あらすじ
迷路のような地下都市カヴェルナの人々は自分の表情をもたず、《面(おも)》と呼ばれる作られた表情を教わる。そんなカヴェルナに住むチーズ造りの親方が、トンネルで痩せこけた幼子を見つけた。ネヴァフェルと名づけられた幼子は、ある理由から外の世界から隠されて育てられる。一瞬たりともじっとしていられない好奇心いっぱいの少女に成長したネヴァフェルは、ある日トンネルを抜けだし街に出てしまい、そこで奇しくも国全体を揺るがす陰謀のただ中に放り込まれるが……。『嘘の木』の著者が描く、健気な少女が大活躍する冒険譚。カーネギー賞候補作。
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ハーディングの作品はこれで4冊目。いつにも増して凝った世界観で、珍しく物語に入り込むのに少し時間のかかってしまった作品でしたが、最後まで読んで、あぁやはりハーディングらしい、イギリスの王道ファンタジーだと納得がいきました。ぜひ皆様に読んでほしい一冊です。
Posted by ブクログ
『嘘の木』の著者による異世界ファンタジー。発表は2014年で『嘘の木』より前。
舞台は地下都市カヴェルナ。生まれつき表情を持たない人々は訓練を受けて"面"(おも)と呼ばれる表情を身に付けて暮らしている。チーズ作りの匠•グランディブルのトンネルに突然現れた少女•ネヴァフェル。五歳くらいの少女は、それまでの記憶を無くしていた。外界から遮断されたトンネルの中で、チーズ作りの弟子として七年を過ごした彼女は、ちょっとしたきっかけからトンネルの外に出ることになる…。
ハイ•ファンタジーとしての"創り込み"が徹底しています。…と言うより、あまりにも手が込んでいて、とても万人受けする物語とは言えない。例えば、"ワイン"とは''記憶をあやつる効果をもたらすために醸造されるもの"で、『ワイン=魔法薬』と考えながら読まないといけません。
さらにしんどいのは、「まるで〜」「〜のような〜」という比喩表現が無茶苦茶多いこと。比喩は読み手に具体的イメージを喚起させる役割なのだろうが、あまりに多用、あまりに突非なので、注意が必要です。
…と、余り好意的ではない事を書き連ねたけれど、結末はしっかりしていて納得の終わり方です。約500ページ•全33章のうちの25章辺りまで(!)延々と積み重ねられた謎や疑問はきちんと解読されます。ただそこまでが長い…。
すごく魅力的だけど、重度のハイ•ファンタジー愛好者向け…ですかね。