吉野源三郎のレビュー一覧
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人として立派な生き方とは何か、について考えさせられる作品であった。息子が大きくなったら読んで欲しい。
少年コペル君が学校であった出来事を深く振り返っているだけでなく、それを見てノートに残す叔父さんが良いメンターとなって、正しい道に向かっていく2人が美しく描かれていた。
個人的に
"世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人類の進歩と結びつかない英雄的精神も虚しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように虚しいことが多いのだ。君も、いまに、きっと思いあたることがあるだろう。"
とい一節がかなりずっしりと入ってきた。
優しさと強 -
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本作に登場する天動説と地動説が特に印象に残っている。
昔の人々は、天動説(地球を中心に他の天体が回転している)と信じていた。
それは、昔の人々が自分中心に世の中が回っていると考えたことに因んでいたのかもしれないと。
でも、人類は生きていくうちに地動説(中心になっているのは地球ではなく、地球自体が太陽の周りを自転しながら公転していたこと)に気づく。
私はこのことについて、これまでは地動説を発見することができた人類の科学的進歩に感動していた。
でも、本作を読んでからは、人間がモノや考え方を自分中心ではなく、俯瞰して見ることができるようになったという人類の心理的成長のようなもののも反映しているので -
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ネタバレ貧富の差によって人間の優劣は決まらないと思うし、お金を持っていなくても尊敬するべき人間は山ほどいるのだと思う。人間同士本当に相手のことを思って愛し合うということは、見返りを求めない好意の積み重ねだと思う。私は概ね、叔父さんと似た価値観を持って生きてきた。
けれどこの歳になって、自分と全く正反対の価値観を持つ人と会い、やっぱり自分は未熟だったから、受け入れられなくて、自分から離れてしまって、そしてその日から今までずっと考え続けている。
正しさとは一体何なのか。貧乏なんかにはなりたくないと、自分はお金持ちになることに執着するなんて、馬鹿げた考えだと思った。自分よりできない人に手を差し伸べるので -
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ジブリ映画に取り上げられたことからこの小説を知った。ジブリ映画の元なのだから児童小説であることは容易に想像つくが、世間ではそのような扱いをしていないように感じてたし、なので、この本を手に取って改めて、児童小説なんだ!と驚きを覚えた。
でも大人にもメッセージ性があると感想を述べている方がいたので、どんな内容かと興味が湧いた。
感想は、児童向けとはいえ、経済論や哲学がこんなに散りばめられているなんて!!と感動した。
叔父さんが日記を通してコペル君に、コペル君の感じたことや体験をそれだけで終わらせずに、想像力を働かせて人としての成長に繋げなければいけないことを伝えていく。
叔父さんの年齢の2倍以上の -
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タイトルどおり、学生時代にこれから残された時間をどう生きるかということを問うた作品です。人間の悩みと過ちを自分自身がどう受け止めるかが大切なことを改めて感じました。たいてい、自分中心に物事を考え、自分の都合の良いように解釈しようとするから、言い訳が生まれます。言い訳から自分の中で認めようとしない方向へ自然と傾いていくのを、どれだけ止められて、それを認めていけるかというこ戸を若い世代に説いているものです。コペル君と同世代のときに読むこと、そしてコペル君のお母さん、おじさんの世代になったっときに読むことで、このタイトルの答えを少しでも答えられるようになるのではないかと思いました。
この作品を読ん -
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何年まえだろうか、映画「君たちはどう生きるか」が話題になった時、本書が漫画化された書籍が注目された。それを手に取ってみたはいいものの、当時の自分には全くと言っていいほど刺さらなかった。
そして今、本書を読み、心の底から感銘を受けた自分がいることに驚いている。
読み進めるほどに、今の自分のために書かれたものだと錯覚してしまうほどに、ものすごく素直に受け止めていた。
中でも印象的なのは、第五章におけるナポレオンの精神性と第七章におけるパスカルの引用。これは紛れもなく今の自分のために書かれたものだ。
「人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しい」
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本書を手にとったきっかけは、
中1長女の読書感想文の課題が
学校から出ていたから。
娘には、ジュニア向けの
ポプラ社のものを。私は、
大人向けのこちらの岩波文庫を。
主人公のコペル君が叔父さんとの
対話を通して、社会構造や
人間関係について深く考え、
成長していく物語。
戦時中の小説とはいえ、
現代までロングセラーに
なっている理由がわかった気がした。
どんなに時が経とうとも、
誰にとっても人生の共通課題だから、
長く読み継がれて来たのだろう。
読み終えて感じたことが二つあった。
一つは、私にも子供の頃に
叔父さんのような大人が身近にいたら、
どんなに良い影響を与えてもらっていたか…
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【未来の君たちへ・・・】
名著とは?
時代を感じさせない人のココロを映しているから名著なんだと感じる。
1️⃣哲学書なのに自分のような無知のものでも考えさせられる。言葉を変えるなら、作者の吉野さんと対話しているように吸い込まれてくる感覚になった。
2️⃣作者吉野さんの語りかけ、私はこう思うけど、あなたはどう思う?これからの社会の中で他者の気持ちを考えた上で自分に問う。
"忍耐"という自分の中に湧き上がる言葉があった。
3️⃣気づき。自分の捉え方一つで物事の見え方までもが人それぞれの絵が変わってくる。
自分の生き方に答えは決まっているわけではないけれど、自分にとっても他者にと -
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まず、知らず知らずのうちに自己中心的になっていないかという問いは、まるで天動説のように自分を中心に世界を捉えがちな私にとって、ハッとさせられるものでした。一方で、地動説のように自分を相対化して判断することの重要性を感じました。
自身の内から湧き上がる感情や考えは、本質に近いものかもしれません。それらを大切にすることで、本当に大切にしたいものが見えてくるのではないかという視点は、自己理解を深める上で重要な示唆を与えてくれました。
また、自身の存在が多くの人々によって支えられているという当たり前ではない事実に改めて感謝の念を抱きました。
同時に、私は世の中に何を生み出せているのだろうか、消費す