけられた。まだ気持ちが半分物語の中で置いてけぼりになっている!
少女の耳元で囁かれた「あと7日」という言葉、なぜか敵意剥き出しの妹、破かれた日記、恐ろしい程異常な食欲…
不穏な気配と謎をたっぷりはらんだまま進むお話に一体何が起こっているの…?と最初は困惑したけれど、中盤から物語の全容が見え、ドドドと一気に動き出すともう夢中になっていた。動き出す人形、蜘蛛の巣の涙、橋の裏に広がる異世界!久しぶりに触れるダークファンタジーの世界にどっぷり。
トリスやペン、ヴァイオレットに手